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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科38巻4号

1983年04月発行

雑誌目次

特集 癌手術と再建

遊離空腸移植による頸部食道の再建

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.455 - P.462

はじめに
 自家腸管の遊離移植による頸部食道欠損の再建は,1959年Seidenbergらによつて報告された臨床例が最初のものであろう1).その後諸家により主に血管吻合器vascular staplerを使つた血管吻合で腸管の移植を行う方法が試みられたが,中山ら2),井口ら3)のグループ以外には,多数例の報告は見られなかつた。これは,血管吻合器を使用しても,外径2〜3mmの血管を吻合することが難しく,また確実性に乏しいためであつたと考えられる4).これに対して最近の顕微鏡下の血管吻合法,すなわち,微小血管吻合法microvascular anastomosisの発達は著しく,外径1.5mm以上の血管であれば,ほぼ100%の開存が得られるようになつている5,6)
 過去10年間に,われわれはこの微小血管吻合を用い,約500例にのぼる臨床例で,各種の遊離組織移植を経験し好成績をあげているが7,8),最近では遊離空腸の移植も行われるようになつた.われわれが行つている微小血管吻合を利用した空腸の遊離移植vascularized free jejunal transplan—tationは,その手技が簡単で,確実性も高い.今後,下咽頭・頸部食道癌切除後の食道欠損の再建には,最も理想的な方法の一つとして使われると信じ,その手技を中心に紹介する.

大胸筋皮弁による下咽頭・頸部食道の再建

著者: 村上泰

ページ範囲:P.463 - P.467

下咽頭・頸部食道癌の切除範囲
 下咽頭癌予後不良の原因のひとつに局所再発があげられる.粘膜面に顔を出さない深達病巣が広く進展していることが多いために,切除手術によるsalvageが確実になされえないことに起因している.その特徴的病態を明らかにするために,下咽頭粘膜下リンパ流の方向特異性について実験的研究を行い,さらに臨床例の切除標本についてoralおよびanalのmargin studyを行つてみた.その結果,
 1)下咽頭粘膜下リンパ流は浅層の毛細リンパ   管網と深層のやや太いリンパ管よりなつて   いて,毛細リンパ管網では流れに一定の規   則性が認められない.これは,粘膜面での   腫瘍の進展方向は一定でないことを示して   いる.

甲状腺進行癌手術における喉頭・気管の再建

著者: 宮川信 ,   山本香列

ページ範囲:P.469 - P.473

はじめに
 甲状腺癌の生物学的特徴として,組織型によりその性格が著しく異なる点があげられる.分化癌の予後は比較的良好であるのに対し,未分化癌のそれは全く予後不良である1).しかし,分化癌の予後が良好であつても,その非治癒切除例の予後は良好ではない(図1).したがつて分化癌に対しては隣接臓器への浸潤に対してでき得る限りの摘除を試みるべきである.
 甲状腺癌で手術を行つた849例(1953年〜1981年)のうち399例,約47%が気管壁に癒着が認められた.その処理の適否が予後を左右することはいうまでもない.ちなみに,甲状腺癌の直接死因についてみると,乳頭癌においてその約30%が気道圧迫によつて死亡している2).したがつて,この気道圧迫をなんとか減少させることが治癒率向上にっながるわけである.われわれは,気管壁に浸潤した部位,程度によつて気管切除法を次のごとく選択して行つている.

乳癌切除後の乳房の再建

著者: 坂東正士 ,   椎名芳男

ページ範囲:P.475 - P.481

はじめに
 乳房は女性の象徴のひとつで,両側にバランスよく存在することは肉体的・精神的に意味が大きく,奇形や腫瘍などのために変形を来たした場合に再建が望まれるのは自然である.著者等は約10年前から種々の乳房変形症例の再建を多数行つてきたが,乳癌術後の再建は少数の好運な例を除いて変形の程度がひどく,最も困難なものであり,ほとんど不可能に近くおもえた.しかし,1977年頃から種々の筋皮弁移植術の開発とその応用,乳房プロテーゼ利用法の改良,良性疾患での再建経験の蓄積により,癌術後の再建を行い始め,その結果は質的に向上し,かなりのレベルに到達し得たと思えるので,ここに著者等の治験を紹介し,批判を得られればと考える.

悪性腫瘍切除後の胸壁の再建

著者: 北野司久 ,   藤尾彰 ,   八木一之 ,   松井輝夫

ページ範囲:P.483 - P.488

はじめに
 胸部悪性腫瘍に対して外科療法,放射線療法,化学療法などの集学的治療が専門病院で行われ,比較的よくコントロールできるようになつてきた.その結果,癌患者の生存率も上昇し,その延長された余命はできるだけ快適な生活が送れるようにしたいものである.しかし,胸部の悪性腫瘍に対する外科療法や放射線療法などの局所療法後に起こる胸壁欠損や皮膚潰瘍は,心肺機能の低下をはじめ同時に患者の日常生活の行動も制限するので,それらに対して外科的に矯正修復して心肺機能の温存を図り,日常生活の制限を解除してやる必要がある.このような観点から,私たちは悪性腫瘍の集学的治療後に生じる胸壁欠損や感染性皮膚潰瘍をはじめ,先天的な胸郭変形に対しても1,2)積極的に外科治療を試みている.
 今回は,胸部悪性腫瘍の外科的切除後に起こつた胸壁損傷に対する胸壁再建術に関して,私たちが行つている治療方針やその方法について紹介する.

外陰部悪性腫瘍切除後の再建

著者: 中山凱夫 ,   添田周吾 ,   坂井重信 ,   鍾陽明 ,   石川悟

ページ範囲:P.489 - P.495

はじめに
 腫瘍切除後の欠損創に対する修復方法としては,遊離植皮と有茎皮弁が存在する.これらのうち植皮は外陰部周囲でも容易で広範囲にも使用できるなどの利点がある.一方,以前には大腿部や鼠径部郭清後の腹壁からは十分な大きさや長さ,回転半径を持つた皮弁の挙上は不可能とされていた.ところが,Gerらによる筋皮弁の登揚以後はまさに一変したといつてよい3).血行が悪く皮弁には不向きとされていた大腿部が筋皮弁の一大donorになったのである1,9).以前は修復に困難を感じたような例でも,皮弁で容易にかつ確実に行えるようになつてきた.このことが進展した悪性腫瘍の切除を以前よりもやりやすくしつつあると言つても良い.われわれの症例はわずかではあるが,その経験から2種の筋皮弁(大腿筋膜張筋筋皮弁,薄筋筋皮弁)と植皮の3つを使い分ければ,外陰部悪性腫瘍切除後の再建は9分9厘可能と思われた.以下これらの手技の要点と選択について述べる.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・4

早期胃癌—微小Ⅱc

著者: 廣田映五 ,   北村徳治 ,   板橋正幸 ,   北岡久三 ,   小黒八七郎

ページ範囲:P.452 - P.453

 症例(0-22358),61歳,男,自覚症状は特になかつたが,約1年前に区の健康診断を受診した際に潰瘍ないしはその瘢痕のあることが指摘された.当院放射線診断部によるX線検査,さらに内科にて内視鏡,胃生検の病理組織検査等が施行され,幽門部前壁大彎寄りの微小Ⅱcと診断された.その後,当院外科に入院し,胃幽門側部分切除とR2リンパ節郭清術が施行された.

文献抄録

術後嫌気性菌感染症に対するMetronidazole予防投与

著者: 柵瀨信太郎 ,   西尾剛毅

ページ範囲:P.499 - P.499

 近年消化管,婦人科領域での手術後合併症としてBacteroides,Fusobacterium,嫌気性球菌などの嫌気性菌による術後感染症が注目をあびている.これに対し新しい抗生物質が開発,使用されているが,20年来婦人科領域にてトリコモナス腟炎の治療に用いられてきたMetronidazole(Fragyl)が条件嫌気性菌を除くほとんどの嫌気性菌に対して強い殺菌力を持ち,かつ副作用も少ないことにより嫌気性菌感染症に対して広く使用されるようになった.

新形影夜話・4

医師と患者との間

著者: 陣内傳之助

ページ範囲:P.500 - P.501

 昔は医師の数も足りなかつたし,患者の方も健康保険でなく自費だつたので,医師と患者との間の人間関係は信頼感で結ばれており,万一事故が起こつても,そういう医師を選んだ患者側の責任ということですまされていたのであるが,今日では医療行為が医師と患者との間の契約というドライな関係になり,結果がよくなかつた場合には契約不履行ということになつて,悪くすると法のさばきを受けるようなことになりかねない.
 とくに,外科医の場合には手術という患者にとつては好ましくない治療法であるだけに,外科に入院するにはしたものの,できれば手術をしないですむのではないかという期待をもつている患者も多い.それだけに,この患者がどの程度まで自分の受ける手術を理解しているか,そしてどの程度積極的に手術を受ける心構えができているかをよく知つておく必要がある.患者自らが進んで外科に入つてきたのだから,手術をするのは当然だといつたような態度は禁物である.外科には来ても,医師は患者の気持になつて考えてやり,なるべく不必要な手術はしないですむように,まずできるだけ手術を避けて他の治療法はないかと考えた上,それでも仕方がないときはじめて最後の手段として手術を選ぶのだという医師の気持を患者によくよく理解してもらつておく必要がある.あの病院に行くと,ろくに検査もしないですぐに手術をされるという評判の病院があるが,こんな病院は今日では通らなくなつてきた.

ここが知りたい 臨床医のためのワンポイントレッスン

胃洗浄のコツと注意点は?

著者: 大久保高明 ,  

ページ範囲:P.503 - P.503

 A;胃洗浄は,胃内容物を吸引し,排除(各種毒物,血液,食物残渣,胃液等)を目的として行われる.術前・術後の処置として実施される他,各種毒物,薬物の誤飲,各種薬物の注入などの治療目的に供せられる.また,診断として,胃出血,止血,胃分泌測定,細胞診などにも用いられる.

画像診断 What's sign?

腹腔内液体貯留—Hellmer's sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.507 - P.507

 腹腔に大量の遊離液体が貯留した場合,Douglas窩,paracolic gutter,あるいはMorison窩を満たした腹水あるいは血液は,右の横隔膜下腔に充満し,肝を内側に偏位させる(図1).
 X線像の上では,右側の肋骨弓と内側に偏位した肝右葉外側沿との間に肝の濃度よりやや透亮性の高い腹腔内の遊離液体の帯を認め,1942年,Hellmerにより腹水の貯留所見として記載された1).この所見を見出すためには,これらの僅かな濃度差を描出する,条件の良い撮影法を行うことが必要である.またこの所見は腹水貯留症例や腹腔内出血症例の腹部血管造影の際,肝実質が濃染することからより容易に観察できる場合がある(図2).

座談会 外科研修を考える・1

なぜこの病院で,そして生活基盤は?

著者: 山川文男 ,   遠藤幸男 ,   三沢吉雄 ,   鰐渕康彦

ページ範囲:P.509 - P.515

なぜこの病院を選んだか
 鰐渕(司会) 今日は「卒後の研修を考える」という題で座談会をやることになつたわけですけれども,集まつていただいた方々はみんな大学病院以外の病院でトレーニングを受けられた人たちです.そういう方々が実際に民間の病院,あるいは地方の病院に出て受けた研修の体験をもとにして,観念論ではなく,実際の体験に基づいた生の声で,現状での外科の卒後研修の問題点というか,あるいはこうあるべきではないかという提言とか,そういつたものを浮かび上がらせてみたいというのが,この座談会のねらいです.
 まず最初に皆さんのいままで受けられた研修のバックグラウンドをそれぞれの方に話していただきたいと思うのですが,司会者の責任もありますので,私から先に申しますと,私は昭和38年に大学を卒業しました.1年間,米軍の病院でインターンを行いましたがその後,大学の医局で4年間研修を受けて,それで外へ出たという経歴です.

外科医の工夫

再手術での随意排便回腸瘻(continent ileostomy)の作成

著者: 加藤知行 ,   加藤王千 ,   山田栄吉

ページ範囲:P.517 - P.521

はじめに
 大腸腺腫症や潰瘍性大腸炎などにおける大腸全摘術後に行われてきたBrook法やTurnbull法による回腸瘻に代つて,近年Kock1)のcontinent ileostomyが行われる様になつてきた.回腸から流出する便は結腸の人工肛門から出る便と異なつてその始末にやつかいである事,大腸全摘を受けるような患者は大腸腺腫症にしろ潰瘍性大腸炎にしろ若い年齢層の者が多く,術後長期間回腸瘻と共に生活していかなくてはならない事を考えると,大腸全摘術を受けた患者が排便について随意性を得る事は大変重要な事である.continent ileostomyにはいろいろな改良術式が発表されており,われわれはcontinent ileostomyを随意排便回腸瘻と呼んで,その作成法を既に紹介した2).随意排便回腸瘻の作成は,初回手術時が最も腸管の条件が良い状態で行えるが,欧米の報告では作成したものの半数は従来の回腸瘻からの変換であることからも推測できるように,今後本邦でも過去に作られたBrook法の回腸瘻を作りかえたり,初回手術ではpoor riskのために作れなかつた患者が,大腸全摘後に健康をとりもどしてから新たに,この随意排便回腸瘻を作るような揚合が多くなると思われる.
 今回,われわれが再手術で随意排便回腸瘻を作成した症例を中心にして,再手術例での作成の要点について述べる.

臨床報告

髄膜炎を繰り返した外傷性髄液鼻漏の1例

著者: 門脇弘孝 ,   井出光信 ,   神保実

ページ範囲:P.523 - P.527

はじめに
 頭部外傷による髄液漏は,放置すれば頭蓋内感染を生ずる可能性が高い.
 しかし,これが何らかの理由で見逃されると原因不明の髄膜炎を繰り返し,薬剤(抗生物質)も耐性となり難治性髄膜炎となつてしまう危険性がある.従つて保存的療法で治癒しない場合には,手術療法の対象となるわけである.

両側冠動脈より肺動脈に短絡した先天性冠動脈肺動脈瘻の1例

著者: 島貫公義 ,   浜田修三 ,   鈴木勇焄 ,   板橋邦宏 ,   中山和久 ,   山本清孝 ,   千葉惇 ,   浜田明子 ,   山沢正則 ,   星野俊一

ページ範囲:P.529 - P.533

はじめに
 先天性冠動脈瘻(以下,CAVF)は比較的稀なものと考えられていたが,近年,選択的冠動脈造影法の進歩により多数の報告がみられるようになつた.CAVFの報告の中でも,両側冠動脈より肺動脈へ短絡する冠動脈瘻は稀であり,肺動脈切開にて肺動脈内腔より,直接短絡部位の瘻孔閉鎖術を施行した1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

スキルスと診断困難であつた胃サルコイドーシスの1例

著者: 杉浦勇人 ,   佐久間温己 ,   松崎正明 ,   堀尾静 ,   神谷勲 ,   寄藤和彦 ,   林衆治 ,   寺本いほり ,   坂田教雄

ページ範囲:P.535 - P.539

はじめに
 汎発性肉芽腫性疾患であるサルコイドーシスは,1869年Hutchinsonにより報告されたが,リンパ節,肺,脾,肝,皮膚などに好んで出現し,脳・神経系を含めて全身のあらゆる組織,器官を浸潤するといわれるが,胃における病変はまれであり,1936年Schaumannが全身サルコイドーシスの剖検例で局所病変として報告したのが最初であり,その後,Liehr1)の38例の報告があるが,本邦では長村2)の初報告以来24例を見るにすぎない.そしてほとんどが胃X線検査や内視鏡検査で胃癌あるいは胃潰瘍を疑われ,胃切除を受けた後に組織学的に胃サルコイドーシスの病変が発見されたケースであり,その他は少数ながら剖検時,あるいは生検で発見されたものである.われわれは最近胃X線検査,胃カメラ検査にてスキルスを疑つた42歳の男性の術後の病理組織学的検索において胃に発生したサルコイドーシスと診断した症例を経験したので報告する.

亜急性び漫性胃蜂窩織炎の1例

著者: 碓氷章彦 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   近藤哲 ,   堀明洋 ,   安井章裕 ,   広瀬省吾 ,   山田育男 ,   深田伸二 ,   宮地正彦 ,   渡辺英世 ,   磯谷正敏 ,   竹田武夫

ページ範囲:P.541 - P.546

はじめに
 胃蜂窩織炎は比較的稀な疾患で,本邦では自験例を含め99例の報告をみるのみである.われわれは最近手術により治癒せしめた,薬剤が誘因と思われる原発性亜急性び漫性胃蜂窩織炎の1例を経験したので,本邦報告例99例の検討を加え報告する.

腎血管性高血圧症に対して血行再建術を施行した後,健側と患側の腎静脈血のレニン活性が逆転した症例

著者: 船木治雄 ,   大田早苗 ,   広瀬脩二 ,   石田秀世

ページ範囲:P.547 - P.550

はじめに
 腎血管性高血圧という概念は,1934年Goldblattの提唱以来,沢山の臨床経験の集積によつて大方の支持をえてきている4,5,8).しかし,反面,レニン活性が容易に測定できるようになり,またSaralasin testなど新しい検査法が導入されてより細かなデータの分析がされるようになつてから,腎血管性高血圧はレニンとは関係のない違つたメカニズムで起こる可能性も示唆されるようになつた9)
 われわれは30歳の女性の腎血管性高血圧の症例に対して,自家静脈による血行再建のあと,血圧下降の効果がえられたにもかかわらず,腎静脈血のレニン活性が術前正常値であつた健側の方が患側よりも逆に異常高値を示すという珍しい結果がえられたので,ここに報告する.

ガストリン産生卵巣嚢腫によるZollinger-Ellison症候群の1例

著者: 長堀順二 ,   紙田信彦 ,   佐々木喜一 ,   岡崎護 ,   石川鋭 ,   木島泰興 ,   立之芳源 ,   朝田農夫雄 ,   黒川博之 ,   斉藤寛文 ,   原田伸 ,   郡良文 ,   渡会敏之 ,   山口善友

ページ範囲:P.551 - P.555

はじめに
 近年,Radioimmunoassay法の発達によりガストリン定量が広く普及し,それに従いZollinger-Ellison症候群(以下,ZES)に関する報告が増加してきた.最近われわれもガストリン産生卵巣嚢腫によるZESの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

V-P shuntチューブによる腸管穿孔の1例

著者: 鈴木望 ,   田中達也 ,   大神正一郎 ,   米増祐吉

ページ範囲:P.557 - P.560

はじめに
 水頭症の治療には脳室腹腔短絡術(V-P shunt)が広く施行されており,シャント機能不全には複雑なものが多い.なかでも腹側チューブによる腸管穿孔は比較的稀な合併症であるが,これにより腹膜炎はもとより逆行性髄膜炎,脳室炎を併発することが多いため,早期診断,早期治療が必要である.また脳室と腹腔内を生体異物であるチューブを使用して短絡させるという特殊な構造上,脳神経外科および腹部外科双方に関連ある問題として重要である.今回,われわれはV-P shuntを受けた患者がリハビリテーション中に虫垂炎に罹患し,開腹術後腹側チューブが上行結腸に穿孔し,髄膜炎を起こした1例を経験したのでその症例を報告し,シャントチューブによる腸穿孔例を文献的に集計し,若干の考察を加えた.

特異な病像,組織像を呈した空腸平滑筋肉腫の2例

著者: 関雅博 ,   宮崎幹也 ,   龍村俊樹 ,   石坂伸太郎 ,   上山武史 ,   山本恵一 ,   若木邦彦 ,   三輪淳夫 ,   和泉三郎 ,   中川正幸

ページ範囲:P.561 - P.566

はじめに
 小腸平滑筋肉腫は比較的稀な疾患であり,近年報告例は増加しつつあるが,その術前診断,予後等について問題点が多い.一方,組織学的にepithelioid leiomyo—sarcomaという特異型の独立性を強調するものもあり1,2),その予後との関係をも含めて検索すべき点が多多残されている.
 われわれは最近,特異な病像を呈し,あるいはまた上記epithelioid leiomyosarcomaと考えられる組織像を示すものなど,種々の点で興味ある空腸平滑筋肉腫の2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.502 - P.502

SURGERY—Contents, March 1983 Vol.93, No.3 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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