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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科38巻8号

1983年08月発行

雑誌目次

特集 臓器全摘後の病態と管理

甲状腺全摘後の病態と管理—甲状腺と上皮小体の機能障害

著者: 河西信勝 ,   白木正孝 ,   井藤英喜

ページ範囲:P.1117 - P.1124

はじめに
 甲状腺全摘は甲状腺癌治療においてのみでなく,喉頭癌進行例,下咽頭頸部食道癌においても行われる1,2).甲状腺癌の中で悪性度の低いものあるいは非進行例では,上皮小体を保存して甲状腺全摘をしたり3-5),摘出した上皮小体を自家移植する6)ことも可能であり,ある程度の成果をあげている.しかし甲状腺進行癌,喉頭進行癌,下咽頭頸部食道癌では,上皮小体を温存することは事実上困難であるばかりでなく,時としてきわめて危険である.このような状況において,甲状腺・上皮小体を全摘せざる得ないのであるが,その際,甲状腺ホルモンの低下およびCa,Pを中心とした電解質の異常が生じ,時に致命的な状態をもたらす.しかしこれらの病態に関する報告は少なく,またその管理法に関しても具体性に乏しいものがほとんどである,ここでわれわれは甲状腺・上皮小体全摘例において,その急性期の病態および長期経過観察時即ち慢性期の病態を示し,これらの諸時期における管理法に関して報告する.

胃全摘後の病態と管理—貧血,骨障害を中心に

著者: 古賀成昌 ,   西村興亜

ページ範囲:P.1125 - P.1132

はじめに
 近年,手術手技ならびに術前後管理の向上進歩により,手術の安全性は一段と高まつてきた.これに伴い,癌の根治性向上の面から,胃癌に対する胃全摘の適応は拡大され,胃全摘術は以前にも増して積極的に行われている.一方,胃癌の遠隔成績も向上しており,胃全摘後長期生存例も漸次増加しているものと考えられる.したがつて,これら胃全摘後患者における術後管理,とくに長期遠隔時にみられる障害を十分理解したうえでの適切な対策が今日一層重要となつているといえよう.
 本稿では,胃全摘後病態の大要を示すとともに,術後遠隔時障害のうち,とくに貧血と骨障害をとりあげ,教室における最近の検討成績から,その実態と対策について述べてみたい.

副腎全摘後の病態と管理

著者: 榎本耕治 ,   池田正 ,   菊池潔 ,   小林英之 ,   洪淳一 ,   石井誠一郎 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.1133 - P.1136

はじめに
 副腎全摘は副腎両側過形成あるいは腺腫によるCushing病,両側性褐色細胞腫,乳癌,前立腺癌の進行・再発癌を対象に行われて来た.副腎両側過形成によるCushing病のうち,術前に下垂体にmicroadenomaが認められた場合にはHardyの経蝶形骨洞的下垂体手術(Transphenoidal microsurgery)1,2)で下垂体の腫瘍摘出が行われるようになつているが,下垂体より高位の間脳からのCorticotropin releasing factor(CRF)の分泌過剰あるいは両側副腎の多発性過形成の場合には現在なお両側副腎全摘術が適応とされる.進行・再発乳癌に対して外科的内分泌療法として両側卵巣副腎合併切除術が行われて来たが,乳癌のホルモンリセプターによる腫瘍の内分泌依存性が測定されるようになり,また,同時に抗エストロジェン剤の薬物が開発されて来て,外科的内分泌療法としての副腎全摘術の適応は少なくなつて来ている.しかし,適応を選べば捨てがたい魅力をもつている.一方,肝癌・膵癌・腎癌等の副腎に隣接する臓器の進行癌で副腎に直接浸潤している場合,郭清の目的で副腎を合併切除されることがある.この場合,多くは片側副腎切除であるが,稀に両側全摘されることもある.このように副腎全摘術の適応は狭くなつて来ているが,副腎全摘は今なお必要な手術であり,その全摘後の病態を十分把握し術後管理にあたる必要がある.

膵臓全摘後の病態と管理

著者: 伊藤俊哉 ,   元島幸一 ,   山口孝

ページ範囲:P.1137 - P.1145

はじめに
 近年,膵疾患殊に膵癌に対する診断技術の進歩により,また手術成績向上の目的で,膵全摘術が積極的に行われるようになつてきた.しかし膵全摘を必要とする患者はその全身状態が必ずしも良好とは言えず,手術術式そのものの侵襲も大であるので,手術操作に直結した術後合併症の発生頻度も低率とはいえない.また,膵全摘後の膵内外分泌機能の完全脱落による障害は,他臓器への二次的障害と複雑にからみ合い,その病態を画一的に論ずることは難しい.しかし長期生存例の報告も増加しつつあり,術後管理の方向性や問題点も徐々に明確になつてきた.
 本稿では膵全摘術後の病態とその病態に即応した術後管理について,主として自験例から得た知見をもとに,術後経過を追つて経静脈栄養期,経静脈経腸併用期,経腸栄養期,並びに退院後に区分し,なるべく具体的に報告したい.

大腸全摘後の病態と管理

著者: 福島恒男 ,   土屋周二

ページ範囲:P.1147 - P.1154

はじめに
 消化管のうち,食道・胃・大腸は全摘が可能である.食道・胃は代用器官の移植が必要であるが,大腸はその必要もない器官である.しかし,大腸を全摘した場合にも機能欠損が生ずる.それは大腸粘膜からの水分と電解質吸収能の欠損による脱水,電解質喪失と肛門機能欠損によるincon—tinenceが主である.前者については正常大腸の機能を理解し,回腸人工肛門からの排液を測定することなどにより病態をほぼ把握出来る.後者については肛門機能を温存する手術法の開発が行われており,その術後経過の観察報告などを知る必要があろう.以下,大腸の機能,大腸全摘の適応,術後の病態と管理について述べてきたい.

膀胱全摘後の病態と管理

著者: 折笠精一

ページ範囲:P.1155 - P.1163

はじめに
 膀胱は,腎からの尿を一旦貯留し,一定量になつたら排泄する極めて単純な臓器であり,他臓器の如き分泌,吸収といつた働きはない.よつて,膀胱摘出後には基本的には尿の貯留と排尿ができなくなるだけで,その他の機能障害が直接現われることはない.しかし,膀胱が摘出されたあと,腎からの尿をいかに扱うかは患者の社会生活のみならず,生命に直接関与する腎機能に極めて大切である.そこで,膀胱摘出後の病態として,尿路変更後に起こる問題について述べることにする.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・7

早期胃癌—Ⅱc+Ⅱa型

著者: 廣田映五 ,   丸田憲三 ,   板橋正幸 ,   丸山圭一 ,   北岡久三 ,   小黒八七郎 ,   吉田茂昭

ページ範囲:P.1114 - P.1115

 症例70歳.男.
 1981年,12月老人検診にて胃の異常を指摘され,当院内科を紹介される.X線透視,内視鏡検査にてⅡaとⅡcの所見を伴う早期胃癌であると診断された.同時に行われた生検組織診断で分化型管状腺癌well differentiated tubular adenocarcinomaであることが確認された.R2の幽門側部分切除術が施行されBillroth—Ⅰ法にて再建された.S0 P0 H0 N0で絶対治癒切除であつた.

文献抄録

若年者結腸憩室症

著者: 寺本龍生

ページ範囲:P.1165 - P.1165

 比較的稀とされているが,重篤な経過をとるといわれている若年者の結腸憩室症自験例の自然経過,およびその治療法について検討した.

新形影夜話・7

納得のいく手術

著者: 陣内傳之助

ページ範囲:P.1166 - P.1167

 開腹してみていちばん困ることは,開腹所見が術前にあつた症状から想像していたものとまつたく違つていて,どうしても納得のいかない場合である.こんなときには全身状態の許す限り,納得がいくまで探索してみることが大切である.納得がいかぬままにお腹を閉じたときほど嫌なことはない.
 右下腹部に疼痛を訴え,筋性防御がみられ,白血球数が増加している場合,ふつう多くは急性虫垂炎を考えるのであるが,開腹してみたら虫垂はほとんど正常というような場合がある.こんなときには虫垂以外の他の部の腸管に炎症ないし穿通,穿孔がないかと考えて入念に探してみることが必要である.めつたにないことではあるが,回腸下端から口側に辿つてゆくと,メッケルの憩室があり,これが炎症を起こして,それが穿孔しかかつていたことがあるし,また最近では欧米食のためか,盲腸後壁に,昔はあまりなかつた憩室が生じ,これが穿孔して同様の症状を起こすことがある.

ここが知りたい 臨床医のためのワンポイントレッスン

中心静脈栄養における脂溶性ビタミンの投与について

著者: 小越章平 ,  

ページ範囲:P.1168 - P.1168

 A;中心静脈栄養はいうまでもなく完全な静脈栄養法であり,すべての栄養成分を経静脈的に補う意味からもビタミンの補給は必要不可欠のものである.表のように米国でも所要量が発表されているが,日本でも米国でも経口的なビタミン摂取からの必要量を基準として出したものであり,静脈栄養時の必要量については高カロリー輸液の創始者Dudrickが出したデータをもとにMVIが市販された.これは表の中ほどにあるごとく水溶性が6種,脂溶性が3種である.その後,American Medical Association(AMA)がMVIの処方を不適当なものとして,いわゆるAMAの勧告値を出したのが表のAMA処方であり,これでみるとMVIのとくにAとDが少なくなつているのが目立つ.AMAの勧告を受けMVI-13というのが出されたが,わが国では現在治療中である(MVIの旧処方のものはエスエス製薬から発売されている).わが国では大阪大グループがAMA処方に準じたPV 123(扶桑薬品,間もなく発売),奥田や著者らが中心となつて決めたNK041(日本化薬,現在治験中)がある.ともに水溶性9種,脂溶性4種をカバーしたものである.これらは原則的に水溶性はやや多めに,脂溶性は蓄積効果があるためにやや少なめに処方されている.しかし,実際に両方を高カロリー輸液患者に使用してみたが,脂溶性ビタミンの量はもう少し増量してもよいようなデータが得られている.

画像診断 What sign?

Thumbprinting

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1173 - P.1173

 腸管壁に指頭大で辺縁平滑な隆起性病変が多発性に存在する場合,単純X線像あるいは消化管造影検査で腸管の辺縁に沿つて指で判を押したような多発性の陰影欠損像を呈し,これは"thumbprinting"appearanceと呼ばれる.虚血性腸炎や感染性大腸炎などの場合のように粘膜下の浮腫あるいは血腫の表現として出現することが多いが,転移性腫瘍,悪性リンパ腫,アミロイドーシスのように粘膜下への浸潤性病変の際にもみられる.
 "thumbprinting"appearanceを呈する疾患のリストを表に挙げる.

外科医のためのマイコン・ガイド・1【新連載】

外科における文書作成・保存・管理の能率化をどうするか—ワープロの効用

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.1175 - P.1180

わあ!—プロにおまかせ
 マイコンの中でも最も実用的で最も普及しているものは日本語ワードプロセッサ(ワープロと略す)である.ワープロの和訳は文綴利器,中国語で字組(文件)処理機という.原理的には和文タイプライターがテレビの様なCRT1)画面付きのマイコン(本体はCPU2))および外部記憶装置(フロッピーディスク=FD3)と略す)と合体したもので,誰でも手軽に原稿書きにはじまつて,その訂正,レイアウト,印刷,保存,検索などの文書処理ができるようにプログラムが組まれている.さて,この文書処理をシステム化したものをDOCS4)と呼んでおり,その応用利用にはマイコンの力が大いに発揮されるところである.

臨床研究

成人後腹膜腫瘍16例の検討

著者: 遠藤健 ,   渡辺昇 ,   竹中文良 ,   大和田晴彦 ,   板東隆文 ,   喜島健雄 ,   豊島宏 ,   太中弘 ,   武村民子 ,   松原修

ページ範囲:P.1181 - P.1188

はじめに
 後腹膜腫瘍とは腹膜と後腹壁との間で,上縁を横隔膜下縁を骨盤無名線,外縁を腰方形筋外側に囲まれた領域に発生する腫瘍の総称である.しかし一般的には腎臓,副腎,膵臓,女性性殖器と関係のない後腹膜腔の結合組織,脂肪組織,脈管,リンパ節,筋肉,神経組織などより発生するものをさす.後腹膜腫瘍は比較的まれな疾患であり,当科においても24年間に成人例16例を経験したにすぎない.この16例を検討し考察を試みる.

甲状腺分化癌の頸部リンパ節転移状況

著者: 野口昌邦 ,   田中茂弘 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1189 - P.1194

はじめに
 甲状腺分化癌は他の臓器の癌に比して,その生物学的悪性度は低く,その予後も良好である.そのため,従来から甲状腺癌においては領域リンパ節の系統的郭清を不要とする意見も多くみられる.しかし今日,甲状腺癌の再発例はしばしば経験され,しかも再発甲状腺癌の手術は困難を伴い,二次的損傷の危険性も高くなる.さらに腫瘍による気道圧迫や未分化癌化のため不幸な転帰をたどる症例も少なからず見うけられる1,2).従つて甲状腺癌において手術が唯一の確実な治療方法である以上,初回手術の重要性は十分に強調されるべきであると考えられる.
 近年,私どもは甲状腺分化癌に対して甲状腺亜全摘と,1側の頸部リンパ節郭清と両側気管傍リンパ節郭清を行う手術を標準手術として原則的に採用し,更に癌の進行度に応じて甲状腺全摘術や両側頸部リンパ節郭清術を施行するなど系統的リンパ節郭清を行つてきた.今回これら甲状腺分化癌症例のリンパ節転移状況について検討したので報告する.

術後癒着性イレウスの保存的療法—薬物療法の有効性と手術適応

著者: 野口芳一 ,   安達隆治 ,   須田嵩 ,   有田英二 ,   有田峯夫

ページ範囲:P.1195 - P.1200

はじめに
 術後癒着性イレウスは,術中,腸管の癒着を防止するための種々の対策が考案され,その頻度を減少しつっあるが,いまだ完全には,防止し得ていない.イレウスの保存的療法は,輸液療法を基盤とし,long intestinal tube1)や,oxygen hyperbaric treatment2)の使用により,良好な成績が報告されている.イミダリン及びワゴスティグミンは,以前より本邦にて使用されているが,その治療効果に関する報告は,われわれの調べえた範囲内では,文献上みられていない.われわれは,術後イレウスの治療で,polysurgeryを防ぐ事を主眼に,イミダリン及びワゴスティグミンより成る薬物療法を中心とした保存的療法を,術後癒着性イレウスの治療に積極的に応用し,良好な成績を得ている.保存的療法の効果及び手術適応とその時期を中心に検討し,さらに,若干の考察を試みたので報告する.

肺癌縦隔リンパ節転移のCT診断

著者: 松原敏樹 ,   堀雅晴 ,   中川健 ,   木下巌 ,   土屋永寿

ページ範囲:P.1203 - P.1210

はじめに
 肺癌進展状態の術前把握の手段として,今やCTは大きな位置を占めている.特に縦隔転移状況を術前に把握することは肺癌の治療方針決定上極めて重要である.術前にCTを施行した原発性肺癌切除例86例をもとにCTによる縦隔リンパ節転移診断の可能性について検討し,これにもとずく手術方針決定上の問題点について考察した.

大腸癌における血清CEAの臨床的意義

著者: 近藤秀則 ,   古本福市 ,   池田俊行 ,   小林直広 ,   佐久間隆 ,   岡村進介 ,   朝倉晃 ,   畠山哲朗

ページ範囲:P.1211 - P.1216

はじめに
 1965年Goldら1)は大腸癌に特異抗原があるとし,その後3〜6カ月の胎児の結腸組織中にもこの抗原が存在することが明らかになり,胎児性抗原Carcinoembryonic antigen(以下CEAと略す)と命名された.その後CEAは内胚葉性癌のみならず外胚葉性癌にもかなり高率に検出されることがわかり大腸癌に対する特異性は否定されたが,Radioimmunoassay法の開発,普及に伴いCEAの定量が大腸癌の日常検査法の一つとして一般化してきた.
 今回われわれは大腸癌患者における血清CEAの臨床的意義について検討を加えたので報告する.

急性虫垂炎の超音波診断に関する検討

著者: 高田忠敬 ,   安田秀喜 ,   内山勝弘

ページ範囲:P.1217 - P.1224

はじめに
 急性虫垂炎の診断,成因,病態,手術適応については,これまで多く論じられ1-4,その手術は外科医の出発点と言われる程普遍的なものとなつている.しかし,開腹手術を行つてみると,術前の臨床症状や所見から考えていた病期と実際とが一致しない例もしばしば存在し,なかには保存的治療の適応であつたと反省させられる例も少なくない.これに対し虫垂炎の病期,病勢を数量的に判定する計量診断もあるが1,4),これにても臨床症状や所見を経験的座標で判定するものにすぎない.われわれは,より客観的判定法として超音波検査を導入し,重症度判定に有意義な知見をえたので報告する.

手術手技

上行大動脈,弓部大動脈分枝の再建を伴うextra-anatomic bypassを用いた解離性大動脈瘤の手術

著者: 清水幸宏 ,   吉田哲人 ,   宮本巍

ページ範囲:P.1225 - P.1231

はじめに
 解離性大動脈瘤に対する新しい術式として,Carpent-ier等1,2)はextra-anatomic bypass施行後解離部中枢側の永久遮断を行うことにより,解離部の血栓閉塞化を目的とする方法を発表した.
 この術式は解離部を人工血管にて置換する方法に比し術中出血や術後の対麻痺等の危険性が少ないため本邦でも注目されている.われわれも無名動脈分枝部の弓部大動脈にentryを有し,順行性,逆行性に解離が進展したStanford A型4)の解離性大動脈瘤に対し本術式を行つた.その際上行大動脈と弓部大動脈分枝の再建にはCarpentierとは異なつた方法を用い,良好な結果が得られた.

臨床報告

外傷性十二指腸壁内血腫の1例

著者: 光野正人 ,   山下昭彦 ,   磯村泰之 ,   野田和人 ,   山田育宏 ,   朝倉孝弘 ,   田原昌人 ,   木曾光則 ,   松井俊行 ,   小山昱甫 ,   福富経昌 ,   中島忠厚 ,   吉岡一由 ,   荒川雅久

ページ範囲:P.1233 - P.1236

はじめに
 わが国における十二指腸壁内血腫は,比較的頻度は少ない.私たちの集計では1981年までに本邦では43例を見るのみである.成因は大部分が外傷性十二指腸壁内血腫であつた.最近私達は,ハンドル外傷によると思われる十二指腸壁内血腫の1例を経験し,保存的に治癒せしめたので若干の文献的考察を加え報告する.

胃潰瘍に続発した胃肉芽腫—特に植物細胞性異物肉芽腫症例について

著者: 泉山隆男 ,   永井一徳 ,   田村豊一 ,   福島松郎

ページ範囲:P.1237 - P.1240

はじめに
 胃の非上皮性腫瘍の診断は悪性のものに対して良性腫瘍の場合には時として困難な場合がある.今度著者らはBorrmann 4型の胃癌を疑われ,手術の結果胃の肉芽腫であつた興味ある症例を経験したので報告する.

膝窩動脈外膜嚢腫の1治験例

著者: 宮内好正 ,   唐木清一 ,   川野元茂 ,   田中寿一

ページ範囲:P.1241 - P.1244

はじめに
 動脈の外膜嚢腫は稀な疾患であるが,1977年までに世界では本邦の5例を含め136例の報告がみられる.しかし,それ以後も本邦での報告は少なく,著者が集計し得たものは11例にすぎない1-10).血管外科が普及した今日,本疾患の存在を念頭に置くことは重要である.
 われわれは本邦11例目,膝窩動脈外膜嚢腫としては9例目の本症を経験し,手術治癒せしめたので文献考察を加え報告する.

大量の消化管出血を伴つた激症型SLEの1例

著者: 渡辺成 ,   八木田旭邦 ,   小野美貴子 ,   北島政樹 ,   立川勲 ,   相馬智 ,   斉藤元章 ,   北本清 ,   長沢俊彦

ページ範囲:P.1245 - P.1248

はじめに
 全身性紅斑性狼瘡(Systemic Lupus Erythematosus以下SLEと略す)に伴う消化器症状は1895年Osler1)が報告して以来,しばしば出現するとされているが,その多くは食思不振,嘔気・嘔吐,腹痛などであり,大量の消化管出血をみることは極めて稀である.われわれは急速な経過をたどつた激症型のSLEに,大量の消化管出血がみられた症例に対し,血管造影の所見をもとに手術を行つたので,文献的考察を加え報告する.

小児の腹部鈍的外傷による胃破裂の1治験例

著者: 土岡丘 ,   長鳥金二 ,   池田舜一 ,   白石哲 ,   川満富裕 ,   腰塚学

ページ範囲:P.1249 - P.1252

はじめに
 小児の腹部鈍的外傷による消化管穿孔は極めてまれである.私たちは最近小児の外傷性胃破裂を経験した.幸い合併損傷はなく,術後経過は良好である.
 発育過程にある小児は成人に比して,腹壁も未発達であり,小さな外力により思わぬ内臓損傷を伴つていることが多く,受傷後の患者管理を慎重に行う必要がある.さらに最近の交通事故の増加に伴つて,今後小児腹部外傷も増加すると考えられるので,外傷性胃破裂例の概略を紹介し,診断および治療について若干の文献的考察を加え報告する.

正中頸嚢腫から発生した癌の3例

著者: 花松正寛 ,   金田巌 ,   小川将 ,   高橋正二郎 ,   栗原英夫

ページ範囲:P.1253 - P.1256

はじめに
 正中頸嚢腫は小児および成人でしばしば手術の対象になる疾患であるが,これから発生する癌は非常に稀なものとされており,長嶺らによるとその頻度は正中頸嚢腫の1.6%である.われわれは正中頸嚢腫に発生したと思われる癌を3例経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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雑誌「SURGERY」最新号目次

ページ範囲:P.1169 - P.1169

SURGERY—Contents, July 1983 Vol.94, No.1 ©By The C. V. Mosby Company
 今回,米国Mosby社の御好意により,世界的な外科雑誌"Surgery"の最新目次を,日本の読者にいち早く,提供出来るようになりました。下記の目次は,発売前にファックスで送られてきたものです。この雑誌"Surgery"御購読は,医学書院洋書部(03-814-5931)へお申込み下さい。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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