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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科39巻12号

1984年12月発行

雑誌目次

特集 大腸切除と機能温存

直腸癌の括約筋温存術式—低位前方切除術:手縫い吻合と器械吻合

著者: 浜野恭一 ,   亀岡信悟 ,   秋本伸 ,   由里樹生 ,   五十嵐達紀 ,   野口友義 ,   三神俊史 ,   高石潔 ,   相原玲子

ページ範囲:P.1667 - P.1673

はじめに
 直腸癌に対する低位前方切除術は,近年にいたつて,大いに適応の拡大された術式の一つであろう.その理由としては,他の括約筋温存術式に比して,術後排便機能の良好なこと1,2)手術手技の進歩により,括約筋群を除いた部位では直腸切断術と全く同様の郭清が出来るようになつたこと3,4),器械吻合の導入により吻合が容易,普遍的になつたこと5,6),などがあげられる.
 しかし一方では,正しい適応をどこに置くべきか,直腸切断術に比して根治性はどうか,などの問題がある.また吻合操作そのものも,部位が骨盤腔深部になればなるほど困難となる.手縫い吻合,器械吻合いずれも一長一短があり,両者の選択や手技上のコツも重要である.

直腸癌の括約筋温存術式—重積法

著者: 安富正幸 ,   松田泰次

ページ範囲:P.1675 - P.1681

はじめに
 直腸癌手術に対して,以前は腹会陰式直腸切断術が基本的な術式であるとされていたが,人工肛門による障害が問題とされるにつれ,上部直腸癌に対しては人工肛門を造設しない肛門括約筋保存手術が広く行われるようになつてきた.この歴史的変遷からみても肛門括約筋保存手術に際しては良好な排便機能が維持され,しかも癌根治性を低下させないことが重要である.
 肛門括約筋保存手術には前方切除術,重積手術,pull-through手術などがあるが,pull-throu—gh手術は切除範囲からみれば適応範囲は広いが,排便機能が不良であり,現在ではこの術式に対し批判的な意見が多い.

直腸癌の括約筋温存術式—貫通切除法;機能障害の実態とその予防

著者: 高橋孝 ,   小鍛冶明照 ,   太田博俊 ,   藤原章 ,   翁秀岳

ページ範囲:P.1683 - P.1690

貫通切除術式における機能障害
 直腸癌の手術的治療のあとに問題となる機能の障害には,排便機能の障害,排尿機能の障害,及び性機能の障害がある.貫通切除術式の特徴を考えつつ,この術式ののちに上記の三つの機能障害がどのような形で現われやすいかを考えてみる.

直腸癌の括約筋温存術式—経肛門的結腸肛門吻合

著者: 寺本龍生 ,   小平進

ページ範囲:P.1691 - P.1697

はじめに
 直腸癌は,近年,拡大郭清術式の導入により,治癒手術が施行されると,長期の生存ができるようになつた.そこで癌の根治性を損うことなく,出来得る限り自然肛門を温存する,括約筋温存術式の工夫がいろいろとなされてきている.
 当教室では,1980年9月より,下部直腸癌で,腫瘍下縁より十分な距離の肛門側断端をとると,歯状線直上で切離せざる得ない症例に対する自然肛門温存術式として,われわれが改良したParks型持針器(T式持針器—ユフ精器)および彎曲針を使用し,経肛門的に口側結腸断端と肛門管断端とを一期的に吻合する経肛門的結腸肛門吻合を行つているので,その手術手技,成績,術後機能についてのべる.

回腸肛門吻合術の外科

著者: 宇都宮譲二 ,   松本正道 ,   太田正資

ページ範囲:P.1699 - P.1710

はじめに
 大腸の粘膜,粘膜下層を完全または,ほぼ完全に取り除き,かつ自然肛門機能を温存しようとする手術は,全結腸切除,直腸粘膜切除(抜去),回腸肛門吻合術(以下回肛吻合術)total colectomy,mucosal proctectomy and ileoanal anastomosis(ileoanostomy;anal ileostomy)と呼ばれる.
 大腸粘膜の完全な切除によりはじめてその治療の目的を達しうる主な疾患は潰瘍性大腸炎(UC)と大腸腺腫症(AC)がある.従来,これら疾患に対する治療法としては直腸温存術式(いわゆる回直吻合術)が一般に行われて来た.しかし本法の遠隔成績は決して満足すべきものでないことがあきらかとなつて来た.大腸腺腫症に対する回直吻合術(Lockhart-Mummery法)後,直腸癌の発生は年齢と共に高くなり,長期的follow upは一般のクリニックでは不可能といつてよい1).Parksら3)も結腸切除後患者の残存直腸の生涯にわたるケアが難しいことを認めている.

ループ式回腸・直腸(肛門)吻合術

著者: 亀山仁一 ,   星川匡 ,   豊野充 ,   塚本長

ページ範囲:P.1711 - P.1717

はじめに
 大腸全摘術後には回腸瘻造設術が広く行われており,Brook,Turnbullによりこの方法にも改良が加えられてきている.しかし,大腸全摘術を行わなければならない症例は青壮年代に好発する良性疾患であることが多いため,回腸瘻造設例では術後の社会生活の上で,精神的な負担や,肉体的な種々の不便を感じていることも少なくない.このような観点から,症例によつては自然肛門を温存した手術術式が選択される場合も多いようである.しかし,この自然肛門温存術式でも原疾患の根治性,術後の機能,大腸のうちで最も発癌頻度の高い直腸を残すなどの問題がないわけではなく,諸家により種々の術式が試みられているのが現状であろう.今回は,ループ式回腸・直腸(肛門)吻合術という主題について著者らが行つている手術術式を中心に報告する.

回腸肛門造設術式—とくにKock' ileostomy

著者: 小山真 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.1719 - P.1724

はじめに
 潰瘍性大腸炎や家族性ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)など大腸全摘を必要とする疾患に対して永久回腸瘻(回腸肛門)が造設されるが,単に回腸断端を引き出して皮膚に固定する従来の回腸瘻では消化液を含む多量の腸液の流出は人工肛門周辺皮膚の損傷や栄養障害の原因となるほか,常に装具を用いる事が求められるという心理的な障害も大きく,患者の悩みは深刻である.これに対し腸液の失禁を防ぐ手術法が種々検討されて来たが,臨床的に明らかな効果を認められるようなものは1979年Kockの報告になるreservoir or continent ileostomy1)(Kock' ileostomy)までなく,今日では本術式が世界的に広く用いられるようになつている.しかし,これとても完壁なものとは云い難く,改良法が検討される一方,簡便,容易な従来の回腸瘻造設法も広く行われており,その合併症を防ぐための装具の開発,改善が続けられているのが実情である.
 ここでは永久回腸瘻としてのKock' ileostomyについてのべることとするが,回腸痩についての総説としてはG. L. Hillの著書1)が優れており,Kock' ileostomyに関するまとまつた知識を得るにはGoligherの著書3)を参照することを奨めたい.

巻頭言

大腸切除と機能温存

著者: 土屋周二

ページ範囲:P.1664 - P.1665

 大腸切除は良性・悪性の多くの大腸疾患に行われるので,切除の部位・範囲によつては少なからぬ機能障害を招くことがある.これは疾患の性質上止むを得ないこととして一般に容認されており,特に悪性疾患の根治手術では広範な切除・郭清により根治手術の成績を向上させることに主眼がおかれているので,機能障害の問題はいく分あと廻しになつていたと思われる.しかし外科治療にあたつては治療効果を下げない範囲でなるべく術後障害を少なくするようにしなければならないのが原則であり,大腸切除についても,あらためてこの点を重視して考えて行く気運が高まつている.
 この特集でとりあげられているテーマは,大腸切除と機能温存についてである.温存とは大切に保存しておくという意味であるが,大腸の切除が行われる場合,全く機能障害がないように「機能」だけをわきによけて切除することは無理であろう.ここでいう「機能温存」とはどこまで術後成績を下げずに機能障害が防げるか,または機能障害を最少限にとどめることができるかという観点に立つた比較的のものである.そしてこの特集では各専門家によつてこのような目的に沿う手術の適応や手技が開陳されているのである.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・22

小腸平滑筋肉腫

著者: 廣田映五 ,   大坊昌史 ,   板橋正幸 ,   北岡久三 ,   小黒八七郎 ,   山田達哉

ページ範囲:P.1660 - P.1661

 小腸平滑筋肉腫の1例を呈示する.
 症例 71歳,男性

鼎談

炎症性腸疾患の治療方針—内科から外科へ,外科から内科へ

著者: 酒井義浩 ,   小山真 ,   土屋周二

ページ範囲:P.1725 - P.1734

 潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患の治療方針は,それぞれ長い経過を辿る難治性の疾患であるがゆえに治療の現場では,内科と外科でまだまだcontroversyの多いところだといわれる.今回の鼎談では各ご専門の先生にどういう治療法の選択が患者さんにとつてbestなのか,という観点から,どんな時,手術にふみきるか,そしてその術式は,また最近の薬物療法の成績は,など内科,外科の境界をこえてお話し合いいただいた.

原典を繙く・1【新連載】

Dieulafoy潰瘍(その1)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.

著者: 島津久明

ページ範囲:P.1735 - P.1737

 急性大量胃出血を主症状とするDieulafoy潰瘍の症例報告がいろいろな学会や関係誌上に散見されるが,この病変の本態や急性出血性病変のなかにおける位置づけなどに関して,必ずしも十分な理解と統一した見解が得られていないように思われる.この病変の原典であるDieulafoyの論文は,1898年のBulletin de l'Académie Médicale(49:49-84)の誌上に上記の標題のもとに掲載され,その副題に「胃の単純性潰瘍に起因する激烈な吐血における外科手術」とあるように,本文中でも緊急手術の重要性が強調されている.35頁にわたる長文のものであるが,いわゆる原著論文ではなく,ある会合での講演内容がそのまま記録されたもので,最後に聴衆との質疑もつけ加えられている.その全訳はいささか冗長のきらいもあるが,全体が物語調に語られているので,19世紀末のパリの情景を想像しながら比較的気楽な読物として御通読頂ければと思う.なおNew Century Cyclopedia of Names,Vol 1(Barnhart, C. L. 編,1954)と岩波:西洋人名辞典,増補版(1981)によると,Georges Dieulafoy(1839-1911)はトウルーズ生れのフランス内科医で,パリのHôtel-Dieu病院に勤務し,1886年にはパリ大学医学部教授になつている.

文献抄録

組織学的に胞巣状亜型とされた横紋筋肉腫患児における死亡率

著者: 中野美和子

ページ範囲:P.1738 - P.1738

 横紋筋肉腫は,小児固形悪性腫瘍の約8%を占め,その予後は原発巣の部位と組織学的亜型に強く影響される.ここでは,原発部位や治療法よりも大きな予後決定因子となる組織学的亜型,すなわち胞巣状亜型について,Intergroup Rhabdomyosarcoma Study(IRS-I,合衆国横紋筋肉腫集団研究)の集計結果より発表する.
 1972年11月から1978年11月までに,IRS-Iに21歳未満の横紋筋肉腫患児791名が登録され,うち561例が分析・評価可能であつた.これらを臨床像により次の4つに分類すると,グループⅠ:腫瘍を完全切除したもの−86例.グループⅡ:腫瘍を切除したが,近接臓器浸潤・局所リンパ節転移がある,または顕微鏡的に腫瘍残存あるもの−137例.グループⅢ:腫瘍の大部分が残存しているもの−228例.グループⅣ:腫瘍播種−110例,であつた.それぞれに対し,放射線照射と化学療法(VAC, vincristine, actinomycin D, cyclophosphamide)が行われた.

Invitation

第25回日本消化器外科学会総会 見どころ,聴きどころ—Up-to-dateな内容を盛り込む

著者: 土屋周二

ページ範囲:P.1739 - P.1740

はじめに
 このたび,第25回日本消化器外科学会総会が開催されるにあたり,私どもの教室で御世話させて頂くことになりました.御承知の通り,本学会は昭和43年に発足し,第1回は当地横浜市で私の前任者の山岸三木雄先生が会長で開かれております.その頃に比べて会員数も著しく増加し,研究領域も格段に広がつておりますが,当時の困難な状況下にありながら,理想に燃えて本学会の創立にあたられた先輩諸先生の御教示をふりかえりながら,実り多い学術集会にしたいと念願いたしております.
 消化器外科学は外科学のなかでもこれにたずさわるものがもつとも多い分野であり,関係諸科学の進歩と相まつて基礎的・応用的研究が思いがけなく多岐に亘つて発展しております.従つて1〜2年前の新説や新技術は,今日ではどこにも流布し,実行されているような状況で,これらを早急に日常の研究,診療にとりいれて行くことが要請されています.私どもは今回の総会がこのためにもできるだけ有用なものとなるよう計画した心算ですが,足りない点についていろいろ御忠告があれば御伝え下されば幸と思つております.以下,「臨床外科」読者諸賢のために学会の見どころ,聴きどころといつた点を御紹介申上げたく思います.

画像診断 What sign?

胆嚢壁内ガス

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1743 - P.1743

 急性気腫性胆嚢炎acute emphysematous cholecys—titisは比較的稀な疾患であるが,その特徴的な所見より単純X線像から術前診断が可能である.病因としては胆嚢壁の虚血およびガス産生菌の浸入が挙げられ,多く糖尿病患者に合併することが知られている1).通常の急性胆嚢炎に比べ胆嚢壊死をおこす確率が高く,このことから多くの場合,緊急手術の適応となる.腹部単純X線像では胆嚢腔および胆嚢壁内に異常ガスを認め,胆嚢内に液面形成をみることもある.
 超音波所見としては胆嚢床に気腫による音響陰影を伴つた強い弧状のエコーを認める2)

腹部エコー像のPitfall・5

膵腫瘤?

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.1745 - P.1747

この患者の診断は?
症例:80歳,女性
 生来健康.5年前糖尿病にて近医通院中,上腹部腫瘤指摘されるも放置.最近腹痛および食後の嘔気出現のため来院.理学的には,心窩部正中やや右側に手拳大の腫瘤触知.表面は凹凸不整硬く可動性良好.図1,2にエコー像を示す.

Review

直腸癌の診断および手術手技からみた問題点

著者: 卜部美代志 ,   龍村俊樹

ページ範囲:P.1749 - P.1756

はじめに
 大腸癌の診断および治療方針は,癌の占居部位によりかなり異なつている.ここでは主として直腸癌をとりあげ,その特徴について述べる.
 本邦における最近の食生活の欧米化に伴つて,大腸癌の発生率が増加の傾向を辿りつつあり,そのうち直腸癌が約半数を占めている.直腸癌は,その局所解剖において,またリンパ行性および血行性転移の上で特色があり,それらに対する術前診断,治療方針などにおいて,なお検討すべき問題点が少なくない.

臨床研究

超音波による胸骨旁リンパ節転移の描出

著者: 霞富士雄 ,   渡辺進 ,   深見敦夫 ,   梶谷鐶 ,   佐久間浩 ,   藤井祐次 ,   長崎厚子 ,   菊田和子 ,   坂井美栄子

ページ範囲:P.1757 - P.1763

はじめに
 胸骨旁リンパ節の検査としては,血管造影,シンチグラフィー1-3),CT等4)があるが,これらが一般化しない理由はひとえに診断能の低さにある.超音波による検査は電子スキャン法の出現以前から行われていたが,分解能の悪さと肋骨による音響陰影に禍されて臨床家の注目を引かなかつた.しかし従来のメカニカルスキャン法に電子スキャン法が加わり,装置が改良され,特に高振動数の探触子が開発されるにおよんで,胸骨旁リンパ節の描出が可能となつてきた.著者は1984年9月までに,139例の検査を行い,そのうち33例に組織学的検査を施行しえたが,診断成績は良好と言えないまでも,症例によつてはリンパ節転移が明確に診断される場合があつて,手術をはじめとする治療方針の決定に役立つ事が判明したので,著者の方法,成績を中心に述べる.

臨床報告

迷切兼分節胃体部切除術後にみられた残胃初発癌の1例

著者: 岩下俊光 ,   榊原幸雄

ページ範囲:P.1765 - P.1769

はじめに
 残胃初発癌について関心が払われているが,迷走神経切離術(以下,迷切と略す)後にみられた症例の報告は少ない.
 われわれは,いわゆる高位胃潰瘍に対する選択的迷切+分節胃体部切除+幽門形成術の施行後,8年目に残胃に癌腫の発生をみた1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

胆嚢捻転症の1治験例

著者: 田中章一 ,   丹山桂 ,   安武俊輔 ,   藤井康宏

ページ範囲:P.1771 - P.1773

はじめに
 胆嚢捻転症は緊急を要する比較的稀な外科的胆嚢疾患であるが,その術前診断はきわめて困難である.最近,われわれは82歳男性の胆嚢捻転症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

先天性総胆管嚢胞壁にみられた異所性膵組織の1例

著者: 太田哲生 ,   小西孝司 ,   竹下八洲男 ,   小西一朗 ,   秋山高儀 ,   永川宅和 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1775 - P.1778

はじめに
 著者らは,先天性総胆管嚢胞壁にみられた異所性膵組織の1例を経験したので,症例の概要を報告するとともに,若干の文献的考察を加えてみた.

好酸性リンパ濾胞様肉芽腫の2症例

著者: 斉藤功 ,   佐々木純 ,   渡辺正敏 ,   旭博史 ,   小川漿 ,   森昌造

ページ範囲:P.1779 - P.1781

はじめに
 皮下軟部組織の腫瘤形成と末梢血の好酸球増多症があり,軟部組織の好酸球リンパ濾胞様肉芽腫(木村病1))と思われる2症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

後腹膜に発生した巨大な悪性線維性組織球腫の1例

著者: 鈴木裕之 ,   下間信彦 ,   山崎泰男 ,   佐藤康満 ,   栗谷義樹 ,   高野一彦

ページ範囲:P.1783 - P.1786

はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma以下MFHと略す)は,軟部組織に好発する組織球に由来する腫瘍であるが,後腹膜に発生する頻度は少ないとされている.今回,われわれは後腹膜に原発した巨大なMFHを経験したので報告する.

腸チフス菌が胆汁中に検出された胆嚢癌の1例

著者: 鈴木紳一郎 ,   吉田明 ,   熊本吉一 ,   天野富薫 ,   松本昭彦 ,   桔梗辰三 ,   五島英迪

ページ範囲:P.1787 - P.1789

はじめに
 Mirizzi症候群を呈し,胆嚢内に腸チフス菌が証明された胆嚢癌症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

胆嚢結石を合併したDubin-Johnson症候群の1手術例

著者: 塚本拓司 ,   米山桂八 ,   固武健二郎 ,   宮田潤一 ,   芳賀佳之 ,   林亨 ,   大野秦司

ページ範囲:P.1791 - P.1794

はじめに
 Dubin-Johnson症候群は,肝細胞内での抱合型ビリルビン排泄障害のために,高ビリルビン血症をきたす先天性疾患である.本邦では1970年より1974年までに298例の報告があるが1),本症に対する手術施行例の報告は多くはない.今回われわれは,胆嚢結石を合併した本症に手術を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

外科医の工夫

中心静脈カテーテルの体内断裂—挿入時の外套針によるカテーテル損傷について

著者: 関根智之 ,   大久保正 ,   桜田徹 ,   熱海裕之 ,   星野良平 ,   阿部忠昭

ページ範囲:P.1795 - P.1796

はじめに
 近年,栄養管理や術後血行動態管理などの目的で中心静脈カテーテルを挿入する機会が多い.それに伴い,多種類の中心静脈カテーテル・セットが市販利用されている.今回,われわれは皮静脈より挿入できるタイプのカテーテルを用い,挿入時のカテーテル損傷に起因すると考えられる体内断裂を経験したので報告するとともに,取り扱い上の注意をうながすものである.

外頸静脈穿刺によるIVHカテーテル挿入法

著者: 宮崎要 ,   森下薫 ,   金丸洋 ,   上辻祥隆 ,   倉光秀麿 ,   織畑秀夫

ページ範囲:P.1797 - P.1800

はじめに
 最近,中心静脈高カロリー輸液法(以下IVH)が大いに普及し,その静脈穿刺手技については,より安全で確実な方法をめざして種々のアプローチが考案されてきている.中でも鎖骨下静脈穿刺法や内頸静脈穿刺法あるいはソーレンソンチューブを用いた肘静脈穿刺法1)などが一般的である.われわれは従来あまり報告されていない外頸静脈穿刺によるIVHカテーテル挿入法を試みた結果,安全性が高く,患者への侵襲も非常に小さくてすむという結果を得たので,その手技の要点および長所,短所などについて考察を加え報告する.

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「臨床外科」第39巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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