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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科39巻2号

1984年02月発行

雑誌目次

特集 がんの集学的治療をどうするか 食道癌

基調論文

著者: 磯野可一

ページ範囲:P.161 - P.166

はじめに
 今日,食道癌に対する治療法としては,手術,放射線,免疫化学療法があげられよう.そして,この内の第一選択として,先ず,原則的には手術が選ばれることにも異論がないものと思われる.(無論,患者の状態,癌の進行状態などにより,個々の症例によって異なることは論をまたない.)
 そして,実際に食道癌を手術し,その術後経過を追跡して行く症例が増加するにつれて,いかに手術のみでは,非力であるかが痛感させられる.

コメント

著者: 掛川暉夫

ページ範囲:P.167 - P.169

 食道癌治療に対して集学的治療が如何に大切であるか,また特に予防的集学治療が重要であるか.そして如何なる手段によりその効果をよりよくすべきであるか,さらにはその具体的手段にまで言及した磯野氏の論文に全面的に賛意を表わすとともに,その努力に深い感銘を受けた次第である.しかし食道癌の治療に関しては現在,治療の主体となつている外科治療を含め集学的治療は多種多様であり,定説はない.永年この分野に従事しているものの一人としてささやかな私見を含め,治療上の問題点をあげ,最大公約数的な見地より効果が挙げられていると思われる治療法を述べることによりコメントに代えさせて貰う.
 食道癌の切除剖検例約100例の再発形式に関するわれわれの検討によると,リンパ節転移によるものが最も多く,次いで局所再発(外膜遺残),血行性転移,胸腹膜播種,断端遺残の順であつた.したがつて食道癌の治療成績を向上させるためにはまずリンパ節転移,次いで局所再発に対する対策が重要となり,集学的治療もまずこれらが対象とされることは周知のところである.

コメント

著者: 飯塚紀文

ページ範囲:P.170 - P.171

集学的治療とは
 がんに対する集学的治療という言葉が最近良く使われている.multidisciplinary treatmentに対応する用語であるが,この言葉の本来の意味は"多くの専門にわたる治療"ということである.従つて2つの治療法を組み合わせたから,ただちに集学的治療ということにはならない.異なつた専門領域の者が知識を出し合つて組みたてられた治療法を指すべきであろう.結果的には同じものとなるかも知れないが,単なる合併療法とは異なつた次元で考えられるべきものであろう.
 食道癌は現在でも診断される時点において進行癌が圧倒的に多く,外科手術または放射線治療単独で治癒する可能性は非常に少ない.従つて多くの治療の専門領域の英知を出し合つた集学的治療の対象として第一にあげられる疾患である.

肝臓癌

基調論文

著者: 山崎晋 ,   長谷川博 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.173 - P.178

はじめに
 原発性肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma,以下HCCと略す)は,わが国においては癌の死亡者数で男子の第3位を占めるほど,社会的需要は多いにもかかわらず,その治療成績は,はなはだ不満足である.その理由を思い付くままに挙げてみると,まずHCCは発見が容易でないことが挙げられる.近年肝硬変や肝炎はHCCの発生母地であるとの認識が普及し,これらの疾患のfollow up中に比較的小型のHCCが発見されることが珍しくなつてきたとはいえ,各地のセンター的レベルの施設で,しかも肝臓学の専門家によつてななされているのであつて,まだまだ全体をみると進行した段階で見付けられるHCCが多い.次にはHCCの主たる進展形式が,門脈を始めとする脈管への浸潤,すなわち血行性転移であるため,癌は容易に拡散した状態になり,肝切除を始めとする"局所療法"の適応を越えたものが多いこと.さらにわが国のHCCの大部分は肝硬変に合併しているという事実が挙げられる.
 肝硬変自体が予後の悪い疾患であるし,短期的にみても外科侵襲に極めて弱く,この面からの治療上の制約もある.しかしながらこのような不利な条件が多いなかでHCC治療の努力が積み重ねられてきており,一昔前とは格段の相違がある.われわれ外科医の立場からは,10年まえは単に「肝切除をした」というだけで偉業であり,予後を云々して評価するような事はなかつた.

コメント

著者: 菅原克彦

ページ範囲:P.179 - P.181

 癌治療法は手術療法,放射線療法,化学療法が主流で,免疫療法,内分泌療法は現在のところ脇役的であるが,厳格な適応の下ではそれぞれ治療効果がみられている.しかしながら,それぞれの効果には限界があるので合併療法が行われたが,さらに癌患者を治療する立場から集学的治療法があらためて提唱されるようになつた.すなわち各分野の専門家が一体となつて各診療科に独自の治療法の限界を克服する方法で,心療面の配慮も強調された総合的治療法であり,そのためには基本的治療法の確立のみならず診療組織の体系化が重要である.進行するに従い複雑に変化する癌と担癌生体の病態に適合した治療法を巧みに選択し,しも単独の治療法よりすぐれた効果が立証されねばならない.
 原発性肝細胞癌(以下肝癌と略)に対する治療法は手術療法,動脈を介した治療法(肝動脈結紮,カテーテルを用いた塞栓療法),門脈枝結紮療法,化学療法,放射線療法があり,肝癌の病期と病態に応じた適応の下に肝臓という臓器特異性を考慮して選択され,それぞれ効果が認められてきた.切除療法単独の効果は長期生存例が報告され主流であることに疑いはないが,適応が制限されるため限界があるので,他の治療法の長所を組み入れた集学的治療法が当然ながら導入されるべきであり,この点,消化器癌でも他の管腔臓器癌の治療と趣を異にしている.

コメント

著者: 岡本英三

ページ範囲:P.182 - P.183

 国立がんセンター・肝臓グループは臨床・研究でも優れているが,キャッチフレーズ・メーカーとしても優れたものがある.肝区域のサクランボ理論,生血漿療法のオドリ療法などである.今回山崎らの基調論文を拝見し,またまた新しいキャッチフレーズが生れた感が深い.「肝癌治療は肝硬変治療の一環である」は肝癌治療のおかれた特殊な環境を言い表わして妙である.
 肝硬変治療は元来内科医の手にゆだねられて来た.経過中に肝癌を併発,あるいは静脈瘤出血を来たすと外科へ送られて来たが終局に近いことを意味した.10年前までは肝を切るだけで確かに「偉業」であつた.とても遠隔成績まで言々できる所ではなかつた.ところがTAEの出現は肝癌治療に大きいセンセイションを引起こした.山田1)は肝癌研究会の全国集計をもとに,TAEの遠隔成績は「切除不能?」の肝癌ばかりを治療対象としているのに,肝切除成績よりも良好であると度々発表した.肝癌は外科へ送るべきか放射線科へ送るべきかと内科医を真剣に悩ませるに至つた.

乳癌

基調論文

著者: 榎本耕治 ,   池田正 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.185 - P.192

はじめに
 乳癌は同一組織型においても,それを構成する個々の癌細胞の生物学的動態は一様でない.それに対応して,治療も単独治療よりも多剤併用さらに集学的治療が必要であることが,ホルモン受容体の測定の結果,抗体の染色,細胞動態的研究及び実際の治療への反応等から裏付けられている.進行・再発乳癌の治療として,従来内分泌治療,化学療法,照射療法,免疫療法が行われているが,如何なる症例に如何なる組合せで,どの順序で行うのが最も合理的か検討されねばならない.

コメント

著者: 野村雍夫

ページ範囲:P.193 - P.195

 癌のいわゆる集学的治療を行う場合,組合せる2つ以上の治療法は,1つの手段が直接的には無効でも他の治療の効果を格段に上昇させるような場合を除いて,それぞれがその癌に対してある程度有効であることが必要であろう.今回は,乳癌の集学的治療を構成すると考えられる多くの治療法のうち,内分泌療法と化学療法の組合せに限つて論議を行いたい.
 乳癌の内分泌療法はどのような種類でもほぼ1/3に有効であり,有効持続期間は約1年である.乳癌のestrogen receptor(ER)を測定することにより,ER(+)乳癌50〜60%,ER(-)5〜10%の有効率の差があるため,主として内分泌療法に無効の症例を選択することができる.同様に広範囲な肝転移,脳転移,performance statusの悪い例,閉経期例,前治療に反応しなかつた例なども経験的に内分泌療法が無効であることがわかつている.しかし,これらの選択基準により内分泌療法に比較的効果のある群を選ぶことはできても,全体の有効率を上昇させるわけではない.一方,化学療法ことにadriamycinを含んだ2剤ないし3剤の多剤併用化学療法により再発進行乳癌で50〜60%の有効率が得られるが,有効期間の中央値はせいぜい数カ月である.4剤以上に増加しても,有効率,有効期間は増加しない.

コメント

著者: 冨永健

ページ範囲:P.196 - P.197

 乳癌に対する治療法について論述する場合,まず乳癌のもつ性格を十分把握した上でなければそれは不可能である.榎本論文は,この点について乳癌の再発転移状況をまず自験例を参考に実態を検討し,これら再発および進行乳癌に対する各種治療法とその成績を示している.それに加えて各種治療法の基礎的研究の結果を引用して,臨床例における各種治療法を組合せたいわゆる集学的治療の現在までの成果と将来の展望を記述している.
 Fisherは「乳癌はprimary caseであつてもその腫瘤径が1cm以上であればもはやadvanced stageと考えるべきである」と記述しているが,欧米人における乳癌が,日本人のそれよりも予後が比較的悪いということを考えに入れたとしても,乳癌の治療にたずさわる医師にとつて念頭におくべき事柄であると思う.ましてやStage Ⅱ,Ⅲの乳癌症例ともなれば,その5〜10年生存率から考えて当然全身疾患として取扱つても行き過ぎではないと考えられる.さらに近年,両側乳癌やmulticentricな乳癌がかなり多くみられるようになつてきていることもその考えを別の意味で支持するものである.

悪性軟部腫瘍

基調論文

著者: 梅田透 ,   高田典彦 ,   保高英二 ,   遠藤富士乗 ,   石井猛

ページ範囲:P.199 - P.207

はじめに
 悪性軟部腫瘍は全悪性腫瘍の0.7%とその発生頻度は少なく1),かつ組織型が多彩でその亜型も多く,病理組織診断の確定が難しいことなどの特徴を有している.さらに四肢のみならず全身にわたり発生するため,日常診療では一般臨床医,他科においても治療されることが多く,しばしば安易な単純切除手術のみが初回手術として行われ,局所再発,遠隔転移をきたし悲惨な結果を招来することもみられる.
 一般に悪性軟部腫瘍の予後はその腫瘍の組織学的悪性度のみならず全身的化学療法,放射線療法,とりわけ局所の外科的治療を中心とした初期治療に左右されるといわれているだけに,その診断と治療には十分な知識と経験をもち行わねばならないと考える.以下,自験例を中心に特に四肢発生の悪性軟部腫瘍の診断と治療について述べる.

コメント

著者: 田中清介

ページ範囲:P.208 - P.210

 近年,悪性骨・軟部腫瘍の治療は化学療法をはじめとする治療法の進歩により大きく変つた.悪性軟部腫瘍の治療において,今日では古典的ともなつた単純摘出術や切・離断術の3〜5年の生存率は約40%にすぎなかつたが,その後外科的療法をとりあげても腫瘍の大きさ,拡がり,悪性度によつて術式を変える方式がとられるようになつただけでなく,この方式による手術的療法に化学療法や放射線療法を併用した集学的治療がとられるようになり,その3〜5年の生存率は90%をこえるようになつた.集学的治療の向上により,四肢においては悪性軟部腫瘍だけでなく悪性骨腫瘍においても,患肢を単に切・離断することなく温存して機能を残す方法がとられるようになつた.われわれがこの患肢温存(limb salvage,limb saving or limb sparing)をはじめた頃は一般にはまだ受け入れられなかつたが,その後,内外での患肢温存療法の報告が増えてきている.ここでは現在行われている悪性軟部腫瘍の集学的治療について簡単にまとめてみたい.ただし,予後(局所再発,遠隔転移,生存率)については紙数の点で割愛する.

コメント

著者: 大野藤吾

ページ範囲:P.211 - P.212

 悪性軟部腫瘍105例の自験例にもとづく貴重な論文であるが,著者らの骨軟部腫瘍に対する日頃からのたゆまぬ研鑚には,常々,敬服している者の一人である.
 今回,この論文を読ませていただきましたが,2,3の点に関して私の意見を述べたいと思う.

悪性リンパ腫

基調論文

著者: 小堀鷗一郎

ページ範囲:P.215 - P.220

はじめに
 悪性リンパ腫はリンパ節原発と考えられるものとリンパ節以外の臓器が原発巣と考えられる節外性悪性リンパ腫とに分類しうる.いうまでもなく個々の症例についてこの2型を明確に区別することは容易でない場合も多く,また節外性悪性リンンパ腫として発症した症例がその経過中に全身性のリンパ節性進展を示すことも稀でない.従つて悪性リンパ腫における節外性の頻度についての諸家の報告は10%〜48%とまちまちであり1-4),また最近のNCIの総計5,6)のように両者を区別することなく論じている報告もしばしばみうけるのが現状である.
 しかしながら一方,節外性悪性リンパ腫にはリンパ節原発のものとは異なる生物学的性格がみとめられることも指摘されており7),またわれわれ外科医が扱う症例はほとんどが節外性悪性リンパ腫にかぎられるところからここでは節外性悪性リンパ腫症例(以後単に悪性リンパ腫と記す),とくに消化管原発症例についていくつかの問題点を明らかにしたい.

コメント

著者: 服部孝雄

ページ範囲:P.221 - P.222

 基調論文を通読してまず気のつくことは,本論文の内容が,悪性リンパ腫の集学的治療からはずいぶん離れており,むしろ悪性リンパ腫の中でも節外性悪性リンパ腫の病態をのべた形になつていることである.しかし考えてみると,外科医が悪性リンパ腫というテーマで集学的治療の綜説を要求されれば,誰がかいても大体こんな形になるのではないだろうか.本特集で食道がん,肝がん,乳がんなどとならんで,何故悪性リンパ腫をとりあげたのか,編集の方にむしろ問題があつたのではなろうかという率直な疑問が残る.
 そのことはさておき,筆者に与えられたテーマはこの基調論文に対するコメントである.特集のテーマが特に節外性とことわつていない限り,悪性リンパ腫一般についての集学的治療を論ずるのが筋と思われるので,ここでは基調論文が全くふれていないリンパ節原発の通常みられる悪性リンパ腫に対する,集学的治療の現状を紹介して基調論文に対するコメントに代えたい.

コメント

著者: 西満正 ,   吉中平次

ページ範囲:P.223 - P.226

小堀論文の小括
 著者は悪性リンパ腫61例の東大第1外科症例のうち,胃原発の20例,腸管原発の10例について検討し,再発例,他臓器原発悪性リンパ腫との重複が多いことなどから集学的治療法の必要性を述べている.胃に先行するWaldeyer輪の悪性リンパ腫が6例も報告されているのは興味ぶかい.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・13

肝細胞癌—TAE+肝切除

著者: 広橋説雄 ,   岸紀代三 ,   幕内雅敏 ,   山崎晋 ,   長谷川博 ,   高安腎一 ,   森山紀之

ページ範囲:P.158 - P.159

 肝細胞癌に対する集学的治療法として,Transcatheter Arterial Embolization(TAE)と肝切除の併用が行われている.
 症例(0-27529)56歳,男性.

文献抄録

手術患者におけるアミノ酸輸液に対する順応

著者: 松井淳一 ,   相川直樹

ページ範囲:P.229 - P.229

 1973年,Blackburnらは,ブドウ糖を含まないアミノ酸単独輸液が,血中インスリンを低下させ,内因性脂肪の動員を増加し,窒素平衡を改善することを示した.これに対し,その後の研究では,アミノ酸輸液によるprotein sparing effectは,ケトーシスに無関係であり,ケトーシスは,ストレスの程度とアミノ酸投与量に影響されることが示された.今回,末梢静脈よりアミノ酸輸液を行つた患者において尿中ケトン体を測定し,窒素平衡との関連を検討した.

世界の手術室・2

フィリッピン・マニラMedical Center Manilaの手術室

著者: 隅田幸男

ページ範囲:P.231 - P.233

 東南アジアの病院の近代的な手術室例としてマニラをとりあげてみた.
 Medical Center Manilaは,マニラ市では最もモダーンな病院の一つである.その周辺にはフィリッピン大学医学部,フィリッピン総合病院,外務省,裁判所などが集つておりマニラ市の文化,行政の中心に位置している.この病院の概要を述べておくことは今後の本邦の医療のために有意義と思われる.

画像診断 What sign?

"Coffee-bean" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.237 - P.237

 絞扼を起こした腸係蹄は拡張した輸入脚と輸出脚が相接することによりコーヒー豆に類似した形態を呈することがあり,"coffee-bean"signと称される1).この時コーヒー豆の外側沿と,中央の厚い線は絞扼部に向かつて収斂する(図1).この所見は小腸の絞扼性閉塞でも大腸の絞扼性閉塞でもみられるが,S字状結腸軸捻の際に最も頻繁に観察される.S字状結腸軸捻は主として高年齢者にみられ,S字状結腸間膜付着部を軸として比較的可動域の広いS字状結腸が捻転を起こすことにより発症する.捻転の程度は360°が過半数を占めるが,180°あるいは540°のものなどもみられる.S字状結腸の拡張の程度は下腹部に停るものから横隔膜を肺門付近にまで挙上させるような巨大なものまでみられる(図2,3).口側の結腸にも拡張像がみられ,また血流障害の著しい症例ではS字状結腸の壁内ガス,腹腔内遊離ガス,腹膜炎に伴う腹水などの所見を呈する場合もある.

外科医のためのマイコン・ガイド・6

—"外科医のための統計学"(37巻1号〜8号掲載)にアタックする—1.分布状態,χ2検定,相関関係間接法

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.239 - P.249

はじめに
 マイコン用の統計処理パッケージが市販され,関数電卓も安価になつた今日,今更,統計用プログラムを組む必要はないと思われているようだ.しかし,そういう既製品(ソフト)には規制が多いと嘆く外科医もいる.データ数や群の制限があつたり.プログラムの拡張ができなかつたり,特殊操作などがあつて,なかなか自分の意とする統計処理ができない.そこで,本講座の目的である"マイコンを自分の頭脳代用器"とするためにも,自己流のプログラムを開発したいものである.ここでは,2年前に本誌に連載されて好評であつた草間・杉田の「外科医のための統計学」に準じてプログラムを組んでみる.従つて統計学的な内容については本誌第37巻1号〜8号を再読して頂くことにして,当シリーズではプログラムの組み方を紹介する.今回からグラフィック処理やデータの処理法が出てくるのでマイコン中級編ということになるだろう.

外科医の工夫

消化器外科領域における術後疼痛に対する硬膜外モルヒネ注入法の経験

著者: 山本俊二 ,   壺井和彦 ,   中島芳郎

ページ範囲:P.251 - P.254

はじめに
 硬膜外腔への微量のモルヒネ注入法1)が,術後疼痛対策として,現在多くの施設で施行されているが,塩酸モルヒネの注入量,溶媒の種類およびその量,注入時間,注入回数およびその投与間隔等について適正と思われるものが未だ決定されていない現状である.
 今回われわれは,消化器外科領域における術後疼痛に対して,手術後第3病日までの鎮痛を目的として,術後病棟に帰室時,術後12時間後,術後24時間後,術後36間後の計4回にわたり,患者の疼痛の訴えの有無にかかわらず,塩酸モルヒネ2mgを生理的食塩水10mlに溶解して持続硬膜外カテーテルより注入して,良好な鎮痛効果を得たので報告する.

臨床研究

乳腺疾患の診断—視触診,乳房撮影,超音波像と組織診断

著者: 山本泰久 ,   岩藤真治 ,   酒井邦彦 ,   石原清宏 ,   庄達夫 ,   田口忠宏 ,   浦上育典

ページ範囲:P.255 - P.260

はじめに
 乳癌の発生率は生活様式の欧米化が進むにつれて高くなつているが,同様に死亡数の増加も著しい.乳癌の予後は腫瘍径1cm以下の10生率90.6%,1.1〜2cm76.5%となつており1,2),小さいうちに発見されたものほど予後がよいことは,他の悪性腫瘍と同様で,1cm以下の小さい乳癌を確診するための努力が必要となつてくる.
 乳房内の腫瘍を自己検診で発見する場合,1〜3cmのものが最も多いが,10年前は平均3cmといわれていた.3cmの乳癌のリンパ節転移率は約40%であり1,2),5生率,10生率も決して良いとはいえない.10年以前に外科医が取り扱う患者の多くは,このような症例であつたが,最近の乳癌検診活動や自己検診法の普及などで,小さい乳腺腫瘍を診断する機会が多くなつている.触診で発見できる腫瘍は,日本人の平均的乳房では,5mm前後,大きい乳房では1cm位と考えられるが,1cm径のものが大きい乳房の深部にある場合,触診だけによる診断は容易ではない.

臨床報告

頸部迷走神経に発生した神経鞘腫の1例

著者: 三木仁司 ,   斉藤圭治 ,   小柴康 ,   高谷信行 ,   六田暉朗 ,   山下恭治 ,   露口勝 ,   原田邦彦

ページ範囲:P.261 - P.264

はじめに
 頸部迷走神経に発生する神経鞘腫は稀である.最近われわれは,左頸部迷走神経より発生した本腫瘍の1例を経験したので報告する.また本症の本邦報告例を集計し,若干の文献的考察をも加えた.

食道に原発したleiomyoblastomaの1例

著者: 膳所憲二 ,   川崎雄三 ,   末永博 ,   田辺元 ,   吉中平次 ,   福元俊孝 ,   松野正宏 ,   丸田憲三 ,   吉井紘興 ,   加治佐隆 ,   西満正 ,   田中貞夫

ページ範囲:P.265 - P.268

はじめに
 1960年Martin1)らが核周囲に空胞(透明帯)を有する特異な形態を示す胃腫瘍をmyoid tumorとして初めて記載した.ついで1962年にStout2)は,平滑筋腫,平滑筋肉腫,脂肪肉腫,glomus tumor,hemangioperi—cytomaなど多くの名称で報告された胃筋原性腫瘍69例を検討し,その細胞形態,悪性度などより,それら一群の腫瘍を"bizzare leiomyoblastoma"と呼ぶことを提唱した.本腫瘍の最大の特徴は,光顕像で比較的大型の円形腫瘍細胞がびまん性に増殖し,核周囲に空胞(透明帯)を有することである.本邦においても胃原発のものはわれわれの集計した限りでは105例ある.しかし食道に原発したものは極めて稀で,自験例を含めて本邦で2例,欧米で5例をみるにすぎない.今回われわれは虫垂炎術後の腹壁膿瘍の治療中に食道・胃透視を施行し,偶然に発見しえた本腫瘍を経験したので報告する.

特異な組織像を呈した巨大な胃の過形成ポリープの1例

著者: 太田哲生 ,   滝田佳夫 ,   米村豊 ,   宮崎逸夫 ,   吉光外宏 ,   河原栄 ,   勝田省吾

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに
 著者らは,特異な組織像を呈した巨大な胃良性ポリープの1例を経験したので,症例の概要を報告するとともに,病理組織学的に検討し若干の考察を加えてみた.

腹部大動脈瘤および大腿動脈瘤を合併したvasculo-Behçet病の1例

著者: 古賀正哲 ,   森下靖雄 ,   湯田敏行 ,   平明

ページ範囲:P.275 - P.277

はじめに
 最近,不全型Behçet病に腹部大動脈瘤および右大腿動脈瘤を合併した,いわゆるvasculo-Behçet病の手術症例を経験したので報告する.

Adenomaより発生したと考えられる早期胆嚢癌の1自験例

著者: 小海康夫 ,   戸張雅晴 ,   伊藤誠司 ,   須藤眞 ,   小舘昭示 ,   西沢諒一

ページ範囲:P.279 - P.281

はじめに
 胆嚢癌の治療成績は他の消化器癌にくらべ極めて不良である.治療成績向上のためには早期診断ならびに適切な根治術の確立が必要である.
 最近われわれは,糖尿病にて入院中胆石を合併した胆嚢内隆起性病変と診断し,胆嚢摘出術を施行,組織学的に腺腫より発生したと考えられる早期胆嚢癌であつた症例を経験したのでここに報告する.

ガス壊疽の1例

著者: 佐々木寿昭 ,   深田民人 ,   野坂収作 ,   瀬谷斉 ,   北岡宇一 ,   吉野保之

ページ範囲:P.283 - P.286

はじめに
 ガス壊疽は平時には稀な感染症であり,戦傷により多発することが知られているが,近年交通事故や労働災害による外傷の重篤化につれ次第にその報告も増加してきている1-3).今回われわれは,ガス壊疽中毒症をきたし,種々の治療にもかかわらず死に至つた1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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