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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻2号

1984年02月発行

文献概要

特集 がんの集学的治療をどうするか 乳癌

コメント

著者: 野村雍夫1

所属機関: 1国立病院九州がんセンター

ページ範囲:P.193 - P.195

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 癌のいわゆる集学的治療を行う場合,組合せる2つ以上の治療法は,1つの手段が直接的には無効でも他の治療の効果を格段に上昇させるような場合を除いて,それぞれがその癌に対してある程度有効であることが必要であろう.今回は,乳癌の集学的治療を構成すると考えられる多くの治療法のうち,内分泌療法と化学療法の組合せに限つて論議を行いたい.
 乳癌の内分泌療法はどのような種類でもほぼ1/3に有効であり,有効持続期間は約1年である.乳癌のestrogen receptor(ER)を測定することにより,ER(+)乳癌50〜60%,ER(-)5〜10%の有効率の差があるため,主として内分泌療法に無効の症例を選択することができる.同様に広範囲な肝転移,脳転移,performance statusの悪い例,閉経期例,前治療に反応しなかつた例なども経験的に内分泌療法が無効であることがわかつている.しかし,これらの選択基準により内分泌療法に比較的効果のある群を選ぶことはできても,全体の有効率を上昇させるわけではない.一方,化学療法ことにadriamycinを含んだ2剤ないし3剤の多剤併用化学療法により再発進行乳癌で50〜60%の有効率が得られるが,有効期間の中央値はせいぜい数カ月である.4剤以上に増加しても,有効率,有効期間は増加しない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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