文献詳細
特集 外科感染症と免疫
肝切除後の免疫不全と感染—とくに細網内皮系の変化とその対策
著者: 平澤博之1 大竹喜雄1 小林進1 田畑陽一郎1 小林弘忠1 大川昌権1 添田耕司1 織田成人1 室谷典義1 竜崇正1 小高通夫1 佐藤博1
所属機関: 1千葉大学医学部第2外科
ページ範囲:P.331 - P.336
文献概要
いうまでもなく感染症は,宿主側の自己防御機構と細菌(またはウイルス)の力関係において,細菌側が相対的に優位に立つた条件下で発症して来るものであり,最近は自己防御機構の低下にもとづく感染症が注目されている.われわれは自己防御機構を,細胞性免疫,液性免疫,食菌系,補体系の4 componentに分け検討し,skin test an—ergyで示される細胞性免疫の低下1,2),および食菌系のうち,細網内皮系(reticuloendothelial sys—tem,RES)貪食能の低下2-4)が術後感染症の発生に大きく関与していることを発表して来た.
なかでもRESは,その主要部分が肝Kupffer細胞よりなり,図1に示すごとく,血液(とくに門脈血)中より細菌やtoxinを除去する役を担つている.したがつてその機能低下は,これら細菌やtoxinの全身循環を許すこととなり,いわゆるspillover現象を招来し,感染の発症や増悪,ならびに重症感染症に続発する多臓器不全(multipleorgan failure,MOF)発症の原因となつている4-7).
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