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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻3号

1984年03月発行

臨床研究

門脈バイパス用カテーテル(アンスロン®)の作製と臨床治験成績

著者: 中尾昭公1 野浪敏明1 原田明生1 加納忠行1 末永昌宏1 堀沢増雅1 近藤達平1 川瀬静雄2 長岡昭二2 森有一2

所属機関: 1名古屋大学医学部第2外科 2東レ基礎研究所

ページ範囲:P.383 - P.389

文献概要

はじめに
 門脈は主として腸管,膵,脾からの血液を集め肝へ流入する静脈であり,その血流量は800〜1,000ml/分にも及ぶ.一般に動物では急性に門脈を遮断すると早期にショックに陥り死亡する1-5).そのため安全な門脈遮断法の確立は肝胆道系手術において長年,外科医の懸案であつた.とくに肝胆道外科において膵癌は発見時には門脈浸潤を伴つていることが多く,門脈浸潤を伴う膵癌は一般に切除不能とされてきた.そのため膵癌の切除率は極めて低く,予後も極めて悪い6)
 従来,門脈を切除するためには一時的に門脈を遮断し,10〜20分という時間的制約の中で切除再建がなされてきた7-9).しかし,門脈遮断時間が延長すると腸管のうつ血や出血が高度となり,消化管は非可逆性変化へと至り壊死する10,11).安全な門脈遮断法として門脈血を体循環へ流すことが考えられ,門脈下大静脈吻合12)とか,カテーテルによるバイパス13-15)が考慮されるが,通常使用されているカテーテルは血栓を早期に形成し16),その目的を達しない,もし全身をヘパリン化すればこれらのカテーテルによるバイパスも可能であるが,全身ヘパリン化は出血傾向を招き,手術時にはこれらの方法は不可能である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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