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特集 臓器移植の最前線
骨髄移植の現況と展望—特に進行固形癌に対する大量化学療法の支持療法として
著者: 隅田幸男1 森重福美2 桂義元3
所属機関: 1国立福岡中央病院心臓血管外科 2元・太刀洗病院 3京都大学胸部疾患研究所
ページ範囲:P.503 - P.515
文献購入ページに移動はじめにおことわりしておかねばならないことは,固形癌の外科治療の本筋は浸潤を含めて主腫瘤を広範囲に切除することである.また,抗癌剤の効果が判然としている癌は急性リンパ性白血病,Hodgkin病,睾丸腫瘍,胎児横紋筋肉腫,Ewing肉腫,Wilms腫瘍,Burkittリンパ腫,網膜膠腫,絨毛膜癌などであつて,本研究で治療の対象とした癌の中,乳癌,肺癌(小細胞癌を除く),大腸癌,胃癌などの主要臓器の固形癌に対しては抗癌剤の効果はまだ未知数を多く含んでいるためその評価を慎重に模索中なのである.特に,抗癌剤を大量に全身投与する場合はその骨髄ならびに非骨髄性の副作用が強力であるため,何らかの支持療法が行われない限り患者は生命を維持することはできない.支持療法としては血液成分輸血,防御的環境(無菌室,無菌テントほか),全身的および経口的非吸収性抗生剤(特に抗真菌性のもの)の投与などによつて骨髄が中毒症状から回復するのを待つのである,ところが,抗癌剤や放射線照射を強力に行いすぎると,非可逆的な骨髄障害,つまり後天性免疫不全症(AIDS)を生じてしまうので,正常な骨髄機能を回復させるためにはどうしても骨髄移植が必要となるのである.
移植する骨髄源としては,HLA適合提供者(通常は同胞)または患者自身の骨髄が使用される.前者は同種移植(O'Reilly1983),後者は自家移植である,同種骨髄移植では拒絶反応と移植片対宿主病(GVHD)という巨大な壁が普及を阻んでおり,自家移植では混入癌細胞を患者自身に再輸注する可能性が危惧されている.当然,それぞれの予防処置はが考えられている.同種移植ではmo—noclonal抗体(CAMPATH 1)によるT cellの除去法が目新しい(Hale 1983),同じ方法で癌細胞そのもの除去も行われている(Ritz 1983).
本稿では159症例の切除不能進行固形癌(表1)に対して行つた,解凍自家骨髄移植を併用した多剤併用大量抗癌剤投与による治療成績を率直に述べ,主として自家骨髄移植に関する国内外の現況を概観しておきたい.
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