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臨床研究
微小循環からみた上腸間膜静脈—大腿静脈バイパス法の安全性の検討
著者: 安藤久実1 宮川秀一1 弥政洋太郎1
所属機関: 1名古屋大学医学部第1外科
ページ範囲:P.673 - P.679
文献購入ページに移動門脈は膵臓に抱き抱えられるように位置しているので,この部位での悪性腫瘍は容易に門脈への浸潤を来し,腫瘍摘除のためには門脈の合併切除が必要とされる場合も少なくない.しかし,門脈遮断時間が20分以上に及ぶと,動物ではショックに陥る場合が多いということが,Ore,Claude Bernard,Shiff以来多くの研究者達によつて明らかにされてきた1-4).このために門脈はNoli me tangere(Touch me not!)ともいわれ5),この領域の手術を行う場合の大きな障害となつており,安全な門脈遮断は膵臓手術を行う場合の夢とさえいわれてきた5).
われわれは,抗血栓性カテーテル(Anthron® bypasstube)を用いて上腸間膜静脈と大腿静脈とをバイパスし,一時的に門脈血を大循環系に還流させた上で門脈遮断を行つたところ,門脈圧の上昇も来さず安定した循環動態を保つことができた.この方法については,すでに上腸間膜静脈一大腿静脈バイパス法として報告した6,7,8).しかし,門脈バイパスの腸間膜微小循環に及ぼす影響については不明であつた.本論文では,動物実験および臨床例について,腸間膜微小循環動態と腸管の絨毛形態の面から検討を加えた.
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