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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 小腸・大腸手術

広範囲に漿膜剥離があつたときの処置

著者: 牧野永城1

所属機関: 1聖路加国際病院外科

ページ範囲:P.786 - P.786

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 開腹後早いときは2〜3時間以内に,腸管漿膜の表面に薄いフィブリンの膜ができてくることがある.このフィブリン膜は,術後の経過と共に,あるものは吸収されて消失し,あるものは残つて,やがては毛細血管が入り込み,線維性の癒着として完成する.このフィブリン膜がどういうときに吸収され,どういうときに器質化して残るかという疑問について,種々の考え方が発表されてきたが,古くから有力な説として通用してきたのは,腹膜上皮の有無や損傷に左右されるという説である.つまり手術その他で腹膜部に欠損ができると,その部分は癒着として残り,漿膜が正常な所では,フィブリン膜は吸収されて癒着は生じないというのである.今日でもこの考え方は広く信ぜられており,手術時に漿膜剥離があれば,できるだけていねいに縫合して,欠損部を漿膜で覆うことが癒着防止のため重要とされてきた.
 しかし腹膜の欠損が果して癒着の原因となるかどうかについては,従来からかなりの疑問が挙げられている.臨床でも,動物実験でも認められる現象だが,広範な腹膜欠損部でも,術後ある期間たつて再開復すると,その腹膜欠損部が,きれいに再生漿膜で覆われて,癒着を残さず,かえつて欠損部を縫合したりするとその糸の部分に癒着をみる方がむしろ多いなどということがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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