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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 胆・膵手術

下大静脈を損傷した

著者: 松代隆1 今岡洋一1

所属機関: 1東北労災病院外科

ページ範囲:P.810 - P.810

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 胆道や膵臓の手術で下大静脈の損傷を生じるのは膵頭部癌などの浸潤がすでに下大静脈に浸潤している場合やリンパ節の郭清時であろう.Kocher授動術では十二指腸および膵頭部は指で簡単に剥離できるので,この操作を愛護的に行えば下大静脈損傷の危険はない.
 損傷に対する処置としてはまず出血部位を指で圧迫した後,食塩水ガーゼで数分間圧迫しておく.この操作で下大静脈損傷による出血以外は止血されるので他の部位からの出血と鑑別できる.下大静脈からの出血であれば血管縫合を行わねばならない.小さい損傷であれば,損傷部位を指で押えながら縫合してもよい.これが不可能と思われる時は血行遮断を行つた後に縫合する.このような場合,損傷部位が比較的小さい時はSatinsky鉗子によるpartial clampingで血管縫合を行う.しかし,損傷部位が大きい時は最初からtotal clampingを行つた方がよい.まず損傷部位よりはなれて,その上下をテープが通るよう全周を剥離し,テープを通す.このテープに2〜3cmに切つたネラトンカテーテルを通し,これを用いてTotal clampingを行う.いずれの場合も血管縫合は連続縫合を5-0ないし6-0のatraumatic needle付きの合成線維縫合糸を用いる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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