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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 胆・膵手術

ダイレーターで膵内胆管を損傷した

著者: 松代隆1 長嶋英幸1

所属機関: 1東北労災病院外科

ページ範囲:P.811 - P.811

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 このような偶発損傷をさけるために,総胆管切開に先立つて,十二指腸後部を膵頭部を含めて後腹膜腔より広く剰離しておくことが肝要である.ダイレーター挿入に際しては可動化した十二指腸後部に左示指および中指を挿入し,総胆管末端部を母指との間にはさむようにしてゆつくり挿入する.この操作を愛護的に行えば,通常は膵内胆管の損傷はさけ得ると考えられる.
 膵内胆管の損傷の場合は胆管の損傷部位を縫合すべきである.何故ならば,このような場合には胆汁と膵液が同時に後腹膜腔に流出するので,ドレナージが完全に行われない時は重篤な急性膵炎様症状が発生することが予想される.このような症例では胆管の拡張を伴つているので胆管の縫合はそれほど困難ではないと考えられる.その手技は最近はほとんど用いられないが,膵後部総胆管切開術(Retropancreatic choledochotomy)に準じて行えばよい.すなわち,すでに述べたように十二指腸後部および膵頭部を十分に後腹膜腔より剥離する.ついで総胆管切開によりできるだけ太いネラトン管を十二指腸乳頭付近まで挿入した後,膵頭部をもち上げその後面を露出させ損傷部位を確認する(図).損傷部膵を胆管より鈍的に剥離し,胆管損傷部に達する.この際血管はそのつど結紮切離し,膵よりの出血は完全に止血する.膵表面から胆管までの距離はほとんどない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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