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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 乳房手術

鎖骨下静脈を損傷した

著者: 牧野永城1

所属機関: 1聖路加国際病院外科

ページ範囲:P.819 - P.819

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 鎖骨下静脈からの分枝はすべて鎖骨下静脈から2mmぐらい離れたところで結紮するように注意している.未だ鎖骨下静脈幹に裂創をつくつたりしてその出血で困つた経験はない.腋窩静脈の場合であつたら,裂創部を圧迫して一時的に止血して,ゆつくりその両端で血管を剥離し,SatinskyやBulldogなどの血管鉗子で,血管の両側または血管壁をはさむことによつて止血し,ゆつくり,ていねいに血管壁の裂創を5-0,6-0ぐらいの血管縫合糸で縫合閉鎖するのは難かしいことではない.しかし鎖骨下静脈の場合は,その部位によつては必ずしも出血のコントロールは容易であるまい.特に胸郭内に入り込む場所やその直前あたりで大きく裂けたらさぞかし大変だろうと思う.自分が経験したことがないのに,それについて述べるのはどうかと思うが,私の肺外科,血管外科それから一般外科を通じての経験から,そのようなことが起こつたら試みるだろうと思うことを述べてみることにする.
 このような大きな静脈からの出血は,まず第1に,決して止血鉗子で出血部をはさもうとしてはならないということである.止血鉗子が血管をさらに損傷して,裂け目をひろげ収拾がつかなくなる危険がある.まずあわてずに指先を用いて圧迫し,一時的に止血させてから,ゆつくりその処理をすることである.細い分枝の根本にできた小さな穴ぐらいだつたら,辛棒強く圧迫を続ければ,それだけで止血することが少なくない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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