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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 肺・縦隔手術

肺動脈を処理中,これを損傷して大量出血をみた

著者: 長田博昭1

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学第3外科

ページ範囲:P.845 - P.846

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 これは確かに扼介な問題で,何年も肺外科をやつていながら処理に失敗して外科を止めた人もあるとすら聞く.処理中に肺動脈を損傷するのは,誤つて切つたと分るより,どうも良く分らないまま一寸した力の入れようで裂ける方が多いように思う.元来が低圧系血管であるだけにsystemicの動脈とは異なり,その壁は脆弱であり,最初の裂傷を荒く処理してしまうと裂け目を大きくするばかりということになりかねない.
 第一に行う対応は一旦出血を止めることである.その上でしばらく輸血の心配をし,全身状態の安定化に努め,さらに次の処置を行う際かなりの追加出血があつても大丈夫な態勢をとる必要がある.とりあえず出血を止めるには血管外科の定石に従い,指を用いるのが一番良い.効き手でない方の示指頭で出血部位を圧迫する.血管外科用以外の鉗子をかけようとあせるのは良くない.示指頭のみでカバーし切れない程裂け目が大きければ拇指や中指頭をも用いて肺動脈を挾むようにすると良い.この時肺動脈の展開が未だ十分でない時は一部肺実質と共に挾むか,残る指を合せ広く圧迫する方法をとる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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