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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 心臓手術

大腿動脈よりの逆行性送血により大動脈解離が起こつた

著者: 新井達太1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学心臓外科

ページ範囲:P.865 - P.865

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 大腿動脈よりの逆行性送血により大動脈解離の発生頻度は筒井によると0.5〜3.1%,平均1.0%,上行大動脈送血法では0.03%であるという.その発生機序は送血カニューレの大腿動脈挿入による内膜の機械的損傷,または逆行性送血によるjet streamによる動脈内膜の損傷などによると考えられている1)がその原因は解明されてはいない.
 筆者は50歳左室瘤の患者の手術時に経験した.体外循環開始直後に手術を見ていた医局員がブラウン管の動脈圧がフラットになつたのに気付いた.この動脈ラインは左橈骨動脈の穿刺によるもので,それまで100mmHgのレベルにあつた.腕の圧迫か動脈ラインの屈曲によるものだろうと筆者は考えた.それらの原因を確かめたが血圧の低下する原因がない.まだ心拍動も良好であつたので,体外循環を一時停止した.大動脈解離を疑い股動脈送血を上行大動脈送血に変えた.体外循環停止時の動脈圧波形は鋸歯状であつた.しかし再び体外循環を再開すると動脈圧は低下してフラットになつた.大動脈解離が強く疑われたので,体外循環を直ちに中止し,心拍動も良好だつたので手術は中止した.術後CTで大動脈弓部まで解離が及んでいることが確められた.この経験から小さなサインを見落さないことが非常に大切であることが分かる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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