icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻6号

1984年06月発行

文献概要

特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている 胸腹部重度外傷

肝損傷に対し単純縫合止血で出血がコントロールできない

著者: 葛西猛1 小林国男1

所属機関: 1帝京大学救命救急センター

ページ範囲:P.873 - P.874

文献購入ページに移動
 表在性裂傷であつても,損傷の部位によつては縫合止血が困難なことがある.例えば両葉のsu—perior segmentで肝付着部に近い場所(図1a)や肝下面や胆のう床に近い場所(図1b)の裂傷である.胆のう床に近い裂傷は胆のう摘出術後縫合止血をおこなう.その他については,剣状突起の切開により正中切開を拡大し,さらに肝鎌状靭帯三角靱帯および冠状靱帯を切離し,十分な視野のもとに縫合止血をしなければならない.
 図1cのような深在性裂傷で口が開いたように割れている場合は肝十二指腸靱帯内で肝動脈および門脈をクランプするPringle's maneuverを応用しつつ,裂傷辺縁の凝血塊や壊死組織の除去後出血点を結紮する.この方法で出血がコントロールできた場合は開放創とし,その近傍にドレーンをおくだけで良い.創縁を無理に寄せようとすると逆に肝実質が裂けたり,術後肝膿瘍やhemo—biliaを誘発することになり行つてはいけない.創の深部からの細い出血が気になる時は有茎大網を創に充填しその上から連続縫合し止血をおこなう(Id).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?