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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科39巻7号

1984年07月発行

雑誌目次

特集 肝臓癌のTAE療法

今日のTAE(transcatheter arterial embolization)療法

著者: 山田龍作

ページ範囲:P.939 - P.942

はじめに
 TAE療法が肝癌の治療法として優れた効果を発揮するということは,今日,大方の評価の定まつた所である.その理論的背景は,肝が門脈と動脈の二重の血流を受けるのに対し,肝細胞癌は動脈のみにより栄養される1)ので,この肝動脈を塞栓すれば,癌組織のみが選択的に阻血性壊死に陥るという点にある2).さらに,この際用いる肝動脈塞栓物質に抗癌剤を含有あるいは滲潤させておけば,阻血による腫瘍壊死だけでなく,薬剤による抗腫瘍効果も同時に期待出来るわけである.最近になつて,その方法や用いる薬剤や剤型にも更に色々な新しい工夫がなされ3,4),それぞれに効果を収めつつある.昨年7月,久留米市において開催された第19回の日本肝癌研究会における主題として,肝癌に対する肝動脈栓塞術が取り上げられ,北海道から沖縄まで,全国の色々な施設から64題の発表がなされた.本法が肝癌の治療法として市民権を得たことを示すものと考えられた.また一方,厚生省がん計画研究(57-10,高橋班)でも動脈塞栓術による悪性腫瘍の治療がテーマとしてとり上げられ,本治療法に関する多角的な研究がなされた,著者らも,頭頸部腫瘍,肺癌,肝癌,腎癌,子宮癌,膀胱癌,骨腫瘍などの各種悪性腫瘍にTAEを試みたが,そのうち最も優れた治療効果の得られた腫瘍は肝細胞癌であつた.

TAE療法とその応用—私はこうしている

著者: 武越裕

ページ範囲:P.943 - P.947

はじめに
 切除不能原発性肝癌の治療法として,TAE療法は著しい進歩をとげている.しかし,重症肝障害をはじめとする合併症を有する症例に対して,TAE療法により,残存肝予備能をより低下させ予後を短くさせる可能性が生じてくる.1978年9月以来,著者らがTAE療法を種々なステージの肝癌に施行してきたが,留意している事項について検討してみた.

TAE療法とその応用—私はこうしている

著者: 池田健次 ,   熊田博光 ,   吉場朗 ,   𤋎本正博 ,   沢田寿仁 ,   池永達雄 ,   中沢茂樹 ,   鶴丸昌彦 ,   秋山洋

ページ範囲:P.949 - P.954

はじめに
 本邦では山田らにより始められたTrans-catheter arterial embolization(以下,TAE)は切除不能肝癌に対して良好な効果を示し,その評価も定まりつつある1-3)
 しかし,TAEを有効に行うためには,超選択的血管造影の技術はもとより,腹腔動脈分枝のvariationや起こりうる合併症について熟知する必要がある.また,腹水や脳症を伴う重症肝硬変患者では,TAE前後の全身管理が問題となることも少なくない.

TAE療法とその応用—私はこうしている

著者: 山崎晋 ,   長谷川博 ,   幕内雅敏

ページ範囲:P.955 - P.959

はじめに
 TAEは元来切除不能肝癌に対する治療法として登場した.一方,いわゆる「切除可能な肝癌」では文句なしに,切除療法を適応することが良いとされていた.しかし肝癌の切除症例が次第に集積されてきて,切除後の予後が明らかになるにつれ切除療法の限界もだんだん明らかになつてきた.本邦の肝細胞癌(HCC)の大部分は硬変肝に発生するという事情が,HCCの治療を難しくしている一つの要因である.肝硬変合併HCCに対する肝切除は,HCCにたいしては勿論"治療"であるが,肝硬変に対しては間違いなく,"増悪因子であり,切除可能HCCに対して肝切除をすることは,「癌は治しても肝硬変を悪くする」こともあり,必ずしも延命効果につながらない1).したがつてHCC治療で一番大切なことは,HCCと肝硬変とに対して,いかにバランスのとれた治療を行うかということである.ここで抗腫瘍効果もかなりあり(化学療法より数段すぐれている),一方,肝毒性も肝切除にくらべて数段穏やかであるTAEが,HCCに対する治療法として,注目される所以であろう.
 さて我々は,肝切除に先立つてTAEを行うという試みを行つている.

TAE療法とその応用—私はこうしている

著者: 中塚春樹 ,   高島澄夫

ページ範囲:P.961 - P.966

はじめに
 肝細胞癌に対する動脈塞栓術は,その歴史が極めて浅いにもかかわらず,急速に普及し,今や肝細胞癌に対する有力な一治療法として全国の各施設で施行されるようになつた.それに伴い手技的な種々の進歩とともに,種々の合併症も報告されるようになつた.我々は従来からその手技,治療成績および副作用,合併症などについて報告し,適応についても考察してきたが1-5),その後さらに種々の進歩や手技の変遷をきたしている.
 したがつて,ここでは現在実際に我々が行つている肝動脈塞栓術の手技を紹介し,また当施設における肝細胞癌症例の取り扱い方の現状について紹介する.

化学・塞栓療法(chemo-embolization)の方法,適応,効果—われわれの軌跡をふりかえつて

著者: 岡村純 ,   門田守人 ,   黒田知純 ,   吉岡寛康 ,   桜井幹已 ,   若狭研一

ページ範囲:P.967 - P.972

はじめに
 切除不能肝癌に対する姑息的治療法としてのTAEはその評価が定まり,今日ではどの施設でも日常ルーチンに行つている.
 われわれは1980年来,山田らの報告1)にひきつづいてTAEを行つてきている2).ただしわれわれの方法はTAEに先だつて制癌剤の動注をおこなつているので,chemo-embolizationとよんでいる.TAEは単独で行われることは少なく,少量であつても制癌剤を浸みこました塞栓物質を用いているので厳密な意味ではおしなべてchemo—embolizationを行つているということになる.しかし,chemo.の影響がつよく出るのか,emboli—zationの効果がdominantであるのかについての争点を問題にした時期もあつたが,その評価は本文でくみとつていただけると思う.この両者は相争うものではなく相補的(complimentary)なものである.

肝切除に併用する術中Embolizationの実際

著者: 弘中武 ,   堀勝文 ,   園山輝久 ,   鴻巣寛 ,   野中雅彦 ,   岡隆宏 ,   山谷和則

ページ範囲:P.973 - P.978

はじめに
 我々外科医が肝切除術をもつて肝細胞癌の治療に当るようになつたのはそれほど古いことではないが,先人達の,おそらく抱いていたと思われる大きな期待に反して,その治療成績は皮肉にも肝切除のもつ効力の限界を示す結果となつている.これは肝細胞癌が生物学的特性として持つている門脈内進展傾向に帰せられるところ大であり,肝内に早期より転移しているとの考えも否定できない.また同時に外科医の手によつて癌細胞が肝内に播き散らされるかもしれないという懸念も除くことはできない.我々の施設で扱つた肝細胞癌切除症例43例について病理組織学的に検討を行つた結果では19例,44%という高い頻度で門脈内に癌細胞の存在が認められた(表1).山崎らの報告では細小肝癌ですら76.9%と極めて高頻度である1).さらに娘結節を認めたものは14症例であり,その中には200個以上もの娘結節を数えた例もある.このような門脈腫瘍栓や娘結節の存在する頻度が高いという傾向は厚生省がん研究班によつても報告されている2).それでは門脈腫瘍栓や娘結節の存在がどの程度に術後再発と関係があるのであろうか.娘結節を伴つていた症例14例中の再発は7例,門脈腫瘍栓を認めた19例中の再発は8例であり,門脈腫瘍栓も娘結節も認められなかつた症例18例中には再発が1例のみであつたことから肝切除術後の再発にとつて門脈腫瘍栓や娘結節の存在が重大な因子の1つであることが窺える3)

病理からみたTAEの効果

著者: 神代正道 ,   中島敏郎

ページ範囲:P.979 - P.985

はじめに
 肝細胞癌(肝癌)は血清α-fetoprotein(AFP)の測定や肝シンチグラフィー,CT,血管造影,および超音波検査の普及1,2),肝癌高危険群の設定3)などにより,比較的早期に発見される症例がふえたため,手術例が非常に増加している,しかし,肝臓は代償機能の旺盛な臓器であるため,臨床的に症状発現が遅く,まれではあるがAFP低産生肝癌などの問題もあり,依然として初診時,すでに癌が進行しているものが多い.また,たとえ早期に肝癌を発見しても,進行した肝硬変の併存があつたり,癌結節が多発していたり,門脈腫瘍塞栓による肝内転移がすでにあつたり,手術療法の適用がなくなつている症例には,肝動脈,門脈枝結紮術,抗癌剤動脈内注入法,全身的抗癌剤投与などが試みられているが,治療成績に関しては満足すべき効果をあげていない.1976年,Goldstein,Wallacら4)によりembolization therapy(TAE)が行われ,この療法がわが国において肝癌の保存的治療法として注目をあつめるにいたつたのは山田らの業績5,6)におうところが大きい.著者らは過去10数年にわたり,肝癌の血管構築の特徴について研究しているが8),今回,TAE療法が施行された剖検例,手術例について血管系からみたTAEの効果について病理形態学的に検討した.

成績からみたTAE療法の検討—現状における問題点について

著者: 木村道雄 ,   小林敏生 ,   大藤正雄

ページ範囲:P.987 - P.993

はじめに
 近年,カテーテルを用いて選択的に腫瘍栄養動脈を塞栓する肝動脈塞栓療法(TAE)がGold—steinら1),山田ら2)により行われ,引き続いてこれを有効とする報告3-13)が多数みられ注目を集めている(表1).
 しかしこれらの報告を詳細に見ると,なおいくつかの検討すべき問題点が残されている.一つには,この様な治療成績を論ずる場合には対照群を置く事がまず基本とされるのであるが,その様な基本的手法を踏まえての検討が不十分である.また肝機能などの病態に基づく適応についての検討,腫瘍縮小効果がそのまま予後の改善につながるかどうかについての検討,腫瘍の大きさ,進展度,腫瘍塞栓の有無などと対比した治療効果の検討などの問題が残されている.さらには,塞栓物質,抗癌剤の併用及び塞栓範囲など手技,方法に関しその根拠についての基礎的検討が尽くされていない.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・17

化生型胆嚢癌

著者: 松峯敬夫 ,   青木幹雄 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.936 - P.937

 胆嚢癌の形態は多様であり,粘液腺化生(偽幽門腺化生,偽Brunner腺化生)や腸上皮化生など,周辺粘膜の上皮変化に対応したさまざまなvariationが認められる.このような腫瘍構造はまた,胆嚢癌の発生→増殖過程を示唆するものとして興味深い.
 そこで今回は,一連の胆嚢癌例の中から,粘液腺化生,腸上皮化生,扁平上皮化生など多彩な形態を示す1症例を選び供覧する(表).

文献抄録

異物誤飲に対する治療方針

著者: 柵瀨信太郎 ,   西尾剛毅

ページ範囲:P.995 - P.995

 異物誤飲に対する治療方針には,まだ確立されたものはない.筆者らはカリフォルニア大学サンフランシスコ分校にて1971年から1981年の10年間に101件(100人)の異物誤飲を経験し,合併症のない限り,食道異物は早期に内視鏡的除去と胃内異物は経過観察するとの基本的治療方針の下に治療を行つた.この論文はその治療の結果をまとめたものである.
 症例は9カ月の乳児から87歳の老人まで100例で,うち10%は精神異常,20%が囚人であつた.

ここが知りたい 臨床医のためのワンポイントレッスン

血栓性外痔核および嵌頓内痔核の外来診療のポイントは

著者: 葛西猛 ,  

ページ範囲:P.996 - P.996

血栓性外痔核
診断のポイント
 A;これは外痔静脈叢が破れて血腫をつくつた状態をいう.体神経支配の肛門上皮下に発生するため強い疼痛を生ずる.多くは保存的療法で軽快するが,血栓をつくつたり疼痛の軽減のみられない時は血栓除去をおこなう.

画像診断 what sign?

網嚢内液体貯留 fluid collection in the lesser sac・2

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.999 - P.999

 腹部単純像や消化管造影で間接的にみられた網嚢内液体貯留はCTあるいは超音波像で直接的に描出される.胃体部および膵体部を含む腹部横断面において網嚢は網嚢孔を通して胃と膵の間に指をさし入れたような形状に存在し生理的には間隙を有さない(図1).網嚢内液体貯留においては網嚢の拡張により胃が前方に偏位する(図2).この際,胃と肝を連結する小網の一部である胃肝間膜gastrohepatic ligamentが超音波像によつて描出されることがあり,これを示標とすることによりmajor peritoneal cavityの腹水と網嚢内の液体を確実に鑑別することが可能である.また網嚢のsuperior recessの液体貯留に際しては肝の尾状葉が周囲を液体に取り囲まれて,きわだつてみられることから"flo—ating caudate"signと称される(図3).

座談会

—J. E. Fischer教授を囲んで—輸液・栄養をめぐる今日的話題

著者: ,   岡田正 ,   碓井貞仁 ,   小越章平

ページ範囲:P.1000 - P.1007

 昨秋,高知市で開かれた'83国際輸液・栄養輸液シンポジウムには,この領域の泰斗が世界中から参集し,先鋭的なディスカッションを繰りひろげた.
 小誌では,この機会に我が国でもFischer液でおなじみのシンシナチ大学J. E. Fischer教授を囲み,我が国の第一人者岡田,碓井,小越の先生を配して米国における現状から,今日最もactiveな話題であるBCAA.EDまで縦横に語り合つていただいた.

外科医のためのマイコン・ガイド・10【最終回】

データベース・マネージメント(DBM)—2.外科のデータを検索する

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.1009 - P.1016

はじめに
 DBM(Data Base Management)は,単にデータ保存のためだけならマイコンを使わなくても,もつとよい方法があるだろうし,ましてや自分でプログラムを組むこともあるまい.しかし,外科のDBMは一般の商売や事務処理以上に複雑であつたり,逆に省略できたりして独特のものがある.データをどのように臨床外科の場に活用するかはその外科医のphilosophyとprogrammingにかかつている.そこで,前回までに作つたデータ・ファイルをどのように処理するかをプログラムで考えてみたい.

臨床研究

結腸癌の手術法と術後成績

著者: 國井康男 ,   斉藤俊博 ,   新田篤 ,   森芳正 ,   正宗良知 ,   菅野久義

ページ範囲:P.1017 - P.1021

はじめに
 従来,我が国においては大腸癌の60%以上が直腸に発生すると言われていたが,近年大腸癌の増加に伴い,癌の発生部位の分布にも変化を来たし,1979年の大腸癌研究会の調査によると結腸癌が増加し,大腸癌のほぼ半数を占めるに到つた1)
 結腸癌の根治手術は十分な腸切除と所属リンパ節の郭清にあることは論を待たない.しかしながら結腸癌の手術療法の歴史は,いかに安全に腸管の連続性を再建するかということに重点がおかれ,リンパ節郭清の術式に考慮がはらわれるようになつたのは1940年代である2)

二次性上皮小体機能亢進症におけるアルカリフォスファターゼの臨床的意義

著者: 船木治雄 ,   大田早苗 ,   広瀬脩二 ,   磯本徹 ,   小出桂三 ,   遠山純子

ページ範囲:P.1023 - P.1028

はじめに
 慢性腎不全に対する血液透析の施行年数が経つにつれて,二次性上皮小体機能亢進症の症例が多く報告されるようになつた1-12)
 われわれは,ともに著しい骨痛と精神症状を主訴とし,透析開始から発症までの期間がともに約8年とほぼ同じであり,摘出した上皮小体の重さも5.2g,6gとほぼ同じという2症例を経験した.

臨床報告

乳腺悪性リンパ腫の1例

著者: 山本宏明 ,   鈴木一男 ,   熊谷太郎 ,   千木良晴ひこ ,   平井孝 ,   向山博夫 ,   森浦滋明 ,   生田宏次 ,   坂田慶太 ,   久納孝夫 ,   柴田佳久 ,   佐賀信介 ,   原一夫 ,   筒井祥博 ,   水野晴光

ページ範囲:P.1029 - P.1032

はじめに
 悪性リンパ腫,特にnon-Hodgkin lymphomaではリンパ節以外の組織に起源することが少なくない.この節外性リンパ腫はあらゆる組織に発生し得るが,多くは消化管,鼻咽腔に発生し乳腺原発は稀である.最近,我々は乳腺原発の悪性リンパ腫の一症例を経験したので,文献的考察も含めてここに報告する.

孤立性気管支乳頭腫の1手術例

著者: 島田良昭 ,   原田邦彦 ,   佐尾山信夫 ,   井上権治 ,   田中直臣

ページ範囲:P.1033 - P.1037

はじめに
 孤立性気管支乳頭腫は非常に稀な疾患であり,本邦では過去4例1-4)の報告をみるにすぎない.
 今回,われわれはその1例を経験し,左肺全摘術を施行したので紹介するとともに,内外報告例35例(自験例を含む)に対して,統計的考察を加えて報告する.また,肺全摘術後の胸腔管理として,遺残腔内にsulfur hexafluoride(以下SF6と略す)を注気し,心肺機能面で有効性が認められたので付記する.

長期の経過をとつた軟部悪性腫瘍の1例

著者: 谷口良雄 ,   廣瀬隆之

ページ範囲:P.1039 - P.1042

はじめに
 最近,我々は82歳の女性において小児期より存在した左上腕腫瘤の摘出を行つたところ,悪性腫瘍と判明した1例を経験した.この症例は,病理組織学的にも種々の問題を提起したのでその詳細を報告する.

急性腹膜炎症状を呈したS状結腸癌による非穿孔性のobstructive colitisの1例

著者: 原一郎 ,   平井真実 ,   土屋喜哉 ,   天野純治 ,   松林冨士男

ページ範囲:P.1043 - P.1046

はじめに
 大腸閉塞性病変の口側腸管に時として潰瘍性病変を合併することがあり,obstructive colitisと呼ばれている.本症は本邦ではまれな疾患とされていたが,近年報告例が増加しつつある.我々は大腸穿孔による急性腹膜炎の術前診断で開腹したところ,穿孔は認められずS状結腸癌により惹起されたobstructive colitisであつた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

術後夜間喘息様咳嗽発作の消失をみた胃食道逆流現象(GER)の1例

著者: 中村哲郎 ,   岡田正 ,   根津理一郎 ,   窪田昭男 ,   福沢正洋 ,   鎌田振吉 ,   高木洋治 ,   原田徳蔵

ページ範囲:P.1047 - P.1050

はじめに
 近年,胃食道逆流現象(Gastroesophageal reflux.以下GERと略す.)において嘔吐やregurgitationによるesophagitisやstrictureのみならずaspirationによる肺炎,気管支炎,喘息などの呼吸器合併症が起こりうる事が注目され,特に小児領域では再発性肺炎,喘息,成長障害,Sudden Infant Death Syndromeなどの原因としてGERの報告がなされている.今回我々は夜間の喘息様咳嗽発作を主訴として来院した5歳男児にGERを疑いNissenのFundoplicationにより術後早期より劇的に症状の改善をみた症例を経験したので報告する.

多発早期胃癌に合併した胆嚢壁内異所性胃粘膜の1例

著者: 清水裕英 ,   山本康久 ,   佐々木義仁 ,   今井博之 ,   長野秀樹 ,   瀬尾泰雄 ,   牟礼勉 ,   岩本末治 ,   木元正利 ,   佐野開三 ,   日浦研哉 ,   中川定明

ページ範囲:P.1051 - P.1054

はじめに
 異所性胃粘膜上皮は,小腸のメッケル憩室や食道にはかなりの頻度に存在し,その他,舌,虫垂,大腸などにも発見されているが,胆嚢に認められた報告は少ない.
 われわれは,早期胃癌の臨床診断のもとに開腹,術中に胆嚢の腫瘤を発見したため胆嚢を摘出し,その病理組織学的検索から,胆嚢壁内異所性胃粘膜と診断した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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