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文献詳細

雑誌文献

臨床外科39巻7号

1984年07月発行

特集 肝臓癌のTAE療法

肝切除に併用する術中Embolizationの実際

著者: 弘中武1 堀勝文1 園山輝久1 鴻巣寛1 野中雅彦1 岡隆宏1 山谷和則2

所属機関: 1京都府立医科大学医学部第2外科 2明石市民病院外科

ページ範囲:P.973 - P.978

文献概要

はじめに
 我々外科医が肝切除術をもつて肝細胞癌の治療に当るようになつたのはそれほど古いことではないが,先人達の,おそらく抱いていたと思われる大きな期待に反して,その治療成績は皮肉にも肝切除のもつ効力の限界を示す結果となつている.これは肝細胞癌が生物学的特性として持つている門脈内進展傾向に帰せられるところ大であり,肝内に早期より転移しているとの考えも否定できない.また同時に外科医の手によつて癌細胞が肝内に播き散らされるかもしれないという懸念も除くことはできない.我々の施設で扱つた肝細胞癌切除症例43例について病理組織学的に検討を行つた結果では19例,44%という高い頻度で門脈内に癌細胞の存在が認められた(表1).山崎らの報告では細小肝癌ですら76.9%と極めて高頻度である1).さらに娘結節を認めたものは14症例であり,その中には200個以上もの娘結節を数えた例もある.このような門脈腫瘍栓や娘結節の存在する頻度が高いという傾向は厚生省がん研究班によつても報告されている2).それでは門脈腫瘍栓や娘結節の存在がどの程度に術後再発と関係があるのであろうか.娘結節を伴つていた症例14例中の再発は7例,門脈腫瘍栓を認めた19例中の再発は8例であり,門脈腫瘍栓も娘結節も認められなかつた症例18例中には再発が1例のみであつたことから肝切除術後の再発にとつて門脈腫瘍栓や娘結節の存在が重大な因子の1つであることが窺える3)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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