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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科39巻8号

1984年08月発行

雑誌目次

特集 外傷の総合画像診断と初療

頭部外傷

著者: 有賀徹

ページ範囲:P.1075 - P.1081

はじめに
 外傷全体における頭部外傷の占める意義については,その頻度の高い故のみならず,時宜にかなつた処置を施し得なかつた場合に生ずる様々な問題点を顧みる時,決してあなどることができない.いわゆる救急センターであつかわれる重症外傷患者の相当数,例えば約8割1)は,何らかの処置を要する頭部外傷をおつており,また些細な外傷とされたもので,思わぬ頭部外傷の合併に足をすくわれそうになることも決して稀な経験とは言えない.
 以下に頭部外傷患者へのアプローチの総括(図1)を試みるが,診断方法について実践的なものは,頭部単純撮影,脳血管撮影,CTスキャンをおいて他はなく,さらに患者は軽症〜重症と,幅広いスペクトラムに属するため,比較的重症の場合とそうでないものとに分けて記載していきたい.

顔面外傷

著者: 内沼栄樹 ,   塩谷信幸

ページ範囲:P.1083 - P.1088

はじめに
 自動車,二輪車主体とも考えられる現代社会において交通災害はさけられない問題である.また,機械化産業の発達にもかかわらず労働災害が依然としてみられることも周知のとおりである.これら災害による顔面外傷の患者は重篤な合併損傷を伴つている場合が多いが,可及的早期に的確な治療がなされなければ機能障害や顔面の変形などの後遺症を残す結果となる.
 今回は,外傷患者が運ばれてきて限られた時間の中での初期治療を行うまでの必要な手順(de—cision tree)を,顔面骨骨折を中心として述べてみたい(図1).

胸部外傷

著者: 益子邦洋

ページ範囲:P.1089 - P.1100

はじめに
 胸部外傷の程度は単なる胸壁の打撲や単純肋骨骨折から,心肺危機を伴う重症胸部外傷までさまざまであり,これらに対する初療の適否は生命に直結すると言つても過言ではない.効果的な初療を行うためには診断と治療を並行して進めることが大切であり,ただいたずらに診断の為だけに貴重な時間を費やすことは厳に慎むべきである.本稿では胸部外傷診断のプロセスをフローチャート式に示し,あわせて初療の要点についても解説する.

腹部外傷

著者: 葛西猛 ,   小林国男

ページ範囲:P.1101 - P.1111

はじめに
 腹部外傷は,刺創,銃創などの鋭的外傷と交通事故,転落,殴打などに起因する鈍的外傷に大別される.診断の最も難しい鈍的腹部外傷では,一つのpositiveな所見で診断を下したり,開腹に踏みきることは,誤診あるいはnegative laparoto—myにつながる危険性がある.これらの事態を防止するためには,腹部理学的所見を中心に,許容範囲内で各種の映像診断法を応用する,いわゆる総合的診断法を行わなければならない.しかしながら,肝,脾,腎などの実質臓器損傷による大量出血例では,診断あるいは開腹のわずかな遅れが致死的となることがある.従つて,このような場合,質的診断(臓器診断)に固執する余り,開腹の機会を失い,患者を死に至らしめることは厳に慎まなければならない.
 ここでは,腹部外傷の一般的診断法,腹部外傷を管腔臓器損傷と実質臓器損傷に分け,それぞれの画像診断,および腹部外傷の一般的治療の3点について述べる.

四肢外傷

著者: 星秀逸

ページ範囲:P.1113 - P.1123

はじめに
 四肢外傷は,日常生活のうえで転倒したり,またスポーツ外傷や労働災害,交通事故などで最も頻度が高く,擦過傷から重度の四肢骨折まで多彩である.今回は四肢骨折を中心に掲題の点について述べる.

骨盤外傷

著者: 田伏久之

ページ範囲:P.1125 - P.1132

はじめに
 骨盤外傷にはしばしば大量の出血をともない,時には致死的となることがよく知られている1).骨盤外傷にともなう大量出血は,骨盤骨折に引き続く後腹膜腔への出血にもとづくものであり,この後腹膜大量出血のコントロールが骨盤外傷の治療における大きな問題であつた.またこの失血という問題に加え,骨盤腔内臓器の損傷も骨盤外傷の際にしばしば認められ,骨盤外傷の治療をさらに困難なものとしている.
 一方,最近の種々の画像診断における進歩は著しく,以前には確認し得なかつた損傷が明らかにされるようになり,骨盤外傷の治療についても同様の進歩がみられるようになつた.ここでは骨盤外傷における画像診断,とくにX線診断を中心として述べる.

エディトリアル

外傷の総合画像診断と初療

著者: 杉本侃

ページ範囲:P.1073 - P.1074

 外傷患者の中には,大血管損傷のように秒単位の迅速な対応が必要なものから,遅発性肝内血腫や亜急性硬膜下血腫のように数週間後に問題が生ずるものまで,実にさまざまである.診断を行ううえで全く違つた対応が必要である.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・18

化生型胆管癌

著者: 松峯敬夫 ,   青木幹雄 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.1070 - P.1071

 前回は化生型胆嚢癌を示し,主として腸上皮化生と胆嚢癌との関連性を述べたが,同様の変化が胆管にも見出されることは,案外知られていない.
 そこで今回は,一連の胆管癌の中から,腸型構造を示す上部胆管癌の1例を選び供覧する.

文献抄録

免疫皮膚反応で熱傷の予後を予測できるか?

著者: 磯部陽 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1133 - P.1133

 広範囲熱傷患者では免疫防御力の明らかな抑制が起こるが,この障害は熱傷創化膿,全身性感染症に対する生体反応をさまたげ,熱傷患者の感染症発生と死亡の大きな原因となつている.細胞性免疫能の尺度である遅延型皮膚反応の低下を指標として熱傷,外傷の予後の予測,栄養状態の判定が可能であるとする報告が多いが,Hoggersらは熱傷患者111例を対象としてこの点を検討した.
 症例を熱傷面積25%以上の広範囲熱傷群69例(第1群,平均年齢37歳)と熱傷面積25%未満の小範囲熱傷群(第2群,平均年齢53歳)の2群にわけた.全例に熱傷面積に応じた標準的蘇生療法,栄養補給を行い,破傷風予防及び72時間のPenicillin G投与を施行した.敗血症その他の感染症を認めた場合は抗生剤の非経口投与を加えた.皮膚反応にはmunpus抗原,Streptokinase-Stre—ptodornase,PPD,Candida,Trichophyton,Histoplas—minの6種のrecall antigenを用い,3種以上に反応(5mm以上の硬結)した場合を正常,1〜2種に反応した場合を相対的アネルギー,全く反応のみられない場合をアネルギーと判定した.この皮膚反応は3週間毎に行い,アネルギー症例には退院後も正常化するまで反覆検査した.生存可能率は簡易熱傷重症度判定指数に基づいて算出した.

ここが知りたい 臨床医のためのワンポイントレッスン

外来で診る膿瘍治療のコツを

著者: 益子邦洋 ,  

ページ範囲:P.1135 - P.1135

A;膿瘍
 診断:局所の発赤,腫脹,発熱,自発痛および圧痛と波動の証明
 治療:周囲に局所浸潤麻酔を行い,切開排膿し,ガーゼまたはペンローズドレーンを挿入してドレナージを図る(図1).抗生物質(広範囲スペクトラムを有する合成ペニシリンまたはセファロスポリン系薬剤)の内服も併用する.膿の一部を細菌固定,感受性検査に提出することも忘れてはならない.

画像診断 What sign?

fiuid filled intestinal loop

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1137 - P.1137

 小腸閉塞の腹部単純像において,絞扼性腸閉塞で広範な腸管の壊死を伴うような重症症例においても定型的な腸閉塞でみられる多数の拡張腸管や鏡面形成がみられず,大量の滲出液により充満した腸管がソーセージ形の腫瘤陰影あるいは単なる陰影の増加部分としてのみ現われ,一見問題のない腹部像として見過されることがある.この所見はFrimann-Dahl以来inestinal"ps—eudotumor"と称され,急性腹症の腹部単純像の読影の際の最も危険な陥穽の一つであると注意を促されてきたものである.
 このような場合,超音波検査で,腸液により充満した腸管や肥厚した粘膜襞を直接描出することにより診断が明瞭になり,また腹水や腸管壁の肥厚などから開腹の時期の決定に役立つ場合もある.これは救急放射線診断における超音波検査の有用な使用法の一つである.

腹部エコー像のPitfall・1【新連載】

装置に由来するPitfall

著者: 松田正樹

ページ範囲:P.1139 - P.1146

連載にあたつて
 現在,腹部疾患の大多数に超音波診断法がFirst Choiceとして使用され,最近は集検としても効果を上げている.しかしながら,ある程度経験のある医師でさえ診断を誤まることがあり,初心者にとつては,簡単にとびこめるが,ある程度を越えると,なかなか進歩しないというのが現実であろう.そこで今回初学者がいきあたるPitfall"落し穴"について,解説および症例の呈示を行い,読者の参考に供したい.

Topics 第二報

肝細胞癌に対する泡によるembolization,その後の発展—肋間動脈経由キセノン泡溶液の動注と温熱療法の併用治療の開発

著者: 長谷川博 ,   山崎晋 ,   幕内雅敏 ,   森山紀之 ,   島村善行

ページ範囲:P.1147 - P.1150

はじめに
 著者らは気体の泡を利用したembolizationにつき昨年以来発表し研究を続けているが,その後この方法につき文字通り日進月歩の改良と工夫を行い,今やほぼ確立された方法と申してもはばからないところまで到達し,患者の治療に明るい希望を見出せるところまで来たので報告する.
 なお,泡を利用したembolizationの利点と欠点は次に列挙する如くであり,当初の本質的な着眼点にはいささかも変更がない.すなわち ①気体の泡であるので,工夫いかんによつては血球のサイズの無数の塞栓子を送り込み,末梢毛細管をすべて泡で埋めつくす可能性がある.

臨床研究

甲状腺分化癌に対する両側頸部リンパ節郭清の適応

著者: 野口昌邦 ,   田中茂弘 ,   桐山正人 ,   藤井久丈 ,   秋山高儀 ,   滝川豊 ,   松葉明 ,   木下元 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1151 - P.1155

はじめに
 現在,甲状腺分化癌に対する標準手術として,甲状腺亜全摘術と共にModified radical neck dissectionによる原発腫瘤側の(Ⅰ)〜(Ⅳ)と反対側の(Ⅲ)のリンパ節郭清術(R1)が行われており1),両側頸部リンパ節郭清術は術前あるいは術中に明らかな対側頸部リンパ節転移を認めるなど特殊な揚合にのみ行われている.しかし甲状腺リンパ管造影を行うと対側頸部リンパ節もしばしば造影されること2),また術中の視触診で転移の有無が判定し難い小さなリンパ節にもしばしば転移が存在する3)ことなどを考え合わせると,従来,対側頸部リンパ節転移が明らかでなく両側頸部リンパ節郭清術を行わなかつた症例にも,かなり対側頸部リンパ節転移が存在するのではないかと考えられる.
 そこで,今回,私どもの教室で両側頸部リンパ節郭清術を行つた甲状腺分化癌49例を分析し,両側頸部リンパ節郭清術の適応条件について検討したので報告する.

無症状胆嚢結石の臨床的特徴—特にその手術適応について

著者: 杉山譲 ,   佐々木睦男 ,   鈴木英登士 ,   華表克次 ,   小沢正則 ,   遠藤正章 ,   今充 ,   小野慶一

ページ範囲:P.1157 - P.1161

はじめに
 最近,胃集団検診や胆道超音波検査法の普及により腹痛,背部痛,悪心および嘔吐,発熱,黄疸などの臨床症状を伴わない,いわゆる無症状胆嚢結石(以下,無症状胆石と略)の発見頻度が増え,二次的にその手術数も増加の傾向にある.一般に臨床症状を伴う有症状胆嚢結石(以下,有症状胆石と略)は外科的治療が主体であり,これに対し無症状胆石の外科的治療には種々の異論がある.
 手術を勧めるものは高齢になつてから急性胆嚢炎を併発すると手術死亡率が高いことや,胆嚢癌に胆嚢結石の併存率が高いことなどをその理由にあげている.手術に反対するものは無症状ならそのまま経過を観察し,症状が発現した場合に手術を考慮するという考えである.

臨床報告

難治性完全側頸瘻の1手術経験

著者: 梶原達観 ,   根木逸郎 ,   森岡秀之 ,   品川裕治

ページ範囲:P.1163 - P.1166

はじめに
 側頸嚢胞および側頸瘻は,胎生期の鮒性組織からの遺残より発生すると考えられている.嚢胞のみのこともあれば,皮膚のみに開口する不完全外瘻,内腔のみに開口する不完全内瘻および内外両面に開口する完全瘻がある.不完全外瘻は多く経験するが,不完全内瘻および完全瘻は比較的まれである.今回われわれは長期間にわたり再発を繰り返した完全瘻の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

甲状腺近傍に発生した,異所性気管支原性嚢胞の1例

著者: 菅野衛 ,   的場直矢 ,   松本高 ,   渡辺至 ,   平幸雄 ,   神保雅幸 ,   鎌田義彦

ページ範囲:P.1167 - P.1170

はじめに
 気管支性嚢胞は,欧米においては以前より多くの報告がみられていたが,わが国においては比較的稀な疾患であつた.しかし,胸部外科の発展,普及とともに,胸腔内の報告例は飛躍的に増加しつつある.われわれは,比較的稀な頸部に発生し,初め甲状腺腫を疑われた1例を経験したので報告する.

外傷性胸部大動脈瘤の1治験例

著者: 白川和豊 ,   臼井由行 ,   今吉英介 ,   清水康廣 ,   内田発三 ,   寺本滋

ページ範囲:P.1171 - P.1174

はじめに
 鈍的外傷による胸部大動脈損傷は,近年の交通・労働災害の大型化にともない増加している.外傷により大動脈壁は種々の程度に損傷し,全層が一時に断裂した揚合には受傷直後に死亡すると考えられ,大多数の症例では30分以内に死亡するといわれる.これに対し,動脈壁の断裂が内・中膜にとどまり,外膜によつてその連続性が保たれているものでは直接死を免れ,亜急性型あるいは慢性型の経過をとる.Hebererら1)は,受傷後2ヵ月以上経過したものを慢性外傷性動脈瘤としているが,これらは全胸部外傷例の5%以下に過ぎないとしており,他家の報告を考え合わせると1〜2%が慢性の経過をとるものと考えられる2,3)
 最近われわれは受傷後15年目に胸部異常陰影で発見された本症の1例を経験し,手術により治癒せしめ得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

炎症型悪性線維性組織球腫の1例

著者: 田村利和 ,   三宅秀則 ,   木村文夫 ,   宇高英憲 ,   宮本英之 ,   古味信彦 ,   建沼康男 ,   螺良英郎 ,   広瀬隆則 ,   布村進作 ,   檜澤一夫

ページ範囲:P.1175 - P.1180

はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma,以下MFH)は軟部肉腫の中で最も代表的なものであるが,その組織像は多彩でありいくつかの亜型を含んでいる.その組織発生は組織球由来と考えられているが未確定であり,病理学者の間で注目を集めている.今回,われわれは後腹膜に原発した,MFHの中でも極めてまれな炎症型悪性線維性組織球腫(MFH,inflamrnatory type,以下炎症型MFH)の1例を経験したので,剖検所見も併せて報告すると共に若干の文献的考察を加えた.

成人の後腹膜未熟奇形腫の1治験例—過去21年間の本邦における成人後腹膜奇形腫33例の統計的検討

著者: 小野寺健一 ,   笹生俊一 ,   久冨木原真 ,   小野隆男

ページ範囲:P.1181 - P.1185

はじめに
 原発性後腹膜腫瘍は比較的まれであり,その種類は多種にわたる.しかも特徴的な症状はほとんどなく,通常腫瘍による圧迫症状が主であり,術前に組織学的性状まで明らかにすることは困難である.しかし,近年はCTスキャン等,検査技術の向上により後腹膜腫瘍の診断は比較的容易になり,性状までもかなりの程度推察できるようになつてきている.著者らはCTスキャン,超音波等の検査により原発性後腹膜腫瘍と診断し,摘出腫瘍が病理組織学的に成人にはまれな未熟奇形腫であつた症例を経験したので,過去21年間(1963〜1983)の報告例を集計し,検討を加え報告する.

化膿性腹膜炎に随伴して発症した急性無石壊疽性胆嚢炎の2例

著者: 森田隆幸 ,   宮城島堅 ,   伊坂直紀 ,   吉原秀一 ,   三上勝也 ,   佐々木睦男 ,   今充 ,   村田光畿 ,   成田博美

ページ範囲:P.1187 - P.1190

はじめに
 急性胆嚢炎は臨床では良く経験する疾患であるが,その大部分は胆嚢管あるいは胆嚢頸部に結石が嵌頓して発症する胆石胆嚢炎である.一方,急性胆嚢炎の特殊型としては,術後胆嚢炎を含む無石胆嚢炎が知られているがこれらの疾患は頻度は稀ながら,経過が急激で予後不良となる症例が多いため,臨床上注意すべき疾患とし,その成因も含め最近注目されている.
 最近,われわれはS状結腸切除術後縫合不全および絞扼性腸閉塞による化膿性腹膜炎に随伴して発症した2例の壊疽性無石胆嚢炎を経験したので,若干の考察を加え報告する.

腹部大動脈狭窄症と併存した腸間膜平滑筋腫の1例

著者: 細川治 ,   白崎信二 ,   吉村信 ,   牧洋 ,   小西二三男

ページ範囲:P.1197 - P.1200

はじめに
 腸間膜腫瘍ははなはだ稀な疾患であり,また後腹膜腫瘍との解剖学的異同があいまいであることも重なつて,十分な討議がなされてきたとは言えない.
 われわれは早期胃癌切除9年後の横行結腸の腸間膜に巨大腫瘍の発生をみ,同時に腹部大動脈狭窄症の併存した症例を経験したので報告する.

大腸内視鏡により診断し得た結腸膀胱瘻の1治験例

著者: 鍋嶋誠也 ,   藤崎安明 ,   沖本光典 ,   土屋信 ,   伊東治武 ,   村上和

ページ範囲:P.1201 - P.1204

はじめに
 S状結腸膀胱瘻は典型的な症状を順次呈するものの臨床的に経験することは稀な疾患である.診断法においても注腸造影,膀胱造影,膀胱鏡などが有用であるが大腸内視鏡による瘻孔の診断に関しては本邦にその報告を見ない.私どもは上記の諸検査および大腸内視鏡下にも観察され,また膀胱内色素液注入法も有効であつたS状結腸膀胱瘻の1治験例を報告するとともに若干の考察を述べる.

下肢venous gangreneの1症例

著者: 生駒明 ,   森下靖雄 ,   豊平均 ,   中村雅晴 ,   平明 ,   永井雄一郎 ,   田代正昭

ページ範囲:P.1205 - P.1208

はじめに
 静脈血栓症や血栓性静脈炎などの閉塞性静脈疾患に続発するvenous gangreneは,欧米では報告をみるものの,本邦には少なく,過去に1例の報告1)をみるのみで,極めて稀な疾患である.最近,われわれは右下肢深部静脈血栓症に続発した本症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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