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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科39巻9号

1984年09月発行

雑誌目次

特集 どこまで活用できるか新しい手術器械

超音波外科吸引装置—食道癌手術

著者: 磯野可一

ページ範囲:P.1227 - P.1233

はじめに
 超音波外科用吸引装置が作られたのは,1970年頃であり,カタラクタなどの眼科の手術に用いられたのが始めである.
 その後,1976年頃から器械の改良が行われ,性能も大型化して,広く臨床に応用されるようになつた.1978年頃には,米国で脳外科の手術に取り入れられ,脳腫瘍の摘出,血腫の吸引除去に繁用されるに至つた.

超音波外科吸引装置—肝臓外科手術

著者: 吉田奎介 ,   武藤輝一 ,   川口英弘

ページ範囲:P.1235 - P.1241

はじめに
 CUSA(Cavitron社製外科用超音波吸引装置)が本邦で実用化されて3年余を経過した.私共の新潟大学医学部附属病院手術部でも,脳外科と肝外科を中心に130例余りのCUSA使用手術が経験されている(表1).その後,国産の超音波吸引装置も発売され,ランニングコスト等経費面での問題もあるが,実質臓器とくに脳や肝をはじめ,神経や血管に富む部位での手術補助装置として,本装置の評価は定まりつつあると思われる.著者らは肝切除にCUSAを応用し,40例の経験を得たので,その結果をもとにその利点と問題点につき私見を述べたい.

レーザーメス—一般外科・消化器外科への応用

著者: 佐野文男 ,   今野哲朗 ,   西田修 ,   秦温信 ,   葛西洋一

ページ範囲:P.1243 - P.1250

はじめに
 レーザー光線は今や自然科学の分野のみならず産業や芸術の世界までを含めた広い領域で,新しい技術,新しい素材として実用化され,利用されているまさに現代の寵児となつている.1960年1)にレーザー光の発振に成功して以来,今世紀最大の発見であるといわれたレーザー光も,医学への応用は比較的最近のことで,近年,急速に各方面から注目され,種々の面で研究が進められており一部はすでに実用化されている.外科の領域ではレーザー光がメスとしての応用面に新しい領域を開拓しつつあるが,ここ数年来ややもするとレーザーメスに多くの期待がもたれ,過大に評価されるということもあったように思われる.ここでは外科手術の中で,とくにレーザー手術の効用が期待される一般外科,消化器外科領域における応用の実際について,著者らの経験と見解をのべる.

電気メス

著者: 大山満 ,   酒井順哉

ページ範囲:P.1251 - P.1258

はじめに
 電気メス(electro-surgical unit,electric knife)は電気工学者Bovie, W. T. によつて開発され,1926年外科医Cushing Harvey(1869-1939)が初めて脳腫瘍手術に際し使用した,以来脳手術の止血には不可欠な医療機器となつた.開発当初は火花間隙を用いた大型のものであつたが漸次改良され取扱いの簡便さもあつて世界中の手術室に普及し脳外科,胸部外科,腹部外科の区別なく外科手術には欠くべからざる医療機器となつた.
 外科医が手術に際し効果的で安全に電気メスを使用するためには,まず電気メスを含めたME機器一般の基礎知識と理解が必要である.

凍結手術器械

著者: 蔵本新太郎 ,   若林已代治

ページ範囲:P.1259 - P.1264

はじめに
 どこまで活用できるか凍結手術器械.というテーマが与えられたものである.凍結療法の歴史は非常に古い.今日でいう凍結手術という概念は少なくとも1960年Cooperが凍結装置を開発して以来と言つても過言ではあるまい.
 これより,今日まで色々な型式のものが,各社によつて作られ,また使用者側即ち医師の要請により特別のものが試作されている.そして,これらの適用範囲は各科領域に及んでいる.これらをすべて述べることは容易でない.私に出来ることは外科領域を中心に知り得たものを述べさせて頂くことにする.

Microwave Surgery

著者: 田伏克惇 ,   勝見正治 ,   田伏洋治 ,   小林康人 ,   永井祐吾 ,   江川博 ,   野口博士 ,   森一成 ,   山上裕機 ,   青山修 ,   東芳典

ページ範囲:P.1265 - P.1273

はじめに
 Microwaveは,周波数2〜30GHz,波長1〜15cmの電磁波をいい,そのなかの2450±50MHz(2.5GHz±50Mz;波長12cm)のマイクロ波は,ITU規約により医療用として国際的に認められた波である.その特性は,波長がきわめて短いので極超短波ともいわれている.すなわち,直進性があり,反射,屈折が起こり,透過性があり,また干渉作用がある.したがつて体外照射法では,反射および屈折が生じ,電磁エネルギーの損失が体表面で起こる.さらに,光と違つて不透明なものでも透過するが,その透過性には限界があり,約3cmとされている.したがつてマイクロ波の電磁エネルギーを生体内に集束することは従来困難であつた.
 このマイクロ波の臨床応用においては,表面アンテナとして空洞導波管,パラボラアンテナ,腔内アンテナなどと呼ばれるものを使つて,体表面すなわち組織からの照射(external radiation)で主に温熱療法(hyperthermia)として用いられてきた1-3).これを組織内照射(internal radiation)として用いることにより,外科手術機器への応用拡大できることに着眼し,肝切除用Microwave Tissue Coagulatorを考案したのである4)が,マイクロ波メスとしての概念を生み,これを用いて行なう外科的治療をMicrowave Surgeryと定義づけに至つた.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・19

胆道系チフス菌保菌者と胆嚢癌

著者: 松峯敬夫 ,   福留厚 ,   今川八束 ,   村田三紗子 ,   青木幹雄 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.1224 - P.1225

 腸チフス・パラチフス永続排菌者の大部分は,胆道,殊に胆嚢内に排菌巣(おおむね結石)を有する胆道系保菌者といわれている.
 これら保菌者と胆嚢癌を関連づけるものとして,従来から癌の併存を示し磯つかの報告があり1,2),また当施設においても,たまたま除菌のため胆摘術を行つた32例(腸チフス20例,パラチフスA3例,パラチフスB9例)中3例,9.4%に癌が見出されているが(表),このような事実は,一般にはあまり知られていない.

ここが知りたい 臨床医のためのワンポイントレッスン

腹腔穿刺のコツは

著者: 福島恒男 ,  

ページ範囲:P.1275 - P.1275

 A; 腹腔穿刺は腹腔内に液体や血液の貯留があるかどうかを確かめる診断的意義とそれを除去する治療的意義を持っている.腹腔内に液体,血液が貯留しているかどうかは腹部打診による濁音界の出現,波動の有無,腹部X線写真における結腸旁溝の拡大,超音波診断装置で隔壁のないaechoicな領域と底面echoの増強所見などで診断出来る.しかし貯留液の性状は穿刺してみないと実際には分らない.対象となる疾患は癌の腹膜播種,細菌性腹膜炎,肝硬変,ネフローゼ,蛋白漏出性胃腸症,結核,膵炎,胆道疾患,フィラリヤなどと,腹腔内出血をきたす疾患には外傷による肝損傷,脾損傷,腸間膜血管損傷,術後の出血,婦人科的疾患として卵管妊娠中絶,卵巣出血などがある.
 これらの基礎疾患があり,諸検査で腹腔内に液体貯留が認められる場合に腹腔穿刺を行うが,広範な腸管癒着が疑われる場合,腸管の膨満のある場合,限局性腹腔内膿瘍などの際には穿刺に十分注意しなければならない.

Invitation

第46回日本臨床外科医学会総会 見どころ,聴きどころ—"手術適応とその手術手技"を統一テーマに

著者: 榊原宣

ページ範囲:P.1276 - P.1277

はじめに
 このたび,第46回日本臨床外科学会総会を主宰させていただくことになりました.私はもとより,東京女子医大第二病院外科,ならびに同門一同にとつて,誠に光栄に存じます.この学会史上,最も若い総会会長の由で,責任を痛感しております.若さをぶつけて,これまでの先人の成果に盲目的に追随することなく,また伝統に拘束されることなく,正しいこと,間違つていることを正確に見極め,外科学の進歩,発展の中で建設的な役割を果すよう努力したいという決意のもとに,これまでにない学会運営をいたしたいと考えております.そこで,この学会の見どころ,聴きどころといつた観点から.ご紹介させていただきたいと思います.

画像診断 What sign?

the "sandwich" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1279 - P.1279

 悪性リンパ腫のstage分類に従来使われてきたリンパ管造影では後腹膜リンパ節の検索は可能であるが,腸間膜リンパ節への進展に関しては試験開腹による所見が必要であつた.一方,非ホジキンリンパ腫の51%,ホジキンリンパ腫の4%に腸間膜リンパ節への進展がみられるといわれ,治療方針の決定にも重要な因子の一つとしてとりあげられている.
 "sandwich" signは超音波およびCTにおいて腸間膜リンパ節腫大を示唆する所見で腹腔内にサンドイッチ状の三層構造をもつ腫瘤として観察される.中央の一層は超音波では強い内部エコー(図上矢印)をCTでは脂肪の吸収値を呈し,腸間膜内の脂肪組織と考えられ,その中に腸管膜動・静脈が走行する(図下矢印).前後の二層は超音波では低い内部エコーをもち,CTでは充実性の腫瘤としてみられ腫脹した腸間膜リンパ節そのものと考えられる.

腹部エコー像のPitfall・2

走査・検査法と読影上のPitfall

著者: 松田正樹

ページ範囲:P.1281 - P.1283

この患者の診断は?
 19歳,女性 夜間下腹部痛あり,早朝来院し超音波検査を行つた.

臨床研究

小腸悪性腫瘍—自験34例の検討

著者: 蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   堀明洋 ,   近藤哲 ,   広瀬省吾 ,   深田伸二 ,   宮地正彦 ,   碓氷章彦 ,   渡辺英世 ,   石橋宏之 ,   加藤純爾 ,   神田裕 ,   中野哲 ,   綿引元 ,   武田功

ページ範囲:P.1285 - P.1291

はじめに
 近年,小腸疾患に対する関心の高まり,小腸造影法,血管造影法,小腸内視鏡等の各種診断法の進歩と共に,従来,稀であるとされてきた小腸悪性腫瘍についても,報告例が増加して来た.一方,本症は腹痛・嘔吐等のイレウス症状,腫瘍穿孔による腹膜炎,腫瘍からの出血による下血等を呈し,急性腹症として来院することも多く,本症に対する認識を新たにする必要がある.
 われわれは原発性小腸悪性腫瘍(十二指腸悪性腫瘍を除く)34例を経験したので,報告する.

大腸癌における術前血漿CEA測定の意義—臨床及び病理学的所見との関連について

著者: 遠藤健 ,   豊島宏

ページ範囲:P.1293 - P.1299

はじめに
 大腸癌における血漿CEA測定の意義に関してはこれまでに種々論ぜられてきており,大腸癌のスクリーニングとしての意義は少ないとの結論に達している.しかし術後のfollow-upの指標として有用であり,再発の予測,予後の推測という点で,補助診断として欠かせないものの1つとなつている.今回,術前血漿CEAと大腸癌の進行度,予後等との関連について,当科の症例を集計し,臨床及び病理学的立場から検討してみた.

外科医の工夫

心血管内カテーテル片の非観血的除去

著者: 有川和宏 ,   東哲秋 ,   下川新二 ,   森下靖雄

ページ範囲:P.1301 - P.1304

はじめに
 静脈内留置カテーテルが断裂し,心血管内異物となる合併症は中心静脈圧測定や高カロリー輸液の普及に伴い近年増えつつある1).しかも一旦事故が発生すると60〜71%の致死的続発症につながり,何らかの方法での異物除去が必要になつて来る2,3).摘出法として観血的,非観血的方法に大別される.前者は確実であるが侵襲が大きいことから,後者がまず第一選択となる.
 最近われわれは動・静脈系のカテーテル片異物各1例をgrasping法により非観血的に除去したのでこれらの経験を報告するとともに,心血管内異物の非観血的除去の代表的な方法を体外で試み検討を加えた.

臨床報告

胃癌虫垂転移による急性虫垂炎の1例

著者: 大島昌 ,   川合重夫 ,   富永秀次 ,   長島道夫 ,   平山廉三 ,   広川勝昱

ページ範囲:P.1305 - P.1308

はじめに
 最近われわれは胃癌虫垂転移による急性虫垂炎を経験したので文献的考察を加え報告する.

山形県で見出された肺犬糸状虫症の1例について

著者: 斎藤奨 ,   山下隆夫 ,   渡辺正 ,   仙道富士郎 ,   布山繁美 ,   折田博之 ,   鷲尾正彦 ,   吉村裕之 ,   赤尾信明

ページ範囲:P.1309 - P.1312

はじめに
 従来,動物固有の寄生虫はたとえ人の体内へ侵入しても感染しないと言う考えが一般的であつた,しかし近年になつて,ある種の動物の寄生虫は人体内でも一定期問生存して強い病害を与えることが明らかになり,人畜共通寄生虫症の重要性が認識されるようになつた.犬糸状虫Dirofilaria immitisによる人体感染症もその1つの例である.Faust4)は2例のDirofilaria属感染症の経験例を,それまでの報告例に加えて集計した合計37例について検討して発表した.このことが契機となつて,その後,次々と類似の症例が報告されるようになつた.日本ではNishimuraら7)が初めて,52歳の女性の左胸部皮下組織から雌成虫を検出した.その後,吉村ら14-19)は数回にわたり,日本と世界の報告例を総括し,人体内における犬糸状虫の寄生部位は肺臓と浅在性軟組織,殊に皮下組織に大別されるが,まれに犬と同様に心臓および近接大血管にも見られることを紹介した.
 今回,得られた症例は日本で最も多数の症例がみられている肺臓寄生のもので,日本における肺犬糸状虫症の第17例目として,その概要を紹介する.

胆嚢癌と併存した胆嚢カルチノイドの1例

著者: 固武健二郎 ,   米山桂八 ,   宮田潤一 ,   石川広記 ,   林亨

ページ範囲:P.1313 - P.1318

はじめに
 胆嚢原発のカルチノイドは非常にまれな疾患であるが,最近われわれは胆嚢癌と併存した本症の1例を経験したので,報告例の集計を加え報告する.

完全縦隔内甲状腺腫の1例

著者: 平岩卓根 ,   長坂裕二 ,   庄村赤裸 ,   増田浩一

ページ範囲:P.1319 - P.1322

はじめに
 縦隔内甲状腺腫は比較的稀な疾患であり,完全縦隔内甲状腺腫はさらに少ない.われわれは本症の1手術治験例を報告すると共に,本邦報告37例を集計し本症の病態,治療等について検討を加えた.

甲状腺原発悪性リンパ腫の2例

著者: 前之原茂穂 ,   浜田長輝 ,   西満正 ,   吉永淳教 ,   大久保智佐嘉 ,   吉中平次 ,   富加見章 ,   門松民夫 ,   金子洋一 ,   小代正隆 ,   愛甲孝 ,   八木俊一 ,   徳永正義 ,   佐藤栄一

ページ範囲:P.1323 - P.1326

はじめに
 甲状腺原発の悪性リンパ腫は,いわゆるExtranodal diseaseとして,胃腸管,呼吸器などの悪性リンパ腫と同様に独立して扱われるようになつており,近年,報告例も増加し,注目されている.われわれは,最近,甲状腺原発悪性リンパ腫を2例経験したので,免疫学的検討の他に,若干の文献的考察を加え,報告する.

Sporothrix schenckii感染による熱傷部難治性潰瘍の1例

著者: 川端啓介 ,   山川達郎 ,   三芳端 ,   伊藤誠二 ,   広沢邦浩 ,   沖浜裕司 ,   飯泉成司 ,   宇井義典 ,   杉洋一 ,   加藤一富 ,   小野真理子 ,   橋本謙 ,   須田光也

ページ範囲:P.1327 - P.1329

はじめに
 皮膚の創傷,感染症および発疹は,外科あるいは内科の外来で取り扱われることが多い.そして消毒と抗菌剤(内服・軟膏)あるいは,ステロイド軟膏などの投与によつて治癒するのが一般的であるが,なかにはなかなか治癒傾向を示さぬものがある.このような場合にはむやみに同じ治療を続けず,特殊な皮膚科的疾患をも念頭において診断・治療に当たらねばならない.今回提示するスポロトリコーシスは,そうした皮膚感染症の一つで,原因菌の生物学的特性による臨床像と特殊な治療法が興味深く,外科医も知つておくべきものと考え報告する.

甲状腺結節分離症(Sequestered nodular goiter)の1例

著者: 堀明洋 ,   山口晃弘 ,   蜂須賀喜多男 ,   近藤哲 ,   広瀬省吾 ,   深田伸二 ,   宮地正彦 ,   碓氷章彦 ,   渡辺英世 ,   石橋宏之 ,   加藤純爾 ,   神田裕

ページ範囲:P.1331 - P.1335

はじめに
 甲状腺組織を甲状腺外に見出だすことは,癌の転移を除きまれなことである.われわれは臨床的に甲状腺癌のリンパ節転移と鑑別困難であつた甲状腺結節分離症(Sequestered nodular goiter)の1例を経験したので報告する.

肝切除および肝動脈塞栓術を行つた直腸平滑筋肉腫肝転移の1例—自験,転移性肝肉腫16例の検討

著者: 新井稔明 ,   鈴木茂 ,   山下由起子 ,   斉藤早苗 ,   喜多村陽一 ,   長谷川利弘 ,   磯部義憲 ,   高崎健 ,   鈴木博孝 ,   小林誠一郎 ,   別宮啓之

ページ範囲:P.1337 - P.1341

はじめに
 消化管に発生する肉腫は癌腫にくらべまれであるが,近年診断技術の進歩により多くの症例が報告されるようになつた1,2)
 本症の転移は肝に多いことが特徴であり2,3),予後不良なことから転移性肝肉腫に対しての手術的治療は従来敬遠されがちであつた.

局所動注化学療法の奏効した乳腺原発癌肉腫の胸骨旁リンパ節再発の1症例

著者: 木村道夫 ,   阿部力哉 ,   石井洋 ,   中村隆 ,   秋元実 ,   上沖修三 ,   沢野彰

ページ範囲:P.1343 - P.1347

はじめに
 乳腺由来の悪性腫瘍の中で,上皮組織由来の癌腫car—cinomaと非上皮性組織由来の肉腫sarcomaの混在した癌肉腫carcinosarcomaは,非常に稀な疾患とされている,最近われわれは,乳腺原発のcarcinosarcomaに対して根治手術を行い,その2年7カ月後に発見された巨大な胸骨旁リンパ節転移と考えられる前縦隔の腫瘍に対して,局所動脈内制癌剤注入療法(以下局所動注化学療法)によつて腫瘍を縮小させた後に摘出手術を行い,根治せしめたと思われる症例を経験したので報告する.

境界領域

高頻度ジェット換気法(HFJV)による気管再建術の麻酔管理

著者: 上村浩一 ,   長谷川正宜 ,   久場良也 ,   松原康博 ,   上平敦 ,   田中彰 ,   小田貢 ,   佐藤暢 ,   山内教宏

ページ範囲:P.1349 - P.1354

はじめに
 気管再建術における麻酔管理は,気道が術野となるために気道確保についての種々な工夫が必要である.一般的に気管再建中の気道確保の方法は,手術部位によつて異なり,気管切開,一側気管支挿管,術野よりの逆行性挿管などの組合せで行つたり1-4),症例によつては人工心肺を用いねばならない5-7).High-frequency jet ventilation(以下HFJV)は,気道が大気に開放した状態の患者における換気法として極めて有効であると言われている8-12).今回われわれは,4例の気管再建術の麻酔に泉工医科工業社製MERA HFO JET VENTILATORを用いたHFJVによる換気を行い,その有用性について検討を行つたので若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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