所謂骨端炎の小統計
著者:
池田龜夫
ページ範囲:P.26 - P.29
緒言
醫人の知見の擴大と相俟つてレントゲン線の醫學的應用により,それ迄本態不明の各種局所性骨軟骨疾患が相次いで發見報告され,病理解剖學的にも探求された。1878年Madelung變形,1883年分裂膝蓋骨,1887年離斷性骨軟骨炎(König),1903年Osgood-Schlatter氏病,1907年所謂跟骨々端炎,1908年Köhler氏病,1909年Perthes氏病,1909年Thiemann氏病,1910年Kienböck氏病,1914年Freiberg-Köhler氏病,1921年少年期脊柱後彎(Scheuermann),1924年Calvé,扁平椎,1932年Dieterich氏病が相次いで報告せられた。此等以外に文獻上には上膊骨々頭,大腿骨頸部,仙腸關節,鎖骨の胸骨端,脊椎體,脾臼,種子骨等に於ける疾患,及び行軍病,足腫等の所謂Überlastungsdeformität等多數のものが報告されておる。此等一聯の疾患程,骨病理學の部門に於て莫大の努力が拂はれ多數の業績の存するもののないことはJoeckの言をかりるまでもない。而して更に進んで,未だ報告されてない局所に於ける類似疾患が發見され,報告される可能性は多分に想像出來る。然しながら此等疾患の成因に就いては,諸家により實に多種多様に唱へられ,從つてその名稱の如きも多數にして一定しない。斯の如き状態に於て,如何なる疾患を所謂骨端炎の範疇に屬せしむべきやに關しては種々異論のある所である。かゝるためか,此等一聯の疾患を一括して統計的に觀察した報告は私の寡聞なる少きやうである。私は多數諸家が恐らくこの範疇に入れるであらうと云ふ意味に於て,次の12疾患——Perthes氏病,Osgood-Schlatter氏病,Köhler氏病,Freiberg-Köhler氏病,所謂跟骨々端炎,Kienböck氏病,Calvé扁平椎,少年期脊柱後彎(Scheuemann),離斷性骨軟骨炎(König),關節鼠,分裂膝蓋骨,Madelung變形——を選び,此等に就き臨床的一般事項を觀察した。廣義に解釋して三角骨,外脛骨,Vesal骨,先天性股關節脱臼,纖維性骨炎,内反股,脊椎分離症,過勞變形,等を加へる人がおるも今回は此等を除外した。觀察症例は昭和4年より昭和22年迄に(昭和17年は戰災で日誌燒失のため除外)慶大整形外科を訪づれ,前述12疾患と診斷された196例であり,些か得る所あつたのでこゝに報告し諸賢の批判を仰ぐ次第である。