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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科4巻10号

1949年10月発行

雑誌目次

機能檢査法

外科的腎臟機能檢査法

著者: 武藤完雄

ページ範囲:P.505 - P.509

 外科領域で行われる腎臟機能檢査法は次の2に大別される. 即ち 1. 両腎を1体と見てその綜合機能を判定する方法と,2. 左右腎別々の機能を判定する方法である. 両腎の綜合機能檢査法を吾々は腎総機能檢査法と呼んでいるが,内科で腎臟機能檢査法と云う時はこの総機能檢査法を意味する. 外科では治療の大部分が偏側剔出であるから両腎機能の比較,特に残存腎の機能の良好なことを判定する必要が生ずる. 即ち左右腎別々の機能を判定する方法が必要で之を狹義の外科的腎機能檢査注と称してもよい.
 腎臟に於ける尿生成機轉には濾過説,分泌説等議論があるが,腎臟が血液の老廃成分或は過剩成分を排泄して,血液の性状を正常に保持する機能を持つことには異論はない様である. 從つて血液及尿の種々の物理学的性状又は化学的成分の測定はすべて腎機能檢査法となる. この原理に基いて尿又は血液,或は両者に就て行われた種々の測定法即ち腎機能檢査法は実に多数で,杉村先生の許に行われたものだけでも数10を数える.

肝臓機能檢査法

著者: 今永一

ページ範囲:P.510 - P.515

 私は去年日本外科学会宿題報告に於て外科的疾患の手術予後は肝臟機能と深い関係にあることを肝臟組織の生化学的或は檢鏡的檢索により証明し從つて從前肝臟機能の状態を知りその障碍ある時は庇後処置を講ずることは私共外科医にとりても甚だ重要なることを述べたのである. 從つてここに適当なる肝臟機能檢査法が問題となつて來るのである. 肝臟はその機能が障碍せられても何等特有なる自覚症もなく又普通の診断法による他覚的所見も不定なるがため肝臟機能障碍の程度は何等かの生理学的或は生化学的方法によりて知らなければならず,この数十年來多数の先輩諸家がこの点に就て努力を続けて來たのである. その結果肝臟には多岐に亘る機能が存するがためにここに多数の肝機能檢査法が考案せられるに至つたことは当然のことである. これ等檢査法をすべてここに記述することは興味もなく又意味もないので私は先づ数多い檢査法をその由来する所の機能に從つて分類しその中一般に多く用いられてよいと思われる方法に就て述べ次で私の教室に於て主として行なつている方法及これに関しての研究結果の大要を述べ読者諸賢の御参考に供したいと思う次第である.

外科に於ける自律神經の機能檢査法

著者: 中山恒明

ページ範囲:P.516 - P.519

 「臨牀外科」の編集部から表題の如き原稿を依頼されたがこの自律神経機能檢査法は特に外科に於て特長づけられた何物もなくそれわ一般患者に於て施行せられている方法に從つて我々の所でも施行しているに過ぎなく,それ等の方法は既に成書に記載せられたものであり,最近でも東大沖中教授の自律神経檢査法なる單行本も発行せられている. しかし私は最近喘息患者とか又特発性脱疽等の謂所自律神経支配障碍による疾患を多数加療するの機会を得て二,三其の檢索を行つたので其の檢査法と成績とに就いて簡單に記載して皆様に参考に供する次第である.
 既に御存知の様に1909年エッピンゲル並にヘス氏は臨床にこの自律神経系の病的状態と思われる緊張異状特に交感神経と迷走神軽との緊張異状が実驗的の根拠から藥理学的に実証せられる事を提唱し,又臨床的檢索の結果健常者では交感神経と迷走神経とは拮抗作用があつてこの両者に依つて支配されている臟器は一定の平衡状態を保つているのであるが,或場合には交感神経の緊張の方が強く,又或場合には迷走神経の緊張の方が強い場合がありそれ等は,アドレナリン及びピロカルピンの注射に依り明らかに区別し得る事を報告している. これが具体的に自律神経性の反應を藥物注射に依つて決定せんとした最初のもので今日我々の臨床上に使用しているジンパチコトニー並にワゴトニーなる命名も氏等に依るものである.

肺機能障碍と其の檢査法

著者: 香川輝正 ,   吉栖正之

ページ範囲:P.520 - P.524

 胸廓成形術,肋膜外充填術,肺葉切除術等の所謂肺結核の外科的療法は一般に肺機能の部分的曠置を意味するものであり,又手術後しばしば肺機能障碍を伴ふ事があるから手術適應乃至手術量の判定を行う場合には術者は肺機能に就て常に正しい認識を有する事が必要とされる.
 最近之等の諸手術は術式,手技の改良,抗生物質の應用等と相俟つて飛躍的な進歩を逐げ,現在全國各地に日常多数に実施される様になつた. 而るに手術の臨牀的普遍性に比して他方その裏附けとなるべき機能病理の方面に於ては尚日常の臨牀檢査手技として行われる域に達していない様である. 從つて茲に肺機能障碍の諸相と,その檢査法に就て若干の批判的考察を試みる事は張ち無意義ではなかろうかと思う.

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外科領域に於ける血清コバルト反應

著者: 橫田浩 ,   河本宗之

ページ範囲:P.525 - P.528

 血清の熱凝析に基く膠質化学反應として,井上内科門下1)−3)は可檢膠質への添加物に塩化コバルトを使うと,僅かの濃度差でも非凝析域との境が鮮明に現れ,肉眼判定が容易であり,又凝析帶も比較的広いものとして血清コバルト反應(Co-R)を提唱した.
 本反應に関してはまだ同門下の外には檢討成績の発表がない様であり,吾々之を外科的疾患に就て行い,手術の前後や,2,3疾患の経過に伴う変動を見,血清蛋白との関係を吟味し,更に2,3の肝機能檢査成績と比べて,若干興味ある結果を得たので簡單に報告したい.

巨大な胸腔内神経鞘腫(Neurinom)の全剔治癒例

著者: 榊原仟 ,   甲田安二郞

ページ範囲:P.529 - P.531

 胸壁内の巨大なNeurinomを全剔治癒せしめたので報告する.

特発性進行性皮膚壊疽の1例

著者: 若松不二夫

ページ範囲:P.532 - P.533

緒言
 進行性皮膚壊疽の多くは侵蝕性として術後に発生するものが多い. 特に腹部に多く見られるものである. 最近私は特発性に頸部,項部,肩胛部及び背部に数多くの進行性の皮膚壊疽を起した極めて珍らしい例に遭遇したので茲に報告する.

自律神経人爲的變調時に於ける末梢血行の態度—1. 交感神経遮断肢について

著者: 天瀨文藏

ページ範囲:P.534 - P.537

 末稍血行障碍或いはこれに起因する治癒障碍に対して行われて耒た外科的療法も決して少くはないが,必ずしも常に滿足な成績を得ているとはいえない. のみならず時には却つて増惡をみる場合すらある. これらの原因の中にはかゝる操作自体が直接血行に及ぼす惡影響もまた考慮さるべき場合もあり,又從耒これらを対象とした交感神経外科,頸動脈毬外科方面等の間の相違或は相似性に就て檢討するのもあながち無爲な事ではないと思うので,先づ順序として本篇では交感神経遮断肢特に血管内腔に器質的変化を認めないものについて,主として季節及び環境温度の変化に対する皮膚並びに皮下温の消長を追求し,かゝる方面から末稍血管の態度を観察した結果について述べる.
 交感神経遮断は星状神経節(Stと略)以下第7胸部交感神軽節(Th7と略)までの間の任意の神経節を切除或は酒精注射し,実驗は術後久野氏法. Jue—rgensen氏法,Minor氏法により発汗測定を行い,或は酒精注射例のうちには術後一定期日の後に切除術をも行いその檢鏡的所見からも,ともにその遮断の確実であることを確認したものについて行つた. 皮膚及び皮下温測定には銅コンスタンタン單線熔接熱電対を使用し,電位差計を輪道に直列に入れ反照檢流計の零点決定法を採用した. また測定は,皮膚温がその環境に順應するまで即ち少くとも1時間以上室温に露出した後に始めて開始しく緒方1)),室温は22℃〜25℃に,測定時刻も一定にした. また環境の変化に対する反應を観察した場合は,寒冷及び暑熱動機としてそれぞれ最低-20℃及び最高+45℃までの間の種々な温度の実驗室を用い,この場合は総て測定部位のみ露出し他の身体部位は着衣の儘行つた.

治癒困難なりし肺壊疽の症例

著者: 圓山一郞

ページ範囲:P.538 - P.539

緒言
 肺壞疽の治療法としては,從耒保存的療法と外科的療法との2つに分けられ,前者には藥液吸入療法(ペニシリン,石炭酸,テレビン油),気管内注入法(モルヨドール,ペニシリン),注射療法(ズ剤,ペ剤,サルバルサン等),理学的療法(超短波,レントゲン)等があり,後者には横隔膜神経捻除術,人工気胸術,胸廓成形術等の虚脱療法,肺切開術,肺切除術等があるが,今日の様に化学的療法が発達している現状では,先づ一定期間保存的療法を行い効果があらわれない時は時機を失せずに外科的療法,殊に肺切開術を行うのが最適の療法と思う。最近余は2例の肺壊疽患者に肺切開術をなし,更に種々の化学療法を併用したが,治癒に到り得なかつた症例を経驗したので茲に報告し大方の御批判を仰ぐ次第である。

米國外科

ページ範囲:P.544 - P.545

THE JOURNAL OF THORACICSURGERY
 Vol. 18. No. 3. June 1949.
1. The Segmental aud Lobular Physiology and Pathology of the Lung. E. D . Chur- chill M. D.……………………………………273

集会

ページ範囲:P.554 - P.555

 東京外科集談会 第480回 昭和24.9.17.
1. 虫垂突起 Myxoglobuloseの1例  都立大久保病院 天谷勇三

人事消息

ページ範囲:P.555 - P.555

 ◇丸田公雄氏 東北大学助教授の氏は松本医大教授に任せられ外科学教室勤務を被命.
 ◇白田 佐氏 京都逓信病院外科部長に就任さる.

新医療関係法の解説・9

法第十八條但書の解設説

ページ範囲:P.528 - P.528

 医療法第十八條但書に「但し. 病院又は診療所々在地の都道府縣知事の許可を受けた場合はこの限りでない」とするが,許可の基準は調剤数によにものなりや。新設の病院又は診療所は一應見込数によるも可なりや。
 右の如き疑義を愛媛縣衞生部長から厚生省に接せたので,医務局長は愛媛縣知事を経て左の回答を與え,医療法第十八條但書の解説を発表した。

臨床講義

ペルテス氏病と結核性股関節炎との鑑別

著者: 岩原寅猪 ,   今中欣一

ページ範囲:P.540 - P.543

 教授 プラクチカントの方,2人前へ出て下さい. 今日御目に掛ける患者は,少し小柄ですが,10歳の男の御子さんであります.
 歩行障碍を訴えて來ました. 昨年の9月頃遊戲中,友人が右股関節附近にのっかつた,と称しております. 家の人は,それ以來跛行するのが目に附いたと云つております. 家族歴にも,特別之と云う事はありません. 生れは群馬縣であります. 1月生れの10歳の男の子で9歳の時より文句が起つた訳であります. サア,何を考えますか?

外科醫のノート

膀胱穿刺

著者: 金子榮壽

ページ範囲:P.546 - P.547

 尿道損傷のために,尿道からの排尿が不能であり,且つ尿道内にカテーテルの挿入が困難な場合の尿閉救急処置として,膀胱穿剌は先づ行わねばならぬものである.
 尿道狹窄・前立腺肥大症・結石若くは異物の尿道内嵌入に因つても尿閉は起るが,尿道からのカテーテル挿入に種々便利な器械が考按され,又挿入手技に進歩の著しい現今では,膀胱穿剌を軽卒に行うことが戒められていて,泌尿科医は,その理由もなく,膀胱穿剌を行うことを恥辱とさえ考えている程である. 併し,その適應症に対しては,躊躇なく敢行すべきこと勿論である.

外科と病理

剖檢により始めて診斷された細網肉腫轉移症

著者: 工藤達之

ページ範囲:P.547 - P.548

 病氣の診断は一度誤つた方向に向つてしまうとなかなか正しい軌道に復し難いものである. 殊に檢査成績を信頼している場合,成績が誤つていると,一抹の疑念を抱きながらもしらずしらず強い力で迷路に引込まれてしまう. 又症状が各科の領域に跨つて出現すると,各科の医師はそれぞれの立場から患者を診察することになるが,主治医に敬意を表する一方何か責任の軽い気持も手つだつて突込みが不足し,いつの間にか船が山に登つてしまうことがなきにしもあらずである. そんな症例の剖檢に立会つて後悔と落胆の気持を味つた経驗は必ずしも筆者一人のものではないと想像する.
 この報告は本学病院の小兒科に入院した5歳1月の女兒の病歴である. 診療には眼科,耳鼻科,整形外科,外科,檢査には病理学教室,細菌学教室が関與している.

最近の外國外科

—America—破傷風の治療法,他

著者: ,  

ページ範囲:P.594 - P.553

 スマサース及びウイードの両氏は86例の破傷風患者に就て最近研究した結果から,その治療法を次の様な形式で施すべきことを識つたと報告している.
 患者が入院した時は直ちに1%破傷風抗毒素液を以て皮膚並に結膜試驗を施すが,その結果,もし患者が血清に対する感作を有するのを認めた時には,先づ脱感作処置を施すか或は非感作性抗毒素血清を使用する.又破傷風菌が感染している創が発見された場合には抗毒素(血清)を創の周囲に局所的に1万單位,靜脈内に5万單位注射する.感染創を発見し難い場合には6万單位の抗毒素を全部靜脈内に往射する.又前に述べた感作試驗を施すや直ちに油蝋性d-tubocurarineを筋肉内に注射する.なお痙攣の直接の処置としてはintocostrin(精製したクラーレの有効成分の製剤)の靜脈内注射をしてもよい.しかし,著者たちはその場合にエーテル麻醉を施すことゝし,なおそのために患者を手術室に移し,麻醉後に2万單位の破傷風抗毒素血清を脊髄硬膜内に注射する.又この際に感染創の手術的清掃もする.手術の際には勿論,酸素,喉頭鏡管,気管挿入管,吸引装置も同時に準備しておく.ペニシリンは破傷風菌の毒素に対して,又全身的破傷風の病症治療上に於ては直接の臨床的効果はないが,気道の感染を防ぎ,創の化膿に作用せしめる意味で,毎3時間法注射を施す.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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