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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻1号

1985年01月発行

雑誌目次

特集 最近の経腸栄養法と外科

適応をどうするか

著者: 小越章平

ページ範囲:P.17 - P.21

 経腸栄養の歴史は医療のなかでも,かなり長いといわれている.とくに消化器外科においては各種手術法には必ずといつてよいように経管栄養の問題がついてまわつた.腸管再建にあたつて,一本のチューブが吻合部を越えて挿入されているかいないかで,外科医の術後の安心感はかわる.これは現在でも同様であるが使用される経腸栄養の内容が長い努力にもかかわらず決定的なものを欠いていた.このように経腸栄養は,本来外科領域における栄養補給法の主流をなしていたものであったが,高カロリー輸液の大きな臨床効果の蔭にかくれた感があつた.成分栄養法の導入後再び息を吹きかえした経腸栄養の新しい適応は,いまさらに拡大されつつある.

最近の経腸栄養剤とその特徴

著者: 畠山勝義 ,   小山真 ,   山本睦生 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.23 - P.31

 経腸栄養剤には大きく分類すると自然(または天然)流動食と人工濃厚流動食がある.前者はさらに普通流動食,ミキサー食,天然濃厚流動食に分けられるが,種々の理由により今日これらを用いる機会は少なくなつている.その反面,人工濃厚流動食はその組成が自由に変えられるという利点より多種のものが市販されており,特にelemental dietによるenteral hyperalimentationという概念が導入されて以来,intravenous hy—peralimentationと匹敵する栄養法として注目され,広く使用されるに至つている.しかしこれらの名称と定義に多少の混乱があるのが現状であるので,ここでは現時点での私どもの見解による分類を示しながら,それらの特徴を述べてみる.

実施法—器具,器械および投与法

著者: 遠藤昌夫 ,   松井淳一 ,   棚橋達一郎 ,   羽金和彦 ,   勝俣慶三 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.33 - P.41

 成分栄養法の導入を契機に外科領域における経腸栄養法が再び注目され,経腸的高カロリー栄養法という領域の確立にまで発展した.各種の新しい栄養剤の開発と共に,その投与法にも多くの改良が加えられている.本稿では与えられたテーマに従い,完全経腸栄養法における栄養剤の投与経路,投与法およびその管理を実施するために開発された経腸栄養用の器具,器械について解説を試みた.
 栄養剤の投与経路における特徴は,経鼻十二指腸あるいは空腸内投与法の普及であり,そのための各種のチューブが工夫されている.栄養投与のための消化管瘻の造設では,tube jejunostomyが賞用されるようになつた.また栄養剤の注入システムの管理は静脈内輸液管理法に近づいており,より正確な注入法が可能になつた.

経腸栄養法の2〜3の問題点—成分栄養法の副作用と合併症

著者: 大熊利忠

ページ範囲:P.43 - P.48

 成分栄養法(ED)施行時の副作用および合併症について食道癌根治術および胃全摘術症例を中心とし術後7日目までの術直後の症例と安定時の一般的な病期とに分けて検討した.
 術直後では術後3日以内にED投与がなされた症例が60例中51例(85%)であり,うち16例(26.7%)が7日以内に40kcal/日の投与が可能であつた.この時期の最も多い合併症は腹部膨満であり45例(75%)にみられ,このためEDの注入を中止した症例が12例(20%)であった.下痢の発生は少なく両時期に差はみられなかつた.インスリン使用例については,TPNに比しED施行時の使用量が少ない場合がみられた.長期施行症例の場合には必ず脂肪を併用すべきである.

経腸栄養法の実際—食道・胃手術前後の経腸栄養

著者: 碓井貞仁 ,   佐藤博

ページ範囲:P.49 - P.54

 食道・胃手術前後の経腸栄養は高カロリー輸液同様不可欠のもので,栄養成分を消化吸収できる腸管の存在する例は基本的に経腸栄養の適応といつてよい.本法の意義は術前においては低栄養状態の改善,術後は一定期間の栄養供給ならびに合併症に対する治療効果にある.通常,経鼻的に挿入留置した栄養チューブを介して1kcal/mlに調製した溶液を100ml/hr以下の速度で持続的に点滴注入する.経腸栄養法は施行・管理が安全かつ容易で副作用も少なく,栄養状態の改善,消化管瘻孔の治癒などの治療効果の大きいすぐれた栄養法として高く評価される.

経腸栄養法の実際—小腸広範囲切除後

著者: 福島恒男 ,   土屋周二

ページ範囲:P.55 - P.58

 小腸広範囲切除後の臨床経過は典型的には3期に分けられる.第1期の下痢のひどい時期には経静脈的高カロリー輸液を行い.2〜3週間後,第2期には徐々に成分栄養剤による経腸栄養を行う.残存腸管機能を配慮した量を投与することが肝要で,過剰投与すると下痢による脱水,電解質喪失をきたす.
 経腸栄養そのものが残存腸管の再生を促進するので次第に増量する.第3期になると成分栄養の依存度は低下するが,補助的にこれを長期にわたつて投与しなければならない症例もある.

経腸栄養法の実際—大腸手術の術前準備

著者: 戸塚守夫

ページ範囲:P.59 - P.64

 完全静脈栄養法(以下TPN)は外科手術の適応を拡大し,術後成績の向上に大きな役割をはたした.大腸手術においても例外ではないが,待期的手術例では経腸栄養法によりTPNにおとらないcolon preparationが可能である.経腸栄養剤の無残渣性,投与の容易性,高カロリー性を利用して,従来法と同様のmechanical cleaning,bacte—rial cleaningの効果をうると同時に,栄養学的な効果として十分なカロリー補給ができる.特に従来法ではしばしば困難とされた大腸狭窄例や宿便例でも適応できる.未だba—cterial cleaningの効果については見解の一致をみない点もあるが,大腸手術の術前準備に経腸栄養法はすぐれた方法として普及されつつある.

経腸栄養法の実際—肝・胆道・膵の手術後

著者: 藤田秀春 ,   能登啓文 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.65 - P.70

 肝,胆道,膵の手術後に必要な栄養学的諸問題を考察し,病態による経腸栄養法施行上の留意点と効果につき検討した.
 肝切除術後の代謝障害はことに障害肝の場合,蛋白合成能を始めBCAA/AA比低下などの異常が出現する.高カロリー,高蛋白及びBCAA richの経腸栄養はこれを改善し肝再生にも効果的である.膵切除後の内外分泌障害に関して,切除量との関係を実験及び臨床で比較すると,リンパ節郭清の高度な症例は単なる膵切除量以上の障害が認められる.経腸栄養投与は下痢等の合併症を生じ易いが,その制御により良好な栄養管理がなされた.
 経腸栄養法は肝,胆道,膵術直後および遠隔時の肝再生,肝障害や低栄養状態に対する有効な治療法と考えられる.

経腸栄養法の実際—炎症性腸疾患

著者: 樋渡信夫 ,   今野保敏 ,   小林和人 ,   後藤由夫 ,   遠藤克博 ,   渡辺晃

ページ範囲:P.73 - P.80

 炎症性腸疾患に対するED療法の効果を検討した.クローン病35例に対して,エレンタール2,400kcal/日を単独で平均60日間投与したところ,28例が著効を示し,30例でCDAIが150以下となつた.各種の炎症や栄養のパラメーターも改善し,X線,内視鏡的にも潰瘍性病変や炎症の消失〜著明な改善を認めた.しかし長期経過例では狭窄の改善や内瘻の閉鎖をみることはまれであつた.また経口摂取再開後1年以内に約半数の症例で再燃がみられた.ED療法は従来の薬物療法と比較して,primary therapyとしての有用性を認め,現時点では最良の治療法と考えるが,その限界も示された,潰瘍性大腸炎では慢性持続型に対してadjunctive therapyとしての効果が期待できる.

経腸栄養法の実際—小児外科

著者: 水田祥代 ,   池田恵一

ページ範囲:P.81 - P.88

 消化器疾患を有する小児外科患児63例にエレンタール,ED-P,T−330,クリニミールを用いて計76回の経腸栄養を施行した.施行期間は14日以内のものが多かつたが,3年以上投与中のクローン病の患児を含めて11例は30日以上の長期施行例であつた.
 経腸栄養の適応は,①経静脈栄養からの離脱,②大腸手術前後の処置,③short bowel syndromeおよび④慢性腸疾患の栄養管理,⑤手術創の安静(肛門部の手術),⑥腸瘻の自然閉鎖をはかるためなどであつたが,いずれも良好な成績をえている.
 経腸栄養は副作用も少なく,経静脈栄養にくらべてより生理的な栄養法として注目されているが,栄養の維持のみならず成長発育を要する小児の場合,その代謝の特異性を考慮した小児,とくに新生児,乳児専用の経腸栄養剤の開発が必要である.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・23

回腸末端カルチノイド腫瘍

著者: 森永正二郎 ,   広田映五 ,   小山靖夫 ,   北条慶一 ,   森谷冝皓 ,   牛尾恭輔

ページ範囲:P.14 - P.15

 直腸癌の術前検査で偶然見出された回腸末端カルチノイド腫瘍の1例を供覧する.

原典を繙く・2

Dieulafoy潰瘍(その2)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.

著者: 島津久明

ページ範囲:P.89 - P.91

 その機会は訪れました.状況は以下のとおりであります.1897年10月7日午後11時,22歳の青年が旺盛な食欲で夕食を摂つたのち,おとなしく家路につきました.Ecoles通りとMontagne-Sainte-Genevière通りの角まできたとき,彼は突然不快感と悪心に襲われ,その直後に口一杯の多量の血液を吐出しました.「歩道の上が血の海になりましたので,おそらく,1,2lの血を吐いたと思います」と彼は私たちに申しました.この男は弱りきつた状態で帰宅して,そのまま床につき,夜はよく眠つております.翌朝,起きて出かけ,《体力をつけるために》,食事をたつぷり作り,かなりの肉を食べています.昼間はとくに変つたことは起こつておりませんが,つぎの夜の2時頃,彼は再び前々日の夕方と同じような血液の嘔吐に見舞われました.血液は褐色がかり,液状の部分と凝血塊が混つていたとのことでした.その翌日とその後数日間,この青年は特別の胃症状,疼痛,嘔吐などを全く経験することなく過しておりますが,彼は極度に衰弱して全く仕事をすることができなくなりましたので,《元気を取りもどすために》,血のしたたるような牛肉を食べ,ブドウ酒を飲み続けています.
 症状が次第に悪くなると感じて,彼は10月13日水曜日の夕方,Hôtel-Dieu病院にきております.翌朝,この患者をみましたとき,私は皮膚の粘膜が全く色を失つているのに驚きました.

文献抄録

膵,膨大部,その他関連領域の癌に対するRegional Pancreatectomy

著者: 植松繁人

ページ範囲:P.92 - P.92

 著者は,膵および膵頭十二指腸領域の悪性腫瘍に対し,腫瘍を周囲軟部組織,所属リンパ組織,門脈とともに,en blockに切除する手術法regional pancreatectomy(以下R. P.)を考案した(Surgery 73:307,1973).今回の報告は,1972〜1982に著者が扱つたこの領域の悪性腫瘍270例(切除率30%)のうち,R. P. 施行の61例に検討を加えたものである.
 61例(男34,女27,年齢23〜68歳)は膵癌35例,他の悪性腫瘍21例,術後良性病変と判明した6例である.各症例につき,著者の作成したTNM分類によるstagingを行つた.膵癌を除く21例については,生存例43%,生存期間3〜92カ月,再発死亡33%である.膵癌の成績は,これに比べ不良で,生存例20%,生存期間3〜18カ月,再発死亡28%である.

画像診断 What sign?

"Parallel channel" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.93 - P.93

 "parallel channel" sign1)は超音波検査による黄疸の検索にさいして初期の閉塞性黄疸でみられる軽度の肝内胆管の拡張を認識するために有用な所見である.正常の左・右肝内胆管は超音波で描出されることは稀であるが,拡張が起こると左・右の主門脈枝の前方をそれて併走する管腔として描出される(図).この場合,門脈の前方にみられる管腔の直径が門脈のそれとほぼ同程度であり,併走する距離が2cm以上にわたり,また管腔の走向に蛇行がみられるような場合にはこの管腔構造物が胆管であることがより確実となる.特に右肝動脈あるいは正常の右肝内胆管が門脈右枝の前方に管腔構造として描出されることがあるが,これらは拡張した胆管に比べより直線的な走向をすること,その径が急激に減少すること,径が門脈の1/3あるいはそれ以下であることなどから鑑別がつく."parallel channel" signがみられる症例ではPTCあるいはERCPによる閉塞のメカニズムの検索が必要となる.

腹部エコー像のPitfall・6

脈管内エコー

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.95 - P.97

この患者の診断は?
 症例1 64歳 男性
 腹水,意識障害で入院.入院時のエコー像を示す.(図1,図2)

臨床研究

残胃癌について

著者: 三輪恕昭

ページ範囲:P.99 - P.103

はじめに
 胃疾患の診断技術,胃疾患に対する関心の高まりにより,胃癌の治療成績は向上してきている.
 一方残胃病変に関しては,近年欧米で残胃癌の報告が数多くみられている1-3)のに対し,わが国ではやつと関心がもたれはじめたばかりといつても過言ではない4,5)

大腸絨毛腫瘍の臨床病理学的特徴と治療法について

著者: 金光泰石 ,   松本幸三 ,   鈴村和義 ,   石井俊昭 ,   加藤健一 ,   成瀬隆吉 ,   小池明彦 ,   山本貞博

ページ範囲:P.105 - P.110

はじめに
 大腸の絨毛腫瘍は絨毛状増殖像を肉眼的,組織学的特徴とし,高い癌化率をはじめ種々の臨床,病理学的所見を呈する腫瘍として注目されている1-3)
 本腫瘍は通常みられる大腸腺腫と異なり,高齢者に多く,癌化率が高く,腫瘍は大きく無茎性で,直腸に好発する特徴がある.また腫瘍の粘液分泌能も高く,時に水分電解質異常を主とする特異なdepletion syndrome4)を来たすこともある.

食道癌上縦隔転移のCT診断—治療方針決定上の意義

著者: 松原敏樹 ,   木下巌 ,   中川健 ,   大橋一郎 ,   堀雅晴 ,   梶谷鐶 ,   金田浩一 ,   加藤洋

ページ範囲:P.111 - P.117

はじめに
 左右反回神経沿線の傍気管領域は食道癌の転移および再発の好発部位1-3)であり,手術時の転移の有無によつてその予後は大きく異なる.食道癌の手術および合併療法の方針を立てるために,CTによって上縦隔の状況を把握することは極めて重要である.食道癌切除例,再発例,リンパ系高度進展例のCT像より,CTによる転移診断能及び食道癌の上縦隔リンパ系進展様式を検討した.

胃癌の術前Stage診断—超音波断層法及び血管造影法を併用して

著者: 竹中温 ,   本田光世 ,   下間正隆 ,   藤井宏二 ,   高橋滋 ,   泉浩 ,   加藤元一 ,   田内逸人 ,   沢井清司 ,   徳田一 ,   大村誠 ,   三上正嗣

ページ範囲:P.119 - P.125

はじめに
 術前に胃癌の拡がりを把握することは,根治手術の可否あるいは手術々式の決定に際して極めて重要であると思われる.近年,画像診断の発達により,超音波断層法(以下US),血管造影及びCTを用いて,胃癌の壁深達度,肝転移,リンパ節転移及び腹膜播種の術前診断に関する報告がなされつつある.今回われわれはUSと血管造影を併用することにより胃癌進行度を術前にどの程度推定できるかを検討し,若干の知見を得たので報告する.

臨床報告

免疫組織化学的検討によつて確定診断した胃RLHの1例

著者: 原俊介 ,   松波英寿 ,   加納宣康 ,   雑賀俊夫 ,   松原長樹 ,   小山明宏 ,   本間光雄 ,   小山登 ,   森一郎

ページ範囲:P.127 - P.130

はじめに
 胃のreactive lymphoreticular hyperplasia(以後胃RLH)は現在良性病変として広く理解されているが,良・悪性境界領域病変と思われるものも多々見られ,実際には悪性リンパ腫との間に明らかな一線を画することの出来ない場合も少なくない.われわれは,いわゆる表層拡大型胃悪性リンパ腫との鑑別が困難であり,切除標本に対し酸素抗体法を用いた免疫組織化学的検討を行つた胃RLHの1例を経験したので報告する.

十二指腸と総胆管の狭窄を呈した慢性膵炎の1例

著者: 森浦滋明 ,   鈴木一男 ,   熊谷太郎 ,   千木良晴ひこ ,   平井孝 ,   向山博夫 ,   生田宏次 ,   坂田慶太 ,   久納孝夫 ,   山本宏明 ,   柴田佳久 ,   山本義樹

ページ範囲:P.131 - P.135

はじめに
 膵炎は多様な症状を呈し,消化管や胆管にも変化を来たすことはよく知られているが,消化管に高度の狭窄を来すことは稀である.我々は十二指腸と総胆管の狭窄に,巨大な胃潰瘍を合併した慢性膵炎の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

急性淋菌性汎発性腹膜炎の1例

著者: 一戸兵部 ,   吉岡岑生 ,   星信 ,   石川惟愛

ページ範囲:P.137 - P.141

はじめに
 淋菌感染症(淋疾)は,性産業の隆盛と性道徳の乱れと共に増加傾向を示し,化学療法の発達した今日でも稀であつても,汎発性腹膜炎の症例を経験する.最近,激しい水様性下痢,腹痛,発熱,ショック状態で,おんぶされて来院し,急性腹膜炎の診断で開腹し,腹腔に存在する膿の塗抹染色検鏡検査で,多核白血球内に存在するグラム陰性双球菌像を見いだしたため,急性淋菌性汎発性腹膜炎と診断し,加療治癒した症例を経験したので,文献と共に報告する.

原発性十二指腸癌の2例

著者: 真田英次 ,   成末允勇 ,   村松友義 ,   小林敏幸 ,   高橋侃 ,   小笠原長康 ,   坂本昌士

ページ範囲:P.143 - P.148

はじめに
 原発性十二指腸癌(以下本症)は,比較的稀な疾患であるが,近年上部消化管X線検査のルーチン化および内視鏡の進歩などによつて,その報告例は増加する傾向にある.今回われわれは,2例の十二指腸乳頭上部癌(1例は空置した十二指腸断端に発生)に膵頭十二指腸切除を行い,うち1例には肝動脈の血行再建術も付加したので,報告する.

胃癌手術後のヘルペス脳炎の1治験例

著者: 岩下俊光 ,   松尾嘉彦 ,   斉藤裕次 ,   江里口健次郎

ページ範囲:P.149 - P.151

はじめに
 ヘルペス脳炎は,ウィルス脳炎のうちで頻度が高く,死亡率も高いが,早期に診断して治療すれば,著しく死亡率を下げうることが明らかにされている1,2)
 今回,われわれは,胃癌根治手術術後に発症し,早期にヘルペス脳炎を疑い,アデニン・アラビノシド(adenine arabinoside,以下Ara-Aと略す)を投与し何らの後遺症もなく治癒させた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

直腸癌を合併した直腸カルチノイドの1例

著者: 曾我浩之 ,   横山伸二 ,   池田昭彦 ,   小松原正吉 ,   寺本滋 ,   田口孝爾 ,   赤木制二 ,   溝渕光一 ,   佐藤源

ページ範囲:P.153 - P.156

はじめに
 消化管カルチノイドは粘膜深部の腺底部細胞に発生して粘膜下腫瘍の発育形態をとるが,臨床的にはmalig—nant potentialを有し,組織発生や悪性度,治療方法の点から注目されている腫瘍である.また,多発性や他の悪性腫瘍の合併頻度の高いことも知られている.
 われわれは直腸に癌腫とカルチノイドが併存した1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

腸閉塞を呈した回腸simple ulcerの1例

著者: 大村健二 ,   酒徳光明 ,   川浦幸光 ,   岩喬 ,   中沼安二 ,   石田一樹 ,   横井克巳

ページ範囲:P.157 - P.160

はじめに
 我々は腸閉塞を呈した回腸末端のsimple ulcerの1例を経験したので報告する.

Topics

Fibrin接着剤の創傷治癒に対する影響と臨床応用

著者: 中村紀夫

ページ範囲:P.161 - P.166

はじめに
 外科の手術は,歴史的にみると,外傷の縫合から始まつたといえよう.開いた傷口をどのように接着するかということが,外科の原点であつたと思われる.この接着という目的のために,紀元前3000年の昔から今日に至るまで,糸による縫合が行われてきたわけである.これは,体表のみならず消化管においても同様であるが,消化管の手術においては消化液の存在等により治癒の条件が悪くなる.場合によつては,創の接着のために必要であるべき縫合糸がかえつて治癒を障害し縫合不全を起こすこともある.
 そこで,糸に対して改良が加えられ,組織反応の少ない材質のものや,生体内に吸収されるものが開発されてきた.その一方,縫合糸を使わない創の接着法はないか,ということで,生体内に存在するfibrinogenを接着物質として用いてみようという試みがおこつてきた,この試みは,1940年代から検討されてきたが,当時はことごとく失敗に終つた.というのも,fibrinogenはかなり溶けにくいものであるが,創の接着に用いるためには,fibrinogen液がかなりの高濃度でなければならない.その高濃度のfibrinogen液が当時の技術では得られなかつたのである.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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