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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻10号

1985年09月発行

雑誌目次

特集 症例による急性腹症の画像診断

胃・十二指腸潰瘍穿孔

著者: 登政和 ,   白川元昭

ページ範囲:P.1173 - P.1176

症例
 患者 30歳男子.数ヵ月前より空腹時心窩部痛の既往あり.午前10時ごろ,突然上腹部に激痛出現し,すみやかに腹部全体にひろがる.近医に入院,保存的に経過を見ていたが,症状軽減せず,翌日当院救急棟へ転送された.
 現症 意識清明.顔面苦悶状腹痛のため体動制限あり.呼吸は浅い胸式呼吸.腹部全体に著明な圧痛,反動痛および筋性防御を認め,いわゆる板状硬の状態.腸雑音は消失.

小腸穿孔

著者: 三條健昌 ,   出月康夫

ページ範囲:P.1177 - P.1179

症例
 患者 63歳,男
 診断 小腸穿孔

大腸穿孔

著者: 三條健昌 ,   出月康夫

ページ範囲:P.1181 - P.1182

症例
 患者 69歳,男
 主訴 腹痛

大腸憩室炎

著者: 浅田学 ,   登政和

ページ範囲:P.1183 - P.1185

症例
 症例1 62歳,男性
 主訴 下腹部痛,発熱

限局性腸炎

著者: 久晃生 ,   平松京一

ページ範囲:P.1187 - P.1189

 Crohn病の原因不明の非感染性慢性腸疾患で,潰瘍性大腸炎と共に炎症性腸疾患として一括される.本邦での発生頻度は10万人当り0.23人で,若年者に多くみられる.日本消化器病Crohn病検討委員会では,診断基準を以下の様に定めている.
 (a)非連続性または区域性病変

腸間膜血管塞栓症

著者: 久晃生 ,   平松京一

ページ範囲:P.1191 - P.1192

 急性腸間膜血管塞栓症は,一般に予後不良であり,早期発見,早期治療が患者の予後を大きく左右する.原因不明の腹痛で,腸間膜の虚血性疾患が疑われる場合には,早期に血管造影を施行しなければならない.

虫垂炎穿孔

著者: 登政和

ページ範囲:P.1193 - P.1195

症例
 患者 17歳,男子.1981年10月29日,腹痛で他院に入院.白血球数9,800,翌日より高熱,下痢が続き,抗生物質,グロブリン製剤を投与.入院6日目ダクラス窩穿刺で膿汁を採取.培養:pseudomonas,klebsiela⊕.白血球数13,500.入院7日目,開腹術.膿汁充満のため,洗滌,ドレナージをおいたが,腹膜炎の原発巣不明.術後2日目よりふたたび高熱,病状悪化した.17日目に当院外科へ転科.また虫垂については,問い合せによると正常らしいとのことであつた.
 当院転科後の経過 翌日,ガストログラフィンを飲ませ,腹部CT施行.図1,2に示すように,右側腹部で上行結腸の外側にsoft tissue massを認めるほか,両腎にpyelogramが描出された.また転科当日の腹部単純写真の一部を図3に示す.

腸重積

著者: 登政和 ,   樋口和彦 ,   吉沢熙 ,   中原利郎

ページ範囲:P.1196 - P.1198

症例
 患者 1歳7ヵ月男子. 1ヵ月前より感冒様症状(咳漱,鼻汁など)があり,近医受診内服を受けたが完治しないままであつた.来院当rl午前中から不機嫌になり,顔色がわるく,腹痛,食欲の低下があつた.しかし吐気,嘔吐はなかつた,近医を受診帰宅後,グリセリン涜腸を施行したところ,苺ゼリー状の粘血便の排泄が見られ,近医を再受診,腸重積の疑いで当院に紹介された.
 現症 来院時,発熱,四肢冷感チアノーゼ,脱水はなく,全身状態は比較的良好であつた.腹満はなく,右上腹部に腫瘤らしきものを触知した.

小児そけいヘルニア嵌頓

著者: 登政和 ,   野村祐二

ページ範囲:P.1199 - P.1201

症例
 患者 6ヵ月男児
 主訴 腹部膨満,嘔吐

イレウス

著者: 馬越正通

ページ範囲:P.1203 - P.1205

 症例 症例1 20歳,男.
 従来便秘気味であつたが,3日前より腹部膨満感があり,次第に増強し,近医で浣腸などの処置を受けたが治癒しないため来院.

腹部大動脈瘤破裂

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.1207 - P.1209

症例
 80歳,男性.生来健康で,年齢に比し活動的.1人住まいをしていた.時々,腰痛がある以外,特記すべき既往歴はない.入院当日の午前11時頃,屋内に倒れている所を,訪問してきた家人に発見され,救急センターに搬入された.意識低下のため,胸痛,腹痛,腰痛の有無など,一切の病歴は聴取不能である.
 最高血圧60,脈博140と明らかなショック状態であつた.直ちに下肢高挙,酸素投与,鎖骨下静脈穿刺による静脈確保,CVPの測定,EKG,動脈血ガス分析などがチェックされた.EKGに異常なく,CVPは低値で肺水腫の所見のないことが確認されてから,乳酸加リンゲルの急速輸液を行った.1,000 mlの輸液で血圧は80まで回復し,腹部に大きな搏動性腫瘤が触知できた.超音波エコーは図1の像を示し,腹部大動脈瘤破裂と診断され,直ちに救急手術が行われた.

吻合部縫合不全

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.1210 - P.1212

症例
 82歳,男性.入院の4ヵ月前から,それまで規則的だつた便通に変化がみられ,便秘気味となつた.悪心,嘔吐,腹痛,下血などはみられていない.2ヵ月前から,便秘と下痢を繰り返すようになり,外来を受診注腸造影の結果,直腸結腸移行部に狭窄を認め,バイオプシーで腺癌と診断され,入院.
 型のごとき術前検査と準備の後,開腹術が行われた.病変は腹膜飜転部に存在し,根治的低位S字結腸直腸切除術が行われ,一期的に二層縫合による端々吻合が実施された.術中,肝硬変がみられたが,転移はない.術後も順調に経過し,直後の38度の発熱も3日目には完全に下熱,排ガス,排便もみられた.腹水貯留による腹部膨満があり,経口摂取は6日目から開始した.術後11日に至り,右下腹痛,悪寒,発熱38.8℃が出現,腹部は圧痛はあるが軟かく,腸雑音の減弱を認めた.腹部単純レントゲン写真では,麻痺性イレウスの像を呈していた(図1).絶飲食,輸液,抗生物質の投与が行われ,腹腔内膿瘍形成,吻合部縫合不全などを疑い,超音波エコーとCT検査が行われたが,腹水の存在以外には,異常所見は認められなかつた.これらの検査で,超音波では,腹水の所見にまどわされ,また腸管ガス像の存在のため,骨盤部の十分な観察がされて居らず,CTでも,十分低位の骨盤の撮影が行われていなかつたことは問題である.

急性胆嚢炎(穿孔)

著者: 高田忠敬 ,   内山勝弘 ,   長谷川浩 ,   安田秀喜 ,   四方淳一

ページ範囲:P.1213 - P.1215

症例
 患者 62歳,男性
 主訴 上腹部痛

急性膵炎

著者: 高田忠敬 ,   内山勝弘 ,   長谷川浩 ,   安田秀喜 ,   四方淳一

ページ範囲:P.1216 - P.1218

症例
 患者 40歳,男性
 主訴 上腹部痛

胆石症

著者: 高田忠敬 ,   長谷川浩 ,   内山勝弘 ,   安田秀喜 ,   四方淳一

ページ範囲:P.1219 - P.1221

症例
 患者 78歳男性
 主訴 上腹部痛,黄疸全身倦怠感.

肝,脾の破裂

著者: 堀之内宏久 ,   吉井宏 ,   山本修三

ページ範囲:P.1223 - P.1226

症例
 症例1 19歳,男性
 〔受傷機転〕単車運転中,転倒して電柱に激突,受傷30分で搬入された.

膀胱破裂

著者: 茂木正寿 ,   山本修三

ページ範囲:P.1227 - P.1229

症例
 患者 50歳,男性
 主訴 下腹部痛・血尿

尿路結石

著者: 桑原正明

ページ範囲:P.1231 - P.1233

症例
 患者 69歳,男
 現病歴 1年前から関節痛があるため整形外科医を受診,痛風の診断でザイロリック2Tを服用していた.3日前に突然,腹部激痛が出現し,検尿にて血尿が指摘されたため泌尿器科を紹介された.

急性腎盂腎炎

著者: 桑原正明

ページ範囲:P.1235 - P.1236

症例
 患者 34歳,女
 現病歴 1週間前から膀胱刺激症状があり,放置していたが2〜3日前から39℃台の発熱と共に右側腹部痛が出現してきたため受診した.同様の症状は以前から1年に1〜2度出現しており,某医で抗生物質の投与をうけ治療していたとのことであつた.

子宮外妊娠

著者: 作山攜子 ,   大沢章吾

ページ範囲:P.1237 - P.1240

症例
 症例 32歳,女性.妊娠3回,自然流産1回,人工流産2回,出産歴なし.
〔現病歴〕
 下腹部痛と性器出血のため来院した.当日のハイゴナビス値は320iuを示したので,切迫流産と診断し,保存的療法を行い帰宅させたが,2週間を経ても出血が持続するため入院となつた.この時期に施行した超音波検査で胎嚢(GS)は認められなかつた.5日後に超音波検査を行つたところ子宮外にGSが疑われ,子宮外妊娠の疑いのもとに緊急手術となつた.妊娠月数は8週であつた.

卵巣嚢腫茎捻転

著者: 作山攜子 ,   大沢章吾

ページ範囲:P.1241 - P.1244

症例
 症例1 29歳,女性で,結婚および妊娠歴はない.
〔現病歴〕
 5日前より左下腹部痛が続いており,3日前からはしだいに増強したため,尿管結石を疑い,当院泌尿器科を受診した.超音波検査にて膀胱直上に腫瘤がみられ,膀胱鏡では粘膜は正常であつたが,前壁から頂部にかけて圧排像がみられたため,卵巣腫瘍を疑い,産婦人科入院となつた.触診では右下腹部に腫瘤を触知し,圧痛が著明である.

卵巣出血

著者: 作山攜子 ,   大沢章吾

ページ範囲:P.1245 - P.1247

症例
 症例1 28歳,女性.妊娠2回,出産1回,人工中絶1回.
〔現病歴〕
 3日前より右下腹部痛があり,しだいに増強してきたため内科を受診し超音波検査を行つたところ,腹腔内出血と卵巣嚢胞が疑われ,婦人科に転科となつた.内診では性器出血はなく,子宮の大きさは正常であつたが,右ダグラス窩に抵抗を触れた.

骨盤腹膜炎

著者: 青木克彦

ページ範囲:P.1249 - P.1251

症例
 症例1 18歳,女性.
〔現病歴および理学的所見〕
 以前から生理前後にみられる腹部痛が今回強く,婦人科を受診した.左子宮付属器あたりに圧痛と腫瘤を認め,反跳性圧痛が強かつた.WBC 15,400,CRP IV(+),BSR 90mm/hr,尿中WBC 4-5/HVF,HCG(−),体温38.4℃であつた.

急性腹症を呈する腹部以外の疾患

著者: 青木克彦

ページ範囲:P.1253 - P.1255

症例
 症例1 33歳,男性.
〔現病歴および理学的所見〕
 入院当日突然,気分不快,嘔吐と心窩部激痛が出現し,救急車で近医に収容され心電図にてST上昇があつたためニトロール,オピスタンなどを投与したが症状がとれず,心筋梗塞以外の疾患が疑われて転院してきた.体温36.7℃,脈90,整,呼吸数24,血圧128/70mmHg,Hb 16.2g/dl,WBC 13,100,CRP(−),BSR 4 mm/hr,CPK 10 u,HBD 100 u,LDH 259 u.GOT 15 u,GPT 7 u,EKGでV2〜V4で高いT波を伴つたST上昇(図1)を認めた.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・2

胆嚢穿孔・胆汁瘻

著者: 松峯敬夫 ,   広田英夫 ,   嘉和知靖之 ,   成瀬好洋 ,   青木幹雄 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.1169 - P.1171

 胆嚢穿孔,胆汁瘻とも,有石胆嚢炎に起因する重要な合併症として知られている.
 いずれも比較的稀な疾患とされ,最近20年間における筆者らの経験でも,胆嚢穿孔(開放性穿孔)と呼び得るものは,1,642例の胆嚢炎手術例中,僅か5例,0.3%と少なく(表1),また胆汁瘻(胆嚢瘻)にしても,同期間中,14例を数えるに過ぎない(表2).

文献抄録

モノクローナル抗体のヒト乳癌診療への応用

著者: 福富隆志

ページ範囲:P.1256 - P.1256

 ヒト乳癌株HX 99を担癌したヌードマウスにisotopeで標識したモノクローナル抗体LICR-LON-M 8(M8)を静注し,腫瘍の移植部位あるいは標識核種の差異によるM8の分布の相違を解析した.また乳癌初回手術症例を対象として放射性M8の生体内分布,および再発症例に対する診断能力を臨床的に検討した.
 M8はHX 99が有する抗原決定基を認識するため,125I-M8静注後の放射活性は対照とした他の乳癌株1,068および正常マウス組織に比較してHX 99に有意に高かつた,また131I-RIO(anti-human glycophorin Aモノクローナル抗体)を静注した場合よりも4.8〜5.7倍高かつた.HX 99のオートラジオグラフィー(ARG)によつても免疫組織化学染色(M8抗原)と銀粒子(125I-M8)の結果はよく一致していた.

Invitation

第47回日本臨床外科医学会総会 見どころ,聴きどころ—パネリスト間の討論を活発に

著者: 中村卓次

ページ範囲:P.1257 - P.1258

はじめに
 このたび前橋市において第47回日本臨床外科医学会総会を開催させていただくことになりました.会期は昭和60年10月24日(木),25日(金),26日(土)の3日間,会場は群馬県民会館,前橋市商工会議所会館,群馬県立図書館で行う予定です.これらの3会場は同一敷地内にあり,各会場の移動にはきわめて便利な所であります.本学会は本邦の数多い学会のなかで,もつとも古い学会の1つであります.学会員は10,000名を越え,参会者も常時3,000名を越える学会であります.このような大学会を前橋市で開催させていただくことはこの上ない光栄であります.
 本学会の特徴の1つは,学会名が示す如く臨床外科医が日常遭遇する臨床的な問題点を主として討論する学会であり,動物実験のみの研究発表はご遠慮願いました.

出血との闘い・局所止血法の歴史・3

中世

著者: 安藤博

ページ範囲:P.1259 - P.1261

 西ローマ帝国が滅亡(476年)し,トルコ人によりコンスタンチノーブルが1453年に陥落され,東ローマ帝国が没落するまでの約1000年の間の中世は,文化と科学に関してはいわゆる「暗黒時代」ではあつたが,外科に関しての進歩と発展を僅かではあるが認めることが出来る.この時代の外科止血法についての歴史的事項に関して記述する.
 東ローマ帝国の首都ビザンチンでコスティニアン1世の侍医を勤めていたメソポタミアのアミダ出身のアエティオス(AetiusまたはAetios,503〜575)は,出血は焼灼で止血していたという記事がある.

原典を繙く・10

「Oddi括約筋」原著の翻訳を終えて

著者: 石川功

ページ範囲:P.1262 - P.1264

はじめに
 本誌8,9月号の2回にわたつて,Oddi括約筋の原著1)の全訳を試みたが,終りに,この翻訳に対する細かな私見とOddi括約筋に関する研究の歴史的背景などについて若干の考察を加えてみたい.
 その前に,8月号本欄の序文で,Ruggero Oddiの経歴や業績に関して十分な資料が得られなかつた旨をお断りしたところ,さつそく,読者の方々から,この件について弘前大学第2外科小野慶一教授が,最近,Oddiの生誕地を訪れ,熱心な調査をされた報告があるとの御教示を頂戴した.とくに,青森労災病院の藤田盂先生には,八戸医師会での小野教授の講演抄録2)のコピーも添附していただきました.そこで,小野教授に直接電話で伺い,"オッジ生誕120年を記念して"3)という御報告を入手させていただきました.ここに,紙面を借りて,訳者の浅学をお詑びするとともに,読者諸氏の御厚情ある御教示に深く謝意を表させていただきます.

画像診断 What sign?・30

"dilated transverse colon" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1265 - P.1265

 急性虫垂炎の診断は臨床診断であり,典型的な理学所見,検査所見を呈する症例では画像診断はあまり必要でない.反面,臨床所見が不明確な症例や穿孔,膿瘍形成あるいは小腸閉塞などを疑う例では画像診断が補助診断法として行われる.急性虫垂炎の腹部単純所見としては表に挙げられる種々のものが記載されているが,糞石(虫垂結石)を除いていずれも非特異的所見である."dilated transverse colon" signは穿孔性虫垂炎にみられる所見であり,穿孔による上行結腸のスパスムがその成因といわれている.またこの所見は急性膵炎にみられる遠位横行結腸から下行結腸のスパスムによる"left colon cut-off" signに対し,"right colon cut-off" signともよばれる.

対談

医者と患者のあいだ—最近の話題をめぐって

著者: 吉村昭 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.1266 - P.1275

 約15年前,世界各地で行われた心臓移植を題材に「神々の沈黙」を,また最近は弟の癌死をテーマに「冷い夏,熱い夏」など,医学的な問題について多くの小説を書いている吉村氏と,最新医学の現場に身を置く阿部氏に,最近話題になつていることがらについて話しあつていただいた.

My Operation—私のノウ・ハウ

胆嚢摘出術

著者: 田島芳雄

ページ範囲:P.1277 - P.1281

 適応と手術 胆嚢摘出術は日常しばしば行われる術式であり,その適応としては,胆嚢胆石症,急性胆嚢炎,胆嚢良性腫瘍,胆嚢癌(肝床の楔状切除とリンパ節郭清が必要となる),などがあげられる.このうち最も多いのは胆嚢胆石症で,疝痛発作が頻回に起こる場合,胆道造影で胆嚢が造影されない場合──胆石の胆嚢頸部あるいは胆嚢管嵌頓,胆石の胆嚢内充満,萎縮胆嚢などが原因となる──,などが手術の適応となる.急性胆嚢炎については,発症から48時間程度までは抗生物質の投与などの保存的治療を行い,この間に症状が悪化したり,あるいは不変の場合には,胆嚢摘出術を施行する.一方,保存的治療によつて症状が軽快した場合には,発症後4〜6週間経過して炎症が十分に消退した時期に手術を行つている.無症状胆石silent stoneについては,症状が出現するかあるいは無症状で経過するかは予測し難いことから,原則的には定期的に胆嚢造影や超音波検査を行つて経過を観察することが妥当と考えられ,この際に経口的胆石溶解剤の適応があれば投与する.しかし,経過中に疝痛発作などの症状が起こればもちろんであるが,胆道造影で胆嚢陰影の変形,縮小,陰性化などが認められれば,胆嚢摘出術をすすめている.なお,上部消化管手術例にsilent stoneが合併している場合には,原病に根治的手術が行われ,かつriskがよい場合には,同時に胆嚢摘出術を行つている.

腹部エコー像のPitfall・14

肝占拠性病変の鑑別(2)

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.1283 - P.1285

矢印の肝内腫瘤は何か?
診断
 肝占拠性病変で日常遭遇する各種疾患を呈示した.
 腹部超音波診断において肝占拠性病変の存在とその質的診断は非常に重要で,特にその質的診断は超音波診断装置の発達と症例研究によりかなり可能になつている.そこで今回は各種肝占拠性病変のエコー像の特徴および鑑別点の現況につき説明を行う.

講座 腫瘍マーカー—適応と限界・5

肺癌

著者: 土屋了介

ページ範囲:P.1286 - P.1287

はじめに
 肺癌は他の臓器の癌に比べ予後が極めて不良であり,肺癌と確定診断のついた肺癌患者全体の5年生存率は10%にすぎない.切除例の5年生存率でも35%であり,早期診断の方法論の確立が強く望まれる癌の一つである.
 現在では中枢の気管支に発生するいわゆる肺門部早期肺癌に対しては喀痰細胞診が,また末梢肺に発生する肺野部早期肺癌に対しては胸部X線写真が早期発見に有力な手段とされているが,先にのべたような治療成績しか得られていない現状では,これら2つの手段にかわる早期診断の方法が待望されるわけである.このような背景のもとに肺癌の早期発見のために形態学的診断の進歩に対する努力とともに,腫瘍マーカーの応用に強い期待が寄せられるわけである.

シリーズ・がん集学的治療—いま,放射線療法は・2

食道癌手術の術前・術後の放射線療法

著者: 石川達雄 ,   恒元博 ,   小野田昌一 ,   磯野可一 ,   佐藤博

ページ範囲:P.1289 - P.1293

はじめに
 食道癌の治療成績は近年徐々に改善されつつあるが未だに満足される値ではなく,外科治療の5年生存率は20%前後となつている.
 この主な理由は今日の診断技術の進歩にも拘わらず食道癌においては受診時すでに進行癌である症例が多いことによるものであり,このために食道癌の治療には種々の合併療法が試みられてきた.この代表的な治療法が中山による術前照射である.今日,この術前照射法は改良,発展がなされ制癌剤および免疫療法を併用した術前三者併用療法として多くの施設で用いられているが,更に放射線治療は術後照射としても積極的に用いられるようになつている.食道癌は一部の症例を除いて大部分の症例が扁平上皮癌でありその放射線感受性は比較的高いことから食道癌の治療には放射線治療は不可欠な治療法と言えるが,更にこの治療法を適応に準じて用いかつ放射線治療効果を増強せしめることにより,放射線治療は食道癌の治療成績向上に寄与することが期待される.

臨床研究

当院におけるマムシ咬傷について

著者: 崎尾秀彦 ,   横山孝一 ,   内田朝彦 ,   小田奈芳紀 ,   山下純男 ,   三宅和夫

ページ範囲:P.1295 - P.1297

はじめに
 わが国において,マムシ咬傷は年間約3,000例発生し,1,000例に1例の割で死亡例があると言われている.本症の治療に関しては,マムシ抗毒素血清を使用するのが一般的であつたが,最近,マムシ抗毒素血清非使用例の報告も散見されるようになつてきた.今回,当院において,1972年から1984年までの13年間に経験したマムシ咬傷49例について,若干の文献的考察を加えて検討したので報告する.

臨床報告

1年以上生存中の甲状腺未分化癌の1例

著者: 相吉悠治 ,   牛尾浩樹 ,   植野映 ,   添田周吾 ,   藤本吉秀 ,   金沢暁太郎 ,   佐久間秀夫

ページ範囲:P.1299 - P.1303

はじめに
 甲状腺未分化癌は,その発生頻度は低いが一度発症すると治療は困難を極め,1年以内にその大多数が死亡し,5年生存率はほとんど0といつた疾患である1)
 われわれの施設では甲状腺未分化癌症例に対して放射線療法,化学療法,手術療法を組合せた積極的な治療を行つている.治療成績は決して満足すべきでないが,2例の1年以上生存例を得ており,その内の4年半を経過し再発なく生存している1例を報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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