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雑誌詳細

文献概要

特集 症例による急性腹症の画像診断

吻合部縫合不全

著者: 真栄城優夫1

所属機関: 1沖縄県立中部病院外科

ページ範囲:P.1210 - P.1212

症例
 82歳,男性.入院の4ヵ月前から,それまで規則的だつた便通に変化がみられ,便秘気味となつた.悪心,嘔吐,腹痛,下血などはみられていない.2ヵ月前から,便秘と下痢を繰り返すようになり,外来を受診注腸造影の結果,直腸結腸移行部に狭窄を認め,バイオプシーで腺癌と診断され,入院.
 型のごとき術前検査と準備の後,開腹術が行われた.病変は腹膜飜転部に存在し,根治的低位S字結腸直腸切除術が行われ,一期的に二層縫合による端々吻合が実施された.術中,肝硬変がみられたが,転移はない.術後も順調に経過し,直後の38度の発熱も3日目には完全に下熱,排ガス,排便もみられた.腹水貯留による腹部膨満があり,経口摂取は6日目から開始した.術後11日に至り,右下腹痛,悪寒,発熱38.8℃が出現,腹部は圧痛はあるが軟かく,腸雑音の減弱を認めた.腹部単純レントゲン写真では,麻痺性イレウスの像を呈していた(図1).絶飲食,輸液,抗生物質の投与が行われ,腹腔内膿瘍形成,吻合部縫合不全などを疑い,超音波エコーとCT検査が行われたが,腹水の存在以外には,異常所見は認められなかつた.これらの検査で,超音波では,腹水の所見にまどわされ,また腸管ガス像の存在のため,骨盤部の十分な観察がされて居らず,CTでも,十分低位の骨盤の撮影が行われていなかつたことは問題である.

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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