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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻11号

1985年10月発行

雑誌目次

特集 消化器外科医のための血管外科手技

消化器外科における血管損傷

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1321 - P.1326

 外科手術の偶発傷としての血管損傷は,いかに細心の注意を払つても外科医は誰でも一度は経験する.とくに癌の拡大根治手術が一般化されつつある今日ではその危険も大きい.血管損傷に対しては迅速な対応,処置が必要で,その処置を十分に心得ておくことが要求される.
 血管損傷は修復することが理想的であるが,側副血行が存在し,結紮しても虚血性変化がおこりにくい場合には必ずしも修復しなくてもよい.また,臓器によつて血行遮断にも時間的制約がある.したがつて,それぞれの血管についてこれらの条件を把握しておく必要がある.

血管合併切除と再建のコツ—胸部大動脈

著者: 川原英之 ,   藤田博正 ,   小田桐重遠

ページ範囲:P.1327 - P.1335

 胸部大動脈合併切除を伴う食道癌切除術の4例を提示し,その手技的問題点を中心に検討した.大動脈の切除,再建を術式別にみると,環状切除・永久by-pass法1例,楔状切除・パッチ縫着術2例,楔状切除・直接側壁縫合術1例であり,その到達経路は,両側開胸1例,右開胸2例,左開胸1例であつた.手術予後では,再発死1例(5ヵ月),他病死1例(4ヵ月),直死1例(20日),1例が生存中である.大動脈の合併切除にあたつては,1)大動脈遮断に対する補助手段法の選択,2)脊髄循環,とくにA.radicularis magnaへの配慮,3)開胸側の選択,4)無菌的手術操作の工夫などにつき,綿密に検討し手術に臨むことが重要である.

血管合併切除と再建のコツ—門脈

著者: 阪口周吉

ページ範囲:P.1337 - P.1343

 胆道,膵癌切除52例のうち15例において門脈合併切除を行つた.再建は端々"さしこみ吻合",4点固定の結節縫合を原則としたが,2例ではグラフト移植を必要とした.肝門部の分岐部切除,門脈左枝—本幹吻合では特殊な配慮を要する.門脈再建に起因する術死,合併症を認めず,本手術は本質的には安全な手術である.しかし術後早期及び晩期の吻合部狭牢はかなり高率に認められる.適応の決定には術前の門脈造影の十分な検討が必要であり,時に移植を余儀なくされる事態も考慮すべきである.本手技上のポイント,難点などについて述べた.

血管合併切除と再建のコツ—腸間膜動脈

著者: 上山武史 ,   富川正樹 ,   永井晃 ,   山本恵一

ページ範囲:P.1345 - P.1350

 上・下腸間膜動脈の解剖学的特徴より種々の血行再建法を述べた.上腸間膜動脈に対しては自家静脈を用いた腎下部大動脈とのバイパス作製法を,下腸間膜動脈再建は腹部大動脈あるいは人工血管への直接縫合法を記述した.
 血管合併切除などにより広範囲に腸管が虚血に陥つても,腸管は静脈うつ血がなければ比較的虚血に強いため,冷静に再建すれば成功しうる点を強調した.このさい24時間以内の再開腹も大切である.

血管合併切除と再建のコツ—肝動脈:特に膵癌及び胆管癌症例において

著者: 尾形佳郎 ,   都築俊治

ページ範囲:P.1351 - P.1359

 消化器外科の分野において肝動脈の切除・再建を必要とするのは,膵・胆管・胃癌などの浸潤が肝動脈に及んだ時,肝動脈領域の動脈瘤,外傷などの場合である.
 本稿では膵癌・胆管癌における肝動脈切除・再建例を供覧した.消化器外科医にとつて,肝動脈の切除・再建を行うことにより,この領域の癌治療における切除療法の適応を拡大する手段になることを示した.

血管合併切除と再建のコツ—下大静脈

著者: 熊田馨 ,   小澤和恵

ページ範囲:P.1361 - P.1366

 消化器外科領域で下大静脈の合併切除の行われる機会は極めて稀れであり直接的な経験の集積はない.しかし,損傷,下大静脈結紮術,下大静脈一時的離断,下大静脈内腫瘍血栓の除去,Budd-Chiari症候群の手術などをめぐる下大静脈外科の経験はすでにひろく知られている.これらの知見をもとに,下大静脈の遮断,切開,再建などの基礎事項を述べて,消化器外科領域に於ける下大静脈合併切除術の開発に資することを期待した.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・3

石灰乳胆汁

著者: 木下博明 ,   酒井克治 ,   長田栄一 ,   福嶋康臣

ページ範囲:P.1317 - P.1319

本症の臨床像
 石灰乳胆汁は比較的稀な疾患とされてきたが,本邦ではこれまでに300数例が報告され,その発生頻度は胆石症手術症例の約1〜3%である.男女比では1:2.7と女性に多く,30歳から40歳代に多くみられている.主な症状は腹痛で,胆石症一般とほぼ同様であるが,黄疸,発熱をみることは少ない.一般に病悩期間が長いが,無症状に経過する例もかなり多い.ちなみに最近12年間の自験石灰乳胆汁症例は13例で,同期間の胆石症657例の1.97%に相当した.胆石症初回発作より手術までの期間は平均4.3年で,初回発作時胆嚢造影を受けた症例は胆嚢造影陰性例と診断されている.

講座 腫瘍マーカー—適応と限界・6

乳癌

著者: 妹尾亘明 ,   園尾博司 ,   大浜寿博 ,   芝田努

ページ範囲:P.1369 - P.1371

はじめに
 癌関連物質として広義の腫瘍マーカーが多数報告されている.ここでは当科の乳癌症例に施行したCEA,L—DH,ALPのほかTPAなどの腫瘍マーカーとしての適応・限界と意義を解析した.すなわち,①乳癌早期診断への可能性,②術後予後の推定,③再発乳癌治療効果のモニターとしての有用性などである.
 現在,乳癌に最も有用な腫瘍マーカーを乳癌研究会が研究課題としてとりあげ全国集計中であり,後日その結果が明らかにされるであろう.

文献抄録

Dieulafoy病

著者: 大谷吉秀 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1372 - P.1372

 Dieulafoy病は異常に太い胃粘膜下動脈が破綻し,急性大量出血を起こす疾患である.Gallard(1884)がこれを最初に報告したがDieulafoyがその特異性をとりあげたので,彼の名がつけられ,Dieulafoy病,──潰瘍,──びらんなどと言われている.内視鏡的診断法の発達した今日でも,胃の高位に生ずる直径数mmの粘膜欠損は見過されやすく,直接,致命的な大量胃出血を起こすにもかかわらず,十分認識されていない.粘膜裂離のMallory-Weiss症候群とは異なるが,混同されやすい.
 本疾患の約40例が報告されているが,内視鏡的診断法・電気凝固法についてはほとんど述べられていないので,この点を中心に,最近の自験6例を報告した.

出血との闘い・局所止血法の歴史・4

ルネッサンス時代より18世紀まで

著者: 安藤博

ページ範囲:P.1373 - P.1375

 中世に失われていたという人間性を復活させ,古代ギリシヤ・ローマの文化を再現しようとした14世紀から16世紀にかけてのヨーロッパに於る思想と運動は,ルネッサンス(文芸復興)と呼ばれている.
 この時代に成熟した文芸と美術が,解剖学の進歩を促すようになり,レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci,1452〜1519),ミケランジェロ(Michelangelo Buonarroti,1475〜1564),ラファエロ(Raffaello Sanzio,1483〜1520)らの優れた芸術家による人体の構造の観察とデッサンにより,ガレノス以来の解剖学は打破されるようになる.1543年に人体解剖学(De humani corposis fabbrica)を発表したベザリウス(Andreas Vesa—lius,1514〜1564)が有名である.ベザリウスはパドウアの解剖学者であり,また外科学教授でもあり,腫瘤摘出の際に血管の結紮を行つていたといわれている.

画像診断 What sign?・31

虫垂結石

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1377 - P.1377

 虫垂炎の腹部単純X線像の所見としては前出(40(10):1265)の種々の徴候が挙げられているが,その中で最も古典的で虫垂炎に特異的な徴候としてあげられているのは虫垂結石の所見である.本徴候は1906年Weisflog1)によつて虫垂炎のX線所見のうちで最も早く"entero—lith"として記載された.虫垂結石は右下腹部の虫垂の位置すると思われる部位に層状の石灰化陰影としてみられることが多いが(図1),均一なものも存在する.大きさは1cm弱のものが大多数であるが数cmに及ぶものも稀にはみられる.虫垂炎症例全体の約10%に本所見がみられ,壊疽性あるいは穿孔性虫垂炎などの虫垂炎症が著しい虫垂炎においてその出現頻度が高い.虫垂炎を疑わせる臨床所見がある症例の腹部X線像で本所見がみられる時は,穿孔,膿瘍形成あるいは腹膜炎などを合併する虫垂炎の可能性を考え,迅速な対処が必要である.画像上の鑑別としては,腸間膜リンパ節の石灰化,胆石,メッケル憩室内結石,尿管結石,寛骨のbone islandなどがあげられる.また急性虫垂炎の注腸造影にて石灰化していない糞塊が虫垂の中に陰影欠損としてみられるものや(図2),腸管位置異常の症例で虫垂結石が上腹部にみられる症例もある(図3).

腹部エコー像のPitfall・15

超音波診断におけるエコーレベル表示法の問題点

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.1379 - P.1381

はじめに
 腹部超音波診断の3つの"落し穴"すなわち
 ①超音波診断装置に由来するもの

My Operation—私のノウ・ハウ

脾摘除術

著者: 梅山馨

ページ範囲:P.1383 - P.1388

適応と手術
 脾の生理ことに脾の免疫能についてはいまだ解明されていないこともあつて,脾摘術の適応がすべて明確となつたわけではない.しかし一般には以下のものが適応とされている.第1に脾原発の腫瘍,嚢腫,膿瘍のほか脾動脈瘤,脾破裂(外傷)である.ただ限局した小さい腫瘍や脾外傷については最近,脾温存の立場から部分的あるいは分節的脾摘術が行われることもある.第2には脾自身が原因で起こる原発性脾機能亢進症で,先天性溶血性貧血ことに遺伝性球状赤血球症,特発性自己免疫性溶血性貧血(AIHA),特発性血小板減少性紫斑病(ITP)ならびに脾性好中球減少症であり,特発性門脈圧亢進症(Banti症候群)もこれに属せしめる人もある.第3には続発性脾機能亢進症をもたらすマラリヤ,サルコイドーシス,Gaucher病,Felty症候群,日本住血吸虫症,慢性骨髄性白血病,巨脾性肝硬変症などである.第4にはホジキン病を中心とした悪性リンパ腫の病期分類のための診断的開腹術兼脾摘術である.
 そのほか食道静脈瘤に対する直達手術に際して,脾機能亢進症状の改善,門脈圧下降のほか短胃静脈系血行郭清の目的で,また胃上部進行癌での脾動脈,脾門部リンパ節郭清による根治性向上の目的で脾摘合併が広く行われている.しかし,最近は脾の免疫能を温存する立場から脾摘合併を否定する報告も一部にある.また同種腎移植時の免疫抑制を目的とした脾摘の適応も一定の見解なく今後に問題を残している.

シリーズ・がん集学的治療—いま,放射線科では・3

乳癌手術可能症例に対する根治的放射線治療

著者: 大川智彦 ,   後藤真喜子 ,   喜多みどり ,   渡辺紀子 ,   関口建次 ,   池田道雄

ページ範囲:P.1389 - P.1395

はじめに
 わが国において,乳癌の治療は手術を主体とし,合併療法として放射線や内分泌・化学療法が行われるのが今日の治療体系の基本である.すなわちHalstead・Meyerにより確立された定型的乳房切断術が乳癌の標準術式として今日まで広く行われ,早期乳癌症例や組織学的悪性度の低い症例に対しては,胸筋を温存するいわゆる非定型的乳房切断術も行われている.しかし欧米においては,乳癌は早期より全身化し全身病であるとの考えや,乳癌の原発巣や所属リンパ節を含む初回治療においても,手術を縮小化し放射線にウェイトをおき局所治療を完成させるといつた考えが一部に定着していた.Mcwhirter1,2)(1948)は単純乳房切断術と放射線治療の併用により定型的乳房切断術に匹敵する成績を発表し,Baclesse3)(1955)は放射線単独治療成績を報告した.又,Mustakallio4)(1954)は早期乳癌症例に対しても腫瘍摘出(Extirpation:今日のwide excisionやlumpec—tomyに相当)のみと放射線治療による成績を発表し,これらが欧米における乳癌原発巣初回治療に対しても放射線治療を行うという概念の基礎となつた.

臨床研究

甲状腺シンチグラフィーによる甲状腺結節の診断—99mTcおよび201Tlシンチグラフィーの3方向撮像による検討

著者: 相吉悠治 ,   松本邦彦 ,   牛尾浩樹 ,   秋貞雅祥 ,   植野映 ,   添田周吾 ,   山下亀次郎

ページ範囲:P.1397 - P.1403

はじめに
 甲状線結節に対する補助診断法として,甲状腺シンチグラフィー,甲状腺軟X線撮影法,超音波検査法,穿刺吸引細胞診等が広く用いられている.甲状腺シンチグラフィーは,癌症例の約70%が診断できるので有用とする者1,2)と,良悪性の鑑別には役に立たないとする者3-5)があり,施設によつてその取り扱い方は様々である.
 数年前より甲状腺シンチグラフィーの新しい核種として201Tlが導入され,甲状腺結節の良悪性の診断に有用との報告もある6).我々は,最近の甲状腺結節手術症例についてのシンチグラフィーの有用性を検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

肛門部手術における仙骨硬膜外麻酔—自験例11,736例の検討を中心に

著者: 佐々木一晃 ,   石山勇司 ,   中山豊 ,   宮下秀隆 ,   後藤幸夫 ,   長谷川格 ,   国本正雄 ,   戸塚守夫 ,   早坂滉

ページ範囲:P.1405 - P.1407

はじめに
 仙骨硬膜外麻酔(caudal anesthesia,以下仙骨麻酔)は,幼小児の麻酔として近年有用であるとの報告は多々認められる1-3).しかし,成人において麻酔範囲,手技等の問題より手術麻酔として一般的でなく,腰椎麻酔がその大部分を占めている2)のが現実である.つまり,痔核などの肛門部手術においても,低位腰椎麻酔またはサドルブロックなどの脊椎麻酔が常用されている.
 著者らは,肛門部手術に仙骨麻酔を常用し,その術中,術後の患者管理の容易さと安全性などの有用性を認めたので,これまでに経験した約12,000例の検討とともに,若干の文献的考察を加えて報告する.

直腸癌に対する前方切除術—自験63例の検討

著者: 神田裕 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   深田伸二 ,   石橋宏之 ,   加藤純爾

ページ範囲:P.1409 - P.1413

はじめに
 直腸癌の手術術式は時代とともに変遷し,1908年Milesらによつて発表された腹会陰式直腸切断術は癌の根治性にすぐれているため,直腸癌の基本術式としてひろくうけいれられてきた.しかし人工肛門造設のために患者の生活面は著しく障害され,機能面からは問題のある術式である.そのためさまざまな肛門機能温存術式が検討され,排便機能面からは低位前方切除術がもつとも適していると考えられている1)
 当院では直腸癌の根治術式として腹会陰式直腸切断術,前方切除術のほかHartmann法を施行しているが,前方切除術は1974年から1983年までの10年間に63例に行われた.自験例の概要,成績を紹介し,低位前方切除術をめぐる問題点について述べる.

乳癌の診断における各種診断法のscore化の意義について

著者: 伊藤隆夫 ,   田中千凱 ,   松村幸次郎 ,   竹腰知治 ,   坂井直司 ,   加藤元久

ページ範囲:P.1415 - P.1420

はじめに
 乳癌の診断は各種診断法の進歩によつて,向上してきたが,2.0cm以下の腫瘤の正診率は必ずしもよいとはいえない.それでわれわれは,視・触診,X線診断,超音波診断の結果を点数化し,総合評価することによつて,診断の客観性とその向上をはかるように試みてきた.その結果,期待し得る成績をえたので報告するが,各方面からの御批判をいただければ幸いである.

臨床報告

膝窩動脈捕捉症候群の2治験例と本邦40例の検討

著者: 松若良介 ,   大西健二 ,   秦石賢 ,   大久保修和 ,   岡村弘光 ,   小林芳夫 ,   塚口功 ,   佐藤健司

ページ範囲:P.1421 - P.1426

はじめに
 膝窩動脈捕捉症候群とは,膝窩動脈がその走行異常等のために周囲の筋肉により圧迫され下腿の血行障害をきたすまれな疾患である.本邦では,稲田ら1)が1972年に初めて報告して以来現在までに40例が報告されている.我々は最近本疾患の2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

急性気腫性胆嚢炎の1例

著者: 清家雅彦 ,   平谷勝彦 ,   荒木周平 ,   井上博人 ,   坂東康生

ページ範囲:P.1427 - P.1430

はじめに
 急性気腫性胆嚢炎はX線上特異なガス像を呈する稀な疾患で,本邦においては1960年以来,15例の報告にすぎない.今回われわれは,胃切除術の既往のある急性気腫性胆嚢炎の1例を経験したので報告する.

再膨張後の肺水腫の1治験例

著者: 鈴木康之 ,   坂東和夫 ,   足立確郎 ,   田頭幸夫 ,   藤田久夫 ,   坪田紀明

ページ範囲:P.1431 - P.1434

はじめに
 Pulmonary re-expansion syndromeとは虚脱した肺が治療により再膨張する時に肺水腫が発生するもので,Re-expansion pulmonary edemaもしくは,Re-per—fusion pulmonary edemaなどと呼ばれている.1959年Carlsonら1)が,Pulmonary edema following the rapid re-expansion of a totally collapsed lung due to pneu—mothoraxを報告して以来,著者の渉猟し得た範囲では,本邦には18例,外国には30例の報告がみられる.今回我々は,外傷性血気胸に対する持続ドレナージ中に発生した本症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

遺残虫垂にみられた結核の1例

著者: 高野正孝 ,   木内敦夫 ,   早乙女勇

ページ範囲:P.1435 - P.1438

はじめに
 著者らは,30年前受けた虫垂切除後の遺残虫垂に,結核を発症した症例を経験し,治癒せしめ得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

乳房切断術後リンパ管肉腫—自験2例及び本邦報告例の検討

著者: 宮内正之 ,   村上裕哉 ,   竹田伸 ,   笠井保志 ,   鈴木祐一 ,   久保田洌 ,   後藤裕巳 ,   加藤泰 ,   小池重義 ,   吉川泰生

ページ範囲:P.1439 - P.1444

はじめに
 Postmastectomy lymphangiosarcomaは,乳房切断術後に慢性浮腫をきたした上肢に発生する肉腫で,きわめて予後不良の疾患である.1948年,Stewart & Tre—vesがこの6例を初めて記載して以来1),欧米では多数の報告がなされているが,本邦報告例は数少なく,私共の調べ得た範囲では,13例が報告されているにすぎない.
 最近,我々は本疾患を2例経験したので,本邦報告例とあわせ,文献的検討を試みた.

原発性十二指腸球部癌の1例

著者: 田中裕 ,   白鳥隆 ,   甲斐達朗 ,   下地英機 ,   小川賢治 ,   森一郎

ページ範囲:P.1445 - P.1449

はじめに
 原発性十二指腸癌は特有な症状が欠如するために,早期発見されることが少なく,予後不良とされていた.しかし最近は胃十二指腸検診の普及や診断技術の進歩により,早期発見され根治する症例が増加して来ている.今回我々は原発性十二指腸球部癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

両側大腿動脈瘤の1治験例

著者: 斉藤裕 ,   木谷正樹 ,   品川誠 ,   佐藤日出夫 ,   能登佐 ,   清水博志

ページ範囲:P.1451 - P.1454

はじめに
 末梢動脈瘤の多くは大腿動脈に発生し,大きく真性のものと偽性のものに分けられる.真性のものは大部分が動脈硬化に起因し,今後高齢化社会が進むにつれ増加するものと思われる.今回著者らは,術前超音波検査が有用であつた両側真性大腿動脈瘤に対し,手術を行つたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

結腸angiodysplasiaの2例

著者: 日野恭徳 ,   山城守也 ,   橋本肇 ,   平島得路 ,   稲松孝思 ,   深沢俊男 ,   武藤徹一郎 ,   永井秀雄

ページ範囲:P.1455 - P.1460

はじめに
 老年者の右側結腸に発症するangiodysplasiaは欧米では加齢が関与する一つの疾患単位と老えられているが,本邦における報告例は極めて少ない.われわれは大腸内視鏡検査及び動脈撮影により本症と診断された2例き経験し,うち1例に右半結腸切除を行い細小血管構築異常について検索を行つた.
 これらを報告し,本邦右側結腸血管病変報告例について若干の検討を加えた.

腹腔内遊離体を認めた手術症例

著者: 大加戸彰彦 ,   大路明 ,   米田紘造 ,   古賀昭夫 ,   岡田聡

ページ範囲:P.1461 - P.1465

はじめに
 腹腔内に存在し諸臓器とは完全に遊離している組織である,いわゆる腹腔内遊離体についての報告はあまり多くなく,比較的まれなものと思われるが,われわれは最近,腹腔内遊離体が認められた3症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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