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特集 肝硬変合併患者の手術と管理
術中管理と手術方針—食道癌手術
著者: 村上卓夫1 石上浩一1 岡正朗1 正木康史1 清水暢1 林弘人1
所属機関: 1山口大学医学部第2外科
ページ範囲:P.1487 - P.1492
文献購入ページに移動肝硬変合併食道癌は10例3.6%であり,Child分類Aが2例,Bが5例,Cが3例で手術死亡はChild Cに多かつた.肝硬変症例で早期死亡群と耐術群において,術前の肝機能検査についての比較では,とくにCh-E値およびAlbumin値において早期死亡群が有意に低値を示していた.術中出血量では,肝硬変合併症例が,肝機能異常症例よりも出血量が多く,とくに食道静脈瘤合併食道癌症例に出血量が多いことより,十分な注意を要す.
術後腹水においては,肝硬変症例に術後腹水の流出が多く,とくに肝硬変合併食道癌例では,リンパ節郭清や迷切の髭響により,食道静脈瘤手術のそれより多かつた.術後肺合併症においては,肝硬変症では肺内シャントの開大などにより術後肺合併症が高率で,しかもリンパ節郭清にともなうリンパ流の遮断及び迷切による影響が老えられる.
以上のことより,肝硬変合併食道癌例の手術においては,術後予後からみた術前評価を検討して手術適応を決め,手術に関しては,手術時間,出血量を少なくし,リンパ節郭清にさいしては,迷走神経枝の損傷をさけ,リンパ管は確実に結紮することが望ましい.
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