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文献詳細

雑誌文献

臨床外科40巻12号

1985年11月発行

文献概要

シリーズ・がん集学的治療—いま,放射線療法は・4

胃癌の術中照射

著者: 高橋正治1 芝本雄太1 阿部光幸1 戸部隆吉2 稲本俊3

所属機関: 1京都大学医学部放射線医学教室 2京都大学医学部第1外科 3京都大学医学部第2外科

ページ範囲:P.1559 - P.1563

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はじめに
 放射線治療の適応は,基本的には正常組織の障害が許容しうる線量(耐容線量)と,がん病巣を致死に導きうる線量(致死線量)との比によつて決定されるといえよう.胃癌の場合には,致死線量が病巣周囲の正常な胃や小腸,大腸,あるいは腎,脊髄などの耐容線量よりもはるかに大きいので,従来,放射線単独治療の対象となることはまれであつた.しかし,致死線量は腫瘍の大きさに依存し,腫瘍容積が小さくなるにつれて,致死線量は減少することが知られている1).さらに,耐容線量の低い消化管などの正常組織を照射野外にはずし,なおかつ脊髄などの被曝線量を減らすことができれば,致死線量を安全に照射することが可能となり,胃癌に対しても放射線治療は適応になりうるであろう.
 一方,早期診断が可能で,正診率の高い胃癌では,手術の根治性が高いものの一つに挙げられているが,それでも限界がみられるようである.たとえば,施設によつて異なるけれども,表に示すように,治癒切除率は切除可能例の66〜70%,また手術可能例の41〜60%にすぎない2,3).大血管や周囲組織に病巣が残存する非治癒切除のみならず,顕微鏡レベルの病巣遺残が疑われる治癒切除例においても,放射線治療を追加することによつて手術の根治性をさらに高め,手術の適応を拡げることができるかもしれない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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