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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻13号

1985年12月発行

雑誌目次

特集 肝内胆石に対する胆道ドレナージ手術

乳頭形成術

著者: 松代隆 ,   高尾信太郎 ,   長嶋英幸 ,   山形倫

ページ範囲:P.1631 - P.1637

 乳頭形成術と乳頭切開術は異なる術式であり,前者では乳頭括約筋機能が完全に廃絶されるが,後者ではむしろその温存を目的として行うべきである.したがつて,両手術の適応も異なる.肝内結石症における乳頭形成術の適応は,1)合併する十二指腸乳頭炎が高度で不可逆性と判定された場合,2)肝内胆管に多数の小結石や胆泥を認め,手術操作で完全な摘出が困難と考えられた場合である.肝内結石症では不可逆性乳頭炎を伴う症例が少なからずみられることより,適応例には積極的に乳頭形成術を付加すべきである.その遠隔成績も良好であつた.

胆管十二指腸吻合術—胆汁を十二指腸ヘドレナージする術式一般について

著者: 船曵孝彦 ,   落合正宏 ,   天野洋 ,   杉上勝美 ,   藤田真司 ,   松原俊樹 ,   亀井克彦 ,   山口久 ,   二渡久智 ,   福井博志

ページ範囲:P.1639 - P.1646

 胆管消化管吻合の適応は肝外胆管の器質的機能的病変であり,単なる肝内結石の排出路作製は適応ではない.胆管十二指腸側々吻合術,同端側吻合術,同空腸間置術は,膵操作がなく胆汁を十二指腸へ流入させる点ではより生理的な術式である.側々吻合は侵襲は最も小さいが胆汁経路が二重でblind sacの問題がある.端側吻合は空腸間置術に比し侵襲も小さく,胆汁うつ滞もない.十二指腸にpunch outして大きい吻合孔が保たれれば,逆流しても即流出して術後胆管炎の原因とはならない.

胆管空腸吻合術—私はこうしている

著者: 高橋渉 ,   伊勢秀雄 ,   新谷史明 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1647 - P.1653

 肝内結石症における胆管空腸側々吻合術の適応と問題点を自験27例をもとに,病型ごとに述べた.遠隔成績不良6例の検討から,手術時すでに高度な肝障害のために次善の策として施行されたもの以外では確実な手術手技と手術操作をもつてすれば比較的良好な予後が期待できるものといえる.しかし,遺残結石が完全に消失したものは1例にすぎず,相当の長年月を要するものと考えられ,この間は外科医師の管理の下におくべきである.

胆管空腸端側吻合術兼空腸外瘻術

著者: 安田秀喜 ,   高田忠敬 ,   内山勝弘 ,   長谷川浩 ,   土屋繁之 ,   三須雄二 ,   四方淳一

ページ範囲:P.1655 - P.1661

 肝内結石症に対する胆道ドレナージ手術としては,胆汁うつ滞の解除のみならず術後の截石ルートの確保も考慮し,原則として胆管空腸端側吻合術兼空腸外瘻術を行つている.
 しかし,この術式も肝内胆管に強い狭窄があるものでは上行感染をきたすおそれがあり,そのような症例に対しては肝切除の併施が必要と思われる.

外側区域切除兼拡大胆管空腸吻合術

著者: 角田司 ,   吉野寮三 ,   山本賢輔 ,   元島幸一 ,   山口孝 ,   井沢邦英 ,   野田剛稔 ,   原田昇 ,   土屋凉一

ページ範囲:P.1663 - P.1671

 過去15年間に経験した120例の肝内結石症の治療成績を病型別,手術術式別に検討した.左右肝管合流部より肝内胆管に狭窄・拡張性病変を有する原発性肝内結石症では結石生成の主たる場所はその上流の拡張性病変と考えられ,完全な病巣切除が困難な左右型原発性肝内結石症例では,狭窄部の解除と完全切石さらに拡張部のドレナージが期待できる術式を行う必要がある.かかる術式として,外側区域切除兼拡大胆管空腸吻合術が最も有効と考えられた.

肝内結石症に対する肝内胆管空腸吻合術—とくに左外側下枝胆管空腸側々吻合術の意義について

著者: 永川宅和 ,   小西一朗

ページ範囲:P.1673 - P.1678

 教室で経験した肝内結石症86例の成績を検討するとともに,胆道ドレナージ手術としての肝内胆管空腸吻合術について,その適応,手技,問題点を検討した.肝内結石症において本術式が適応となるのは,肝内部狭窄に対するドレナージ手術の場合と考えられるが,他術式との選択は,意見の分れるところであろう.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・5

胆嚢粘膜の化生

著者: 松峯敬夫 ,   広田英夫 ,   福留厚 ,   嘉和知靖之 ,   青木幹雄 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.1627 - P.1629

化生のtype
 胆嚢にみられる化生のパターンは,基本的に胃の化生組織と異なるわけではなく,おおむね粘液腺化生(偽幽門腺化生,偽Brunner腺化生)と腸上皮化生の2種のtypeに大別される(表).1-3)これらの化生上皮は,同一部位に隣接して分布し易く,十二指腸粘膜に似た化生巣(十二指腸化,duodenalization)として見出されることが多い(図1,2).
 このほか,わずかながら胃型上皮や扁平上皮巣が見出されることもあるが,いずれもごく稀な変化に過ぎない.また文献上,胃底腺化生,膵化生といった報告もあるが,迷入とする意見も多く,一般に化生として受け入れられているわけではない.

出血との闘い・局所止血法の歴史【最終回】

ペアン鉗子の出現

著者: 安藤博

ページ範囲:P.1679 - P.1681

 前回は,既に19世紀の中頃にシャリエールがピンセットの改良を重ねて,止血専用のピンセットを作製し,またベルネユが止血圧挫鉗子を使用し始めたことを述べた.
 このシリーズも,どうやら無事にペアン鉗子の出現まで辿り着くことが出来て,今回で最終となる.

プラクティカル チューブオロジー・1【新連載】

動脈内カテーテルを閉塞させないコツ,再開通させるコツ

著者: 長谷川博

ページ範囲:P.1682 - P.1683

はじめに
 日常臨床のカテーテルの扱いのうちで,いわゆる動脈カテーテルのトラブルは最も頻度のたかいものの一つであろう.そして一見合理的にみえる動脈カテーテル経由の治療が,じつは意外に永続せず評判も悪いのもこのトラブルによることが多い.嘘のように思われるかもしれないが,プラスチック製の24Gの動脈カテーテルを体表から50cmも挿入して数週間留置しても,「詰まつたために使いものにならない」という事態は決して起こらない.これはチューブ扱いのノウ・ハウを知つているか,否かにかかつている.ましてや,外径1mmのテフロン管(クロノフューザーに接続されて使われている紫がかつた白い肉厚管)は,詰まつたために使いものにならないということはあり得ないといつても過言ではない.

Invitation

第27回消化器外科学会総会 見どころ,聴きどころ—若い人の独創的研究を期待して

著者: 古賀成昌

ページ範囲:P.1684 - P.1685

はじめに
 この度,第27回日本消化器外科学会総会を米子市でお世話さしていただくことになりましたが,昭和48年綾部正大教授が主催されて以来13年ぶりの米子市での開催ということになります.会期は明年2月27(木),28(金)の2日間で,米子公会堂を中心とした8〜9会場を予定しております.本学会は消化器外科領域の研究成果の発表,討論の場でありますが,当地方の外科医の研修の場ともなり,これによつて,当地方の医療の向上にも大きく貢献するものと思つております.
 本学会を主催するに当りましては,今回はとくに若い方々の優れた研究成果の発表をも重視致したいと考えております.若い方々の研究こそ,明日の消化器外科の進歩につながるものと考えます.このため,一般演題の選択,発表時間の延長などを考えておりますので,独創的な優れた発表を寄せられるようお願い致します.もちろん,シネマによる手術手技の勉強は消化器外科医として極めて重要でありますが,これにつきましては従来から毎回行われておりますことから,上述のような理由もあつて,今回は一般フィルムセッションは割愛さしていただくことになりました.皆様方のご理解をお願い致したいと思つております.以下,本学会の概要を紹介致します.

画像診断 What sign?・33

ダグラス窩の開大(Widening of the Douglas pauch)

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1687 - P.1687

 骨盤内腫瘤の鑑別として前出(40:12,1535)のpresa—cral spaceの開大に対するものとしてはダグラス窩の開大が挙げられる.この所見はX線側面像における膀胱と直腸の離開としてみられるが,超音波像やCT像では横断像あるいは縦断像としてこの所見がとらえられる.ダグラス窩起源の腫瘤の鑑別としては女性生殖器由来のものを主として,表に挙げるような鑑別診断が挙げられる.

この人と語る

臓器移植の現状と将来

著者: 出月康夫 ,   岩月舜三郎

ページ範囲:P.1689 - P.1698

 出月 先生,どうもお久しぶりです.
 岩月 こちらこそ.

My Operaiton—私のノウ・ハウ

選択的近位迷走神経切離術

著者: 島津久明

ページ範囲:P.1699 - P.1703

適応と手術
 選択的近位迷走神経切離術(selective proximal vagotomy,SPV. 以下,選近迷切と略す)は主として十二指腸潰瘍に対して実施される.最近,その術後の潰瘍再発率がやや高いことから,すべての十二指腸潰瘍にこれを実施することには若干の批判もあるが,現段階では一応根治的な術式の1つと考えておいてよい.しかし,幽門部潰瘍や胃十二指腸共存潰瘍は原則としてこの術式の適応から除外するのが望ましい.
 この迷切術式はDragstedt & Owens(1943)による両側迷走神経幹切離術(bilateral truncal vagotomy)から出発して,Jackson(1948),Franksson(1948)らによる選択的胃迷走神経切離術(selective gastric vagotomy)を経て発展したもので,臨床的には1960年代に入つて西独のHolleによつて最初に試みられている.その後,手技上の細部にいくつかの修正が加えられたのち,ほぼこの方面の手術に携わる外科医のコンセンサスが得られた術式が確立されるようになつている.

シリーズ・がん集学的治療—いま,放射線療法は・5

胆道癌の腔内照射

著者: 真崎規江 ,   池田恢 ,   黒田知純

ページ範囲:P.1705 - P.1711

はじめに
 胆道癌は比較的稀な疾患であつて,発育速度が遅く,限局性であることが多いが,また,急速に周囲組織へ進展するものがあつて,生存率は低く,数%以下とされている.手術が唯一の治療手段とされてきたが,部位の関係から完全摘出ができる場合は多くはない1-5).姑息的治療としては,さまざまな形のバイパスが試みられ,胆道の閉塞症状の改善によつてその役割が果せるが6,7),根治的治療とはなり得ない.
 一方,胆管癌は従来は放射線に低感受性と考えられ,放射線治療の役割はほとんどないとされていたが,最近の研究結果では,それほど低感受性ではなく,根治的,あるいは姑息的放射線治療が行われて,少数例ではあるが長期生存例が認められている8-11).しかし,通常の外部照射では,しばしば強い副作用をともなうので,これのみでの根治的治療には限界がある.

腹部エコー像のPitfaill【最終回】

コントラスト分解能—スペックル(Speckle)について

著者: 松田正樹

ページ範囲:P.1713 - P.1715

 図1の如く肝臓の管腔物を除く腫瘍Aおよび肝実質Bの超音波像をみると,ブツブツした粒状の画像が得られる.これはスペックル(Speckle)といわれるもので,肝実質内,腫瘍内の波長により小さな微細構造からの超音波散乱波の合成によつてできるパターンである.超音波画像を読む場合,このスペックルの現われ方で現実の診断がなされる場合が多い.
 さて,この散乱波を述べる前にエコーの反射について復習しておこう.

講座 腫瘍マーカー—適応と限界・8

小児外科における腫瘍マーカー

著者: 土田嘉昭

ページ範囲:P.1717 - P.1719

はじめに
 腫瘍マーカーの測定は小児悪性腫瘍の診断ならびに治療上非常に重要である.一般に,小児悪性腫瘍における各種腫瘍マーカーの陽性率は成人の悪性腫瘍の場合に比し著しく高率であり,これは一つには小児における腫瘍:体重比が成人におけるそれよりもより大であるためと考えられている.以下,小児外科領域で用いられる各種腫瘍マーカーについて述べ,最後に各腫瘍別にこれら腫瘍マーカーの発現度をまとめることとしたい.

座談会

外科認定医制度を考える—発足1年をふりかえって

著者: 蜂須賀喜多男 ,   長尾房大 ,   服部孝雄 ,   阿部令彦 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.1721 - P.1731

 武藤(司会) 本日は学会の最中に先生方,大変お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました.
 日本外科学会の認定医制度が発足しまして,昨年,第1回の申請があり,同時に昨年の秋に第1回の試験がございました.すでに本誌34巻2号では,和田先生のご司会で長尾先生他,数名の方々がお集まりくださいまして,この制度が発足する前にそのあり方について,お話しいただきました.本日は,すでに発足いたしましたものの,さて,現状ではどのような問題が出てきたか,将来はどういうふうな方向に向かつていくのかというようなことなどにつきまして,4先生においでいただきお話しいただくことになりました.

外科系研究会推薦論文 第4回腹部救急診療研究会から

重度腹部外傷の診断と治療

著者: 大塚敏文 ,   益子邦洋 ,   小関一英 ,   須崎紳一郎

ページ範囲:P.1733 - P.1738

はじめに
 腹部外傷は病態として肝,脾など実質臓器損傷あるいは腹腔内血管損傷による腹腔内出血と管腔臓器損傷に伴う急性腹膜炎に大別できる.しかし臨床的には多発外傷として来院する症例も多く,意識障害,呼吸不全や他部位の出血などで,腹部外傷としての特有な症状が表面に現われず,その診断や治療に当惑する場合も少なくない,そこで今回は重症腹部外傷の実態について述べる.

臨床研究

食道胃接合部癌(C=E癌)の臨床病理学的検討—食道側および胃側浸潤形態からみて

著者: 熊谷一秀 ,   卜部元道 ,   林田康男 ,   渡部洋三 ,   渡辺伸介 ,   城所仂

ページ範囲:P.1739 - P.1742

はじめに
 上部胃癌特に噴門部胃癌が容易に食道へ浸潤するという報告は多い1,2).一方下部食道癌の胃浸潤例は比較的少ないが腹部食道(Ea)に発生した食道癌はその発育増大とともに食道胃接合部を破り胃浸潤をきたすことも稀れではない.食道癌取扱い規約3)ではこれらを食道胃接合部の癌carcinoma of the esophagogastric junctionと呼びそれぞれ主病巣の存在部位によりCE癌,EC癌などと記載している.さらに食道胃接合部を境して食道側,胃側へほぼ同距離に浸潤を示す癌腫をE=C癌として別個に取扱つている.癌腫の発育進展の立場からはこのE=C癌こそ狭義の食道胃接合部の癌といえよう.今回は教室のE=C癌症例を対象として臨床病理学的検討を行うとともに主に食道側,胃側浸潤形態について検討を行つた.

食道静脈瘤合併肝細胞癌の治療方針

著者: 中村亮 ,   栗栖敏嘉 ,   佐々木寿彦 ,   長崎雄二 ,   小林輝久 ,   中村浩一

ページ範囲:P.1743 - P.1748

はじめに
 肝臓における画像診断は近年著しい進歩を遂げ,1cm前後の肝細胞癌(HCC)の描出まで可能にした1).加うるに肝硬変をHCCのhigh risk groupとしてAFP,画像診断等による定期的な検査が行われるようになり2,3),細小肝細胞癌が発見される頻度は増加し,それにともなつて同じく肝硬変を基礎疾患とすることの多い食道静脈瘤症例の中にも今後HCCの合併を経験する機会が多くなることが予想される.
 このような食道静脈瘤合併肝細胞癌の治療は各々の疾患に対して根治性が要求されるが,基礎疾患としての肝硬変の程度,あるいは腫瘍の局在などによつて必ずしも理想的な治療が実施できないことが多い.しかしながら近年その診断能の進歩と相俟つて治療面においてもHCCに対する切除法の改良,肝動脈塞栓術(TAE),また静脈瘤に対しても内視鏡的硬化療法などが開発実施され,症例によつては良好な成績を示し,今後これら治療法の選択組合わせが治療上の大きなポイントと考えられる.

手術用ME機器による熱傷とその予防

著者: 沢田幸正

ページ範囲:P.1749 - P.1751

はじめに
 近年のエレクトロニクスの発達により医療機械も手術,検査用機器を中心に高性能,多様化が著しい.このうち電気メスについては医療に使用されはじめてから約半世紀以上を経るにもかかわらず,その作用メカニズムについては未だに完全には解明されていない1-9).また,電気メスによるいろいろな手術中の障害が知られており1-9),なかでも電気メスによる熱傷については旧来より知られているものの,今だに少なからざる発生をみるようである2,7).電気メスによる熱傷は受傷直後に気づかれにくいためか発症機転からも深達性受傷になりやすく患者に長期間にわたり多大の苦痛を与えることも稀ではないと考えられる.この防止のためには使用者に細心の注意が必要であることは論を待たないが1-6),医療機器メーカーにも安全対策についての努力が必要なのではなかろうか3-10).ここに著者が経験した電気メス,バイポーラー凝固器による熱傷2例を述べると共に若干の考察を加えた.

外科医の工夫

腹腔洗浄の安全,容易な方法

著者: 青柳光生 ,   勝本淑寛

ページ範囲:P.1753 - P.1754

はじめに
 最近のME機器の進歩は,それぞれの部門に於ける診断技術の向上をもたらした.しかしながら,acute abdomenの診断に関しては,未だ理学所見がbestであるが,客観性に乏しく,熟練を要する.鈍的腹部外傷の場合,診断的腹腔洗浄法は,その診断精度97.6%を示し.重要な検査の一つとなつた1).腹腔洗浄の方法には
 (1)standard open technique,

臨床報告

再生不良性貧血に合併した乳腺,胃,外陰同時3重複癌

著者: 内田賢 ,   篠崎登 ,   助川茂 ,   細谷哲男 ,   蛯名大介 ,   石川正昭 ,   渡辺喜世子 ,   鈴木正彌 ,   櫻井健司

ページ範囲:P.1755 - P.1758

はじめに
 26歳の女性にみられた乳腺,胃,外陰の同時性3重複癌を経験した.若年者の3重複癌は稀であり臨床経過,発癌機転は興味あるものと思われたので検討を加えた.

胃壁内迷入膵癌化の1例

著者: 佐藤隆次 ,   秋野能久 ,   木村晴茂 ,   黒河内一郎 ,   山口巌 ,   箱崎半道

ページ範囲:P.1759 - P.1762

はじめに
 迷入膵はまれな疾患ではないが,その癌化の報告はきわめて少ない.われわれは,6年前に初期病像がとらえられていた胃壁内迷入膵癌の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

左胸膜浸潤のみられた悪性腹膜偽粘液腫の1例

著者: 吉田禎宏 ,   田村利和 ,   宇高英憲 ,   古味信彦 ,   松浦章人

ページ範囲:P.1763 - P.1766

はじめに
 腹膜偽粘液腫(以下,本症)は,腹腔内に粘液様ないし膠様の物質が限局性またはびまん性に貯留し,また播種性に発育し,腫瘤状に増殖する疾患で,多くは卵巣偽粘液嚢腫または虫垂粘液嚢腫が原因となつている.本症の腹腔外病変は極めて稀であり,世界で数例の報告があるにすぎない.
 今回われわれは,経過中に血清CEA値が異常高値を示し,左胸膜浸潤のみられた本症の1例を経験したので,腹腔外臓器浸潤,遠隔転移について若干の文献的考察を加えて報告する.

Winslow孔ヘルニアの2例

著者: 林良彦 ,   猪熊泰造 ,   後藤庸嘉 ,   内山元昭

ページ範囲:P.1767 - P.1769

はじめに
 Winslow孔ヘルニアは腸閉塞として発症し,手術適応となる稀な疾患で,術前診断はしばしば困難とされている.診断の遅延は時に壊死のため腸切除を必要とし,あるいは致命的となる危険を秘めている.われわれは腹部単純X線写真あるいは胃造影所見より術前に診断しえた本疾患の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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「臨床外科」第40巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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