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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

特集 腹膜炎治療のノウ・ハウ

的確な診断をどうするか—理学的所見から

著者: 西尾剛毅

ページ範囲:P.185 - P.188

 急性腹膜炎にはさまざまな種類があるが,特に重要なものは急性細菌性汎発性腹膜炎である.これは一刻も早い診断と治療が要求される.汎発性腹膜炎の原因で一番多いものは,胃十二指腸穿孔で,次いで虫垂炎穿孔,大腸穿孔,胆嚢穿孔などがつづいている.
 汎発性腹膜炎のより詳しい原因を診断することは不可能であり,一般には上部消化管,下部消化管穿孔だろうという程度である.また実際に治療するに際しても,穿孔部位の細かな診断は必要なく,これが腹膜炎か否か,また緊急手術をした方が良いか否かを決めることが最も大切である.
 そのように緊急に手術を要する腹部病変(surgical abdomen)か否かを決めるに当つて最も重要な理学的所見は,腸雑音の消失,腹筋緊張,反動(跳)性圧痛の3つの所見であると思われる。

的確な診断をどうするか—画像診断

著者: 秋本伸 ,   磯部義憲 ,   福島靖彦

ページ範囲:P.189 - P.195

 腹膜炎の診断は腹部触診を中心に行われるもので,画像診断はむしろその原因解明のために用いられるものである.画像診断法のうちその意味で寄与し得るものは(1)単純X線撮影,(2)消化管造影,(3) X線CT,(4)血管造影,(5)超音波検査 などであり,これらによつて腹膜炎と関連して得られる所見について記した.(1)では消化管穿孔に伴う遊離ガスとcolon cut-off sign等異常腸管ガス像が,(2)では穿孔時のガストログラフィン造影が,(3)では膿瘍,浸出液,ガスの貯留や胆嚢炎,膵炎の所見等が,(4)では外傷時の動脈性出血点について等が,(5)では胆嚢炎,膵炎,腹腔内膿瘍,異物,臓器損傷等の所見が,診断上有意義と考えられる.

術前・術後の管理—腸管麻痺対策

著者: 中野眼一 ,   中村卓次 ,   小暮公孝

ページ範囲:P.197 - P.202

 急性腹膜炎によって惹起される腸管麻痺につき術前・術後の管理の概略を述べた.術前管理の主たるものは,①絶食,②胃吸引,③水分,電解質の補正,④全身状態の把握と管理,⑤ショックおよび感染対策である.次いで手術的に原発巣の除去,感染源の遮断とドレナージを施行する.術後は①Fowlerの体位,②胃吸引,③輸液,栄養補給,④呼吸管理,⑤抗ショック,感染対策,⑥浣腸,⑦腹部の加温,⑧蠕動亢進剤,⑨高圧酸素療法などで管理する.以上,急性腹膜炎による腸管麻痺対策は全身状態の把握と基礎疾患を念頭におき治療に当ることである.すなわち腹膜炎に対する的確な全身の管理が腸管麻痺の予防につながる.

術前・術後の管理—輸液・栄養管理

著者: 小野寺時夫

ページ範囲:P.203 - P.205

 急性腹膜炎の病態生理は,主に体液バランスの失調と菌血症によつて惹起される.
 術前可及的速かに体液バランスの失調を是正することが重要で,失調状態のままで手術を施行すると,術中・術後にショックに陥る危険がある.急激な細胞外液の喪失によるものであるから,乳酸加リンゲル液を主体として用いる.外傷や穿孔などで大量の糞便が腹腔に洩出したような場合は,術前輸液に時間をかけることなく,可及的早期手術に踏み切る必要がある.急性腹膜炎術後は,体蛋白の消耗が高度であるが,高カロリー輸液の進歩した今日でも,術直後の時期の栄養補給は余りに欲ばらず,術後数日して一般状態が安定した時期から積極的高カロリー投与に移行する.

術前・術後の管理—抗生物質の使い方

著者: 相川直樹 ,   鈴木啓一郎 ,   石引久弥 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.207 - P.213

 消化器外科で問題となる続発性細菌性腹膜炎は,一次感染としての腹膜炎,外傷後腹膜炎および術後腹膜炎に分類される.これら腹膜炎の主要原因菌は,一次感染では感染源となつた腹腔内臓器の常在菌,外傷後では常在菌ならびに外来性細菌である.術後腹膜炎の原因菌は多様であり教室の成績では,E.faecalis,P.aeruginosa,Enterobacter,インドール陽性Proteusが多くみられた.
 急性細菌性腹膜炎の治療の原則は,すみやかな外科的ドレナージと抗生剤の適切な投与である.抗生剤の選択にあたつては,発症直後では原因菌を推定し,これらに殺菌的な抗菌力を有する薬剤を点滴静注により投与する.さらに薬剤の腹腔内移行性や耐性菌の現況も考慮する必要がある.

術前・術後の管理—呼吸管理

著者: 釘宮豊城

ページ範囲:P.215 - P.220

 腹膜炎に伴う呼吸障害に対する呼吸管理の概要を述べた.腹膜炎による呼吸障害は全く治療を要しないような軽度のものから,いわゆるARDSといわれる生命をおびやかすような重篤なものまで多様である.臨床症状に応じて対処していく必要があり,それらを段階別に述べてみた.
 呼吸管理は肺における病変を直接治療するという面(肺炎,無気肺)もあるが,はつきりとした肺での病変を治療するというより,呼吸障害を起こした原病変が治癒するまで呼吸機能を補助しようと試みる面もある.

手術のノウ・ハウ—上部消化管穿孔

著者: 杉山貢 ,   渡辺桂一

ページ範囲:P.221 - P.226

 消化管穿孔は汎発性もしくは限局性腹膜炎を伴う,急性腹症の代表的疾患であり,ごく少数例を除いては,緊急手術を必要とする.ここでは主に上部消化管穿孔の外科治療のノウ・ハウについて,以下の項目につき,また特殊な症例も紹介し,具体的にその要領を述べる.1.穿孔部の修復(①穿孔部の探索法,②穿孔部閉鎖法),2.原疾患の根治手術(胃・十二指腸潰瘍,胃癌など),3.腹膜炎に対する外科的処置(①腹腔内洗浄法,②腹腔内ドレナージ,③腹腔内術後持続洗浄).
 近年,上部消化管の穿孔性腹膜炎の病態に対する認識も深まり,ultrasonographyなどの画像診断の応用や治療,技術の進歩により,外科治療の成績は飛躍的に向上している.そのため,一方では,緊急手術であつても背後の原病に対する根治が要求されるようになつて来ている.しかし,上部消化管の穿孔性腹膜炎の外科手術にあたつては,先ず救命を第一に考え,"push to safe side"を心掛けることが大切であろう.

手術のノウ・ハウ—下部消化管穿孔

著者: 浅野哲 ,   志田晴彦 ,   山本登司

ページ範囲:P.227 - P.231

 最近13年間に経験した虫垂炎,外傷,末期癌性腹膜炎を除く下部消化管穿孔36例(小腸穿孔12例,結腸穿孔24例)について臨床的検討を行つた.原疾患は小腸穿孔では炎症性疾患が,結腸穿孔では結腸癌がそれぞれ大部分を占めた.septic shockをきたした症例が10例でその死亡率は90%と予後は極めて不良であつた.診断に関しては,白血球増多10,000以上は47.0%,腹部単純X線検査での遊離ガス像は41.4%の症例にみられ,確定診断の根拠とはなし難い.手術術式には腸切除を積極的に行う方針をとつたが,手術死亡率は小腸穿孔では36.2%,結腸穿孔では28.6%であつた.腹腔内洗浄法,腹腔内ドレナージの実際について述べた.

手術のノウ・ハウ—穿孔性虫垂炎

著者: 福留厚 ,   松峯敬夫

ページ範囲:P.233 - P.238

 外科医が遭遇する腹膜炎のうちで虫垂穿孔性腹膜炎は最もポピュラーな疾患であろう.しかし,時として処置に窮するケースも稀ではない.処置に窮しその処理に難渋を強いられた場合の対処法について,主に手術的操作を中心にし,その際の要領や注意点について述べる.
 当院で行つた腹腔内持続洗浄群のうち,現在までに虫垂穿孔性汎発性腹膜炎例は40例であり,1日以上洗浄できた群では二次的膿瘍の発生は1例もなく,入院期間も単なるドレナージ群に比してはるかに短く成績は良好であつたのでその手技,方法についても合せて述べた.

手術のノウ・ハウ—膵・胆道疾患

著者: 勝見正治 ,   青木洋三

ページ範囲:P.239 - P.244

 腹膜炎への進展を推測させる症例に対する治療のコツの第一は内科的治療に見切りをつけ外科的治療に転換するタイミングであり,第二はこの際の手術術式である.手術のタイミングを逸しても,また手術侵襲が過度となつても所期の目的を達し得ない.急性膵炎にあつては膵授動術兼膵床ドレナージ術とtriple-stomyが,急性胆嚢炎,胆管炎にあつては胆嚢摘出術もしくは何らかの方法による胆道ドレナージが必要最小限の術式として要求される.本稿ではこの基本術式につき,私達が最近経験した症例に基づき解説を加えたが,この類の手術の究極の目的は救命ということにあり,根治手術は時として二次的な性格を帯びても致し方ないことは銘記すべきである.

手術のノウ・ハウ—骨盤腹膜炎

著者: 大谷五良

ページ範囲:P.245 - P.247

 骨盤腹膜炎は婦人に特有な小骨盤腔に限局した腹膜炎で,腹膜炎の中でも治療上,診断上も特殊な点を有している.本症の成因は子宮内膜炎,附属器炎よりの続発であるが,以前は淋菌が起因菌の60〜70%を占めたが,最近は5%以下で,現在はブドー球菌,連鎖球菌が主役をなし,それに腸内細菌が混合感染をおこすようになつている.以前は骨盤腹膜炎は保存的に治療するのが主流であつたが,最近は手術の安全性,抗生物質治療の発達などより,積極的に開腹ドレナージをするようになつている.開腹法,ドレナージ法,腹腔洗浄法など実技についても詳述したが,一般の腹膜炎と異り,原因が除去されれば閉鎖回路のsump tubeを使用することにより,ドレナージの効果を上げ,しかも治療期間を短縮できることを強調した.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・24

大腸広基性小結節集簇型の低い隆起性病変—villo-tubular adenomaの癌合併例

著者: 小野正人 ,   板橋正幸 ,   廣田映五 ,   森谷冝皓 ,   小山靖夫 ,   小黒八七郎 ,   牛尾恭輔

ページ範囲:P.183 - P.184

 肉眼的に広基性小結節集籏型の低い隆起病変を呈したvillo-tubular adenomaの癌合併例を提示する.
 症例 84歳,男性

原典を繙く・3

Dieulafoy潰瘍(その3)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.

著者: 島津久明

ページ範囲:P.249 - P.251

 ここに,やはりほとんど雷の襲来を思わせるような激しい吐血を伴う胃の単純な表在性潰瘍を呈した第3の症例がございますが,これはMichaux博士の大変なご好意によるものであります.23歳の若い女性が昨年の10月25日,Broussais病院の第40,Broca病棟に入院しております.彼女は生来健康で,胃の痛みや嘔吐などを全く知りませんでしたが,暫らく前から彼女自身が胃痙攣と呼ぶ症状に見舞われるようになりました.10月20日,この日彼女は気分がすぐれなかつたのですが,共同洗濯場へ洗い物をするために家を出ております.その直後に彼女は気が遠くなる感じとめまいに襲われました.彼女は家へとつて返えしておりますが,数分後におよそ2lと見積られる大量の血液を吐出致しました.
 吐血に続いて下血も起こりました.エルゴチン,氷,牛乳食が処方され,絶対安静が指示されました.しかし,10月22日の夜と10月23日の昼間に再び吐血と下血が起こり,この女性は10月25日に入院しております.あまりに大量の血液が失われたために,彼女の皮膚や粘膜は全く色を失い,脈拍数は130,体温は39°と上昇しております.300gの血漿の皮下注,エルゴチンの投与,氷嚢による冷罨法などの処置にも拘らず,新たな吐血が反覆して起こりました.危険が切迫しているのをみて,Michaux博士はこの胃出血が胃の単純性潰瘍によるものであると確信し,手術をすることを決心しております.

文献抄録

胃癌の術後補助化学療法—1,805例5年追跡成績の解析

著者: 高橋孝行 ,   石引久弥

ページ範囲:P.252 - P.252

 1970年代早期より,診断および手術法の進歩のため日本人胃癌患者の治癒切除成績は著しく向上した.予後改善を図つて手術補助化学療法の臨床研究が行われてきたが,prospective randomized controlled study,特に経口抗癌剤の有効性の評価は少ない.
 日本の297施設を含む,日本の胃癌手術の補助化学療法研究会は1975年5月より1976年7月までの胃癌切除症例2,064例を対象とし,cell cycle nonspecificなmitomycin-C(MMC)投与を導入療法とし,その後のcell cycle specificなFutraful(Tegafur)持続経口投与を維持療法とした併用療法の有効性を検討した.

腹部エコー像のPitfall・7

右下腹部腫瘤

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.253 - P.254

この患者の診断は?
症例1 15歳女性
 右下腹痛のため翌日当科受診,右下腹部に6×6cmの腫瘤触知,圧痛(+),白血球数11500/mm3,体温37.0℃,腹部エコー像および腹部単純X線像を示す(図1,2).

鼎談

朝まで待てる手術,待てない手術

著者: 牧野永城 ,   大久保高明 ,   松峯敬夫

ページ範囲:P.259 - P.270

 緊急手術以外は,手術は設備,スタッフの十分にそろつた明るい時にしたほうが良いのは当然である.そこで,夜間,救急患者がはこばれてきたり,入院患者の病態が急変した時,朝まで待てる場合はどんな時か,その時の処置はどうすべきか,朝まで待てない場合とはどんな時か,朝まで待てない時の限られた条件のなかでの手術の注意点,などについて第一線病院の指導医の立場から,具体的に話合つて頂いた.

臨床研究

胃癌のリンパ節転移に対する手術と併用化学療法の問題点

著者: 安名主 ,   小池秀夫 ,   苅部徳郎 ,   畑山善行 ,   山浦芳徳 ,   荻原迪彦

ページ範囲:P.271 - P.278

はじめに
 胃癌手術成積の向上は十分な範囲におよぶリンパ節郭清の実施によるところが大きい.われわれが行つているリンパ節郭清の術式1)は大網,小網および網嚢の切除と所属リンパ節の郭清であり,早期癌には第1群並びに第2群リンパ節の郭清(R2)手術)2)を行い,進行癌にはそれらに加えて第3群リンパ節の郭清(R3手術)を行つている.しかし,リンパ節郭清にはその手技や郭清範囲などにまだ問題が残されている.
 本論文では癌の占居部位によるリンパ節転移の起こり方を検索し,それに基づいたリンパ節郭清の方法を述べ,また郭清の程度による補助化学療法の効果を検討した.

若年者胃癌の検討

著者: 橋本興 ,   高橋知之 ,   太田博俊 ,   大橋一郎 ,   高木国夫 ,   梶谷鐶

ページ範囲:P.279 - P.283

はじめに
 若年者胃癌の多くは進行度が高く,転移も多く,切除率も低いため予後不良といわれてきた.しかし,診断学の進歩により,若年者胃癌においても早期例が報告されてきており,若年者胃癌といえども早期例や治癒切除例では予後も不良でない.
 今回われわれは,癌研外科における30歳未満の胃癌症例を若年者胃癌とし,早期癌を中心に検討したので報告する.

術後経口制癌剤長期投与(3年以上)と骨髄,肝,腎機能

著者: 副島清治 ,   加固紀夫 ,   川口忠彦 ,   木村芳雄 ,   曽我須直

ページ範囲:P.285 - P.288

はじめに
 最近の外科領域における癌化学療法は,術後長期の経口制癌剤併用が広く施行され,がん集学的治療研究財団の共同研究特定研究3胃癌においてもTegafur,5—FU,HCFUなどの12ヵ月〜23ヵ月投与が試みられており,その他多くの共同研究のプロトコールにも用いられている.しかし経口制癌剤長期投与については,適応,投与継続期間,生体におよぼす影響,免疫能を低下せしめ,転移,再発をひきおこす可能性,第二の癌発生の可能性など,さらに検討すべき多くの問題をかかえている.これらの多くの問題点のなかから経口制癌剤長期投与が外来通院症例に対していかなる影響をおよぼしているかについて検討した.

臨床報告

食道直腸同時性重複癌の1治験例

著者: 福島駿 ,   渡辺啓司 ,   奥洋 ,   藤政篤志 ,   本多哲矢 ,   弓削静彦 ,   梅津徹 ,   田上真 ,   枝国節雄 ,   曺光男 ,   姜定幸 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.289 - P.292

はじめに
 近年,食道と他臓器との重複癌に関する報告は同時性および異時性を含めて増加の傾向にあるが,その多くは食道胃重複癌である.今回,われわれははなはだ稀な同時性の食道直腸重複癌に対し一期的に根治術を行い,その過大侵襲にもかかわらず術後順調な経過をとつている1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

縦隔原発の悪性線維性組織球腫の1例

著者: 鄭正勝 ,   佃公雄 ,   中井一郎 ,   野村秀人 ,   前田知行 ,   清水正啓 ,   伏木信次 ,   高松哲郎

ページ範囲:P.293 - P.296

はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma以下MFHと略す)は線維芽細胞様細胞と組織球様細胞とが種々の割合で含まれる多形型の肉腫である.最近本邦においてもその報告例は増加しているが,発生部位は四肢に多く,縦隔に発生した例は極めてまれである.われわれは最近縦隔原発と考えられるMFHの1例を経験したので報告する.

鈍的外傷による急性解離性腹部大動脈瘤の1治験例

著者: 松井泰樹 ,   伊藤勝朗 ,   小川正男 ,   田中孝一 ,   岡野一廣 ,   原宏 ,   森透

ページ範囲:P.297 - P.300

はじめに
 鈍的外力による外傷性解離性腹部大動脈瘤は1965年,Ngu and Konstam1)が最初に報告して以来,文献上18例の報告をみる比較的稀な疾患である.最近われわれは左腸骨動脈の急性動脈閉塞の術前診断のもとに緊急手術を行つたところ,外傷による急性解離性腹部大動脈瘤であることが判明した1症例に遭遇し,治癒せしめることができたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

術前脾動脈塞栓が有用であつた脾機能亢進肝細胞癌の1切除例

著者: 竜崇正 ,   渡辺義二 ,   向井稔 ,   山本義一 ,   菊池俊之 ,   有我隆光 ,   長島通 ,   高在完 ,   碓井貞仁 ,   小高通夫 ,   佐藤博

ページ範囲:P.301 - P.305

はじめに
 日本における肝細胞癌の大部分は肝硬変を合併しており,外科治療上最大の問題点となつている.切除の可否および切除範囲の決定のために種々の肝機能予備力の検討がなされている1).しかし中には脾機能亢進のため,白血球数や血小板数が減少し,肝機能は十分でも感染や出血を危具して切除を断念せざるをえない場合もある.われわれはかかる症例に対して部分的脾動脈塞栓術(partial splenic embolization)を施行し,白血球,血小板を増加させてから安全に根治切除し得た1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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