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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻3号

1985年03月発行

雑誌目次

特集 癌のSurgical Emergencies

甲状腺癌における気道閉塞(呼吸困難)

著者: 河西信勝

ページ範囲:P.323 - P.329

 甲状腺癌に原因する呼吸困難としては,いくつかの病態が考えられるが,代表的なものとして,①気道閉塞による呼吸困難(腫瘍の気道内浸潤,声帯に関連する神経麻痺),②誤嚥による呼吸困難,③肺機能低下による呼吸困難がある.そして多くの場合,これらの原因が重複して呼吸困難を生じさせていると考えられ,術前の呼吸困難に安易な気管切開を行うことは望ましくない.術前に気管切開を必要とする症例は,体位・頸部の位置によつて呼吸困難を生じる症例である.術後の呼吸困難症例では積極的に永久気管孔造設を行うことが望ましい.

肺癌における急性呼吸不全

著者: 藤村重文 ,   近藤丘 ,   山内篤 ,   岡部健 ,   半田政志 ,   仲田祐

ページ範囲:P.331 - P.336

 東北大抗研外科において過去5年間に経験した肺癌手術512例のなかから,緊急手術を必要とした11例(喀血1例,気道閉塞による呼吸困難2例,肺炎5例,血胸および気胸3例)をとりあげ,それぞれの手術における実際的な問題点に関して検討した.
 肺癌における緊急手術においては,術前検査が十分に行われない場合が多々あり,従つて術後合併症を防止する対策に苦慮することがある.合併症のうち,術後肺合併症はそれだけで致命的であるため,その背景因子となる術前合併疾患や低肺機能の存在の有無を知るためにできる限りの検索を行うべきである.術中は,対側吸引を防止し,術後は気道管理をとくに厳重にする.転移性肺腫瘍における血胸や気胸の手術では,将来の再手術を考慮して,該側は十分に視野を拡げ,できる限り病巣を摘出する必要がある.

食道癌における気管・気管支瘻

著者: 西村寛 ,   掛川暉夫 ,   武田仁良

ページ範囲:P.337 - P.342

 食道癌による気管・気管支瘻症例は,A3症例108例の17%に相当した.この進行食道癌症例は全身状態不良で,重篤な肺合併症を有する例が多いが,瘻があるからといつて切除を一方的に断念してはならない.
 全身状態の改善を計りながら治療計画をたて,合併切除も含めた切除再建を念頭におき,切除不能と判断すれば経口摂取可能ならしめるバイパス手術を考慮すべきであろう.
 これらの手術が安全に行い得る状態に持つてゆく事も大切であるが,手術の安全性も忘れる事なく適応を十分に考慮し無謀に終つてはいけない.

胃癌における穿孔,出血

著者: 北島政樹 ,   鳥居治文 ,   依田一郎 ,   木内立男 ,   関学 ,   三宅純一 ,   八木田旭邦 ,   松田博青

ページ範囲:P.343 - P.348

 胃癌の出血,穿孔は胃・十二指腸潰瘍のそれと異り,重篤な背景が存在するため,治療に難渋することが多々ある.すなわち胃癌穿孔については切除という原則は同一であるが,出血に対しては潰瘍のように有効な保存的治療(H2レセプター拮抗剤etc)が皆無といえるので手術に頼らざるを得ない.しかし手術に際しては担癌体として消耗状態にあるため,リンパ節郭清や胃癌切除など手術の根治性をいかに両立させるかが重要なポイントとなる.そこで術式の選択は胃癌の進展度および術者の技倆に合わせて最適な方法を術者が即座に判断しなければならない.過度の手術侵襲は直接死を招く恐れがあるので,必要最小限の侵襲にとどめ,患者の救命に心がけることが大切である.

大腸癌イレウス,穿孔

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.349 - P.356

 大腸癌によつておこつた腸閉塞と腸穿孔の外科的処置について自験例を中心に検討した.その結果,閉塞14例中7例と穿孔6例中2例がstage 4以上で絶対治癒切除が不可能であつた.また,高齢やpoor riskのため人工肛門造設だけになつた者が閉塞4例,穿孔1例で,術後10日以内の死亡が閉塞2例,穿孔3例であつた.
 これらを反省してみて,緊急手術といえども術前からショックに備えた万全の準備をし,TPNや高濃度酸素吸入はもちろんのこと,術後のCVPや動脈血液ガス分析などによるコントロールも必須である.その上にたつて,適切な術式の選択をする.閉塞の場合は拡張大腸を全摘して安全な吻合を行い,穿孔の場合も広範囲切除に加えて,十分な腹腔内洗浄と腹膜清拭をするべきである.しかも,可及的短時間の一期的手術が望ましい.

肝臓癌における肝臓破裂

著者: 菅原克彦 ,   和田敏夫 ,   飯村譲 ,   木村幸三郎 ,   東皓雄 ,   友利千之

ページ範囲:P.357 - P.362

 原発性肝細胞癌は肝硬変を8割前後に併存しており,日本肝癌研究会の集計では11%に癌部の破裂が報告されている.肝癌破裂症例は前駆症状が続いた後,腹部膨満を訴え,やがてショック状態となるので診断は比較的容易である.重要臓器機能の保全を企図した対ショック療法を施行する一方,超音波エコーを用いて腹水の有無,癌部の局在,門脈内腫瘍塞栓に関する情報を集める.緊急的肝機能検査を施行する.腹水500ml以下,総ビリルビン値5mg/dl以下,プロトロンビン時間60%以上で局所的に切除可能と診断すれば肝切除術を施行する準備を早急に行う.肝切除の適応がない症例では肝動脈結紮,塞栓療法を考慮するが治療効果は乏しい.

胆道癌による閉塞性胆管炎

著者: 伊藤俊哉 ,   角田司 ,   押渕徹 ,   山口哲磨

ページ範囲:P.363 - P.368

 肝外胆管癌110例における閉塞性胆管炎について,その病態と治療方針を概説した.本症の主要症状は黄疸であり,入院時血清総ビリルビン値が10mg/dl以上のものが73%を占め,胆汁中細菌検査陽性は65例中22例,34%であつた.
 外科的治療として一期的手術を44例に,二期的手術を66例に行つた.二期的手術の初回手術は減黄術であり,総ビリルビン値は,平均16.1±8.3mg/dlより5.4±5.0mg/dlへと改善した.手術死亡率は一期的手術が31.8%,二期的手術が13.6%を示し,有意差を認めた.以上より,本症の治療のfirst choiceは減黄術であり,全身状態の改善を計り,切除可能例に対しては可及的に切除を行うべきであることを強調した.

直腸癌による直腸膀胱瘻—大腸癌による尿路系との瘻孔形成例も含めて

著者: 大木繁男 ,   大見良裕 ,   辻仲康伸 ,   田島滋 ,   城俊明 ,   山岡博之 ,   飯田明 ,   池秀之 ,   古島薫 ,   大出直弘 ,   土屋周二

ページ範囲:P.369 - P.373

 大腸癌による尿路系との瘻孔形成例のsurgical emergencyとして最低限必要なことはdiversion of the fecal stream,すなわち人工肛門を造設することである.しかし瘻孔形成するような他臓器浸潤例でも最近では骨盤内臓器全摘術などの隣接臓器合併切除により一期的に大腸癌と癌浸潤を受けた尿路を切除し,人工肛門,尿路変更を行い治癒切除可能な場合もあるので,術前に注腸X線撮影,CF,CT,エコー,IP,膀胱鏡などにより十分検査すべきである.
 癌を切除後また切除できない時でもquality of lifeに最も影響を与えるのは尿路変更の方法である.回腸導管も確立したよい方法である.しかし,われわれは最近一側性双孔式突出型無カテーテル尿管皮膚瘻を行い,期待できる結果であつたのでその方法も述べた.

心タンポナーデ

著者: 高野照夫 ,   新田隆 ,   植田俊郎 ,   小坂真一 ,   田中啓治 ,   家所良夫 ,   桑原哲夫

ページ範囲:P.375 - P.381

 悪性腫瘍は心嚢へ転移することが多く,致命的な悪性心嚢水腫(心タンポナーデ)を起こすゆえ,緊急治療が必要である.この診断には臨床症状や胸部X線写真,奇脈心電図,心プールスキャン,胸部CT等の検査法によつてなされるが,緊急の際,最も有力なのは心エコー図である.心タンポナーデの治療法としては心嚢穿刺法と剣状突起下心膜切開術がある.悪性腫瘍の場合には持続的に心嚢液が貯留するので,剣状突起下より心膜を切開しドレーンを留置する剣状突起下心膜切開術が優れた治療法である.本症は急激に進展し生命をおびやかすが,迅速・的確に診断と処置を行えば,悪性腫瘍患者の救命・延命を可能にし,かつ苦痛を除去することができる.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・25

直腸肛門部原発悪性黒色腫

著者: 廣田映五 ,   上野正見 ,   板橋正幸 ,   森谷冝皓 ,   北條慶一 ,   小山靖夫

ページ範囲:P.320 - P.321

 直腸肛門部より発生する悪性黒色腫はきわめてまれな疾患であり,早期に血行性・リンパ行性転移をきたし予後不良である.本院における1例を呈示する.
 症例 69歳,女性

腹部エコー像のPitfall・8

肝下面の腫瘤と腹腔内異常エコー

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.383 - P.385

この患者の診断は
症例1 54歳 男性
 肝機能障害のためルーチン検査として超音波検査を行つた.

原典を繙く・4

Dieulafoy潰瘍(その4)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.

著者: 島津久明

ページ範囲:P.387 - P.389

 若干の状況の違いはありますが,以上の7例はいずれも全く類似したものであり,とくに潰瘍病変はきわめて表在性で,出血はきわめて激烈であります.その臨床像や治療についてお話するまえに,まず潰瘍病変の病理解剖を明らかにすることから始めたいと思います.私が今,検討の対象としております胃のこの潰瘍病変は概して円形でありますが,楕円形であることも少なくありません.そして,50サンチーム硬貨大(自験第2例),2フラン硬貨大(Michaux博士の症例),5フラン硬貨大(自験第1例)などの面積をもつように,しばしばかなりの大きな拡がりをもっております.この表在性潰瘍病変は,それよりも小さい多数の病変が集合して生じたようにみえることもあります(Luys博士の症例).しかし,少なくとも外観上,しばしばきわめて多数にのぼる点状のこれらの小びらんは,Balzer博士,さらにその後Pillet博士によって詳細に検討された出血性びらんとは異なるものであります.この潰瘍性病変は胃粘膜の限局した1カ所に生じます.粘膜欠損は表層部分に限られ,辺縁が隆起したり,不規則になったりすることはありません.鋭利に切り落されたように生じ,周囲は健常粘膜で囲まれています,病変は粘膜面とほとんど段差がなく,きわめて表在性であるために,生体でも剖検時にも,注意深く観察しないと,はなはだ簡単に見過ごされてしまうほどであります.

文献抄録

早期乳癌の治療,予後における胸筋間(ロッター)リンパ節転移の意義

著者: 池田正

ページ範囲:P.390 - P.390

 非定型的乳房切断術(MRM)はここ20年来増え続け,今や多くの外科医が原発性乳癌に対する標準術式として施行するようになつてきた.しかし,MRMでは胸筋間(ロッター)リンパ節を郭清しきれないという隠れた欠点がある.そこで,早期乳癌における胸筋間リンパ節(IPN)転移の意義につき考察した.
 対象は,1975年より1982年の間にMemorial Sloan Kettering Cancer CenterおよびSt Luke's Roosevelt Hospital CenterでMRMを施行した500例の早期乳癌(T1N0)患者である.MRMは,浸澗癌に対しては大胸筋保存術式を,大部分の非浸潤癌に対しては大小両胸筋保存術式を行い,手術の最後にIPNのサンプリングを施行した.1975年から1978年の間は,IPN biopsyを選択的に行つたため,その施行頻度は38%であつた.1979年から1982年は全例施行を原則としたが,実際に対象となる胸筋間組織が存したものは80%にすぎず,しかもそのうちリンパ節を認めたものは73%であつた.IPN転移は,サンプリングした症例の4%に認めたが,これは全症例の2.6%,浸潤癌の3%に相当する.また,この数字は,腋窩リンパ節転移陽性例の8.2%,陰性例の0.5%に相当する.IPN転移陽性の13例は,他の症例に比し,腫瘍径,占拠部位に差を認めなかつた.

Invitation

第85回日本外科学会総会 見どころ,聴きどころ—現状の把握と明日への展望

著者: 佐藤寿雄

ページ範囲:P.391 - P.393

はじめに
 このたび仙台市において第85回日本外科学会総会を開催させていただくことになりました.恩師 槇 哲夫教授,そして葛西森夫教授が仙台市においてそれぞれ15年および5年前に同学会を主宰されましたが,その後会員数も著しく増加し,現在では参会者も常時4,000名を越える大学会となつております.このようなわが国最大の学会を仙台市において開催させていただくことは,私にとりまして無上の光栄でありますとともに責任の重大さを痛感しております.
 最近,学会や研究会が数多く設立され,医学の専門化,細分化が高度になりつつありますが,その反面,全体として把えようとする総合の必要性が強く指摘されております.そして,日本外科学会はその総合のための場の一つとしての使命を負わされております.一方,卒後教育に対する学会の責任も一段と強く求められており,充実した医学教育,卒後教育があつてこそ医学水準が高まり,レベルの高い研究も生れる筈であります.その意味において,招待講演,会長推薦講演のほか,シンポジウムおよびパネルディスカッションには総合的な,教育的要素に富む主題を選ばせていただきました.医学の進歩のスピードはすさまじいものがありますが,日本外科学会としては,徒らに先取りすることなく,昭和60年代を迎えた今日,内外を通じての外科学の現状を確実に把握し,明日への飛躍にそなえていただきたいと思うからであります.

画像診断 What sign?・24

"shotgun" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.395 - P.395

 "shotgun" signは1)前回の"parallel channel" signとならんで超音波による閉塞性黄疸の診断に役立つ所見である.肝門部の超音波検査において腹側から背側にむかつて肝管,門脈,下大静脈が3つの管腔構造として観察され,時に肝管のさらに腹側に肝動脈が描出される.正常例では肝管の径は門脈の径よりも細いが,閉塞性黄疸症例で胆管拡張がおこるとこれらの径がほぼ同じになり,二連銃の銃身のように,2つの管腔が並走するようになることから"shotgun" signとよばれる.

臨床研究

胃粘膜下腫瘍26例の検討

著者: 豊島隆 ,   山本協二 ,   松代隆

ページ範囲:P.397 - P.401

はじめに
 胃粘膜下腫瘍とは一般的には非上皮性良性腫瘍を意味するものとされている1).本症は胃癌,胃潰瘍,胃ポリープに比し,稀なものとされてきたが,最近の診断技術の進歩や集団検診の普及によりしばしば経験されるようになつた.われわれはこれまで18例の胃ポリープを除いた良性腫瘍と8例の悪性非上皮性腫瘍を経験したが,両者の鑑別はきわめて困難であつた.胃粘膜下腫瘍に悪性非上皮性腫瘍を加えることには異論のあるところであるが,今回は他の疾患との比較検討のため本症を広義に解釈し,両者を含めて検討した,合わせて術前に悪性腫瘍が強く疑われた巨大な神経鞘腫の1例を報告する.

外科医の工夫

内視鏡的肝内結石截石術におけるバルンカテーテル(Grüntig)の有用性

著者: 仲本剛 ,   西原英樹 ,   前田重成 ,   国土修平 ,   与座聡 ,   小宮正治 ,   賀集信 ,   上江洲朝弘

ページ範囲:P.403 - P.406

はじめに
 肝内遺残結石に対する内視鏡的截石術が盛んになつてきた.われわれも遺残結石に対して種々の経路を設け,肝内胆管への内視鏡的アプローチを試み,截石術を行つている.このような場合,結石が存在する胆管へ如何にして到達するかがポイントである.今回,狭窄部を越えるため血管拡張用バルンカテーテルを使用し,極めて有効な手段であつたので報告する.

臨床報告

若年者乳癌の1例

著者: 味元宏道 ,   森義雄 ,   乾博史 ,   斉藤敏明 ,   加藤正夫 ,   宮下剛彦

ページ範囲:P.407 - P.411

はじめに
 20歳未満の若年者乳癌はまれで,本邦では現在まで36例の報告例があるにすぎない.われわれは18歳,女性の乳癌を経験したので報告する.

先天性食道閉鎖症に合併した硬膜下血腫を繰り返す大動脈縮窄症の1治験例

著者: 松浦雄一郎 ,   田村陸奥夫 ,   山科秀機 ,   肥後正徳 ,   藤井隆典 ,   古田靖彦 ,   北岡保 ,   渡辺泰三郎

ページ範囲:P.413 - P.417

はじめに
 大動脈縮窄症は心大血管系の先天異常の中でも比較的頻度の高い疾患とされているが,他の心大血管系の異常を伴つていることが多く,これらが患児の予後を左右するとも言われている.私どもは最近先天性食道閉塞(Gross C型)の根治術後11カ月の女児で,硬膜下血腫のattackを繰り返し,脳血管奇型が疑われ脳血管造影を行う際に大動脈縮窄症の存在を発見され,大動脈形成術により硬膜下血腫の再発を予防しえている.そこでここに簡単に症例報告する.

AFP産生胃癌の1例

著者: 小野寺健一 ,   笹生俊一 ,   菅野千治 ,   森昌造

ページ範囲:P.419 - P.423

はじめに
 われわれは,血清α-fetoprotein(以下,AFP)値が10,000ng/ml(測定法は断りのない限りRIA法)以上と著明な高値を示し,手術摘出標本の免疫組織化学的検索によりAFP産生胃癌と判明した症例を経験した.AFP値1,000ng/ml以上のAFP産生胃癌の本邦報告例86例を集計し,その臨床像および組織発生に関し若干の文献的考察を加えて報告する.

二弁置換によつて腎不全所見が完全に消褪した症例

著者: 船木治雄 ,   大田早苗 ,   広瀬脩二 ,   磯本徹

ページ範囲:P.425 - P.428

はじめに
 大動脈弁と僧帽弁の置換を要する重症の心不全患者で,術前の腎機能がBUN 85 mg/dl,血清クレアチニン値が2.5mg/dlという症例を経験した.はたしてこれが腎前性の因子のみによる異常値なのか,腎不全も合併しての異常値なのか,その判定に迷つたが,主として腎前性の因子によるものと判断し,2弁置換を施行したところ,術後約11日で,BUN 16 mg/dl,血清クレアチニン値1.0 mg/dlと,両者とも正常値に復した.
 ここにこの症例の術前,術後の経過を報告し,腎前性の腎障害か腎性の腎障害かの問題について,いささか考察を加えてみた.

子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎の1治験例

著者: 神林清作 ,   佐藤博文 ,   小島道久 ,   卜部美代志

ページ範囲:P.429 - P.432

はじめに
 子宮留膿腫は悪性腫瘍に伴つたり,その放射線治療後に発症することが多く,良性疾患を病因とするものは比較的稀である.最近著者らは老婦人で悪性腫瘍を伴わない子宮留膿腫が穿孔し,汎発性腹膜炎に到つた1例を経験した.

大腸全域に発生した腸管嚢腫様気腫の1例

著者: 加藤真史 ,   草島義徳 ,   中瀬真一 ,   重田浩一 ,   三川正人 ,   高柳尹立 ,   上村卓良 ,   高島茂樹 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.433 - P.437

はじめに
 腸管嚢腫様気腫(pneumatosis cystoides intestinalis)は,腸管の粘膜下や漿膜下に含気性嚢胞が多発する稀な疾患である.最近われわれは,盲腸から直腸までの大腸全域に発生し,しかも短期間のうちに自然治癒した本症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

激症型アメーバ性大腸炎の1例

著者: 北村和也 ,   桑田克也 ,   佐々木義文 ,   石川孝 ,   蒲池正浩 ,   渡辺信介 ,   小林忠男

ページ範囲:P.439 - P.442

はじめに
 赤痢アメーバによる大腸炎の中には,極めて稀ではあるが,急激に進行し,穿孔性腹膜炎を併発するものがある.このような経過をとるものは,診断が遅れ,予後の不良なものが多い.われわれは,最近,大腸全域が壊死に陥り,不幸な転帰をとつた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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