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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻5号

1985年05月発行

雑誌目次

特集 膵頭十二指腸切除後の再建法のポイント

Ⅰ法(今永法)再建法

著者: 尾形佳郎 ,   松井淳一 ,   植松繁人 ,   神徳純一

ページ範囲:P.593 - P.599

 膵頭十二指腸切除後の消化管再建術式には従来より各種の方法が考案され施行されて来ているが,実際に優劣をつけるとなると決定的でない場合が多い.われわれの施設でもその術式は変つて来ており,図1のごとく1971年1月から1976年4月ではChild法,1976年5月から1981年7月ではChild Roux-en Y法,1981年8月以降は今永Ⅰ法を原則とし,適応があれば消化管をより温存する幽門保存の膵頭十二指腸切除を施行するようになつた.以下に設問に従つて現在行つている今永Ⅰ法について述べてみたい.
 膵頭十二指腸切除の対象となつた疾患は中・下部胆管癌,乳頭部癌,膵頭部癌,十二指腸腫瘍,胃癌であり,その再建術式の概要は表1に示す.今永Ⅰ法は1984年12月まで28例に施行した.

Ⅱ法(Child法)再建法

著者: 山内英生 ,   宮下英士 ,   佐藤寿雄

ページ範囲:P.601 - P.605

 1935年にWhippleら1)が十二指腸乳頭部癌に対する膵頭切除術の成功例を報告して以来,膵頭切除術は膵頭部領域の外科的疾患に対して広く行われるようになつた.
 切除後の消化管再建法については数多くの方法が考案されてきたが,Whipple法2),Cattel法3),Child法4)による再建術が基本となつている.これらの原法においては胆嚢はいずれも温存されていたが,膵頭切除術ではOddi括約筋も切除範囲に含まれるため,胆嚢はその機能を失い5),感染の温床となる6)ので,胆嚢は摘出すべきであるとされている.また,本邦では,より生理的な再建法として胃空腸吻合術をBillroth Ⅰ型にする今永法7)が考案されている.

Ⅱ法(Whipple法)再建法

著者: 中山和道

ページ範囲:P.607 - P.610

Ⅰ.術式のポイント
 1.挙上形式は?
 結腸間膜に新たに切開を加え,retrocolicに空腸脚を挙上している.膵空腸吻合,胆管空腸吻合,リンパ節郭清部など手術操作を行つた部は結腸間膜で隔絶しておき,万一の縫合不全発生時においても,汚染液の結腸間膜より下方への流出をできるだけくいとめ,小腸の動きのじやまにならないようにとの理由である.

胃温存再建法

著者: 鈴木敞 ,   金輝次 ,   梶原建熙

ページ範囲:P.611 - P.619

はじめに──筆者らの新しい考え方
 程度の差こそあれ,膵頭十二指腸切除後には消化吸収障害,耐糖能低下,ホルモン分泌異常などを回避できない.胃温存膵頭十二指腸切除は,かかる膵切除後の機能低下を最低限に防ぎ止めるべくなされるものである.その骨子は,胃の生理的機能—食物の貯留・消化・移送とか内外分泌など—をすべて保存すると共に,この胃機能温存によつて胃と腸膵などとの臓器相関機構を維持し,そして向膵ホルモン分泌などを介して切除残存膵の内外分泌機能を賦活して,術後膵機能不全を軽微に留めようと目ざすところにある.
 切除範囲からみた本術式のポイントのひとつは神経支配をうけた幽門括約筋と十二指腸球部の温存にあると解している.すなわち,幽門括約筋は胃内容を律動的に肛側に送り込むと共に,十二指腸内容の逆流を防止する1).そして十二指腸球部はそれよりのホルモン分泌2,3)を介して胃膵内外分泌を調整すると共に,この幽門括約筋収縮や胃運動調節の上にも重要な役割を演ずるとされる.

膵胃吻合法

著者: 渡辺五朗 ,   宇田川晴司 ,   鈴木正敏 ,   小野田雅 ,   鶴丸昌彦 ,   秋山洋

ページ範囲:P.621 - P.625

 膵頭十二指腸切除術後に生ずる膵炎,膵液漏出は,死に至る最も重篤な合併症であり,本手術の成否を決定する重要な要素を成している.したがつて再建時における膵との吻合は外科医が最も神経質になる場面であり,本邦では主に空腸を用いる膵空腸吻合法における安全性につき検討され,種々の工夫が行われて来た1,2)
 一方,欧米ではその工夫の1つとして1944年Waughら3)が初めて膵胃吻合(Pancreaticogast—rostomy)の臨床例を報告し,現在でも安全な術式としての評価を得ている.われわれも従来膵空腸吻合として膵断端を空腸に陥入させる術式を行つて良好な成績を得ていたが,より安全で簡単な手技として,本邦で初めて秋山らが報告した4)膵胃吻合を行い,期待さるべき結果を得ているので,以下に本法の手技および成績を中心に述べる.

座談会基調論文

胆道・消化管機能からみた膵頭十二指腸切除後の再建法—今永法,Child法,Whipple法の比較

著者: 高田忠敬 ,   内山勝弘 ,   安田秀喜 ,   長谷川浩 ,   里井豊 ,   国安芳夫

ページ範囲:P.627 - P.631

はじめに
 1935年Whippleら1)が乳頭部癌に対し,はじめて二期的膵頭十二指腸切除を行つた.しかし,当初胆管および膵断端の消化管への吻合はなされておらず,1943年Whipple2),Child3),Cattelら4)により胆管および膵断端と消化管の吻合を同時に行う一期的膵頭十二指腸切除術が考案された.これらの術式の特徴は,重篤な合併症としての膵腸吻合部や胆管空腸吻合部の縫合不全,逆行性胆管炎などの対策として,これらの吻合部に食物を通過させないようにしたことである.これに対し,1960年今永5)は縫合不全や胆管炎の発生と食物の通過経路とは関係がないとし,Braun吻合を付加しないCattel変法とも言われる再建法を報告した.
 膵頭十二指腸切除後の再建法で長年問題となつていたのは,膵腸吻合部の縫合不全であることは言うまでもないが,再建法ならびに吻合法,素材の種々の工夫,膵管外瘻の付加,さらに高カロリー輸液法などの栄養管理が進み,縫合不全は以前に比べ激減してきており,実際われわれも最近3年間に施行した膵頭十二指腸切除57例では1例も経験していない.しかし,Fortnerら6)の提唱以来,積極的に郭清を行う拡大膵頭十二指腸切除の普及により,頑固な下痢の発生など消化吸収障害の問題が新たな合併症としてクローズアップされてきた7)こともあり,膵頭十二指腸切除についても術後の消化機能を温存する術式が望まれるようになつてきた.

座談会

膵頭十二指腸切除後の再建をどうするか

著者: 高田忠敬 ,   二村雄次 ,   永川宅和 ,   斉藤洋一

ページ範囲:P.632 - P.644

 前掲高田氏の基調論文をもとに,膵頭十二指腸切除後の各種再建法について微に入り,細に入つて話しあつていただいた.
 術前・術後の管理や手術法の進歩にともない膵頭十二指腸切除術は最近多くの施設で行われるようになり,いくつかのcontroversyはあるものの,安定した手術法となつている.

カラーグラフ 臨床外科病理シリーズ・27

腸チフス

著者: 松峯敬夫 ,   広田英夫 ,   福留厚 ,   青木幹雄 ,   森田博義 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.590 - P.591

 近年腸チフスは激減し,特に重症例をみる機会は稀となつているが,出血や穿孔を起こし,確定診断の得られぬまま腸切除が行われる例も皆無ではなく,今日でもなお緊急手術を要する腸疾患として,その存在を念頭に置く必要がある.
 そこで今回は,当院で経験した2例の穿孔例(表)のうちから,広範囲腸切除を施行した1例を選び供覧する.

原典を繙く・6

Dieulafoy潰瘍(その6)—Exulceratio simplex L'intervention chirurgicale dans les hématémèses foudroyantes consécutives à l'exulcération simple de l'estomac.

著者: 島津久明

ページ範囲:P.649 - P.651

 それでは,そろそろ治療と外科手術の問題に移りたいと思います。
 ある患者が胃の潰瘍性病変,つまり単純性潰瘍(ulcus simplex)か,あるいは単純表在性潰瘍(exulceratio simplex)から反復して吐血を起こしますとき,どの時点まで内科的治療で頑張つていてよいものでしようか?どこで外科手術を行うことに踏みきるべきでしようか?手術を適切な時機に行うには,どのような徴候や症状に基づいて判断すればよいのでしようか?単純性潰瘍からの吐血が内科的治療で完全に治癒したということは,もちろんない訳ではありません.つまり単純性潰瘍の経過中に大量の吐血を反復して起こす患者は我々の誰もがみておりますが,これらの患者は主として内科的治療の恩恵をうけているのであります.私自身のことを申しますと,私は外科手術を行うことなしに吐血が停止し,潰瘍病変も治癒した定型的な胃潰瘍症例を6例経験しております.これらのうち最後の1例は,私どもの同僚Ferrand博士と一緒にみました男性の症例であります.したがいまして私は,胃潰瘍の経過中に吐下血を起こしたすべての患者を外科手術に委ねるという考えはもつておりません.しかしながら,単純性潰瘍あるいは単純表在性潰瘍のいずれにおきましても,問題は私たちの内科的処置が不十分な場合であることは明らかでありまして,この場合には,私たち内科医がたとえ何をしようとも,患者は出血のために死亡することになります.

Invitation

第26回日本消化器外科学会総会 見どころ,聴きどころ—今日的テーマをシンポジウムに

著者: 早坂滉

ページ範囲:P.652 - P.653

はじめに
 この度,第26回日本消化器外科学会総会を私共で御世話させていただくことになりました.御承知のように本会の第1回目の発足が昭和43年ですから本年で18年を経過したことになります.会員数も今や1万人を超す大学会となり,専門医制度も発足し,外科医のなかでも最も多い消化器にたずさわる医師達の研究発表の場として,また研修の場として誠に権威のある学会と成長いたしました.本学会が北海道で開催されるのははじめてであり,その意味でひとり北海道の外科医のみならず全国の消化器外科にたずさわつている外科医にとつても,実りの多い学会になることを願つております.したがいまして,ひとりでも多く本会に出席され,会を盛りたてていただきたいと切望いたします.
 さて学会は7月18日(木),19日(金)北海道厚生年金会館,教育文化会館を中心にして行われます.この2〜3年応募演題が年々増加傾向にあるようで,そのため会場数が多くなり行う方にとつても,聴く方にとつても大変なことであるということから,なるべくシンポジウム等を多くして一般演題を制限したらという意見もありますが,なかなかその線にふみこまれない所もあります.その点,第25回本会の土屋周二会長は会場数を減らし展示を多くしておられたようですが,私もこの方法に見習つて行い内容の濃いものにしたいと思います.以下「臨床外科」の諸賢のため学会のあらましを御紹介いたしたいと思います.

文献抄録

食道曠置術は危険な術式か?/小児における同所性肝臓移植術—2年間47例の経験

著者: 柵瀨信太郎 ,   西尾剛毅

ページ範囲:P.654 - P.655

 食道バイパス手術は切除不能な食道癌に対する姑息手術として,また食道周囲との癒着のひどい腐食性食道炎,重症食道穿孔などに対して行われる術式である.バイパスされた食道の処置は上下断端を閉鎖し曠置しても安全と考える者と,食道のドレナージを行わないと粘液瘤腫となり,感染,縦隔内臓器への圧迫,破裂などの危険があると考ええる者と,異論のあるところである.
 著者らは食道バイパス手術89例を対象として食道曠置術の安全性について報告している.症例は,食道癌85例,腐食性食道炎3例,アカラシアによる食道狭窄1例で,これらに対して曠置術51例,Roux-en Y食道空腸吻合30例,大腸バイパスにて食道・胃連続性を保つたもの8例が行われた.38例に対して術後CTスキャンによる経過観察がなされた.

画像診断 What sign?・26

門脈内ガス

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.657 - P.657

 前号の胆道内ガスとならんで腹部単純像にて樹枝状分岐を呈するガス像の鑑別として挙げられる門脈内ガスは表にしめすような疾患にみられることが知られている.これらは腸管壁内ガスの原因疾患とも共通していることから,腸管内圧の上昇や,虚血や潰瘍などの原因で脆弱になつた腸管壁の破綻により壁内に進入したガスが腸間膜静脈を経て門脈に至るものと考えられている.
 腹部単純像では胆道内のガスは肝門部に存在し,胆嚢内にも進展するが,門脈ガスはより末梢の門脈小分枝に分布するのが特徴である.これは胆汁の流れがhepato—fugalであるのに対し,門脈の流れがhepatopedalであることによると考えられている.門脈ガスの出現は医原性のものを除き重篤な予後を示唆していることから開腹可能な症例については迅速な外科的治療の対象になる場合が多い.

My Operation—私のノウ・ハウ

甲状腺乳頭癌に対する甲状腺亜全摘とModified neck dissection

著者: 藤本吉秀

ページ範囲:P.658 - P.662

適応と手術
 年齢が10歳から40歳の間の患者に生じる甲状腺乳頭癌は,一般に性質がおとなしく,リンパ節転移はよく起こるが血行性転移はほとんどなく,余命は同年齢の健康者とほとんど変らない.こうしたことを念頭におき,癌の根治的摘除に努めると同時に,手術後の後遺症を最小限にとどめるよう努力する.
 こうした配慮は皮膚切開線を入れる部位から始まり,大事な神経はすべて損傷しないようにし,甲状腺機能,上皮小体機能も可能な限り正常に残し,リンパ節郭清に際しても筋・血管・神経は温存に努める.

講座 腫瘍マーカー—適応と限界・1【新連載】

膵癌

著者: 高見博 ,   尾形佳郎 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.663 - P.666

はじめに
 膵癌の早期発見は最近急速に進歩している画像診断法を駆使しても困難であり,糖尿病や閉塞性黄疸をきつかけに進行した癌になつて診断されることが多い.
 一方,CEA,ferritin,RNaseなどの現在の腫瘍マーカーの多くは臨床的に満足しえるものではない.その中で著者らは膵疾患のスクリーニングにはamylase,ela—stase 1などが,さらに膵疾患のうちで,膵癌の診断には糖鎖抗原CA 19-9や膵癌胎児抗原(POA)などが比較的有用と考えている.本稿ではそれらのうちCA19-9とPOAを中心に膵癌診断の臨床的適応と限界について述べたい.

腹部エコー像のPitfall・10

胆管内echoおよび腹腔内cystic echo

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.667 - P.669

この患者の診断は
 症例1 22歳 男性 右季肋部痛にて来院.
 エコー図(図1)を示す.なお,同時に胆のう腫大を認めた.

この人と語る

診療と教育と研究と—槇 哲夫先生と語る(その2)

著者: 牧野永城 ,   槇哲夫

ページ範囲:P.671 - P.674

教育と研究の土台があってこそ
 牧野 前回Mayoの紋章で治療,教育,研究が三位一体というお話をうかがいましたが,必ず研究と教育が付随しないと治療できないということなんです.だから,この三者のどれに比重を置くとかいう問題ではなくて,一緒にいかないとできないんですよ.やつぱり最高の治療を与えるために教育と研究の進歩というものが土台になつているんです.
 槇 だから,聖路加病院なんかそうでしようけれども,病院に若い医者がたくさんいるということが診療に非常にいいことになるんですね.

臨床研究

軟X線撮影による甲状腺結節の診断

著者: 相吉悠治 ,   牛尾浩樹 ,   松本邦彦 ,   添田周吾 ,   植野映 ,   東野英利子 ,   平野洋子 ,   秋貞雅祥 ,   山下亀次郎 ,   葛谷信明

ページ範囲:P.675 - P.681

はじめに
 甲状腺軟X線撮影は甲状腺腫瘍内に存在する石灰沈着を見い出して,甲状腺腫瘍の良悪性の判断に用いようとする検査法である.私達は,最近の甲状腺腫瘍症例の術前軟X線撮影および甲状腺腫瘍摘出標本軟X線撮影について比較検討を行つたので報告する.

臨床報告

甲状腺原発癌を思わせた気管のadenoid cystic carcinoma

著者: 星野正美 ,   渡辺岩雄 ,   土屋敦雄 ,   遠藤辰一郎

ページ範囲:P.683 - P.687

はじめに
 甲状腺の原発腫瘍を思わせる,いわゆる甲状腺近傍臓器由来の腫瘍は1),下咽頭および上部食道からの腫瘤形成によることが多く,しかもその臨床像は甲状腺の未分化癌に類似した特異な症状を呈するものである.今回,著者らは甲状腺原発を思わせたadenoid cystic carcino—ma症例を経験したので,本症例について述べるとともに,adenoid cystic carcinomaと甲状腺との関連,さらにはその病像について,日本病理剖検輯報の記載を基に考察を加えて見たいと思う.

胃癌根治術後に発生した高度肝リンパ漏と思われる1手術治験例

著者: 中嶋良作 ,   藤田敏雄 ,   白崎功 ,   穂苅市郎 ,   唐木芳昭 ,   藤巻雅夫

ページ範囲:P.689 - P.692

はじめに
 胃癌根治手術施行後に発生した著明な肝リンパ腹水症の1例を経験した.
 術中留置したドレーンよりの腹水の排泄は経口摂取と同時に著明に増加し,最大2,330 ml/日におよんだ.保存的療法を試みたが効果なく,再手術により治癒せしめえた.本症に対する報告は文献上極めて少ないので,その経験と若干の文献的考察を加えて報告する.

褐色細胞腫の2例

著者: 吉田隆一郎 ,   長谷川宏 ,   謝家明 ,   佐藤行夫 ,   添田修 ,   河部英明 ,   川口昭夫 ,   富田正雄

ページ範囲:P.695 - P.699

はじめに
 副腎髄質疾患のうちで,外科的治療の対象となるのは褐色細胞腫および神経原腫瘍である.
 今回,褐色細胞腫の自験2例について検討し,診断・治療上の問題について考察する.

馬蹄腎を伴つた腹部大動脈瘤の1手術例

著者: 市来正隆 ,   佐々木久雄 ,   前山俊秀 ,   大熊恒郎 ,   奥山吉也 ,   葛西森夫

ページ範囲:P.701 - P.703

はじめに
 馬蹄腎を伴つた腹部大動脈瘤の手術は,1956年Julianにより初めて報告されて以来1),現在まで世界で37例が報告されているにすぎない.常に問題となる点は,馬蹄腎そのものの形態,位置と腎動脈の数,起始走行が手術操作上に及ぼす影響である.最近,われわれは馬蹄腎を伴つた腹部大動脈瘤の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

馬蹄腎を伴つた腹部大動脈瘤の1手術治験例

著者: 浦口憲一郎 ,   中山陽城 ,   原口周一 ,   広瀬直樹 ,   渕上量三 ,   名嘉真透 ,   古賀道弘

ページ範囲:P.705 - P.708

はじめに
 馬蹄腎を伴つた腹部大動脈瘤の手術例は,欧米においても1979年までに45例の報告を見るにすぎず,本邦においてはほとんど報告が見られない.馬蹄腎を伴う場合の手術は腎動脈のanomalyおよび動脈瘤への到達法が問題になると思われるが,われわれは大動脈瘤を左腎後面すなわち側方で切開し,動脈瘤壁と共に左腎を側方より反転させ,Aorto-iliac bifurcation graftを施行した1症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.

大腸結核症の2治験例

著者: 辻毅 ,   青山修 ,   家田勝幸 ,   田伏克惇 ,   河野暢之 ,   勝見正治 ,   玄栄世 ,   江本正直

ページ範囲:P.709 - P.713

はじめに
 近年,抗結核剤の出現により,肺結核症の減少とともに,腸結核症も減少している.しかし,腸結核症の診断は,組織学的に乾酪性肉芽腫の証明,あるいは,病変部からの結核菌の証明が必要とされているにもかかわらず,実際には,証明することは必ずしも容易ではない.
 われわれは最近,2例の術前診断の確定に難渋した大腸結核症手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

後直腸腔に発生したMucus-secreting cystの1手術例

著者: 飯澤肇 ,   亀山仁一 ,   星川匡 ,   豊野充 ,   塚本長

ページ範囲:P.715 - P.718

はじめに
 直腸と仙骨尾骨の間に発育する腫瘍は,比較的稀な疾患で,後直腸腫瘍とよばれている.成人の後直腸腫瘍は臨床症状に乏しく,直腸指診で初めて見つけられることも多い.胎生期の発生上の異常で生じるdevelopmental cystには,類皮腫,類上皮腫,mucus-secreting cystが含まれるが,これらは感染を生じやすい.これらが感染を合併した場合には肛門周囲膿瘍や痔瘻として処置されたり,直腸癌との鑑別に迷うこともあつたりして,正確な診断を要する.病理学的には多彩な病変が認められるが,悪性像がみとめられることも稀にあり,注意が必要である.
 今回,われわれは組織学的にはmucus-secreting cystであつた極めて稀な後直腸腫瘍を経験したので若干の文献的検討を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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