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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科40巻9号

1985年08月発行

雑誌目次

特集 Iatrogenic Abdominal Trauma—その予防と対策

上部消化管内視鏡検査によるIatrogenic Trauma

著者: 丸山正隆

ページ範囲:P.1017 - P.1024

 上部消化管内視鏡検査に伴う偶発症として,診断的内視鏡に伴うものと内視鏡的治療に伴うものについて,発生頻度及び対策と予防法の一端を述べた.頻度的には1975年と1982年の全国集計ではそれぞれ0.032%と0.011%で,かなり減少している.しかし,1977から1982年までを年次別にみると,むしろ増加の傾向が伺われる.また,死亡率をみると,前者では0.0012%,後者では0.0013%と変わりなく,致命率では3.66%と11.30%でむしろ後者の方が高い.これはより重症なものが多くなつていることを示唆している.偶発症の種類では出血が最も高く,次いで穿孔となつている.予防としては内視鏡に関して正しい知識を持つたうえで,慎重に検査することが第一である.

下部消化管内視鏡検査によるIatrogenic Trauma

著者: 磯本浩晴 ,   八木光博 ,   梶原賢一郎 ,   小野真一 ,   林田啓介 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.1025 - P.1031

 下部消化管検査におけるlatrogenic traumaの要因,予防ならびに対策について自験例をまじえ検討を加えた.偶発症は穿孔,出血が多く,かつ重篤である.直腸鏡においては体位の問題点を述べ,観察用内視鏡では基本的操作と関連する諸々の複合的因子をあげ,ポリペクトミーは術者の熟練度と器種の原理を会得する必要性を示唆した.また,もし偶発症に遭遇した時の態度と行動の重要性を強調した.

ERCPの合併症とその対策

著者: 琴浦義尚 ,   石川羊男 ,   相生仁 ,   宇都宮譲二

ページ範囲:P.1033 - P.1042

 過去11年間に教室で経験したERCP合併症例は,他院施行の2例を含めて計8例で,これら症例の供覧とともに,合併症の問題点とその対策について述べた.
 合併症は,膵障害3例,胆道感染3例,粘膜下注入1例,胆汁性腹膜炎1例である.死亡例は膵障害2例,胆道感染1例であり,頻回の膵管造影や,狭窄部を越えての造影剤注入が,重篤な合併症の原因になつたと思われる.
 ERCPは膵胆道系の精査法として,不可欠の検査法である.その有用性は広く認められているが,頻度は低いとはいえ,偶発症や合併症を回避できない面を持つており,特に感染予防を主体とした対策を講じて,慎重に施行するべきである.

内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)によるIatrogenic Trauma

著者: 鈴木茂 ,   炭山嘉伸 ,   宅間哲雄 ,   鶴見清彦

ページ範囲:P.1043 - P.1050

 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)によるiatrogenic traumaは,臨床家が避けて通れない問題であると共に,どの様な方法をもつて対処していくかという事は切実な問題でもある.本稿のテーマに従つて,その対策を中心に,まず,第1に適応及び禁忌,第2に手技上の問題点,さらに第3として予防対策と治療的措置についてわれわれの考えと,現在行つている工夫について検討を加えた.

肝生検によるHemobilia

著者: 土屋幸浩 ,   渡辺義郎 ,   粕谷直樹 ,   篠崎正美 ,   山口武人 ,   大藤正雄 ,   野口武英 ,   伊藤文憲 ,   小渋陽一 ,   高良健司 ,   宇野沢隆夫

ページ範囲:P.1051 - P.1057

 肝生検後にみられたHemobiliaの自験5症例に文献例7症例を加えて,診断,病態,治療について考察を加えた.
 1.初発症状は痂痛発作であり,生検後平均4.2日(3〜5日)と遅れて発症した.
 2.超音波では自験例全例に異常所見がみられ,早期診断に有用であつた.胆嚢では腫   大と異常エコーが,胆管では軽度拡張(7〜8mm)と異常エコーがみられた.
 3.経皮的あるいは内視鏡的胆汁ドレナージは疼痛の軽滅と減黄には有用であつたが,   減圧後再出血がみられた.
 4.血管造影は本症の病能診断と治療(経カテーテル動脈塞栓療法)に役立つた.

PTCDによるIatrogenic Trauma

著者: 二村雄次 ,   早川直和 ,   神谷順一 ,   塩野谷恵彦

ページ範囲:P.1059 - P.1065

 当科における最近2年6ヵ月間のPTCD,PTCD瘻孔拡張術の合併症を検討した.合併症は8例に9件発生し,内容は胆道出血3件,カテーテル逸脱3件,カテーテルによる癒孔穿破1件,カテーテルによる胆管穿孔1件,ショック1件であつた.すべてカテーテルによる処置や再度のPTCDなどで対処でき,緊急手術例や死亡例はなかつた.
 十分な胆管造影像から適切な穿刺部位を決定した上で,影像下直達法によつて前腹壁あるいは前胸壁からPTCDを行うという方法の利点を強調し,また,合併症の発生即ち緊急手術という考えは改められるべきであることを述べた.

血管造影検査によるIatrogenic Trauma

著者: 草野正一 ,   村田晃一郎 ,   大内寛 ,   池田俊昭 ,   田所克巳

ページ範囲:P.1067 - P.1073

 過去Seldinger法で行つた腹部血管撮影4,417件を対象に血管撮影の合併症を調査,検討し,その対策を報告した.血管撮影と関連して死亡したのは2例で,これらの死因は,1例は肺塞血栓症,残りの1例は穿刺動脈からの大量出血であつた.血管造影検査翌日の安静臥床解除時に起こる肺塞血栓症に対する対策としては,1)穿刺部圧迫固定の早期解除,2)巨大骨盤腫瘤,心肺疾患などのhigh risk groupに対する抗凝固療法の強化,3)安静解除時の十分な監視が必要である.血液凝固機能が著しく低下した患者で,穿刺動脈からの出血を圧迫止血できない場合には,手術的止血が有効である.その他,血管内膜損傷,カテーテル自身のトラブル,下肢塞血栓症,造影剤による合併症などについても述べた.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・1

急性・亜急性胆嚢炎

著者: 武藤良弘 ,   山田護 ,   岡本一也 ,   内村正幸

ページ範囲:P.1013 - P.1015

原因,胆嚢病変の経時的変化
 急性胆嚢炎は通常胆石嵌頓による胆嚢管閉寒(cystic duct obstruction)を示すacute obstructive chole—cystitisの型で発生する.したがつて,急性胆嚢炎の発生には胆嚢管閉塞が不可欠であるが,これに胆嚢動脈の閉塞(cystic artery occlusion)が加わることが必要とする考え1)と,胆汁がlithogenic bileであることが必要とする考え2)とに2分される.
 このようにして発生した急性胆嚢炎は経時的にうつ血・浮腫,出血壊死,膿瘍形成へと変化していく.この急性胆嚢炎は発生2〜3週後より鎮静化し,胆嚢内の壊死物質,膿瘍などは崩壊,吸収され,壁内膿瘍は肉芽組織に置換され,亜急性胆嚢炎へと推移する.

原典を繙く・9

Oddi括約筋(その2)—D'une disposition a sphincter spéciale de l'ouverture du canal cholédoque

著者: 石川功

ページ範囲:P.1077 - P.1078

B.縦断面すなわち腸の軸に平行な切断面
 縦断切片によつて,既述の総胆管腔の両極部にある縦走筋線維束の存在が明白に証明されたばかりでなく,その構造もさらに十分に確認することができた.
 著者が観察したすべての動物において,すでに述べたようなイヌおよびヒツジにおいて特異的であつたと同様の構造が認められた訳ではない.しかし,すべての動物において,多寡の差はあつても,総胆管周囲の輪状線維層の存在は認められた.著者は,さらに,研究対象をヒト,ウシ,ブタ,ネコおよびウマにまで広げたが,常に,前述のイヌおよびヒツジにおいて典型的で特異的と称した構造に極めて類似した構造を確認することができた.

出血との闘い・局所止血法の歴史・2

ギリシャ・ローマ時代

著者: 安藤博

ページ範囲:P.1079 - P.1080

 古代ギリシャの著名な詩人ホメロスが,BC 6世紀頃に書いたとされている有名な叙事詩「イリアス」がある.
 この「イリアス」の中には,数々のギリシャの神々と豪傑・英雄達が登場し,戦争について語られる多くの場面がある.当然,戦争には外傷が付き物であり,147例についての外傷と治療について書れているといわれている.その一部を呉茂一訳(岩波文庫版)より記すと,

Report from overseas

食道アカラシアに対するDiaphragmatic Graft手術の遠隔成績について

著者: 于永顕

ページ範囲:P.1081 - P.1083

はじめに
 食道アカラシアは比較的まれな疾病であるが,外科の治療を必要とする場合が多い.しかし,その手術方法に関してはHeller粘膜外筋切開術の変法である前壁切開が比較的広く行われているが,必ずしも十分に満足できる手術方法ではない.すなわち,露出した粘膜下層の屈曲,癒着,瘢痕などによる再狭窄が問題になり,また十分な筋切開を得ようとすれば穿孔,術後逆流性食道炎の発生を招く危険が増大する.われわれは1962年から食道アカラシアに対してDiaphragmatic Graft手術を採用して56例を治療し,6ヵ月から21年にわたるfollow—upを行い,この手術術式に対する評価およびその問題点を明らかにしたので報告する.

文献抄録

癌悪液質と蛋白代謝

著者: 菊山成博 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1084 - P.1084

 癌による悪液質患者には低栄養と担癌に起因する代謝異常がみられる.この相異を検討するために悪液質癌患者の蛋白代謝を研究した.
 これまでに癌患者における全身蛋白代謝(whole body protein turnover,WBPT)について矛盾する報告がなされているが,これは恐らく研究対象となつた患者群間の差によるものであり,背景因子を対応させる必要がある.

My Operation—私のノウ・ハウ

噴門側胃切除術

著者: 吉野肇一 ,   稲田高男 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.1085 - P.1090

適応と手術
 噴門側胃切除術(噴切)は従来,あまり行われなかつたが,それは噴門部に早期癌がみつかることが比較的に少ないので適応例が少ないことと,術後の逆流性食道炎を危惧して再建法が複雑でなければならないと考えられることがあつたためと思われる.
 われわれは噴切を頻用し,満足すべき成績を得ている.その理由の一つは再建方法として食道・胃端側吻合を器械吻合により比較的容易に行い,術後,逆流性食道炎の発生をみていないことである.

シリーズ・がん集学的治療—いま,放射線療法は・1【新連載】

外科領域における放射線治療

著者: 望月幸夫

ページ範囲:P.1091 - P.1097

はじめに
 放射線は電離放射線と非電離放射線の2つに大別されるが,放射線療法は一般には表1に示す電離放射線を用いて行う治療のことである.放射線療法は癌の根治的治療の一つであり,その適応症例にかなりの治癒率が得られているのはよく知られている.そして癌が諸治療法の共同作業で治療されるようになりつつある今日でも手術療法と並んで癌治療の大きな柱であることは変わりはない.現在,行われている放射線単独療法,及び放射線併用療法とその適応のあらましを表2に示す.一見してわかるように放射線療法は放射線治療単独あるいは手術や化学療法と併用され行われており,その場は多岐にわたつている.放射線治療には根治的な治療としての役割のほかに,腫瘍による疼痛や管腔臓器の狭窄の改善などを目的とする極めて広範囲な対症的治療の役割が存在することもよく知られている.これらのなかから今日,放射線治療が軸の治療として適応される疾患を表3に示す.放射線療法の特徴は癌の根治的治療手段になりうるということの他に形態と機能の保持において優れていることであるが,このような観点から放射線療法の適応を考えてみると,手術療法と同等以上の治癒が得られる疾患と,手術療法が不可能または不向きであるが,放射線療法でかなりの治癒が期待できるものとしてよいであろう.

画像診断 What sign?・29

the "thickened vessel" sign

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1098 - P.1098

 膵癌のCT所見としては,膵腫瘤をはじめ膵辺縁の突出像,膵管あるいは胆管の拡張,脾静脈の断絶像および側副血行路の描出,肝あるいは腹部大動脈周囲リンパ節への転移などが挙げられる.時に膵癌症例において上腸間膜動脈,腹腔動脈の横断像が著しく太くみえることがあり,"thickened vessel" signと称される.これは膵癌の上腸間膜動脈あるいは腹腔動脈周囲のリンパ管浸潤によるものと考えられ,根治手術が不能であることを示している.
 鑑別としては上腸間膜動脈あるいは腹腔動脈起始部の動脈瘤,腸間膜リンパ節腫脹などが挙げられる.これらは静脈性造影剤使用後のCTにより鑑別が可能な場合が多い.

腹部エコー像のPitfall・13

体型によるエコー上の問題点と肝占拠性病変(1)

著者: 松田正樹 ,   井上健一郎

ページ範囲:P.1099 - P.1101

この患者の診断は
症例1 46歳 男性
 心窩部痛にてエコー検査を施行.やせ型の体型.図1は腹圧をかけさせた時の記録

講座 腫瘍マーカー—適応と限界・4

甲状腺癌

著者: 金子源吾 ,   宮川信 ,   菅谷昭 ,   飯田太

ページ範囲:P.1103 - P.1105

はじめに
 近年,各種の腫瘍マーカーが開発され,悪性腫瘍の診断・治療効果の判定等に臨床応用されている.われわれは甲状腺癌の臨床病期,組織型あるいは治療効果の判定に,血中Thyroglobulin(TG),CEA,Tissue polypeptide antigen(TPA),免疫抑制物質(Immunosuppressive substance:ISS)の測定を行つており,今回これらの成績を中心に甲状腺癌における腫瘍マーカーの有用性と限界について考察した.

臨床研究

成人腸重積症の6例

著者: 猶本良夫 ,   合地明 ,   岡信孝治 ,   小林元壮 ,   大西長久 ,   大西信行 ,   山際裕史 ,   吉村平 ,   富山浩基

ページ範囲:P.1107 - P.1110

はじめに
 腸重積症は小児に比較的多い疾患であるが,成人でもまれに経験される.頻度は,小児を含めた腸重積症全体の5〜10%で,その大部分が腸管の器質的病変に起因している1-3).また,多くは慢性に経過し,診断に困難を伴うが,悪性腫瘍に起因するものが多く,臨床上注意を要する4,5)
 われわれも,1966年より1982年の17年間に6例の成人腸重積症を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する(表1).

穿刺吸引細胞診による頸部腫瘤の鑑別診断

著者: 藤井康史 ,   松山敏哉 ,   松本治夫 ,   武市宣雄 ,   江崎治夫 ,   土肥雪彦

ページ範囲:P.1111 - P.1117

はじめに
 穿刺吸引細胞診(Aspiration Biopsy Cytology,以下ABCと略す)は細い注射針で病巣を刺して,そこから"細胞集団"を吸引し,それをスライドグラスの上にスメアとしてのばしたうえで染色をほどこし診断する方法である.本法はすでに1930年代New YorkのMartinらによりはじめられ,1950年代以降は主として北欧を中心に地道な研究が蓄積され,しだいに臨床診断法としての地位を高めてきた.本邦でもここ5年間ばかりの間にその有用性について多くの外科医が注目するところとなり,穿刺の対象は単に体表近傍の腫瘤性病変ばかりでなく肺や腹腔内の腫瘤にまで拡大しつつある.当科においても結節性甲状腺腫や乳腺腫瘤の術前routine検査法としてABCを採用し,その実績についてはすでに報告してきた1,2).そこで今回は,甲状腺腫を除いた頸部腫瘤のABCの診断成績について検討し,その有用性について報告する.

外傷性空・回腸破裂36例の臨床的検討

著者: 北村和也 ,   桑田克也 ,   佐々木義文 ,   石井孝 ,   蒲池正浩 ,   渡辺信介 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.1119 - P.1122

はじめに
 外傷性空・回腸破裂は一般にはなじみが薄いが,腹部外傷の中では比較的頻繁に遭遇する疾患である.しかし本邦ではこれに関して記載した報告は少ない.そこでわれわれは,1974年より1983年にわたる過去10年間に,済生会滋賀県病院で開腹術を施行され,外傷性空・回腸破裂と確定診断された36例につき検討を加えたので報告する.

外科医の工夫

腹部大動脈高位閉塞症の手術に対するバルーンによる大動脈遮断法の効用について

著者: 岡本好史 ,   粟津篤司 ,   中山健吾 ,   松本雅彦 ,   曾根田純一

ページ範囲:P.1123 - P.1126

はじめに
 腹部大動脈分岐部のatherosclerosisと血栓症による閉塞は,その特異な臨床症状より,Leriche症候群と呼ばれている.
 閉塞は,始めは分岐部付近に限局してみられるが,緩慢な経過をたどつて次第に上方に波及し,まれには腎動脈分岐部周辺部におよぶことがある.病変が腎動脈分岐部の高さまでおよぶものを特に高位腹部大動脈閉塞,high aortoiliac occlusion,iuxta-renal aortic occlus—ionあるいはhigh Leriche syndromeと称し,病態および外科治療法について検討されている.

臨床報告

悪性線維性組織球腫の2例

著者: 坂井直司 ,   田中千凱 ,   伊藤隆夫 ,   松村幸次郎 ,   竹腰知治 ,   大下裕夫 ,   野々村修 ,   加藤元久 ,   加地秀樹

ページ範囲:P.1127 - P.1129

はじめに
 悪性軟部腫瘍は比較的まれな疾患である.その中で,悪性線維性組織球腫,Malignant fibrous histiocytoma(以下MFHと略)は,脂肪肉腫,Liposarcomaとともに頻度が高く,1964年にO'BrienとStout1)が独立した疾患として報告したのに始まり,広く認められるようになつた.最近,我々は病理組織学的にMFHと診断された2例を経験したので,若干の文献的考案を加えて報告する.

肺平滑筋腫の1治験例

著者: 夏越祥次 ,   愛甲孝 ,   柚木健一郎 ,   三谷惟章 ,   立和田亘 ,   舩迫進 ,   西満正

ページ範囲:P.1131 - P.1133

はじめに
 肺に発生する平滑筋腫はまれな良性腫瘍であり,本邦では30例の報告をみるにすぎない.今回,乳癌術後の経過観察中に胸部X線にて異常陰影を発見,手術により肺平滑筋腫と判明した症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

膝窩動脈外膜嚢腫の1治験例

著者: 鈴木弘治 ,   吉田明 ,   野口芳一 ,   清水哲 ,   熊本吉一 ,   後藤久 ,   近藤治郎 ,   松本昭彦 ,   桔梗辰三

ページ範囲:P.1135 - P.1138

はじめに
 動脈外膜嚢腫(cystic adventital disease of artery)は血管の外膜内に生ずるガングリオン様内容物をもつ嚢腫で,内膜,中膜を圧迫し,動脈の狭窄や閉塞など末梢血流障害をおこす疾患である,藤窩動脈に好発し間歇性跛行を呈することが多く,末梢動脈閉塞性疾患との鑑別上重要である.
 膝窩動脈外膜嚢腫はわが国では,1960年石川ら1)が初めて報告して以来20例と稀な疾患であるが,最近われわれは,教室での2例目2)の本症を経験したので,国内外の文献的考察を加え報告する.

小児腸間膜嚢胞の1治験例

著者: 橋川観 ,   福嶋久夫 ,   鈴木勝一 ,   渡辺治 ,   中原錬三 ,   登内彰 ,   金井朗 ,   多田豊曠

ページ範囲:P.1139 - P.1142

はじめに
 腸間膜嚢胞(以下,本症と略記す)は,比較的稀な疾患と言われている.また,さまざまの臨床症状を呈することから術前診断をくだすことが困難な場合が多い.最近の画像診断の発達により,腹部疾患の質的診断は比較的容易になつたが,小児の原因不明の腹痛をみるにあたつては,本症を考慮し検査をすすめなければ,なお見落す可能性があると思われる.
 最近我々は,原因不明の腹痛として約8ヵ月間経過を追つた7歳男児の腸間膜嚢胞を,CT scan,超音波検査等にて診断,手術により摘出し治癒せしめたので,若干の文献的考察を加え報告する.

Stewart-Treves syndrome(Postmastectomy Lymphangiosarcoma)の1例

著者: 野口昌邦 ,   北林一男 ,   藤井久丈 ,   橋本哲夫 ,   滝川豊 ,   宮崎逸夫 ,   富田勝郎 ,   寺畑信太郎 ,   松原藤継 ,   筑田正志 ,   津田宏信

ページ範囲:P.1143 - P.1146

はじめに
 Stewart-Treves syndromeは,乳房切断術後の浮腫のある上肢に発生するリンパ管肉腫である.本症は1948年,Stewart & Treves1)が6症例を報告して以来,欧米では約200例以上の報告がみられるものの2-4),本邦では私共が文献を渉猟する限り14例の報告を認めるにすぎず8-16),稀な疾患といえる.今回,私共は乳房切断術後16年目に浮腫のある前腕に発生したStewart-Treves syndromeの1例を経験したので,本邦文献報告例を集計すると共に若干の文献的考察を加え報告する.

レーザー照射後気管形成術を施行した気管筋上皮腫の1治験例

著者: 井上文之 ,   田中紀章 ,   寺沢明夫 ,   三村久 ,   折田薫三 ,   斉藤良仁 ,   江沢英光 ,   溝渕光一 ,   林一彦 ,   赤木制二 ,   田口孝爾

ページ範囲:P.1149 - P.1154

はじめに
 我々は気管中部に発生し,呼吸困難を呈し気管内腔をほとんど閉塞する腫瘍に対してNd-YAGレーザー照射後気管形成術を施行し治癒し得た症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.
 なお,本症例の筋上皮腫と思われる気管腫瘍は,原発性気管腫瘍として本邦初報告例と考えられる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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