icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科41巻1号

1986年01月発行

雑誌目次

特集 胆嚢隆起性病変をどうするか

胆嚢隆起性病変の外科病理—分類および肉眼形態を中心として

著者: 白井良夫 ,   武藤輝一 ,   吉田奎介 ,   川口英弘 ,   渡辺英伸 ,   鬼島宏

ページ範囲:P.17 - P.23

 外科的切除胆嚢1,421例中196例(13.8%)に計659個の隆起性病変を見出した.良性632個(95.5%),悪性27個(4.1%)であつた.最大径が15mmより大きいのは良性632個中わずか2個にすぎず,悪性27個中13個であつた.以上より「最大径が15mmより大きい隆起は悪性である可能性がかなり高い」と結論された.さらに,各病変の肉眼形態につき検討を加え,肉眼形態の特徴から各病変を鑑別できることを示した.
 以上の検討より,胆嚢隆起性病変の鑑別診断には大きさよりむしろ肉眼形態(茎の有無,表面性状,黄色調の有無など)の把握が重要と思われた.本稿ではさらに,胆嚢隆起性病変の組織学的分類に関しての問題点および筆者らの考え方についても言及した.

診断上の問題—エコーでどこまで鑑別できるか

著者: 伊藤徹 ,   高見実 ,   小菅智男 ,   国土典宏 ,   針原康 ,   柴山和夫 ,   出月康夫

ページ範囲:P.25 - P.30

 胆嚢小隆起性病変の切除例34例の検討では,良性病変は全例が12mm以下であり13mm以上の4例はいずれも腺癌であつた.10mm以下のm癌も3例経験した.USでは,これら34例中25例(74%)に病変を描出しえたが,10mm以下の病変ではretro—spectiveにみても病変の良悪性の鑑別は困難であつた.また,USで病変を描出しえなかつた例では,病変が小さかつたことや胆石合併がその原因と考えられた.
 胆嚢隆起性病変のUS診断では,良悪性の鑑別を含め質的診断は困難と考えられる.現時点では病変の大きさを基準に治療方針を立てることになるので,病変の見落しをなくすことと病変の大きさを正しく診断することが重要である.

診断上の問題—エコーのpitfallと補助診断法

著者: 木本英三 ,   中澤三郎 ,   内藤靖夫 ,   山雄健二 ,   森田敬一 ,   乾和郎 ,   大沼俊和 ,   船川武俊

ページ範囲:P.31 - P.34

 エコーの普及に伴い胆嚢隆起性病変の発見される頻度が高くなつてきた.同時にその鑑別診断が臨床上の重要な問題となつてきている.経腹壁的エコーでは,10mm以上の大きい隆起では腺腫や腺癌である可能性が高く,またエコー輝度の強い隆起はコレステロールポリープであることが多いといいうるにすぎず,鑑別診断には大きな限界がある.超音波内視鏡では,隆起の形状,表面像,内部構造を鮮明に描出できるため,コレステロールポリープとそれ以外の隆起との鑑別が可能である.さらに,胆嚢癌においては,胆嚢壁層構造の破壊の有無より壁深達度の診断が可能であり,今後胆嚢隆起性病変の診断には不可欠の診断法となつていくであろう.

診断困難例の治療方針—私はこうしている

著者: 高橋渉 ,   益子啓 ,   田中純一 ,   大和田康夫 ,   鈴木範美 ,   佐藤寿雄

ページ範囲:P.35 - P.39

 術前の超音波検査で胆?に隆起性病変が指摘された69例のうち,摘出胆嚢で病変が確認された51例をもとに,0.5cm以上の単発性病変を診断困難例としてその治療方針について述べた.
 0.5cmより大きい単発性病変に対しては,1.0cmまではたとえ腺癌であつても早期と考えられるので,一応,経過観察とする.しかし,自験例からみて50歳以上の女性の場合には手術をすすめる.病変が1.0cmをこえる場合には現状では手術適応と考える.ただし,排泄性胆嚢造影やERCで腺筋症と診断されるものは経過観察としてもよい.また,結石を合併する隆起性病変はしばしば,質的診断が困難となるので手術適応とする.

診断困難例の治療方針—私はこうしている

著者: 蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   松下昌裕

ページ範囲:P.41 - P.46

 近年,画像診断法の発達と共に,胆嚢隆起性病変に遭遇することが多くなつて来た.隆起性病変の主なものは,コレステロールポリープ,限局性腺筋腫症,腫瘍性病変(腺腫,癌腫)であるが,自験例を含めて,それらの各種画像診断法,手術適応,手術方法について考察した.
 画像診断法の中心は超音波検査であるが,各種画像診断法を併用しても,特に小隆起性病変では質的診断の困難な場合が多い.手術適応は,胆石合併例,有症状のコレステロールポリープ,限局性腺筋腫症,腫瘍性病変である.腫瘍性病変は,最大径10mm以下でも.癌腫の症例があること,腺腫も癌の有力な前駆病変であるという考えから,積極的に手術する方針である.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・6

石灰化胆嚢(Calcified Gallbladder)

著者: 武藤良弘 ,   甲斐田和博 ,   普久原勉

ページ範囲:P.13 - P.15

石灰化胆?とは
 壁に高度でかつ広範囲に石灰化(calcification)がみられる胆嚢は,その肉眼像が磁器や陶器に類似するのでporcelain or china gallbladderと呼ばれてきた.しかし,実際の臨床ではこのような典型的症例はむしろ少なく,頸・体・底部のいずれかの一区域に限局する例や二区域に石灰化巣がみられる例が多い(表).石灰化胆嚢(calcified gallbladder)は胆石症症例の約2%に,閉塞性胆嚢症症例の約10%にみられる.

クリニカル・カンファレンス

胆嚢隆起性病変の診断のすすめ方

著者: 竜崇正 ,   跡見裕 ,   奥村修一 ,   二村雄次

ページ範囲:P.47 - P.60

 エコーの普及で胆嚢の隆起性病変が見つけ易くなつたとはいうものの,エコーだけで鑑別診断,質的診断そして手術適応,時期まで決定できるほど万能ではない.要はエコーの有用性と限界を明確にし,その他の補助診断法をどこでどの様に有効に利用できるかだろう.
 今回はエコーの臨床応用における第一人者にお集りいただいて,具体例をもとに,詳細に話しあつていただいた.

原典を繙く・11

Mirizzi症候群(その1)—Diagnostic Des Obstructions Incomplètes Non Calculeuses Du cholédoque. Leur traitement par la cystico-duodénostomie

著者: 石川功

ページ範囲:P.61 - P.63

 Mirizzi症候群という疾患名は,胆嚢頸部ないし胆嚢管に嵌頓した結石とその周囲に波及した炎症性瘢痕とがあいまつて,肝管—総胆管の不完全閉塞をきたす病態を,Mirizziが"解剖・機能的障害"による一つの症候群として報告したことに由来する.
 しかし,このMirizzi症候群の原典に関しては,諸家により引用文献に若干の混乱が認められる.これは,Mirizziが1930年代にはフランス語,ドイツ語および自国語(スペイン語)で,その後1940年代になつて英語を含めて,内容の類似した論文や学会報告を多数(10編以上)繰り返し発表していることが原因の一端と考えられる.本欄では,1936年のLa Presse Medicale(8:150-154)に上記の「非結石性総胆管不完全閉塞の診断—胆嚢管・十二指腸吻合術による治療」という標題のもとに発表されたフランス語の論文を原典の一つとして選んだ.その理由は,本論文が,この中ではMirizzi自身まだ"Syndrome"という用語は使つていないが,"主胆管の解剖・機能的障害,des troubles anatomo-fonctionnels de la voie biliaire principale"という表現を明確に示した最も初期の原著と考えられたからである.この原著の全訳を通して,Mirizziが後年前述したclinical entityを確立する基礎となつた背景を理解していただけたなら,存外の幸せである.

プラクティカル チューブオロジー・2

動脈カテーテルが折れた時の対処法—熱いグリセリンでチューブを引き伸すコツ

著者: 長谷川博

ページ範囲:P.65 - P.65

 延長チューブをつけるわけであるが,動脈カテーテルの中に針を入れてはいけない.短くなつた動脈カテーテルの外側にfitする外套チューブをつけるのが内腔を狭くしないでつなぐコツである.
 例えば,1mmの肉厚テフロン管が折れ切れた場合,その切れ端を利用して,このテフロン管がスルスルと入るような外套チューブを探す.あるいは僅かに太い目のものを引き伸ばして細くするのである.実際には,無菌操作も含めて次のように行うと実に簡単に延長ができる.

文献抄録

下部食道噴門癌に対する非開胸食道胃切除術

著者: 池端幸彦 ,   安藤暢敏

ページ範囲:P.66 - P.66

 下部食道噴門癌は根治するのがもつとも困難な領域の癌の一つである.これまでこの領域の癌に対しては,左胸腹連続切開,左開胸開腹,右開胸開腹などのアプローチによる食道周切除術がおもに行われてきた.しかしこれには,胸腔内・縦隔における縫合不全・肺合併症による術死率が高い,逆流性食道炎が多い,吻合部再発が多いなどの欠点が指摘されてきた.そこで著者らは過去4年間,下部食道噴門癌に対して,非開胸食道胃切除・胸骨後経路胃管再建術を施行してきた.
 対象は1979年10月から1983年9月の4年間の下部食道噴門癌50例で,そのうち非手術12例,バイパス術4例,非開胸食道胃切除術34例であつた.男女比は9:5,年齢は37〜79歳(平均67歳),組織型は腺癌25例,扁平上皮癌9例であつた.

紹介

Billrothの最初の切除胃

著者: 吉野肇一

ページ範囲:P.67 - P.67

 1985年6月,北西ドイツ外科学会に招聘されたのを機にしてウィーンへ飛び,Billroth教授が世界で初めて成功した胃切除術の切除胃(図1)をみてきました.それは博物館に陳列されており,誰でもみることができます.博物館はMuseum des Instituts fur Geschichte der Medizin(図2)といい,住所はウィーン市内のWahringer straβe 25です.おおよその位置はウィーン市内で,中心からやや北西寄り,ウィーン大学病院(Allgemeines Krankenhaus,住所:Alser straβe)のすぐ近くです.開館日は月〜金,時間は11:00〜15:00,無料でした.写真撮影は原則として禁止のようです.この博物館は人気(ひとけ)があまりなく,そしていかつい鉄棚で囲まれていて,ちよつと入りにくいのですが,自由に入れます.なおこの陳列室の片隅にRokitanskyの胸像が飾つてありました.
 前述のウィーン大学病院の構内にも自由に出入りができ,そこにはBillroth教授の大きな立像があり,見事な並木道とともに一見の価値があります.大学病院の一角に外科の建物があり,病室の一部にはBillroth教授も使われたという,もの凄く天床の高い,つまり昔風の病室──通称Biliroth Saal──があり,満床でした.

画像診断 What sign?・34

ダグラス窩病変

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.69 - P.69

 臨床症状あるいは腹部単純像にて前出(40:13,1687)のダグラス窩病変が疑われた場合,まずはじめに試みられるべき画像診断法は超音波検査である.ダグラス窩は充満した膀胱をエコーウィンドウとすることにより腸管の介在を避けることができることから,超音波検査が有効に利用される領域である.急性腹部症状を伴つて発症するダグラス窩病変としては卵巣嚢腫内出血,骨盤腹膜炎,子宮内膜症,子宮外妊娠などが挙げられる.卵巣嚢腫内出血はその時期により早期には嚢胞内に強い内部エコーが多くみられるが(図1),時間の経過とともに内部エコーが減少する.軸捻転の有無は超音波像の上では診断困難である.骨盤腹膜炎はダグラス窩,特に子宮後方のcul-de-sacの液体貯留としてみられるが,組織片,膿汁などが液層を形成する場合もある(図2矢印).子宮内膜症の超音波像は多彩であり,嚢胞成分と実質成分とを併せ持つ腫瘤としてみられることが多く,子宮壁内に嚢胞(adenomyosis)を形成する場合もある.子宮外妊娠では腹腔内出血によるcul-de-sacの液体貯留と子宮の内膜肥厚を伴う増大がみられ,時に子宮腔内の血液貯留により胎嚢類似の構造(pseudosac)がみられることもあるので注意を要する.

My Operation—私のノウ・ハウ

胃・十二指腸潰瘍手術

著者: 前田昭二

ページ範囲:P.71 - P.76

適応と手術
 胃・十二指腸潰瘍の発生機転については近年次第にその多因性,複雑な病因論が解明されつつある.とくに1982年にCimetidinが導入されていらい,治療面についても画期的な変換がみられるようになり,その結果,潰瘍症に対する胃切除術がどの施設でも半減したのは周知のことである.しかし,どうしても外科的に処置しなければならない,穿孔による腹膜炎の発生,内視鏡的操作で止められない一部の大出血,随伴性狭窄が陳旧化して通過障害が固定したもの,などの絶対的手術適応は依然として従来と同率にあることも事実であり,特に十二指腸潰瘍のこれらの合併症はこれらの潰瘍症にたいする手術療法の主な対象になるであろう.日本人の潰瘍症の酸分泌病態は時代とともに変化しつつあるといわれ,十二指腸潰瘍の発生機序が単一のものでないので,治療面においても単一の手術では不適当であるとの考えから胃酸分泌領域に照準を限局した各種の選択的迷切術の妥当性が論じられているが,煩雑にして侵襲の大きいこの手術後には意外に愁訴が多く,肝心の潰瘍再発率に関しても5%前後の報告が多く,理論的には極めて合理的ではあつても,必ずしも患者すべてが満足していない難点がある.良性疾愚の手術は一度手を下した以上は患者が完全に病苦から解放され,できるだけ短期間に以前より良好な肉体的条件をもつて社会復帰できなければならない.

Topics・1【新連載】

NMR imaging(MRI)の臨床応用

著者: 宮川昭平 ,   眞野勇 ,   吉田英夫 ,   五島仁士

ページ範囲:P.77 - P.81

核磁気共鳴現象(nuclear magnetic resomance,NMR)とNMR信号強度分布の画像化(computer tomographic imaging)
 強い一定方向の静磁場と,静磁場強度に応じた波長で直角方向から印加される電磁波パルスとによつて,原子核の陽子の回転運動に変化が起こり,エネルギーレベルの変動によつて,磁場の中におかれた物質から電磁波が放出される現象を核磁気共鳴という1,2)(図1).
 現在臨床で用いられる装置は,生体内に広範かつ大量に分布し,共鳴を起こし易い水素原子核の陽子プロトン(1H)を対象としている.外観はX線CT装置に似ており,X線管と検出器とが,磁石とアンテナとに置きかわつたような構造で,生体断層面から出される共鳴電磁波(NMR信号)の分布を,X線CTと同様にコンピューター計算により,デジタル断層画像に構成するもので,NMR-CT,NMR imagingなどとよばれるが,医学の分野ではMRI(magnetic resonance imaging,磁気共鳴画像)とよぶ方向にある.

講座 腫瘍マーカー—適応と限界 【最終回】

モノクローナル抗体結合制癌剤による消化器癌の治療

著者: 高橋俊雄 ,   山口俊晴 ,   小棚木均 ,   高橋政弘 ,   本田光世 ,   小出芳夫

ページ範囲:P.83 - P.85

はじめに
 癌化学療法の効果を飛躍的に向上させるために,癌細胞にだけ選択的に傷害を及ぼし正常細胞には傷害を及ぼさない薬剤,すなわち癌に選択毒性のある抗癌剤の開発が待望されている.しかし,膨大な物質のスクリーニングにもかかわらず,未だこのような物質は見出されていない.われわれは抗癌剤に癌選択性をもたせるため剤形の変更など種々の工夫を行つてきたが,その一つとして今回はヒト大腸癌モノクローナル抗体結合制癌剤によるミサイル癌化学療法について概説してみたい.

シリーズ・がん集学的治療—いま,放射線療法は・6

膵癌の術中照射

著者: 高橋正治 ,   芝本雄太 ,   平岡眞寛 ,   阿部光幸 ,   眞辺忠夫 ,   鈴木敞

ページ範囲:P.87 - P.90

はじめに
 膵癌の根治的治療は手術以外にないといえるが,CTを含む画像診断や腫瘍マーカーによる診断技術の進歩にもかかわらず,早期診断が困難であり,診断確定時には手術適応をこえている症例が大部分を占めているのが現状である.たとえば,京都大学第1外科における切除可能例は33%にすぎず,また切除可能例といえどもその成績はきわめて不良である1).この現状を打開するために,本邦のみならず米国においても術中照射法が適用されてきた2,3)
 電子線による術中照射法については,本シリーズにおいてもすでに述べてきたが(胃癌の術中照射),その利点を要約すると,

臨床研究

乳癌再発の出現部位よりみた再発後生存期間の検討—特に治療効果との関連について

著者: 木村盛彦

ページ範囲:P.91 - P.95

はじめに
 再発乳癌の予後に影響を及ぼす因子として,術後補助療法の種類・方法を含め,初発再発部位1-6,8,12),無病期間1,6-8,12),病期3,12),ホルモンリセプター等が知られているが,初発再発部位はその治療方針とも関連して特に重要と思われる.
 一方,再発癌の治療においては,その治療効果と共にquality of lifeを保つ生存期間の延長を考慮する必要がある.

腸閉塞の診断と治療成績—とくに生化学的診断法を中心に

著者: 山口晃弘 ,   蜂須賀喜多男 ,   磯谷正敏 ,   深田伸二 ,   渡辺英世

ページ範囲:P.97 - P.101

はじめに
 イレウスをきたす原因にはさまざまなものがあり,その原因を正確に把握することが,治療成績の向上に反映されることは論を待たない.イレウスの診断には,通常臨床所見のほか腹部X線撮影がおもに行われているが,これらの検査でイレウスの病態を正確に診断することは困難なことも多く,単純性イレウスと複雑性イレウスの鑑別診断も容易でないことがある.近年単純性イレウスの治療に,long tube等を用いた非手術的減圧療法が盛んに行われているが,この治療法の選択にあたつても,単純性イレウスの正確な診断が必須で,複雑性イレウスに対し減圧療法を行い,手術の時期を失するようなことがあつてはならない.そこで大垣市民病院外科で過去10年間に手術を行つた小腸イレウス554例のうち,癒着ないし索状物によるイレウスと小腸捻転を対象として,その症例の概略と手術成績,さらに血液生化学検査の立場から,単純性イレウスと絞扼性イレウスの鑑別診断がどの程度に可能かを検討したので報告する.

臨床報告

食道に原発した悪性リンパ腫の1例

著者: 川嶋孝雄 ,   町田武久 ,   山本登司 ,   浅野哲 ,   福永進 ,   井野元勤

ページ範囲:P.103 - P.106

はじめに
 食道に発生する悪性腫瘍のうち肉腫は稀であるが,なかでも悪性リンパ腫はきわめて稀とされている1-6).私たちは食道に原発した悪性リンパ腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

食道アカラシアの患者に発生した急性胃拡張の1例

著者: 坂本隆 ,   榊原年宏 ,   石坂龍典 ,   白崎功 ,   藤田敏雄 ,   藤巻雅夫 ,   伊藤博 ,   真保俊 ,   広川慎一郎 ,   斉藤光和

ページ範囲:P.107 - P.110

はじめに
 食道アラカシアに合併ないし随伴する病態として,食道それ自体においては慢性食道炎,食道潰瘍,食道癌などがあり,他臓器あるいは全身に与える影響として拡張した食道による周囲臓器の圧迫,呼吸器系疾患の誘発,さらに消化器系のものとして裂孔ヘルニア,十二指腸潰瘍,胆嚢疾患などがみられることがあると報告されている1-3)
 しかし,著者らの検索しえた範囲内では,急性胃拡張を併発した報告はみられない.

肝細胞癌破裂に対してTAE,TPE併用肝切除を行つた1症例

著者: 才津秀樹 ,   吉田晃治 ,   野中道泰 ,   奥田康司 ,   佐藤光治 ,   浜崎恵 ,   中越完平 ,   中山和道 ,   古賀道弘 ,   平井賢二

ページ範囲:P.111 - P.116

はじめに
 肝細胞癌(以下肝癌)の自然破裂の頻度は2.9〜14.5%1-7)と稀れではないが,急性腹症として発症するため診断は非常に困難で,またショックを伴つていることが多く予後は不良のことが多い.今回われわれは直ちに肝動脈塞栓術transcatheter arterial embolization(T—AE)を行い止血し,さらに7日後選択的門脈枝塞栓術transcatheter portal branch embolization(TPE)を追加した後,肝切除を行い得た肝癌の自然破裂例を経験したので報告する.

食道胃接合部に発生した平滑筋腫の1例

著者: 大下裕夫 ,   田中千凱 ,   伊藤隆夫 ,   坂井直司 ,   加藤元久 ,   加地秀樹

ページ範囲:P.117 - P.120

はじめに
 食道の腫瘍性病変といえば,食道癌が最も頻度が高く,食道平滑筋腫は比較的まれな疾患である.その発生部位は中部・下部食道が大部分であり,食道胃接合部に発生したものは極めてまれである.今回われわれは,33歳の男性で嚥下障害と胸やけを主訴とした食道胃接合部に発生した平滑筋腫の手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腸間膜血腫を伴つたS状結腸癌の1例

著者: 田中千凱 ,   坂井直司 ,   伊藤隆夫 ,   加地秀樹

ページ範囲:P.121 - P.124

はじめに
 腸間膜血腫は非常に稀な疾患である.最近われわれは左下腹部痛と腹部腫瘤を主訴とし,巨大な腸間膜血腫を伴つたS状結腸癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

巨大腹部腫瘤を形成した小網原発平滑筋腫の1例

著者: 㽗村泰樹 ,   秋元博 ,   原伸一 ,   石井義之 ,   柏木秀幸 ,   吉井修二 ,   伊藤顕彦 ,   足利建 ,   堀訓也 ,   曽爾一顕

ページ範囲:P.125 - P.128

はじめに
 一般に,良性平滑筋腫の部位別発生頻度は,体内における平滑筋の分布と相関するといわれる.泌尿生殖器系,消化管には多く,皮膚には少ないが,深部の軟部組織においてはさらに頻度が低くなる.この深部の軟部組織に含まれる大網,小網,後腹膜原発の平滑筋腫は,きわめて稀といえる疾患であり,本邦では現在までに6例の報告を見るに過ぎない.最近われわれは巨大腹部腫瘤を形成した小網原発平滑筋腫の1例を経験したので報告する.

盲腸後窩ヘルニアの2例

著者: 小田桐弘毅 ,   林健一 ,   伊藤誠司 ,   須藤眞 ,   小舘昭示 ,   西沢諒一

ページ範囲:P.129 - P.133

はじめに
 内ヘルニアは比較的稀な疾患であるが,我々は最近なかでも稀な盲腸後窩ヘルニアの2症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?