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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科41巻11号

1986年10月発行

雑誌目次

特集 胃癌手術の限界と合理化

早期胃癌における検討—リンパ節郭清の合理化

著者: 榊原宣 ,   小川健治 ,   矢川裕一

ページ範囲:P.1501 - P.1506

 早期胃癌所属リンパ節を病理組織学的,腫瘍免疫学的に検索した,われわれは,その成績に基づいた合理的な早期胃癌のリンパ節郭清手術として,第1群リンパ節はすべて郭清,第2群リンパ節は左胃動脈幹リンパ節を中心として,総肝動脈幹リンパ節,脾動脈幹リンパ節,腹腔動脈周囲リンパ節などを一塊にして郭清する方法を行つている.さらに,第3群リンパ節はとくに胃中,下部癌について,肝・十二指腸間膜内リンパ節の一部を郭清している.

早期胃癌における検討—早期胃癌の手術における問題点

著者: 藤田佳宏 ,   山根哲郎 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.1507 - P.1513

 早期胃癌手術例290例の病態ならびに遠隔成績を検討し,それに基づいて早期胃癌手術における問題点について検討した.m癌ではリンパ節転移はわずか1例(1%)にみられ,また術後再発例はなかつた.再発11例は全てsm癌であつた.R0-1とR2手術で相対生存率による差はなかつた.以上の結果よりm癌ではR1の縮小手術の適応も考えられるが深達度診断の正確性には未だ限界があり,一方,安全性からも現時点では標準術式としてはR2手術が妥当と考える.

Borrmann 4型胃癌における検討

著者: 冨士原彰 ,   山田真一 ,   磯崎博司

ページ範囲:P.1515 - P.1521

 過去7年間の教室におけるBorrmann 4型胃癌119例を対象に4亜分類し,臨床病理学的に検討した.1) Fc型:癌浸潤が胃壁全層かつ広範囲に及び,主として胃上部小彎を占居部位とする.2) FM型:胃壁全層かつ広範囲に浸潤するが,胃中部小彎を主占居部位とする.3) P型:主として胃下部を占居し,硬化が強く,狭窄を来たしやすい.4) L型:特徴的な巨大皺壁を伴うもので,癌が粘膜よりも粘膜下層以下を広くびまん性に浸潤する.いずれの型においても腹膜播種,リンパ節転移,他臓器浸潤は高度であるが,腹膜播種はFM型(61.1%),L型(55.5%)に多く,リンパ節転移はFM型(100%),Fc型(91.3%)と高率であるが,P型(79%)はそれに比して低率で,他臓器浸潤はFM型(66.7%)が高率でP型(43.8%)は低率であつた.しかしいずれの亜型も高度に進行しているものが多く,stage ⅡはP型の1例のみで,stage Ⅳが74.8%であつた.
 以上のことより,拡大手術のみでは,その治療向上は望めないと考えられ,より効果的な集学的治療の確立が急務である.

Stage Ⅳ胃癌における検討—亜分類による治療方針

著者: 太田惠一朗 ,   中島聰總 ,   西満正

ページ範囲:P.1523 - P.1528

 Stage Ⅳ胃癌の治療は,その進行程度を正しく把握し,合理的かつ適正なものでなければならない.そのためにはStage Ⅳを亜分類し,各群に応じた治療を検討する必要がある.1960年から1979年までの,癌研外科における切除されたStage Ⅳ胃癌1,247例を対象とし,その予後の検討からStage Ⅳを,Ⅳa:S3,P1,N3,N4(少数),Ⅳb:H1,P2-3,S3N3-4(Nは少数),P1S3,Ⅳc:N4(多数),H2-3,Ⅳbの複合因子以外の全ての組合せ,に分類した.

Appleby手術における検討—遠隔成績の評価および合併症とその対策について

著者: 飯塚一郎 ,   小西敏郎 ,   出月康夫

ページ範囲:P.1529 - P.1534

1) stage Ⅲ胃癌症例の累積5年生存率は,Appleby手術例で34.6%,通常の胃全摘膵脾合併切除例で20.5%であり,Appleby手術により,進行胃癌の遠隔成績を向上せしめたと判断された.
 2)肝壊死,胆嚢壊死,十二指腸縫合部の縫合不全は,総肝動脈切離による虚血と関連が深いと考えられ,Appleby手術後,それぞれ5%,8%,7%に発生した.これらの多くは,術中所見に応じた適切な処置,方針の変更により,予防可能であると考えられた.

食道浸潤を伴う胃癌における検討—浸潤陽性のリスクと手術法について

著者: 古河洋 ,   平塚正弘 ,   亀山雅男 ,   大東弘明 ,   佐々木洋 ,   甲利幸 ,   石川治 ,   福田一郎 ,   今岡真義 ,   岩永剛

ページ範囲:P.1535 - P.1541

 食道浸潤を伴う胃癌158例における,病理組織学的特徴リンパ節転移等について検討した.その結果,①胃上部癌のうち8.1 cm以上のBorrmann 2,3,4型は食道浸潤が高率であつた(P<0.05).②Borrmann 3,4型はびまん浸潤型の食道浸潤が多く,長く浸潤していた(中央値1.7cm).③腹腔内リンパ節転移の多いものは【110】,【111】の転移がみられた.したがつて,浸潤型進行癌では,開胸と5.0cm以上の断端距離と【110】,【111】の郭清を要する.

食道浸潤を伴う胃癌における検討—切除郭清術式:開腹・胸骨縦切・右開胸による到達経路の意義

著者: 佐々木公一 ,   武藤輝一 ,   田中乙雄 ,   鈴木力 ,   梨本篤

ページ範囲:P.1543 - P.1549

 食道に浸潤する胃癌の特性と切除郭清範囲について検討を加えるとともに,同領域胃癌に対するわれわれの標準術式すなわち,腹部操作に胸骨縦切を併施し,さらには癌腫の進展に応じて右開胸を付加する到達経路の意義について述べた.
 ①第2群(n2)以上の遠隔リンパ節転移が高率に認められ,根治性の向上には腹腔内リンパ節はもちろん,胸部縦隔内の中・下部リンパ節郭清と十分な口側食道切除が重要である。②本術式では主癌巣を術野の中心におき,口側および肛門側の一方に偏しないバランスを保ちながら切除郭清操作をすすめることが可能であり,外科的根治性を積極的に追求するための合目的性を備えたものである.

温熱療法併用における検討

著者: 貝原信明 ,   飯塚保夫 ,   浜副隆一 ,   前田迪郎 ,   古賀成昌

ページ範囲:P.1551 - P.1555

 進行胃癌の手術では,いかにリンパ節郭清の範囲を拡げても治療成績向上に限界があるのは,癌の胃壁内進展の結果として生じる腹膜転移に対する対策がなされていないためである.われわれは,腹膜再発防止を目的として,手術に併用する温熱療法の効果を検討した.その成績をps(+)胃癌についてみてみると,対照群の5生率43%に対して,温熱療法施行群では63%に上昇した.これは,リンパ節郭清を拡大しただけでは得られがたい成績であると思われる.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・15

胆管癌

著者: 鳥枝道雄 ,   守田信義 ,   野島真治 ,   河野佳宣 ,   江里健輔 ,   毛利平

ページ範囲:P.1497 - P.1499

胆管癌の肉眼的分類
 本邦における胆管癌の肉眼的分類は、乳頭型,結節型,乳頭浸潤型,結節浸潤型,浸潤型,特殊型の6型に分類されている1).乳頭型と結節型はともに隆起性腫瘍を表わすが,くびれの有無で区別される.浸潤型は明らかな限局性隆起を示さず,壁内浸潤を呈するものとされている.特殊型は,潰瘍型や小顆粒型など特殊な形態を示すものとされているが,実際には稀と考えられる.以上を大別すると,隆起型,浸潤型,特殊型の3型に分類できる(表1).われわれが経験した切除例では,隆起型が2例(12%),浸潤型が15例(88%)と,浸潤型が大半をしめた.特殊型は1例も経験していない.

原典を繙く・18

そけいヘルニアの治療について(その4)—エドゥワルト・パッシーニ(王立パドゥワ大学 臨床外科教授)

著者: 山内英生

ページ範囲:P.1557 - P.1559

 私の手術術式が信頼するにたるものという評価の根拠として,私の患者の多くが兵役に十分耐え得ると判定されて,兵士として働いていることをあげておこう.連隊付軍医であるルイーギ・ミシェリ,カール・ルーチおよびカポビアンコ医師の次のような手紙はまさにその証明であろう.
           クレモナ,1887年8月3日

文献抄録

呼吸不全に対する早期ステロイド療法

著者: 北野光秀 ,   相川直樹

ページ範囲:P.1560 - P.1560

 成人呼吸促拍症候群(ARDS)に対する副腎皮質ホルモンの効果はいまだ議論の的であり,実験データは相反するものが多く,臨床研究はretrospectiveであったり,ステロイド投与時期が遅いものが多く,説得性のあるものは少ない.われわれは呼吸不全患者に対する早期ステロイド療法の効果を検討するために,prospective二重盲検法による研究を施行した.
 〔対象と方法〕DallasのParkland Memorial Hos—pitalのICUに1980年7月から1983年1月までに入室した患者のうち機械的呼吸補助をうけ,動脈血酸素分圧(Pao2)が40%酸素下で100 mmHg未満,100%酸素下で350mmHg未満の患者を対象とした.81人の対象患者のうち,39人にはメチルプレドニゾロン30mg/kgを6時間毎に48時間投与し,42人にはプラセボとしてマンニトールを投与した.

胃全摘術—70歳以上の症例中心とした15年間の検討成績

著者: 菊山成博 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1561 - P.1561

 胃全摘術がSchlatter(1979)により行われてから,その適応,手技,成績についての多くの報告がある.この論文では,1969年より1984年までの15年間に施行した186例の胃全摘症例を解析して,縫合法,術前術後管理法,麻酔法の進歩がsurgical risk減少に寄与しているか,高齢者を特別な範疇に入れて扱うべきか,を検討した.
 対象患者はBerlin自由大学とUlm大学において胃癌の診断の下に胃全摘を過去15年間にうけた男子114名,女子72名,70歳未満112名,70歳以上74歳,計186名であつた.術式は胃,大・小網をen blocに切除し,左・右胃動脈,右胃大網動脈は起始部より切断する方法をとった.脾は原則的に温存したが,手技上の理由,腫瘍浸潤,リンパ節転移のため46名に脾摘が行われ,結腸部分切除は12名に施行された.再建は2層結節縫合による食道空腸端側吻合が主体で92例を占めていた.

画像診断 What sign?・41

Liver "scalloping"

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1565 - P.1565

 Pseudomyxoma peritoneiは虫垂のmucoceleの破裂,虫垂や卵巣起源の粘液嚢胞腺腫あるいは粘液嚢胞腺癌の腹膜播種により,腹腔内に粘液物質を含んだ多発性腫瘤の形成をみる状態である.原因の良,悪性にかかわらず手術所見あるいは病理所見は類似しており,病変の広範な諸臓器への進展によりその起源臓器の同定も困難であることも多い.腹部単純エックス線像にて輪状石灰化影をみることがある.CT像では腹膜および腸間膜に付着するloculeが多発性にみられ,それらが集簇して腹腔内腫瘤を形成する.腫瘤に接する肝辺縁および腸管は連続性の波状の圧排像を示し,"scalloping"と称される(図).超音波像では多数の隔壁を有する腹水様の所見ascitic septationがみられる.

My Operation—私のノウ・ハウ

大腿ヘルニア根治手術

著者: 平島得路 ,   山城守也

ページ範囲:P.1567 - P.1571

適応と手術
 大腿ヘルニアは,小児には極めて稀である一方,比較的高齢の女性に多く認められる,当院の65例の大腿ヘルニア症例中,男性例は3例にすぎず,著しく女性例が多くなつている.左右別頻度は,右側33例,左側32例で,外鼠径ヘルニアのごとき左右差は認めていない.両側例,再発例はともに2例(3%)ずつであり,同時期の他のヘルニアにおける,両側例,再発例の頻度(ともに10%)に比して少なくなつている.しかし,一方で大腿ヘルニアは,嵌頓の頻度の高いヘルニアとして知られている.当院での嵌頓率は62%と高く,特に右側での頻度(右側82%,左側41%)が高くなつているが,これは,左側ではS状結腸の存在が,ヘルニア門への小腸の進入を防いでいる一方で,右側のヘルニア門に対しては小腸間膜の右下りの解剖学的特徴により,回腸がより近距離となつているためと考えている.また,嵌頓例に対する,用手整復の成功率は,他のヘルニアに比して低く(当院例で5%),大部分は,救急手術の適応となつているが,そのうち,腸壊死に伴う腸切除をうけた例は40%にのぼる.特に,発症より24時間以上経過した例,腸閉塞症状を呈していた例,白血球数が10×103/mm3以上の例では,さらに腸切除率が高く(60%以上)なっているため,用手整復を考えるべきではない.いずれにしろ,大腿ヘルニアに対しては,手術療法が唯一の治療法であり,根治性とともに,ヘルニア内容の確実な処理のできる手術法でなければならない.

外科医の工夫

血管内視鏡直達下順向性遊離大伏在静脈バイパス術の新しい試み

著者: 橋爪誠 ,   楊岩 ,   松元輝夫

ページ範囲:P.1573 - P.1577

はじめに
 下肢の末梢動脈閉塞性疾患の治療は,1951年Kunlin1)が逆向性自家静脈移植手術を紹介して以来,飛躍的に発展し,数多くの研究がなされてきた.とくに,代用血管PTFE(Polytetrafiuoroethylene)の開発により末梢動脈再建術の適応範囲がさらに拡大され,膝窩動脈より近位側では自家静脈とほぼ同程度の開存率が得られている2,3).しかし,膝窩動脈末梢側の動脈再建術においては,自家静脈による再建によつても遠隔時の開存率は近位側のそれに比べ依然として低く,好ましい結果を得るに至つていない.そこで,Leatherら4)は,膝窩動脈末梢側の動脈再建に関して,虚血時間が少なく,vasa vasorumや血管内皮細胞が保存され,吻合部での移植血管径の相違が少ないという理由から,in-situ大伏在静脈バイパス術を施行し,3年開存率72%という成績を報告している.
 当教室でも,膝窩動脈末梢側の動脈再建術に対し,in-situ大伏在静脈バイパス術を施行したが,弁切開が不確実で,稀に弁切開刀による静脈壁の損傷や動静脈瘻の形成をみる他,手術時間も比較的長時間を要することがわかつた.このため,血管内視鏡の利用に着目し,血管内視鏡下に弁切開術を施行後,in-situおよび非逆向性に静脈移植片を動脈に吻合する方法を試み,最近若干の知見を得た.

経皮内視鏡的胃瘻造設術および腸瘻造設術の試み

著者: 岡野均 ,   児玉正 ,   佐藤達之 ,   西田博 ,   瀧野辰郎 ,   木村研志

ページ範囲:P.1579 - P.1582

はじめに
 長期的な栄養補給として完全な栄養を生理的な経路で与えることが望ましいとされており,従来より経鼻胃管や外科的胃瘻術が行われている.今回著者らは重篤な基礎疾患に肺機能障害を合併した患者に,局所麻酔下に経皮内視鏡的胃瘻・腸瘻造設術を施行したので,症例を呈示するとともにその手技および有効性について報告する.

臨床研究

大腸憩室症例の検討

著者: 片山芳彦 ,   伊東敬之 ,   藤森健而 ,   鈴木卓 ,   子日光雄 ,   矢野隆嗣

ページ範囲:P.1583 - P.1587

はじめに
 大腸憩室症は,欧米では古くから知られていたが,本邦では比較的稀な疾患とされていた.しかし,近年,食生活の欧米化,平均寿命の延長,注腸造影検査の普及などにより急激に増加しており,重要な消化器疾患の一つとなつてきている1-3).症状を有する大腸憩室症,特にわが国で多いとされている右側大腸憩室症の大半は,内科的治療にて軽快する4).一方,大腸憩室症に伴う大量出血,穿孔性腹膜炎,膿瘍形成,イレウスなどの合併症を持つ症例は,外科的治療の絶対的適応であるが5),好発年齢が高いことなどより適切な治療が行われなければ重篤な臨床経過をとることがあり,臨床上重要な疾患である.
 大腸に憩室のある場合,炎症の有るものと無いもの,また症状の有るものと無いものに分けられるが,臨床上,炎症所見の有無と症状の有無は必ずしも一致せず,また臨床的に炎症の有無を明確に区別することが困難であることより,Morson6)やParks7)らにより,これらを一括してdiverticular disease of the colonとすることが提唱されて欧米ではこの名が一般的になつてきている.われわれも欧米の考え方に従い,大腸に憩室のある全ての場合を憩室症として一括した.われわれが過去3年間に経験した症例について検討し,その治療法について考察を加えた.

臨床報告

腸間膜リンパ節結核の破裂による汎発性腹膜炎の1例

著者: 黒川善栄 ,   桐岡智二 ,   神谷順一 ,   梶田正文 ,   前田正信 ,   中村達雄 ,   秋山三郎 ,   吉井才司

ページ範囲:P.1589 - P.1592

はじめに
 結核症は化学療法の進歩により近年きわめて減少した疾患である.ことに肺外結核症の一つである腹部結核はまれになつた疾患といわれている.最近われわれは肺結核の入院治療中に腸間膜リンパ節結核が腹腔内に穿破し,汎発性腹膜炎をきたした1例を経験したので報告する.

両側性孤立性内腸骨動脈瘤の1治験例

著者: 浦口憲一郎 ,   中山陽城 ,   名嘉真透 ,   原口周一 ,   今村明 ,   大庭聡 ,   山名一有 ,   古賀道弘 ,   吉田晃治 ,   野中道泰 ,   才津秀樹

ページ範囲:P.1593 - P.1596

はじめに
 腹部大動脈瘤に連続性,あるいは不連続性に波及する腸骨動脈瘤はしばしば遭遇するが,孤立性腸骨動脈瘤は比較的稀な疾患である.このうち,内腸骨動脈瘤の報告はきわめて少なく,本邦においては金子ら1)の報告以来,10症例が報告されているのみである.また内腸骨動脈瘤は骨盤腔内にあるため,総腸骨動脈瘤あるいは外腸骨動脈瘤とは異なつた臨床的意義を有する.最近われわれは他科にて手術不能の後腹膜悪性腫瘍と診断され,S状結腸へ破裂穿孔した両側性孤立性内腸骨動脈瘤の1治験例を経験したので,本邦報告例を加えて報告する.

Exulceratio simplex(Dieulafoy)の治験例

著者: 久永倫聖 ,   菊川政男 ,   越智祥隆 ,   深井泰俊 ,   榎木登

ページ範囲:P.1597 - P.1601

はじめに
 急性大量吐血を来たす疾患には出血性胃十二指腸潰瘍,食道静脈瘤破裂あるいはMallory-Weiss症候群などがあるが,これ以外にも稀ではあるがExulceratio simplex(以下Esと略す)の存在が指摘される.本疾患は突然の大量吐血として発症し緊急手術を行うことが多く術前診断が困難であり,確定診断は術後の組織学的検索に待たねばならないことが多い.今回著者らは大量の吐血を来たし緊急手術を施行し,Esと診断された1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

腸間膜動脈性十二指腸閉塞をきたした甲状腺機能亢進症の1例

著者: 土屋敦雄 ,   鈴木真一 ,   二瓶光博 ,   吉田典行 ,   星竹敏 ,   渡辺岩雄 ,   阿部力哉

ページ範囲:P.1603 - P.1606

はじめに
 十二指腸第三部が上腸間膜動脈(superior me—senteric artery;SMA)ないしその分枝により圧迫もしくは閉塞されることによつて,種々の症状を呈するものをsuperior mesenteric artery synd—romeとよんでいる.われわれは甲状腺機能亢進症によるるいそうに基因するとおもわれる上腸間膜動脈性十二指腸閉塞の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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