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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科41巻13号

1986年12月発行

雑誌目次

特集 ストーマをめぐる最近の話題

ストーマリハビリテーション—最近の進歩

著者: 中里博昭

ページ範囲:P.1747 - P.1757

 最近数年間におけるストーマリハビリテーションの進歩は著しく,その第1は装着用パウチと皮膚保護剤など装着用装具や洗腸用具の改良・開発であり,ついでその学問体系の確立と着実な実行,さらに患者会の成長などストーマケアの進歩である,第2は排尿・性機能障害への対策として術式の工夫・改良,さらに器質的なインポテンスなど永久障害に対する処置方法の発達であろう.第3は講習会,研究会など学術集会の活性化による教育とストーマ外来など診療体系の充実である.
 以上の3点につき論及するとともに,将来のストーマリハビリテーションのあり方として経時的な諸要因を考慮したダイナミック・ストーマリハビリテーションの重要性について強調した.

ストーマ造設上の工夫

著者: 穴沢貞夫 ,   片山隆市 ,   石田秀世 ,   東郷実元 ,   高橋日出雄 ,   桜井健司

ページ範囲:P.1759 - P.1767

 教室における1963年から23年間の結腸ストーマ368例にいて術式の適否を合併症から検討したところ,腹膜外トンネル法(単口式),一次開口粘膜翻転法が腹膜内法,二次開口粘膜非翻転法に比べ,早期,後期合併症ならびにイレウスのいずれの面でも優れていることが判明した.
 またクリーブランドクリニックのストーマ位置ぎめの原則にうたわれている直腹筋内造設が,腸脱出および傍ストーマヘルニアの発生低下に寄与していることも明らかとなつた.
 このような従来の手術手技を基本的に踏襲して造設されたストーマといえども,慎重な術式を選択し,合併症のない管理に適したストーマとすれば,近年のストーマ装具の進歩によりそのincontinenceをかなりの程度まで補うことが可能である.

Continent Stoma造設術の実際—Kock法

著者: 加藤知行 ,   安井健三 ,   加藤王千 ,   中里博昭

ページ範囲:P.1769 - P.1776

 手縫い吻合法と器械吻合法によるKock式continent ileostomyの作成法を紹介した.continent ileostomyは便を貯留するreservoirと排便の随意性を司るnipple valveとからなり,valve機能保持のために漿膜・筋層の乱切と焼灼,腸管の回転重積,腸間膜の脂肪結合織切除をとり入れ,valveの長さは4cm以上になるように漿膜・筋層縫合で,またはGIAを使用して固定している.術後は4週間以上カテーテルをreservoir内へ留置して内容のドレナージを行うことが肝要である.いままで11例に行い,その内肥満した患者の1例がvalve機能を喪失して失禁状態であるが,残りの10例は随意性を維持している.

Continent Stoma造設術の実際—Schmidt法とその評価

著者: 田沢賢次 ,   新井英樹 ,   坂本隆 ,   川口誠 ,   山本克弥 ,   勝山新弥 ,   竹森繁 ,   広川愼一郎 ,   坪田孝文 ,   笠木徳三 ,   鈴木康将 ,   永瀬敏明 ,   田近貞克 ,   藤巻雅夫

ページ範囲:P.1779 - P.1786

 1978年に発表されたE. Schmidtらの自家遊離腸管平滑筋を用いるcontinent stomaについてその作成法を解説し,術後の臨床経過の概要を述べた.
 用いられた結腸遊離平滑筋は排便コントロールに有効に働き,腸管内圧測定においても高圧帯をballoon法により認めることができた.移植平滑筋は剖検例においても明らかに生着し,組織学的にも変性は少なく,電顕学的にも検討し得た.
 患者の術後における排便の自制は,とくに夜間の便漏出にたいしては良好な結果であつた.なお今後の長期観察による移植平滑筋の括約機能の変化についても十分検討したい.

自然排便法の進歩—装具とスキンケアの変貌

著者: 進藤勝久

ページ範囲:P.1787 - P.1794

 400名アンケート調査の結果,自然排便法はオストメイトの65%に行われており,排便処理回数は日に2回が多く,悪臭はないとした者が47%で,その他は脱臭剤などで防臭可能であつた.
 自然排便ストーマの管理の要点は規則正しい排便とその処理,防臭,周囲皮膚保護の3点である.排便規則性は食物と運動に関係する.
 自然排便法における装具にはスキンバリヤ付ワンピース型クローズド・パウチ(防臭フィルター付)が最も良い,また,将来のストーマパウチには体外直腸肛門機能としての貯留嚢を求めたい.

ストーマ合併症の対策

著者: 磯本浩晴 ,   小野眞一 ,   梶原賢一郎 ,   福永淳治 ,   緒方裕 ,   曹光男 ,   岡本一廣 ,   黒肱敏彦 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.1795 - P.1802

 ストーマ合併症を早期と晩期にわけ,おこりやすい種類と原因についてふれ,合併症の対策については早期の壊死,ストーマ周囲膿瘍,出血,prolapseについて,晩期では狭窄,peristomal hernia,出血,穿孔などの代表的なものに対する手術の適応,手術方法およびストーマケアの方法を述べた.さらにileostomyの特殊な合併症も付記した.
 特に合併症の対策としては手術とストーマケアの両面から解決を計るべきことを強調した.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・17

膵・胆管合流異常と胆道癌

著者: 武藤良弘 ,   内村正幸 ,   浦野健 ,   岡本一也

ページ範囲:P.1743 - P.1745

胆道癌の発生頻度
 発生異常にもとつく膵・胆管合流異常症は胆道癌(胆嚢癌,胆管癌)を高頻度に合併してくる疾患として注目されている.本併に合併する胆道癌の頻度は施設によりかなりのばらつきがみられるが(高頻度の報告は40%),多くは10%〜20%の合併率といえる.
 合併胆道癌のうち,胆道癌と胆管癌といずれがより高頻度に合併してくるかは,1:2の割合で胆管癌が約2倍であると考えられていた.しかし,最近の報告では本症に合併する癌は胆嚢癌が多く,かつ合併率も高くなっている.

座談会

自然排便法か,洗腸法か—Colostomy CareにおけるControversy

著者: 穴沢貞夫 ,   田沢賢次 ,   島田寛治 ,   牧野永城

ページ範囲:P.1803 - P.1814

 古くて新しい洗腸法に焦点をあて,自然排便法の進歩に伴いcolostomy careにおける本法の意義は変わったのかどうか,あるいはquality of life向上に寄与する点で不動の位置にあるのか等の問題点を,ベテラン4氏にお話し合いいただいた.

文献抄録

心肝同時移植の第1例

著者: 杉岡篤

ページ範囲:P.1816 - P.1816

 近年欧米では心臓移植と肝移植はいずれも治療手技として確立されているが,今回著者らはこの2つの手技を同時に1人の患者に実施し良好な結果を得た.本論文はその詳細を報告したものである.
 症例は6歳9カ月の女児で,家族性高コレステロール血症のため他院で治療を受けていた,5歳頃より急速に動脈硬化が進行し,心筋梗塞を起こしたためAC bypassが2度施行された.しかしそのつど狭心症が再発し,僧帽弁閉鎖不全症を併発した.この時点で本例は心肝同時移植の適応とされた.本例の高コレステロール血症は肝臓のlow density lipoproteinのreceptorの減少が原因で,正常肝になれば改善すると予測されたからである.患者はPittsburghへ送られ,1984年の2刀13日から14日にかけて手術が行われた.Donorは4歳6カ月で血液型はO型である.Recipientの血液型はA型でHLAのtypeA,B,D2も一致していなかった.Donorより心臓,肝臓および腎臓が摘出され,Pittsburghへ運ばれた.肝臓は4℃のEuro Collins液の灌流を受けた後,冷却したRinger液中に保存された.

実験的腹膜炎に対する経横隔膜吸収阻止による生存率の改善

著者: 高橋孝行 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1817 - P.1817

 腹腔内の細菌はリンパ系への経横隔膜的吸収により循環血液に侵入しうる.この過程が腹腔内から細菌を片づけて宿主を防御するのか,危険にするのかを決定するために,実験的腹膜炎を使つて吸収阻害効果を検討した.
 Sprague-Dawley雄ラットを開腹,盲腸と上行結腸に穿孔をつくり,糞便性腹膜炎を誘発した.経横隔膜吸収阻害には高濃度血小板血漿腹腔内注入法,または横隔膜腹膜面擦過法を採用した.ラットを5群にわけ,3〜4mlの高濃度血小板血漿を閉腹直後に注入した群(第1群,n=68),低濃度血小板血漿を同様に注入した群(第2群,n=56),穿孔3〜4週間前に横隔膜擦過を行つた群(第3群,n=56),穿孔3週間前に開腹のみ行つた群(第4群,n=55),結腸穿孔のみ行つた群(対照群,n=77)とした.穿孔3時間後,各群の動脈血の好気性および嫌気性培養を行つた.ラットの生存率は24時間後に判定した.第1群と第3群ラットの半数は2週間後に屠殺し,腹腔内滲出液,膿瘍,癒着を検索した.各群の生存ラット数,好気性・嫌気性血液培養陰性ラット数を対照群のそれと比較し,χ2検定により有意差を解析した.

臨床研究

マムシ咬傷155例の臨床的考察

著者: 末廣和長 ,   山下素弘 ,   大谷満 ,   阿方勉三 ,   上平敦 ,   増谷正人

ページ範囲:P.1819 - P.1823

はじめに
 わが国において,農山村地域にみられる特殊な疾病にマムシ咬傷がある.マムシ咬傷の発生は,年間約3,000例といわれている1).雲南共存病院では1977年から1985年までの9年間に,同症患者155例が受診した.大部分は軽症例,中等症例であり治癒したが,2例の死亡に遭遇した.それらの経験により,いささかの知見を得たので,若干の文献的考察を加え報告する.

臨床報告

原発性虫垂癌の2例

著者: 坂田慶太 ,   鈴木一男 ,   熊谷太郎 ,   千木良晴ひこ ,   浅井俊夫

ページ範囲:P.1827 - P.1830

はじめに
 原発性虫垂癌は稀な疾病である.本邦では金森1)の報告以来,桐山2)まで129例の報告がある.最近,われわれは虫垂癌の2例を経験したので,若干の考察を加え報告する.

深達度smの十二指腸癌の1例

著者: 大島厚 ,   荻原智信 ,   小島正夫 ,   西田一己

ページ範囲:P.1831 - P.1836

はじめに
 原発性十二指腸癌は稀な疾患とされてきたが,近年内視鏡,低緊張性十二指腸造影などの普及により,早期発見の報告例が漸増している.今回われわれはVater乳頭上部の深達度smの十二指腸癌を手術し,6年生存している症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

下行結腸に原発したLinitis plastica型癌の1例

著者: 新田篤 ,   菊地秀 ,   国井康男 ,   菊地金男 ,   並木恒夫

ページ範囲:P.1837 - P.1839

はじめに
 Linitis plastica型を呈する癌は,胃に多くみられるが,大腸に発生することははなはだ稀である.
 最近,我々は下行結腸に原発したlinitis plastica型癌の1例を経験したので報告する.

下行結腸動静脈奇形の1例

著者: 猪野満 ,   田中隆夫 ,   武内俊 ,   館岡博 ,   福島紀雅 ,   盛岡元一郎

ページ範囲:P.1841 - P.1844

はじめに
 下血を主訴として来院し,血管造影にて下行結腸に動静脈奇形arteriovenous malformation(以後AVMと略す)をみとめ,この部を部分切除し,治癒した1例を経験したので報告する.

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「臨床外科」第41巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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