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文献詳細

雑誌文献

臨床外科41巻5号

1986年05月発行

文献概要

特集 甲状腺癌の診断と治療

術式,治療法をどうするか—私はこうしている—未分化癌の病理・疫学・診断

著者: 伊藤國彦1

所属機関: 1伊藤病院

ページ範囲:P.579 - P.586

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 甲状腺未分化癌は病理学的に紡錘形細胞癌,巨細胞癌,小細胞癌の3種類に分類されている.小細胞癌は悪性リンパ腫との組織学的鑑別が困難なので,この両者を一括して小細胞腫瘍としている者もある.また紡錘形細胞癌と巨細胞癌は分化癌より転化したものが多い.著者の病院で1969年から1984年までの16年間に経験した未分化癌症例は77例で,紡錘形細胞癌4例,巨細胞癌64例,小細胞癌9例であつた.これはこの間の全甲状腺癌の3%に当る.未分化癌は低ヨード食地帯に高頻度に認められるといわれているが,諸外国に比して日本ではとくに少ない.しかしアメリカでは甲状腺未分化癌の頻度が逐年的に低下しているとする報告がある.未分化癌患者のほとんどは高齢層であり,60歳以上の症例が67.5%を占めている.一般に高齢化の傾向が進んでいるが,とくに未分化癌が増加しているという現象は認められない.男女比は1:2.9人となり,分化癌に比べると男性にも少なくない.未分化癌の甲状腺腫は悪性所見が著しい,また短期間のうちに増大する.また肺転移の頻度も高い.分化癌と異なり,局所の圧迫症状や全身に及ぼす影響もきわめて強い.高齢者の甲状腺腫瘍の中には未分化癌があることを念頭におけば,診断はそれほど困難ではない.確実な診断法は穿刺吸引細胞診である.さらに67Gaシンチグラムが参考になる,予後のきわめて悪い甲状腺未分化癌を救命し得るとしたら,迅速な診断と即刻治療を開始する以外に方策はないであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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