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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科41巻7号

1986年06月発行

雑誌目次

特集 肛門部疾患診療のテクニック

知つておきたい肛門部の解剖と生理

著者: 隅越幸男

ページ範囲:P.965 - P.969

 肛門は繊細な構造をもち,排便という重要な仕事をうけもつている.肛門疾患の手術を行うにあたつては,疾患の治癒のみならず,肛門機能を損なわぬことが要求される.
 そのためには肛門の解剖,生理を熟知しておかねばならない.肛門管,歯状線,肛門腺,肛門周囲の組織間隙,筋構造などについて,肛門疾患の手術にからめて,それらの重要性を述べた.

肛門部疾患の検査法と外来処置

著者: 松田直樹

ページ範囲:P.971 - P.977

 肛門部疾患の診断に必要な検査と外来処置について,肛門外科医が実際,日常的に行つている方法を順を追つて説明する.まず,詳しい肛門疾患専用の問診表でおおよその診断をつけ,ついで,視診,触診,肛門内指診,検査を進めてゆき,確定診断に至るまでの考え方やコツについてのべる.また,その際の鑑別診断や外来処置においての新しい方法も併せて紹介する.

痔瘻手術のテクニック—前処置から後療法まで

著者: 岩垂純一 ,   隅越幸男 ,   岡田光生 ,   塚本順 ,   小野力三郎 ,   黄田正徳 ,   宮脇晴彦 ,   沖信雅彦

ページ範囲:P.979 - P.984

 われわれは括約筋温存術式として低位筋間痔瘻に対しては二次口から外括約筋にいたるまで瘻管と原発口から原発巣へいたるまでの瘻管を処理する術式を行い,坐骨直腸窩痔瘻に対しては主に筋間より原発巣へ到達し,これを除去し,生じた凹部へ有茎筋肉弁を充填する術式を行つている.本文では痔瘻手術のテクニックとして,これら術式の実際を,前処置から後療法,その成績まで含めて述べた.

痔瘻手術のテクニック—前処置から後療法まで

著者: 高野正博

ページ範囲:P.985 - P.993

 痔瘻の手術には,①病態の理解,②全体像の把握,③括約筋との関係の理解,④症例に応じた術式の選択,が必要である.開放術式は瘻管を全て開放するもので,原発口部の上皮のもぐり込みの切除と創の形を整えること(トリミング)が必要である.瘻管の部分的開放は原発口の近くのみの開放だけ行い,あとの細い瘻管は残しておく.筋肉充填は原発口を切除し,瘻管を筋肉で充填する.瘻管くり抜きは原発口から二次口までをくり抜く.再閉鎖術式は一旦開放した瘻管を閉鎖するもので,実際にはこれらの諸式を症例に応じて採用する.

痔核手術のテクニック—前処置から後療法まで

著者: 松田保秀

ページ範囲:P.994 - P.998

 本邦ではMilligan,Morganらによつて確立された結紮切除術を基本とし種種の工夫が行われている.私はSalmonの高位血管結紮とMilligan,Morgan法を原法とし,Parksのsubmucosal haemorrhoidectomyの概念を導入した手術を7〜8年行つている.その特徴は術後の浮腫,皮垂が少なく仕上りが平らできれいなことである.そしてなによりもanal plastic surgeryともいうべき繊細な手術が出来るのも,underminingの技術と,摂子型電気メス,パークス型肛門開口器,剥離尖刀などの恩恵による.

痔核手術のテクニック—前処置から後療法まで

著者: 河野一男

ページ範囲:P.999 - P.1003

 痔核手術は結紮切除術が普通に行われている.この手術を行うにあたつて根治性を高めるには根部結紮をできるだけ高位で行わねばならない.肛門狭窄を予防し伸展性,柔軟性を保つには皮膚,移行上皮,粘膜を出来るだけ残さなければならない.術後の浮腫,腫脹,治癒遷延等を予防するには皮下組織を十分に剥離し,静脈瘤を含め皮下組織を可及的に摘出しなければならない.その結果生じた皮膚移行上皮,粘膜のたるみは切除しないで縫合,縫縮,縫着等を行い肛門管内に固定する.

裂肛手術のテクニック—前処置から後療法まで

著者: 升森茂樹 ,   野垣茂吉

ページ範囲:P.1005 - P.1009

 過去1年間,新患9,262例中,裂肛手術は61症例,0.7%に過ぎない.今回のthemaの術前診断,手術適応への配慮には,十分なチェックと術前処置が必要である.
 手術時では,肛門管拡張と,肛門括約筋攣縮緩和への手指拡張も必要とする.そのあと,潰瘍,皮垂,肥厚乳頭の切除が行われるが,皮膚粘膜欠損後の新鮮創の型,その再建や,皮膚弁移動時の皮切の問題もある.術後では皮膚損部の治療,入浴,排便指導も重要である.これらが,本院のsliding skin graft.(以下S.S.G.)症例への術前,術中,術後配慮でありcheck pointである.

注意したいその他の肛門部疾患

著者: 荒川廣太郎 ,   渡辺成

ページ範囲:P.1011 - P.1015

 肛門部疾患を診療する際,遭遇する機会は少ないが実地臨床上知つていなければならない疾患には,肛門掻痒症,肛門部の特異性炎症(梅毒,結核),尖圭コンジローマ,医原性の直腸肛門部損傷及び後遺症,毛髪洞,直腸脱,クローン氏病の肛門病変,直腸肛門の良性腫瘍(絨毛状腫瘍,カルチノイド),肛門癌などがある.本章ではこれらの疾患について診断と治療を中心に解説する.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・11

胆嚢癌

著者: 吉川達也 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.959 - P.962

 胆嚢癌は早期のものを除けばその外科治療成績は極めて不良である.胆嚢癌,特に進行胆嚢癌の治療成績を向上させるためには,早期発見は当然のことながら胆嚢癌の進展様式の特性を知り,進展様式に応じた合理的な拡大手術を行う必要がある.本稿では漿膜下層(以下ss)以上に進展した進行胆嚢癌の進展様式の病理学的特徴について述べ,進行胆嚢癌に対する拡大手術術式についても言及したい.

画像診断 What sign?・37

Aphthiod Ulcer

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1016 - P.1016

 クローン病のX線所見のうちで最も早期にみられるものの一つはaphthoid ulcerと称される微小潰瘍であり,大腸,小腸,胃病変の初期に単独で,あるいは進行病変に合併してみられる.二重造影によつて描出されたaphthoid ulcerはumbilicationを伴つた小隆起としてとらえられ,病理的には肉芽腫性の炎症により拡張したリンパ濾胞の中心部の粘膜上皮の潰瘍と考えられている.aphthoid ulcerの描出はクローン病の早期診断に重要であり,大腸クローン病と潰瘍性大腸炎の鑑別に役立つ.すなわち正常粘膜を背景に典型的なaphthoid ulcerがみられる場合は,大腸クローン病の可能性が高い.またクローン病の治療として腸切除を行う際に,aphthoid ulcerの存在する腸管を切除範囲に含めることは,その再発を防ぐ意味で重要である.aphthoid ulcerはカンジダ症,アスピリンやエタノールによる食道炎,胃炎および,Yersiniaによる腸炎などでもみられることがある.

原典を繙く・15

そけいヘルニアの治療について(その1)—エドゥワルト・パッシーニ(王立パドゥワ大学 臨床外科教授)

著者: 山内英生

ページ範囲:P.1017 - P.1020

訳出にあたつて
 19世紀後半といえばドイツ医学が壮大な前進を遂げ第1期黄金時代を築いていた時である.同時代にはBernhard von Langenbeck,Billrothはじめ多数の著名な指導的外科医が輩出していた.この時代に完成されたBassini法は現在でも広く成人のそけいヘルニアの手術に行われている.有名なドイツの外科の成書,Bier-Braun-KummellのChirurgische Operationslehre,Martin KirschnerのDie Chirurgieはじめ米国や日本における外科手術書にはstandardな術式として必ず記載されている.とはいえ,この時代はまた,消毒法が完成されて間もない時期でもあり,抗生物質など勿論なく現代における一般外科医の常識では想像も出来ない環境である.しかしBassiniは彼の手術法を完成するまでの苦労から,手術術式さらにその後のfollow-upも含めて100年程前に悉く記載しているのである.
 欧米人の名前が残つている症候群や術式などの中には,現在においてもなおcontroversyがあるが故にその名が知られている場合も少なくないがBassini法に関する限りcontroversyを有するものではない.

文献抄録

胃切除術後の植物胃石—内視鏡による診断と治療

著者: 下山豊 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1021 - P.1021

 胃石は消化管内に発見される外来および内在の物質の塊であり,主なタイプに植物胃石,結石,毛髪胃石の3つがある.1975年来の9年間にわれわれは33人の患者に,のべ38個の胃石を確認した.そのうち男性は14人,女性は19人で,平均年齢は61.5歳であつた.また,29人(87.8%)に胃手術の既往があり,術式別にみると,迷切+幽門洞切除術が15例ともつとも多かつたが,術式別の追跡調査がなされていないので,病因学的に術式を比較検討することはできない.手術より胃石診断までの平均期間は7.7年であつたが,各術式間に有意の差はない.臨床症状としては,不定の上腹部痛と体重減少が多く,特異的な症状はなかつた.内視鏡所見では胃の植物胃石が35個,食道の植物胃石が2個,結石が1個で,毛髪胃石は認められなかつた.小胃石は無症状なので,確認された胃石はいずれもかなり大きく,胃内容の【1/4】以下のものはなかつた.
 胃石の病因としては,不十分な咀嚼,柿やオレンジの過食,胃運動の低下,胃粘膜の変化などがあげられる.この調査によつて,胃切除術後患者に胃石が多発していることが明らかとなつたが,胃手術は胃運動と塩酸分泌を低下させることにより胃石形成の一因となると考えられる.吻合部狭窄は胃内容の停滞をもたらすことにより胃石形成を助長すると考えられてきたが,実際には少数例にしか認められなかつた.

Invitation

第28回日本消化器外科学会総会見どころ,聴きどころ—消化器外科の諸問題討論をみちのくで

著者: 小野慶一

ページ範囲:P.1022 - P.1023

 このたび,はからずも第28回日本消化器外科学会総会を7月17日(火),16日(水)の両日青森市において開催する運びとなり,教室ともども洵に光栄のいたりである.みちのくでの本学会の開催はこれで3度目である.最初は昭和50年7月,第8回総会が青森市において本学第1外科石川義信名誉教授を会長として開催された.2度目は第3回総会で教室先代大内清太名誉教授(現青森県立中央病院長)を会長として,昭和53年7月,弘前市において開催された.
 弘前での総会は例年にない熱暑にみまわれ,涼しさを期待して訪れた会員各位は弘前は暑いところという強い印象を得られたようだった.それだけに記憶に新しい想い出となつている.みちのく本来の7月は梅雨もなく,まことに凌ぎよい爽やかな時節である.弘前での総会にはおよそ1,300名の参加者があり,ホテルも十分なく皆様には大きな不便をおかけした.当時の会員総数は5,382名,演題数380題という状況であつたが,今回会員総数は12,351名(昭和60年12月31日現在),演題数総計900題ということで,いずれも当時に比して倍増している.従つて参加者も2,500名は見込まねばならないため,みちのくの小京都という大学所在地の弘前での開催は困難ということになり,弘前からくるまで1時間の距離にある青森市をえらんだ次第である.

My Operation—私のノウ・ハウ

腹会陰式直腸切断術

著者: 寺本龍生 ,   小平進 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.1025 - P.1030

適応と手術
 直腸および肛門部癌の手術は,1926年Milesにより腹会陰式直腸切断術1)が報告されて以来,安全な術式として確立されたが,さらに本邦では,1975年2)頃より,内腸骨動脈周囲,さらに側方の閉鎖神経周囲のリンパ節を郭清する拡大郭清が加えられ,良好な生存率が得られるようになつた.一方,拡大郭清にともなう術後の排便,排尿さらに性機能障害に対し,可及的に括約筋温存3)さらには,神経温存4)のための手術も増加しつつある.しかしながら肛門部癌や下部直腸癌で骨盤底筋群,肛門管に癌腫の浸潤の及ぶもの,および肛門側断端の十分とり得ないもの,リンパ節転移の広範な症例に対しては腹会陰式直腸切断術が適応となる.
 本術式の要点

臨床研究

肺門型肺癌に対する術中超音波検査の試み

著者: 町淳二 ,   武田仁良 ,   西村寛 ,   磯辺真 ,   枝国信三 ,   黒肱敏彦 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.1031 - P.1034

はじめに
 肺癌の進行度の判定や手術術式の選択に対する術前画像診断は,従来のX線撮影・気管支造影や血管造影等に加えて,CTやMRIの導入で急速に進歩をとげている.しかしながら,特に肺門型肺癌において,腫瘍の心・血管系への浸潤程度が不確かなため,肺摘除が可能か,あるいは肺葉切除が可能かまたは肺摘除をせねばならないかに関して,術前検査では決定的な判断が下せない症例を時として経験する.この様な症例では開胸後,血管系と周囲の位置関係が不明なことも少なくなく,組織剥離を進めた上で術中視診・触診によつて切除可能か不可能かを判定せざるをえない.すなわち,肺癌の術中には現在まで有効な画像診断法がなく,視触診のみが術中診断の鍵であつた.
 一方,近年の超音波テクノロジー(技術)の進歩と装置の改良を通して,術中超音波検査(operative ultrasono—graphy,以下OUSと略す)は種々の悪性腫瘍の手術中に応用され,腫瘍切除の可能性の術中判定や,実際の切除に際し超音波ガイドとして応用されはじめている1-3)

微小乳癌症例の検討

著者: 西村令喜 ,   長尾和治 ,   松田正和 ,   庄嶋健 ,   竹口東一郎 ,   中垣悟 ,   佐野収 ,   河野一朗 ,   守安真佐也 ,   濱田哲夫

ページ範囲:P.1035 - P.1039

はじめに
 乳癌の発生率は生活様式の欧米化が進むにつれて高くなつているが,同様に死亡数の増加も著しい.乳癌の治療成績向上のためには早期発見が最も重要な因子の一つであることはいうまでもない.1971年GallagerとMartin1)により定義されたMinimal Breast Cancer(以下,微小乳癌)の概念は,ほぼ完全に治癒し得る乳癌として提唱されたもので非浸潤乳管癌,非浸潤小葉癌,および,直径0.5cm以下の浸潤癌としている.
 今回我々は,非浸潤癌と浸潤癌で割面最大径0.5cm以下の乳癌を微小乳癌と定め,比較的早期と考えられる2.0cm以下の浸潤癌を0.6〜1.0cm,1.1〜1.5cm,1.6〜2.0cmの3群に分け,その臨床的事項,各種診断法の所見,病理学的事項等について比較対比することにより,微小乳癌の定義,診断,治療に関する問題点について検討した.

末梢動脈瘤の検討

著者: 熊本吉一 ,   近藤治郎 ,   中村俊一郎 ,   梶原博一 ,   真下好勝 ,   芦沢賢一 ,   蔵田英志 ,   後藤久 ,   松本昭彦 ,   吉田悟 ,   松村弘人

ページ範囲:P.1041 - P.1046

はじめに
 末梢動脈瘤は,破裂により不幸な転帰をとることは稀であるが,周囲組織の圧迫による症状が強く,塞栓による末梢の閉塞や病態によつては四肢の切断を余儀なくされる疾患である.今回末梢動脈瘤に対してわれわれの教室の症例に検討を加えたので報告する.

臨床報告

原発性びまん浸潤型大腸癌—自験1例及び本邦報告例の検討

著者: 慶田祐一 ,   的場直行 ,   佐藤和洋 ,   売豆紀雅昭 ,   増田弘志 ,   井上強 ,   末永和之 ,   渡辺恵幸 ,   為近義夫 ,   住吉金次郎

ページ範囲:P.1047 - P.1050

はじめに
 原発性びまん浸潤型大腸癌は稀な疾患であり,診断治療とも困難な現状である.今回われわれは下行結腸から直腸にかけてみられた本症と考えられる1例を経験したので報告するとともに本邦報告例を集計し検討を加えた.

同一病巣内に食道癌と平滑筋腫が併存した1例

著者: 清水裕英 ,   岩本末治 ,   牟礼勉 ,   山本康久 ,   木元正利 ,   瀬尾泰雄 ,   今井博之 ,   長野秀樹 ,   林秀宣 ,   笠井裕 ,   佐野開三 ,   中島壮太

ページ範囲:P.1051 - P.1054

はじめに
 食道の良性腫瘍は,癌に比しその頻度はかなり少ないが,診断技術の進歩や食道手術症例の増加に伴い,近年その報告例が徐々に増加している.しかし,食道の良性腫瘍と癌との併存例はきわめてまれである.
 われわれは最近,平滑筋腫に併存した食道癌の1例を経験したので,症例とともに若干の文献的考察を加えて報告する.

乳腺原発悪性リンパ腫の5例

著者: 山川卓 ,   森本忠興 ,   駒木幹正 ,   山本弘幸 ,   光山南烈 ,   門田康正

ページ範囲:P.1055 - P.1060

はじめに
 乳腺に原発する悪性腫瘍は,ほとんどが癌腫であり,非上皮性悪性腫瘍は稀である.なかでも悪性リンパ腫の頻度は低く,本邦でもわれわれが文献上検索しえたものは自験例を含めて63例である.今回,われわれの教室で経験した乳腺原発悪性リンパ腫5例を報告する.なお,症例1は以前に報告した1)

総胆管隔壁形成の1例

著者: 大嶋隆 ,   高木雄二 ,   猪野睦征 ,   橋口勝敏 ,   松永圭一郎 ,   下川功 ,   前田公

ページ範囲:P.1061 - P.1064

はじめに
 胆道系には各種の先天異常がみられるが,総胆管隔壁形成は極めて稀で,文献的報告も少ない.今回,十二指腸乳頭部癌の症例で,術前よりPTCで総胆管に隔壁を認め,術中に確認できたので報告する.

50年来の痔瘻に発生した肛門部粘液癌の1例

著者: 田中千凱 ,   伊藤隆夫 ,   竹腰知治 ,   加藤元久 ,   加地秀樹

ページ範囲:P.1065 - P.1068

はじめに
 長期にわたる難治性の痔瘻に癌が続発した報告は,欧米ではRosser1)の論文をはじめ多数みられる.本邦でも鬼束2)の報告以後症例数の増加をみ,第14回大腸癌研究会(1981年)では肛門部悪性腫瘍が主題として取りあげられ,この時の隅越3)のアンケート調査によれば,痔瘻に続発した肛門癌は95例であつた.
 最近われわれは50年来の痔瘻に粘液癌が続発した1例を経験したので,若干の文献的考察をくわえて報告する.

Campylobacter jejuniによるAppendicitis catarralisの1例

著者: 一戸兵部 ,   吉岡岑生 ,   菊池美雪 ,   星信 ,   石川惟愛 ,   森田隆幸 ,   神谷受利

ページ範囲:P.1069 - P.1073

はじめに
 1977年,Skirrowにより分離培養法が確立されてから,腸管感染症の原因菌の1つとして,Campylobacter菌が世界的に注目されている.手術が目的で紹介された急性虫垂炎の摘出虫垂から,Campylobacter jejuniが分離培養同定され,その臨床症状,臨床経過,摘出虫垂病理組織学的所見,分離菌の主な性質をここに報告する.

原発性鎖骨下静脈血栓症の1例と本邦報告例の検討

著者: 西山利弘 ,   山下勝之

ページ範囲:P.1075 - P.1077

はじめに
 原発性鎖骨下静脈血栓症(以下本症と略)とは,特発性あるいは直接間接に鎖骨下あるいは腋窩静脈の外傷に引続いて,同部に血栓を生ずる疾患である1).本邦では,鎌谷らが2),1978年までに報告された10例を集計している.
 最近我々は本症の1例を経験し,併せて本邦報告例を蒐集したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

小骨盤腔を占拠した小腸平滑筋肉腫の2例

著者: 原川伊寿 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   深田伸二 ,   石橋宏之 ,   加藤純爾 ,   神田裕 ,   松下昌裕 ,   小田高司

ページ範囲:P.1079 - P.1083

はじめに
 小腸平滑筋肉腫は,比較的まれな疾患であるが,最近その報告例は増加している.しかし,術前に診断されることは少なく,開腹して始めて診断される場合が多いのが現状である.われわれは,卵巣腫瘍の術前診断のもとに開腹し,小腸平滑筋肉腫の術後診断を得た1例と,術前に小腸平滑筋肉腫と診断した1例で,ともに壁外性に進展,小骨盤腔を占拠し,興味ある画像所見を認めたので報告し,小腸平滑筋肉腫について,若干の文献的考察を加えた.

腸腰筋膿瘍の1例

著者: 小林達則 ,   松田忠和 ,   吉井淳哲 ,   岩藤隆昭 ,   松田和雄

ページ範囲:P.1085 - P.1089

はじめに
 現在化膿性腸腰筋炎は比較的稀な疾患であり,確定診断が遅れることが少なくない.わが国では整形外科領域,泌尿器科領域での報告がほとんどであるが,一般外科医も認識の必要性がある病態と考えられる.われわれはCTが診断および治療に有用であつた化膿性腸腰筋炎の1例を経験したので,文献的老察を加えて報告する.

回腸inflammatory fibroid polypの1例—本邦報告例の検討

著者: 村上義昭 ,   友安敏博 ,   津村裕昭 ,   河毛伸夫 ,   中井志郎 ,   角重信 ,   増田哲彦 ,   小浜幸俊 ,   梶原博毅

ページ範囲:P.1091 - P.1095

はじめに
 消化管に発生する好酸球浸潤を伴つた原因不明の病変は,好酸球性肉芽腫として知られているが,本疾患は,一般的には,inflammatory fibroid polyp(IFP)とeosinophilic gastroenteritis(EG)の2つに大別されている.本疾患の発生部位は,胃が大部分を占めており,小腸発生例はきわめて稀である.本邦においても,1975年中村ら1)の報告以来,少数例の報告を見るのみである.今回,われわれは,回腸に発生したIFPの1例を経験したので,本疾患の分類,名称などについて,われわれが渉猟しえた本邦におけるIFP小腸発生例20例の文献的考察とあわせて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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