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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科41巻9号

1986年08月発行

雑誌目次

特集 悪性腫瘍を疑うX線像

食道癌を疑うX線像

著者: 田中満

ページ範囲:P.1245 - P.1248

 食道X線検査で微細病変すなわち早期癌を見つけるためには,X線検査に適した装置を使用し鮮鋭度のある二重造影像を撮影するのが最もよい方法である.二重造影を撮影する方法について述べた.また,できるだけVTRを併用し,内視鏡検査を積極的に行うべきである.

胃癌を疑うX線像

著者: 佐伯光明 ,   石川徹

ページ範囲:P.1249 - P.1259

 胃癌のX線については,すでに無数の研究がなされ,先人の努力により胃X線診断は,ほぼ完成の域に達している.今回の特集では,特に外科臨床家のため,我々の施設において経験された早期胃癌,進行胃癌及びこれら疾患との鑑別すべき疾患を供覧し,そのX線的特徴について言及した.短い紙面であるため全てを網羅することは出来ないが,読者の一助となれば幸いである.

大腸癌を疑うX線像

著者: 宮沢とも子 ,   飯島俊秀 ,   正田弘一 ,   平敷淳子

ページ範囲:P.1261 - P.1267

 大腸癌の早期発見・確定診断のためには便潜血反応,直腸診と共に内視鏡と注腸二重造影は不可欠である.注腸造影像から癌を見落さずに診断するためのポイントとして(1)小隆起病変の検出,(2)腸管辺縁の不整像や変形の読影,(3)内腔の狭窄や閉塞像の存否,をあげ解説する.
 大腸癌と注腸造影像から鑑別を要するものとして(1)生理的収縮,(2)他臓器や腹腔内腫瘤による圧迫,(3)小隆起性病変,(4)炎症性病変,(5)虚血性大腸炎,をあげ解説する.

膵癌を疑うX線像

著者: 高木国夫 ,   大橋計彦 ,   竹腰隆男 ,   丸山雅一

ページ範囲:P.1269 - P.1279

 日常もつとも多く用いられる胃X線検査から,膵癌を疑うX線所見についてのべた.胃と膵との密接な関連から,膵の変化が胃体部小彎及び大彎側に,胃外性圧排像として表現される.この所見は,正面像でとらえにくく,第一斜位で胃体部小彎側に第二斜位で胃体部大彎側にみとめることが出来,この所見は膵体部癌のみでなく,膵頭部癌においても癌による膵体尾部の随伴性膵炎によりみとめられることに注目したい.かかる所見に対して超音波検査とともにERCPにより膵内の異常を見出し,血管造影とCTで癌の診断と共に周囲臓器への浸潤を精査することにより,膵癌をより早く発見することが可能になるであろう.

胆道癌を疑うX線像—無黄疸・軽度黄疸例について

著者: 黒田知純 ,   吉岡寛康 ,   徳永仰 ,   細木拓野 ,   丸川太朗 ,   小塚隆弘 ,   中尾量保 ,   宮田正彦

ページ範囲:P.1281 - P.1287

 胆道癌の治療成績を向上させるためには,できるだけ早い時期に胆道癌を発見し,診断を確定することが必要である.そのため,本稿では,無黄疸あるいは軽度黄疸の胆道癌症例のX線像,なかでも上腹部X線スクリーニング検査として行われるCTと経静脈性胆道造影のX線像を中心に検討した.特に,他疾患の治療目的で来院した患者のCTで,胆道癌を疑わせる所見を拾い上げることが早期の診断に結びつくことがあり,重要である.

肺癌を疑うX線像

著者: 西山祥行 ,   高橋健郎 ,   松山智治

ページ範囲:P.1289 - P.1299

 肺癌は我が国において増加傾向にある癌の1つであり,肺癌診療を専門としない分野の外科医にとつても他疾患治療中に胸部X線写真により異常陰影を発見する場合も少なくない.肺癌を早期に発見し,治療するためには胸部X線写真1枚の読影においても,常に肺癌を念頭におく必要がある.ここでは肺野末梢陰影,二次変化像(無気肺,閉塞性肺炎),胸膜肥厚像,胸水などの陰影を呈した肺癌症例をあげ,主に胸部正面写真の読影について述べた.

カラーグラフ 胆道疾患の外科病理・13

浸潤型胆嚢癌に類似する胆嚢炎

著者: 武藤良弘 ,   山田護 ,   川崎康彦 ,   篠崎卓雄

ページ範囲:P.1241 - P.1243

はじめに
 胆石は胆嚢に種々の障害を加え,その結果,様々な病的形態へと胆嚢を変容させる.なかでも,胆石嵌頓による急性閉塞性胆嚢炎が鎮静し,3カ月〜6カ月経過した胆嚢炎は臨床的にも病理学的にも浸潤型胆嚢癌と誤診しやすい.これらの胆嚢炎は亜急性,亜慢性胆嚢炎と称することができる病変を呈する疾患といえる.

文献抄録

乳癌処置の動向

著者: 池田正

ページ範囲:P.1299 - P.1299

 近年乳癌の治療に関する概念には多くの変化がみられる.すなわち手術縮小化の方向であるとか,ある種の患者に対する補助療法の重要性の認識などである.これらの概念の変化がどの程度ニュージャージー州における外科医の間で受け入れられているかを知るためにアンケート調査を実施し,過去の調査結果と比較した.
 〔方法〕乳癌に関する21の項目よりなるアンケートをAmerican College of Surgeonsのニュージャージー支部の会員に郵送した.寄せられた回答を分析し,1971年および1977年に施行された同様の質問に対する回答と対比した.

原典を繙く・17

そけいヘルニアの治療について(その3)—エドゥワルト・パッシーニ(王立パドゥワ大学 臨床外科教授)

著者: 山内英生

ページ範囲:P.1301 - P.1304

訳者:「ここでは262回のヘルニア症例の記載がなされている.これらはいずれも,氏名,年齢,出身地,手術日,ヘルニアの種類,大きさ,状況(左右の別,還納性か非還納性,嵌頓性か非嵌頓性),治癒に要した期間,死因,再発について1例ごとに記載されており,22頁にも及ぶがここでは個々の内容は省略した.」
 この統計には,私の手がけた262回のそけいヘルニアの手術が示され,このうち,251が非嵌頓性,11が嵌頓性であつた.前者の251回の手術は根治を目的として施行されたもので,216例の患者においてなされている.このうち,206例が男性,10例が女性であつた.手術患者の最年少者は13カ月で最年長者は69歳であつた.ヘルニアは115例が右側,66例が左側,両側38例,計216例であつた.

My Operation—私のノウ・ハウ

痔核摘出術

著者: 岩垂純一

ページ範囲:P.1305 - P.1309

適応と手術
 痔核は直腸肛門部の静脈叢における静脈瘤といえる病態であり良性疾患であるため,その治療は,まずは保存的に行う.そして保存的療法を行つても症状が寛解せずに出血を繰り返す場合や痔核が進展し肛門外へ脱出するようになり,その脱出が患者自身の日常生活に支障をきたすようになつた場合に手術適応を考える.
 痔核の手術としては現在,痔核にそそぐ血管を根部で結紮し,その痔核を肛門管に放射状に切除する結紮切除術が行われている.結紮切除術には痔核を切除した創を開放のままとする場合と閉鎖する場合がある.閉鎖した場合,閉鎖する手技自体が煩雑であり時間もかかり術後の狭窄をきたしやすいという欠点はあるものの,うまく行われると創は,むき出しでないため術後の疼痛は少なく治癒日数は短縮される.また術後の後出血がほとんど見られない安全な術式である.本文では,痔核に対する結紮切除術の中での半閉鎖する術式について述べる.

画像診断 What sign?・39

Toxic Megacolon

著者: 佐藤豊

ページ範囲:P.1310 - P.1310

 toxic megacolon(t.m.)は潰瘍性大腸炎の経過中に起こる最も激烈な病態であり,臨床的には発熱,脱水,血圧低下などの重篤な全身症状と,結腸の広範な拡張による,圧痛を伴う急激な腹部膨満がみられ,腸音は減弱する.t.m.は潰瘍性大腸炎の急性期にも慢性期にもみられる.病理的に拡張した結腸の腸管壁は,筋層および漿膜を含む全層にわたる急性炎症像と壊死を呈し,きわめて脆弱である.腹部単純エックス線像(図)では結腸全体にわたる著しい拡張がみられ,特に横行結腸に著しい.この際,結腸横径の増加は著しいが,長軸方向への延長はあまりみられないのが特徴であり,拡張部のhaustraは消失する.t.m.を起こして脆弱になつた結腸は穿孔を起こすことが多く,腹腔内に遊離したガスが臥位の撮影では拡張した腸管内のガスによつて隠される場合があるので,立位,臥位側面,あるいは側臥位正面(デクビタス)撮影をあわせ行うべきである.t.m.が疑われる時には注腸は禁忌である.潰瘍性大腸炎とともにt.m.の原因となる疾患を表にあげる.

臨床研究

妊娠期・授乳期乳癌の特徴

著者: 沢野彰 ,   木村道夫 ,   秋元実 ,   植木浜一 ,   葛西森夫 ,   阿部力哉

ページ範囲:P.1311 - P.1315

はじめに
 妊娠期・授乳期に乳癌を認めることは,比較的稀である.以前は妊娠に合併した乳癌の予後は,一般の乳癌に比べて著しく不良であるとする意見が多かつた.しかし最近では,腫瘤が大きく腋窩リンパ節転移陽性例が多い傾向はあるが,病期を合わせて比較すると,その予後にあまり違いはないと考えられている1).また妊娠期・授乳期乳癌の診断は極めて難しく,その治療に関しても一定の見解は得られていない,最近当教室では妊娠期3例,授乳期2例の乳癌を経験した.その診断と治療の経過を報告し,あわせてhormone receptorとDNA—histogramの結果から妊娠期・授乳期乳癌の特徴について検討した.

臨床報告

大腸多発性悪性リンパ腫の1例

著者: 石神博昭 ,   山中義秀 ,   小川清 ,   小久保茂樹 ,   青柳栄一 ,   安倍巳紀男 ,   伊藤健次郎

ページ範囲:P.1317 - P.1320

はじめに
 リンパ細網組織由来の悪性腫瘍の総称である悪性リンパ腫は当然のことながらリンパ節に発生することが最も多く,次いで扁桃などのリンパ系組織であるが,消化管も好発部位の1つである.
 消化管の悪性リンパ腫の発生部位は胃が最も多く,次いで小腸,とくに回腸終末部であり,直腸を含む大腸には少ない.

甲状腺より発生した悪性胸腺腫の1例

著者: 松波英寿 ,   広瀬光男 ,   原節雄 ,   多羅尾信 ,   後藤全宏 ,   名知光博 ,   杉江茂幸 ,   吉見直巳

ページ範囲:P.1321 - P.1326

はじめに
 胸腺腫は縦隔腫瘍のなかではもつとも頻度の高いものであるが,今回われわれは,きわめてまれな甲状腺内胸腺腫を経験したので報告し,本邦における報告例を集計した.

血中CEAが高値を示した胃原発性腺扁平上皮癌の1例

著者: 山根歳章 ,   松井孝夫 ,   栗原彰 ,   阿部重郎 ,   福庭克郎 ,   鈴木信介 ,   松井克明

ページ範囲:P.1327 - P.1329

はじめに
 胃原発の上皮性悪性腫瘍は腺癌が大部分であり,腺扁平上皮癌はまれである.今回,われわれは血中CEA(carcino embryonic antigen)が高値を示したBorr—mann 3型胃腺扁平上皮癌を経験したので報告する.

漿膜下に発生した胃嚢胞性リンパ管腫の1例

著者: 葦沢龍人 ,   今井直人 ,   熊澤博久 ,   佐野寛二 ,   富川昭 ,   有木真理 ,   木村幸三郎

ページ範囲:P.1331 - P.1335

はじめに
 胃のリンパ管腫は稀な疾患であり,ことに漿膜下に発生したリンパ管腫は過去2例の報告1,2)をみるにすぎない.今回,胃の後壁漿膜下に発生し各種画像検査にて膵嚢胞と鑑別困難であつた,多発性嚢胞性リンパ管腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

下大静脈内に進展発育し,閉塞をきたした再発大腸癌の1例

著者: 神田裕 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   石橋宏之 ,   加藤純爾

ページ範囲:P.1337 - P.1340

はじめに
 腎癌ではしばしば腫瘍が下大静脈内に浸潤して閉塞をきたすことが知られているが,大腸癌の下大静脈内進展による閉塞はきわめてまれと思われる,われわれは再発大腸癌が下大静脈内に進展発育し,閉塞をきたした症例を経験した.特徴的な超音波断層像,CT所見が診断に有用で興味ある症例と思われたので報告する.

多発性胃カルチノイドの1例

著者: 黒川剛 ,   大林正仁 ,   板坂安修 ,   永田巌 ,   鈴木龍哉 ,   三浦克敏 ,   白澤春之

ページ範囲:P.1341 - P.1344

はじめに
 胃カルチノイドは胃腫瘍の中でも比較的まれなものであり,増殖は緩徐であるが,悪性の経過をたどるものとして知られている.近年,胃カルチノイドの発生母地として,内分泌細胞の過形成が注目されてきている.われわれは最近,内分泌細胞微小胞巣を母地として発生したと考えられる多発性胃カルチノイドの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

中心静脈栄養患者に発症した内因性カンジダ性眼内炎の1例

著者: 小田誠 ,   加藤善彦 ,   佐藤博文 ,   小島路久 ,   卜部美代志 ,   上杉ヱリ子

ページ範囲:P.1345 - P.1348

はじめに
 1968年にDudrick1)によつて導入された中心静脈栄養法(以下IVHと略す)は,今日外科臨床に必須のものとなつた.しかし,重症例に対する大量の抗生剤投与および長期間にわたるIVHカテーテルの留置により,その副作用としての真菌性全身感染症が問題となつてきている.このうち,内因性真菌性眼内炎の報告は近年増加傾向にある.しかも,これは早期に治療を開始しなければ失明につながる重篤な疾患である.
 我々は最近IVH施行中に内因性真菌性眼内炎の1例を経験したので報告し,あわせて本邦での報告例について文献的考察を加える.

胆嚢にみられた異所性膵の1例

著者: 高野歊 ,   嶋野松朗 ,   加藤裕昭 ,   木村剛典 ,   佐藤達資

ページ範囲:P.1349 - P.1353

はじめに
 消化管などにみられる異所性膵は手術時あるいは剖検時に偶然発見されることが多く,まれな疾患ではないが,胆道系に発生した例は少なく,報告例はそれほど多くない.
 最近,われわれは胆嚢結石症の診断で,摘出した胆嚢を病理組織学的に検索したところ,偶然発見された胆嚢内異所性膵の非常にまれな1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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