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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻10号

1987年09月発行

雑誌目次

特集 癌術後follow upと再発時の対策

甲状腺癌

著者: 飯田太 ,   菅谷昭

ページ範囲:P.1467 - P.1469

甲状腺癌の術後follow up
 □根治手術の場合
 A.外来診察
 術後1年間は1〜3ヵ月ごとに来院させる.術後2〜5年は3〜6ヵ月ごとに来院させる.
 術後6年以後は1年に1回来院させる.

甲状腺癌

著者: 宮内昭 ,   隈寛二

ページ範囲:P.1471 - P.1475

はじめに
 甲状腺の悪性腫瘍には乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,未分化癌および悪性リンパ腫があり,それぞれ腫瘍の性質も悪性度も著しく異なつている.したがつて,術後follow upのやり方,合併療法および再発時の対策もそれぞれ大きく異なつている.本論文では,甲状腺悪性腫瘍の90%以上を占める乳頭癌と濾胞癌に焦点を絞つて述べることにする.
 これらはいずれも,濾胞細胞由来の癌であり,症例ごとに程度の差はあれ,多少とも母細胞の性質,例えば,サイログロブリンの産生,無機ヨードの集積などの能力を有している.また,甲状腺刺激ホルモン(TSH)の刺激に反応性を示すものが多く,このような腫瘍はTSHレセプターを持つていると考えられている1),したがつて,TSHによつて増殖も促進されると推測されており,このためやや過剰の甲状腺ホルモンを投与し下垂体からのTSHの分泌を抑制する抑制療法1)が試みられている.

乳癌

著者: 浅石和昭 ,   岡崎稔 ,   早坂滉

ページ範囲:P.1477 - P.1482

はじめに
 乳癌に限らず,適切な術後療法には適切な術式に加えて的確な病態の把握と対策が必要である.乳癌は根治手術に加えて化学療法,内分泌療法,放射線療法,免疫療法等,種々の治療法の効果が期待できる疾患である.再発後も比較的緩徐な経過をとる症例も多く,これらの治療法による集学的治療が種々試みられ,報告されている,ここでは教室で現在行つている乳癌の術後療法を中心にのべる.

乳癌

著者: 阿部力哉 ,   野水整

ページ範囲:P.1483 - P.1487

はじめに
 乳癌にかぎらず,いずれの臓器癌においても,術後のfollow upなしには癌の治療をしたとはいえない.それは癌では治癒手術を施行したにもかかわらず高頻度に再発があり,死に到るからである.乳癌は他臓器癌に比べ,再発後でも大きな治療効果のえられる症例が多く,出来るだけ早く発見して適切な治療を施行すれば,長期にわたり寛解を得て生命を延長させることが可能である.乳癌の再発は通常孤立性であることは少なく,複数臓器にまたがり,また同一臓器であつても多発性あるいは播種性のことが少なくない.また初めは孤立性であつても,癌の進行とともに多発性になる場合が多い.したがつて,患者が訴えてきた症状なり所見なりを待つて再発の診断をするのではなくて,全く無症状のものの再発巣の発見を心がけながらfollow upすべきである,また進行乳癌においては,治療効果の判定や,他臓器への転移を速やかに把握し,最も適切な治療法を選択するために常に十分な配慮をもつてfollow upしていかなければならない.

肺癌

著者: 大田満夫

ページ範囲:P.1489 - P.1491

はじめに
 肺癌の切除術は,癌腫を有する肺葉(ときには2葉,3葉)を切除し,肺門縦隔リンパ節の郭清を行うことであり,確立されている.
 ところが,術後合併療法については,いまだに確立された方式がない.ただ絶対的非治癒切除例において,遺残巣に対して放射線治療を行うことにはあまり異論はないようである.また肺小細胞癌に対しては,第1選択の治療法は多剤併用化学療法であり,切除術はadjuvant surgeryとして限られた条件の下で施行される1).切除してはじめて小細胞癌と判つた場合には,かならず強力化学療法を行わねばならない.

肺癌

著者: 於保健吉 ,   中村治彦

ページ範囲:P.1493 - P.1496

はじめに
 肺癌の治療成績は他臓器癌に比して著しく不良である.この最大の原因は術後再発・転移頻度が高いことにあり,術後病期Iの症例さえ,40%前後に再発がみられる1,2) .わが国で肺癌治療がはじまつて約35年を経過し,外科療法の手技はおおよそ確立した今日,肺癌治療は術後再発の防止策と再発癌への対応策が緊急課題であると言つても過言でない.
 肺癌は組織型が多彩で,各組織型の生物学的性状が手術の根治性と共に予後を大きく左右する.低分化型腺癌や小細胞癌では治癒手術といえども微小遠隔転移巣の存在は否定できず,再発巣の早期発見に向けて万全の注意が必要である.すなわち,肺癌の術後follow upは手術の根治性と共に組織型および組織亜型を念頭に置いて計画されねばならないと言える.

食道癌

著者: 杉町圭蔵 ,   桑野博行

ページ範囲:P.1497 - P.1500

はじめに
 近年,食道外科は急速な進歩,普及をとげ,ことにその安全性の向上に伴い,今日では多くの施設で食道の手術が行われるようになつてきた.しかしながら,その5生率は約20%と他の消化器癌に比べて著しく劣つているのが現状である1).その理由としては,食道癌では発見時すでに外膜浸潤やリンパ節転移を伴つた進行癌が多いことに加えて,手術侵襲が大きく上縦隔リンパ節郭清により術後肺合併症が高率に発生すること2)などの特殊性から,手術根治性が制約されることも少なくない点などが挙げられる.さらに食道癌では,治癒切除が施行された症例においても高頻度に再発がみられる点や3),早期癌といえども再発する症例がなお多く存在することなどから術前,術中術後を通した一貫した集学的治療の重要性は明らかであり,ことに術後の長期に亘るfollow upと合併療法は,その遠隔成績の向上に大きな意義をもつものと考えられる.このような現況に鑑み,教室では,治癒切除例,非治癒切除例を問わず,さらに早期癌も含めて,個々の症例の癌の悪性度に応じた術後合併療法を行つており,follow upの実際とともにここに供覧する.

食道癌

著者: 実方一典 ,   西平哲郎 ,   森昌造

ページ範囲:P.1501 - P.1504

はじめに
 手術手技や術前術後管理の進歩に伴い,食道癌の手術死亡率はひと頃に比べると激減した.一方遠隔治療成績は到底満足できるものではなく,いまだに消化器癌の中で最も悪いものの1つと言えよう1,2).しかし個々の癌腫の特性に従つた適切な種々の初回治療が試みられ,たとえ再発しても,再発巣の早期発見と早期治療がなされれば,かなりの症例を延命させることができるであろう3)
 本稿では,当科における胸部食道癌根治手術例について再発状況を解析し,その結果を踏まえて,食道癌術後follow upの実際,再発の診断,再発症例の治療法について述べる.

胃癌

著者: 島津久明 ,   野村秀洋 ,   高尾尊身 ,   吉中平次

ページ範囲:P.1505 - P.1508

はじめに
 早期癌症例の増加,系統的リンパ節郭清を基本とする標準術式の確立,補助(免疫)化学療法の併用などにより,胃癌治癒切除例の治療成績は近年明らかな向上を示している,しかし反面,治癒切除後の再発も決して稀ではなく,しかもこれらの再発胃癌は,すでに相当に進行した状態で発見されることが多いのが実情である.したがつて,治療成績のさらに一段の向上をはかるためには,有効な補助療法を併用すると同時に,follow upをできる限り綿密に行つて,再発の早期発見と早期治療に努めなければならない.非治癒切除例では,もちろん併用補助療法に頼らざるをえない1).以下に教室の現況を述べる.

胃癌

著者: 中島聰總 ,   大田恵一朗 ,   東郷実元 ,   西満正

ページ範囲:P.1509 - P.1513

はじめに
 癌の再発または再燃に対する有効な治療法がない時代には,術後患者のfollow upもあまり大き臨床的意義を持つとは思われなかつた.しかし最近は胃癌の再発症例でも種々の集学治療によつて再発後1年以上の生存は稀ではなくなり,適切な後術follow upはきわめて重要である.すなわち,再発治療の成績の良非が再発部位のlocal controlの可否にかかつている場合が多いことを考えるとき1),再発の早期発見が重要な意義を持つ.再発の早期発見のためには患者の来院の頻度も重要であるが,さらに初回手術時の癌の特性や進展の程度などから,再発部位や経路を想定して,効率的な検診を行う必要がある.ここでは胃癌の再発の種類と頻度,再発時期について検討し,これらの結果を反映したfollow upの方法と再発治療の方針について考察してみたい.

大腸癌

著者: 北條慶一

ページ範囲:P.1515 - P.1519

はじめに
 癌手術後のfollow upの一つの大きな目的は再発を早期発見することである.これによつて適切な治療を行うことである.再発を早期に小さい時に発見して再切除が行われれば大腸癌のおとなしい性格ゆえにかなりの延命効果または治癒を期待することが出来る1-3).再発の早期発見を効率的に行うためには再発様式の特徴を十分認識しておくことが大切である.再発はどこに出現してもよいが好発部位がある4,5)

大腸癌

著者: 小平進 ,   寺本龍生 ,   宮島伸宜 ,   石井忠弘 ,   葛岡真彦 ,   桜井洋一

ページ範囲:P.1521 - P.1524

はじめに
 大腸癌は治癒切除術が行われれば,その遠隔成績は比較的良好であり,教室の経験でもその5年生存率は結腸癌で76%,直腸癌で59%である1).それでも結腸癌の23%,直腸癌の41%の症例は他病死を除けば何らかの再発により失つていることになる.他の癌と同様に大腸癌においても再発腫瘍の治療は非常に困難であるが,近年の治療技術の進歩により,再発も早期に発見すれば根治的治療も可能な症例もあり,治癒切除術後の綿密な経過観察が重要な問題となつている.一方,非治癒切除後の症例においても,施行される種々の治療に対する効果判定のためには,計画的な経過観察が必要であることはいうまでもない.
 ここでは大腸癌術後のfollow upについて,教室で行つている方法と注意点を中心に述べる.

肝細胞癌

著者: 島村善行 ,   竹中能文 ,   石井正則 ,   関和司 ,   志真泰夫 ,   高橋陽 ,   松山智治

ページ範囲:P.1525 - P.1530

はじめに
 肝細胞がん(HCC)は胃がん,肺がんにつぎ第3位のがん発生頻度であり,50歳台の男性に多い.症状発現が遅く,進行がんが多いため予後はまだまだ悪く,社会に与える影響は大きい.その予後を良くするためには,早期発見・早期治療はもちろんのこと,ここでとり上げられたテーマの如く術後follow upを十分にして,再発に速やかに対処しなければならない.
 また,術後follow upの"術後"とは本特集の主旨からして,肝切除の回復期を離脱した時期,すなわち術後約1ヵ月以降として話を進めていきたい.

肝細胞癌

著者: 牧淳彦 ,   森敬一郎 ,   嶌原康行 ,   山岡義生 ,   小澤和恵

ページ範囲:P.1531 - P.1534

はじめに
 最近の各種画像診断技術および術中・術後管理の進歩により,肝切除術は肝癌に対する最も有効な治療法として確立された.しかし併存する肝機能障害に起因する切除量の制限および早期から出現する血行性転移のため未だにその長期予後は満足すべきものではなく,再発の予防,再発時の対策については,更に改善の余地がある.
 肝硬変合併肝癌の多いわが国では,術後の肝不全を懸念して縮小手術を選択する傾向にある.しかし,我々が過去に行つた縮小手術の3年後の再発率が60%に達した事への反省から,より根治性を高めるため,2年前からは可能な限り拡大手術に努めている,すなわち,機能的には血中ケトン体比を測定する事により安全性を確認しつつ,また手技的には移植手術に準ずるBio-pumpによる体外循環1)や,血管外科的手技を駆使して,根治を目指す.1985年1月から1987年4月までの間に当教室で行われた212例の肝切除のうち肝細胞癌は116例であるが,今回はその中から,再発の有無,6ヵ月以上の長期予後等について詳細に検討可能であつた62例について分析し,われわれの採用している術後長期管理計画を紹介する.

胆道癌

著者: 小山研二 ,   田中淳一 ,   嘉藤茂 ,   佐藤泰彦 ,   古岡浩 ,   佐藤敬文

ページ範囲:P.1535 - P.1538

はじめに
 胆道癌の手術成績は診断技術の進歩,術前術後管理の改善に伴い,徐々に向上している.しかし,5年以上長期生存例の多くはいわゆる早期胆道癌によつて占められており,Stage II, IIIに対する治療法の確立が急務である.これら症例では肉眼的に治癒切除と判定されても組織学的に非治癒であることが多く,術後早期に再発する場合が少なくない.そこで適切な補助療法と厳重な術後fo-llow upおよび再発時の対策が極めて重要であり,本稿ではこれらの点について胆道癌切除例を中心に述べてみたい.

胆道癌

著者: 宮崎逸夫 ,   泉良平

ページ範囲:P.1539 - P.1542

はじめに
 胆道癌の再発は,主として局所再発と肝再発などの血行性転移である.胆道癌では,癌腫が占拠する場所によつて隣接する周囲臓器が異なり,周囲臓器への浸潤様式や転移様式によつて再発する部位や形式が異なつてくる.
 肝門部胆管癌では,肝への浸潤が高頻度にみられ,また上部及び中部胆管癌では,肝動脈,門脈への直接浸潤を見ることが多いため,局所での再発が多く認められる.一方,胆嚢癌では,肝や胆管への直接浸潤が治療上問題となり,肝及び局所再発の頻度が高い.膵内胆管癌や乳頭部癌では,膵頭神経叢や後腹膜領域への癌の進展が進行例ではみられ,血行性再発のみならず後腹膜や大動脈周囲リンパ節再発が認められる.これらの再発形式を考慮して術後のfollow upを行う必要がある1)

膵臓癌

著者: 今泉俊秀 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.1543 - P.1548

はじめに
 膵癌の早期診断が未だ困難で治療対象の大多数が進行癌であること,また一方では有効な内科的治療法がないことから,現在では膵癌に対しては外科的治療を第一選択とせざるをえないが,その治療成績は他の消化器癌に比べ極めて不良である.
 膵癌は容易に周辺重要臓器や血管系,神経系,等の後腹膜に進展することが特徴的で,これらを切除すべく拡大手術1)を積極的に導入してきた.拡大手術により治癒切除がえられても,肝転移や局所再発で失うことが多く,また,非治癒切除の半数が膵後方剥離面癌遺残(ew(+))であることは,拡大手術の限界とも言えるが2,3),現実には治癒切除例の50%生存期間が18ヵ月,3年生存率29%と,わずかではあるが確実に遠隔成績が向上してきている事も事実である.これらを支えに,膵癌に対しては拡大手術を武器として可及的に治癒切除を追求する努力を続けてゆかなければならない.本稿では教室における膵癌外科治療方針と切除術後のfollow upのフローチャート,再発時の対策とについて,膵頭部癌を中心に述べる.

膵臓癌

著者: 齋藤洋一 ,   山本正博

ページ範囲:P.1549 - P.1553

はじめに
 膵癌では早期発見が難しく,なお切除の対象となる症例が少ないばかりか,切除しえても根治切除の困難性からその外科治療成績は不良である.しかし,最近の画像診断の進歩により小さな膵癌の報告も増加しており,また拡大手術の導入により切除率ならびに治療成績の向上が次第にうかがわれるようになつている.このため膵癌の診療においては,大部分の非根治例に対する対策とともに,根治的に切除されたと思われる症例に対しても術後の注意深いfollow upは特に重要な課題である.本稿では,教室における経験に基づき膵癌術後のfollow upの実際について概説する.

悪性リンパ腫

著者: 西尾剛毅 ,   牧野永城

ページ範囲:P.1555 - P.1558

はじめに
 悪性リンパ腫(MLと略す)は,リンパ節,脾臓,その他のリンパ組織を構成する細胞に由来する悪性腫瘍の総称である.リンパ節を初発とするものが多いが,それ以外の部分を初発とするものも少なくない.
 白血病と類似の疾患であり,本来は内科的疾患であるが,外科医が取り扱うことも少なくない.外科医が関与するのは,①リンパ節の生検,②ホジキン病のステージングのための開腹手術,③腹部腫瘤に対する診断的開腹手術,④リンパ節以外に初発する悪性リンパ腫に対する治療的手術の4つの例が考えられる.ここでは④のケースの手術後の後療法,follow upについて主に述べる.
 リンパ節外初発MLは全MLの16〜36%の頻度で起こり,胃,小腸,皮膚,眼窩部などが好発部位である.リンパ節初発のMLより一般に予後は良い.ホジキン病は稀で,非ホジキン悪性リンパ腫がほとんどである.

消化管悪性リンパ腫

著者: 小堀鷗一郎 ,   中原一彦

ページ範囲:P.1559 - P.1562

はじめに
 悪性リンパ腫はリンパ節原発と考えられるものとリンパ節以外の臓器が原発巣である節外性悪性リンパ腫とに分類しうるが,本稿では手術の対象となる節外性悪性リンパ腫について自験例の分析を基として術後follow upと再発時の対策を述べることとする.節外性悪性リンパ腫手術症例は1963年より現在までに58症例で,このうち43例,74.1%が消化管原発例(胃29例,腸管14例)であるところから以下に述べる術後のチェック法,評価,再発の早期発見などは消化管悪性リンパ腫とくに胃悪性リンパ腫を念頭において論述したものと理解していただきたい.

カラーグラフ 乳腺疾患の外科病理・9【最終回】

原発不明腋窩リンパ節転移癌と乳癌

著者: 山科元章

ページ範囲:P.1463 - P.1465

 癌転移による腋窩リンパ節腫脹を初発症状とする乳癌がまれに認められる.このような乳癌は,多くの場合潜在性で,なかには盲目的な乳切術によつてはじめて原発癌巣がみつけられる例も少なくないと考えられる.しかし,腋窩リンパ節に転移をきたす癌は,乳癌以外にも,甲状腺・肺,消化管・卵巣・腎などの腫瘍が知られており,さらにリンパ節に転移をおこしながら剖検によつても原発巣を発見できないいわゆる原発巣不明癌症候群(CUPS,carcinoma with unknown primary syndrome)を形成する例も皆無ではない.したがつて,腋窩リンパ節に乳癌様の悪性腫瘍が診断されても,患側の乳切術が即座に勧められる訳ではなく,臨床病理学的に系統的な原発巣の探索がまず追求されなくてはならない.
 本稿では,このような腋窩リンパ節転移腫瘍に対して,原発巣を乳癌と診断するために役立つ特徴的な病理組織所見を図説し,臨床・病理両面からの協調のとれたアプローチを強調する.

文献抄録

大腸癌術後に合併する感染症と手術期輸血の関連

著者: 菊山成博 ,   石引久弥

ページ範囲:P.1558 - P.1558

 麻酔,出血,輸血,手術侵襲,手術時間は術後の免疫抑制をもたらし,術後感染症発生に関連をもつとする報告がある.これらの知見の臨床的意義を明らかにするため,大腸癌術後の感染症と多くの手術期における因子との関係を検討した.
 対象は肝および他部位への転移を認めなかつた大腸癌症例の予定手術を受けた168名であつた.これらの患者は1983年8月1日より1984年12月31日までに術前診断をうけ,下剤,浣腸,ネオマイシンとエリスロマイシンの経口投与,セファゾリン静脈内投与による腸管処置を施行され,術後24時間セファゾリンが持続投与された.年齢,性,術式,切除標本の長さ,分化度,転移リンパ節数,病期,入院時ヘマトクリット値,出血量,入院中輸血量,腫瘍サイズ,Dukes分類などと術後感染症の関連を多変量解析により検討した.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson4 開腹ならびに閉腹

著者: 小越章平

ページ範囲:P.1563 - P.1566

 一般腹部手術における術者ならびに助手の配置は各施設により多少は異なる。もちろん術式や手術の大きさにより助手の数や配置を変えることは言うまでもない。
 われわれのところでは,一般的に左図のような配置をとっている。

Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・4

急性腸間膜動脈閉塞症に対する緊急手術

著者: 加藤紘之 ,   熱田友義 ,   伊藤紀之 ,   高橋透 ,   田辺達三

ページ範囲:P.1567 - P.1571

はじめに
 心疾患あるいは動脈硬化性病変に起因する腸管障害があらたな治療対象として注目されつつある.特に急性腸間膜動脈閉塞症の治療にあたつては消化器外科医と血管外科医の密接な協力あるいは両分野にわたる知識,技術の習得が必要であり,これからの外科学のあり方を示唆する治療分野でもある.心疾患を基礎疾患とする症例では塞栓閉塞が予想され腸管の部分虚血にとどまる場合が多い.一方高齢者の動脈硬化性病変を基礎疾患とする症例では血栓閉塞が予想され広範な腸管壊死を起こすことが多い.いずれも症状の発現が突発的で経過も早く急性腹症として扱われるが,開腹時にはすでにショック,腎不全など多臓器障害に陥つている症例も少なくはない.著者らの経験した25例中入院死亡は18例,72%と高く,この疾患に対する認識をさらに高めて,救命率の向上につとめる必要に迫られている.

臨床報告

肛門周囲皮膚原発悪性黒色腫の1例

著者: 固武健二郎 ,   小山靖夫 ,   尾形佳郎 ,   鈴木恵子 ,   島村香也子

ページ範囲:P.1573 - P.1576

はじめに
 肛門部悪性黒色腫は比較的まれな腫瘍である.最近,われわれは肛門管への浸潤を伴つたが,原発部位は肛門周囲皮膚であると考えられた点できわめてまれな悪性黒色腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

メチシリン・セフエム耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるStaphylococcal enterocolitisの1例

著者: 高橋政弘 ,   成沢富雄 ,   佐藤泰彦 ,   水沢広和 ,   鹿嶋秋伍 ,   中込治

ページ範囲:P.1577 - P.1579

はじめに
 Staphylococcal enterocolitis(以下S.enterocolitis)は,広域スペクトラム抗生剤の投与によつて腸内細菌叢が抑制されるとともに,薬剤耐性のStaphylococcus au-reus(以下S.aureus)が異常繁殖した結果発症する疾患で,重篤で致死率が極めて高い1,2).本邦では従来より報告例が少なく,また1970年代以降欧米においても激減したため3),これまでわれわれの注意を喚起することは少なかつたが,今回,横行結腸切除術後に発症した本症に対し,回腸瘻の造設と感受性抗生剤の投与により早期に治癒させることのできた1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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