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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻12号

1987年11月発行

雑誌目次

特集 胆石症—最近の話題

胆石の分類と診断—その外科的意義

著者: 佐藤寿雄 ,   鈴木範美 ,   伊勢秀雄 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1751 - P.1759

 胆石症の病態を理解し,その診断・治療を円滑にすすめるためには,まず胆石を分類することに熟達することである.そのために各種胆石について解説を行い,画像診断による胆石の質的診断についてそのポイントを簡単に述べた.また,胆石の種類と胆嚢癌発生の相関関係は明らかではなかつたが,再発結石はほとんどがビ石であり,ビ石の場合は再発防止の対策が必要であることを強調した.

肝内結石症—各種治療法の問題点と現在の合意点

著者: 山本賢輔 ,   土屋涼一

ページ範囲:P.1761 - P.1768

 肝内結石症には外科手術,胆道内視鏡,胆石溶解剤の3種類の治療方法がある.従来より治療は手術を基本に行い,遺残胆石に胆道内視鏡や溶解療法で対処してきた.手術の中でも肝切除術は最も根治的な術式であるが,適応例が限られる.肝切除非適応例では手術的切石と胆管ドレナージ術が行われるが,遺残や再発に備えて術後の切石ルートを確保する方法が盛んになつてきた.内視鏡的切石術は単に術後療法としてではなく,内視鏡のみでの単独治療法も実施されている.溶解療法は未だ補助的療法であるが今後の研究がまたれる.肝内結石症の各治療法の利点と問題点を述べ,合意点を考察した.

遺残・再発胆石の対策—最近の進歩

著者: 竜崇正

ページ範囲:P.1769 - P.1775

 遺残・再発結石の治療は,今日内視鏡的治療が主体となつている.EPT ESTの方法および治療成績,また経皮経肝的截石術の方法など最近の進歩についてのべた.これらの内視鏡的治療は,レーザー,電気水圧,高周波電流,機械式など各種砕石法の進歩と共にさらに発展していくものと思われる.

合併症としての胆石症—その成因と治療上の問題点

著者: 谷村弘 ,   青木洋三 ,   植阪和修

ページ範囲:P.1777 - P.1784

 胆石のなかにはある種の疾患,病態を基盤として二次的に形成されるものがある,例えば遺伝性球状赤血球症(先天性溶血性貧血),胃切除後,肝硬変,心弁置換術後,小腸・大腸疾患術後に発生する.これらの胆石は無症状のことが多く,その保有率はもつと高いものと思われる.発生機序としては赤血球の破壊によるhyperbilirubinemia,胆嚢の機能障害,とりわけ収縮不全,あるいは胆汁酸の吸収不全によるものなどさまざまであるが,それぞれの病態をよく理解した上で,follow upの際に必ず胆道にも注意を向けることを忘れてはならない.

胆石溶解・破砕療法と外科

著者: 中山文夫

ページ範囲:P.1785 - P.1787

 1972年に,キノデオキシコール酸,1974年頃より,ウルソデオキシコール酸が経口的胆石溶解剤として導入され,最近になりmonooctanoin, methyl tertiary butyl etherによる直接胆石溶解療法が始められかなりの成果をあげて来た.しかし,これらの方法は真の意味の原因療法には程遠く胆石は除去されても胆石生成の原因は除去された訳ではないので胆石の再生成を来たす可能性は大きい.したがつて永久療法としては当分の問外科的療法に頼らざるを得ない.

胆石症の合併症—画像診断と治療方針

著者: 遠藤正章 ,   小野慶一 ,   山崎総一郎 ,   森田隆幸 ,   井上茂章 ,   鈴木英登士 ,   福島紀雅 ,   佐々木睦男

ページ範囲:P.1789 - P.1796

 胆石症の病態は複雑であり,また合併症も多岐にわたる.本稿では急性胆嚢炎,急性胆管炎,急性化膿性閉塞性胆管炎,穿孔性胆汁性腹膜炎,胆汁瘻,胆管狭窄,膵炎,癌合併など代表的な合併症について,その病態をふまえた診断,とくに超音波検査法など近年発達の著しい画像診断法や内視鏡による診断およびこれら検査法の治療への応用と意義を述べるとともに,合併症の治療方針についても言及した.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 胆道内視鏡シリーズ・2

術中胆道鏡

著者: 山川達郎 ,   三芳端

ページ範囲:P.1747 - P.1749

1 手技
 術中,総胆管切開孔より胆道ファイバースコープを挿人,胆管内を検索するものである.観察は,胆管の拡張と明瞭な視野を得る目的で,生理食塩水を50〜100cmの高さから滴下しながら行う.一般的には総胆管に2本の支持糸をかけ,その間を縦切開したのち,胆道ファイバースコープを挿入するが,観察中は,流出する胆汁,灌流液を最小限にくいとめるため支特糸を交叉牽引する(図1).また流れ出した液についてはこれを吸引器を用いて排除する.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson6 鼠径ヘルニア手術

著者: 小越章平

ページ範囲:P.1799 - P.1803

 ビギナーの3大手術,ヘモ,アッペ,ヘルニアのなかで一番むずかしいのはヘルニアでしょう。局所解剖の知識を完全に頭に入れておかないと何の手術も出来ないことは同じだが,とくにヘルニアは解剖の知識がしっかりしていないといけない。
 とにかく,自分で勉強したとおりのものが出てくるか,一つ一つを確認しながらやってごらん。

Spot

—外科の守護聖人—聖コーム(saint Côme)の1700年祭

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.1805 - P.1805

 古代ローマの時代に小アジアに,コーム(Côme)とダミアン(Damien)という兄弟がいた,キリスト教信仰と結びついた優れた医術をほどこし,しかも慈善の心に基づいてすべて無料で行つていた.
 まことに神秘的な医療で,目の見えない人に光を,耳の聞えない人には音を,麻痺した手足に運動を,狂人には正気を与えるという具合で,中世の聖人伝である「黄金伝説」に詳しく伝えられているが,科学的な記載は何も残されていない.

Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・6

遊離空腸移植を用いた下咽頭頸部食道癌手術

著者: 細川正夫 ,   田辺達三 ,   加藤紘之

ページ範囲:P.1807 - P.1811

はじめに
 近年,下咽頭頸部食道癌に対する手術が注目されてきているが,この領域の食道癌は隣接臓器へ浸潤転移をきたしている進行癌が多い.そのため,拡大合併切除が必要な場合が多く,食道再建法には慎重な配慮が必要である.
 本稿では遊離腸管移植を中心として,血管手術手技を応用した下咽頭頸部食道癌に対する拡大手術手技の実際を述べる.

綜説

肝門部胆管癌の集学的治療—肝門部胆管切除,腔内照射,特異的化学療法の提唱

著者: 小山研二 ,   田中淳一 ,   嘉藤茂 ,   浅沼義博

ページ範囲:P.1813 - P.1818

はじめに
 肝管癌,上部胆管癌を中心とする肝門部胆管癌に対する手術は,明らかな肝浸潤のない例には,従来,胆管切除兼胆管空腸吻合術が多く行われ,肉眼的には十分に切除されているにもかかわらず予後は著しく不良であつた1,2).著者らは,かつて肝門部胆管癌の予後規定因子について報告3)したが,癌腫の肉眼型では乳頭型,組織型では乳頭状腺癌が切除後2年以上生存する頻度が高いとの成績であつた.その理由は,それらの大部分には胆管周囲のリンパ管,静脈,神経周囲への癌侵入,いわゆる脈管侵襲がないか,または,ごく軽度にしか認められないためと思われた.これは脈管侵襲のみられる例に2年以上生存例が僅かであることからも明らかである.また,胆管切離端に癌の遺残があれば当然その予後は不良であるが、胆管壁粘膜に異常がなくとも胆管周囲の脈管侵襲が癌遺残の理由である場合が多かつた.肝門部胆管癌例の脈管侵襲は,60%〜70%と高頻度にみられ,非癌側肝内胆管周囲にも及んでいることが少なくないため,単なる胆管切除はもちろん,胆管とともに肝切除を行つてもそれのみで予後が飛躍的に改善されるものではない.この重要な予後規定因子である脈管侵襲と胆管切除断端癌遺残に対する適切,有効な補助療法が極めて重要で,それなしに肝門部胆管癌の予後を改善することは困難である.

Report From Overseas

上肢のBuerger病に対する自家遊離大網移植術

著者: 陳立章 ,   于徳昌 ,   劉人晨 ,   呉挺

ページ範囲:P.1821 - P.1825

はじめに
 Buerger病は中国においてはよくみられる疾患である.従来より治療が困難な疾患とされ、いまだ理想的な治療方法が確立されていない.近年,大網移植術がBu-erger病に対する1つの有効な治療法として報告されているが,その多くは下肢の場合で,上肢に対して適用した報告はほとんどみられないようである1-3).1982年よりわれわれは上肢のBuerger病に対して,顕微鏡下に自家遊離大網移植を4例に施行し,良好な成績をえた.ここにその手術方法や治療効果を中心に報告する.

臨床研究

高齢者膵頭十二指腸切除例の検討

著者: 萱原正都 ,   永川宅和 ,   上田順彦 ,   秋山高儀 ,   神野正博 ,   太田哲生 ,   上野桂一 ,   小西一朗 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1827 - P.1831

はじめに
 平均寿命の延長に伴い高齢者の膵胆道系悪性腫瘍手術症例に遭遇する機会が増加しつつある,膵胆道系悪性腫瘍に対する根治術としては(拡大)膵頭十二指腸切除術1)(以下PD)が行われることが多く,その手術侵襲は他の領域の手術術式に比べると過大といえる.最近では,術前術後管理の向上によりPDの適応範囲が広がりつつあるが,高齢者においては各種臓器の機能低下や手術侵襲に対する代償機能の減弱がみられ,高齢者のPD適応には慎重を要することが多い.
 そこで,今回教室で経験した膵胆道系悪性腫瘍PD症例を70歳以上の高齢者と70歳未満の非高齢者に分け,術前諸検査,術後合併症などを各々比較し,高齢者におけるPDの適応およびPD適応時の留意点について検討したので報告する.

腹壁瘢痕ヘルニアの臨床病態像と治療法について

著者: 金光泰石 ,   山本貞博 ,   小池明彦 ,   成瀬隆吉 ,   加藤健一 ,   小島卓 ,   鈴村和義 ,   松本幸三 ,   三枝純一

ページ範囲:P.1833 - P.1839

はじめに
 腹壁瘢痕ヘルニアは従来本邦では稀とされてきたが,最近本邦における著しい欧米化生活を始め,肥満傾向や高齢者に対する手術の増加により,その発生頻度が増加し,また治療に難渋する巨大瘢痕ヘルニアに遭遇する機会も多くなつてきた.
 本症に対する治療法は発生頻度の高い欧米において種種の根治術1-3)が考案されてきたが,その発生要因4)やヘルニア門の多彩性から,すべてを満足し得る画一的な手術術式はなく,その適切な治療法をめぐり種々の議論が展開されている.

食道再建後の吻合部縫合不全および狭窄への対策—とくに大胸筋皮弁による前壁再建について

著者: 平井敏弘 ,   三好雪久 ,   大田垣純 ,   山下芳典 ,   向田秀則 ,   峠哲哉 ,   新本稔 ,   服部孝雄 ,   宮本義洋

ページ範囲:P.1841 - P.1845

はじめに
 食道再建は,通常胃管が用いられているが,胃管作製法や吻合法にさまざまな工夫がなされ,吻合部の哆開したいわゆるmajor leakageも5%前後に減少したという報告が多い1-5).しかしながら,縫合不全,特にmajorieakageは,頸部における唾液の流出により.周囲の皮膚および皮下組織に炎症を生じ,疼痛,悪臭および経口摂取の遅延をきたし,患者にとつては極めて不愉快な合併症である.またわれわれは,下部食道噴門がんに対する食道再建も従来は頸部で6)最近では胸骨後の上方で行つている7).少数例とはいえ,やはり縫合不全および吻合部狭窄は軽視すべからざる合併症である.
 これらの縫合不全例あるいは吻合部狭窄例に対して,われわれは,吻合部の後壁は温存して.前壁のみを大胸筋皮弁で再建する方法を用い,良好な結果をえたので報告する.

外科医の工夫

心エコーと肺動脈造影による食道癌の深達度診断

著者: 松本英彦 ,   田辺元 ,   栗田光一 ,   小代正隆 ,   島津久明

ページ範囲:P.1847 - P.1850

はじめに
 食道癌はしばしば隣接他臓器に浸潤し,合併切除が困難であることが少なくない.そのため術前に浸潤程度を正確に把握することは合併切除の可否,手段を決定する上で重要となる.今回我々は,術前の心エコーと肺動脈造影により左心房への浸潤を疑い,手術および剖検にて確認した胸部食道癌の1症例を経験した.深達度の診断方法として,心エコーや肺動脈造影も症例によつては有用であると考えられたので,症例を提示してその所見を述べる.

臨床報告

糖尿病のみを主訴とした巨大な特発性膵仮性嚢胞の1例

著者: 吉田良 ,   滝口哲 ,   横畑和紀 ,   末吉一仁

ページ範囲:P.1851 - P.1854

はじめに
 膵仮性嚢胞はそのほとんどが,急性膵炎や慢性再発性膵炎後か,外傷後に発生しており,原因不明のいわゆる特発性膵仮性嚢胞は比較的稀である.今回我々は,この様な既往歴を認めず,糖尿病のみを主訴として全膵が嚢胞化していた特異な膵仮性嚢胞を経験したので報告する.

胃悪性リンパ腫と胃癌が相接して合併した1例

著者: 横田昌明 ,   松本賢治 ,   猪原則行 ,   長谷川時生 ,   山田公雄 ,   竹内広

ページ範囲:P.1855 - P.1858

はじめに
 胃癌と胃肉腫との同時性重複は比較的稀でその臨床報告例も少ない,今回我々はBorrmann 3型胃癌の診断の下に手術を施行し,切除標本の病理組織学的所見から悪性リンパ腫と腺癌が衝突像を呈して共存していた症例を経験したので報告する.

外傷性心外膜破裂の治療経験

著者: 仲野祐輔 ,   辻博治 ,   中村徹 ,   岡忠之 ,   田川泰 ,   川原克信 ,   綾部公愨 ,   富田正雄

ページ範囲:P.1859 - P.1862

はじめに
 非穿通性心臓外傷中,極めて稀な外傷性心外膜破裂を経験したので,文献的考察と本邦報告例を集計し報告する.

鈍的外傷による総胆管狭窄の1例

著者: 円谷彰 ,   中山治彦 ,   松村弘人 ,   波多野剛之 ,   浦野芳治 ,   大秋美治

ページ範囲:P.1863 - P.1866

はじめに
 良性の総胆管狭窄のうちでも,鈍的外傷によるものは極めて稀であり,悪性との鑑別が困難なことがある1,2)
 今回,ハンドル外傷により黄疸を来たし,手術を行つた症例を経験したので報告する.

原発性骨髄線維症に対して脾摘を施行した1治験例

著者: 千賀省始 ,   尾関豊 ,   日野晃紹 ,   林勝知 ,   鬼束惇義 ,   広瀬光男

ページ範囲:P.1867 - P.1870

はじめに
 原発性骨髄線維症に対して脾摘がひとつの治療手段として受け入れられるようになつたのは比較的最近のことであり,その適応についても議論のあるところである.今回われわれは巨脾を伴い内科的治療に抗し貧血症状を有する原発性骨髄線維症において脾摘が有効であつた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

術前副腎嚢胞の診断にて開腹した後腹膜神経鞘腫の1例

著者: 山口淳三 ,   松尾晃一 ,   天野力太 ,   平田正信 ,   池田高良 ,   樋上賀一

ページ範囲:P.1871 - P.1875

はじめに
 神経鞘腫は,末梢神経のSchwann細胞から発生する腫瘍で,身体の各部位とくに頭頸部および上肢に発生することが多く後腹膜腔に原発する神経鞘腫の報告は比較的まれである.最近我々は術前副腎嚢胞の診断にて開膜した後腹膜神経鞘腫の1例を経験したので報告する.

腰ヘルニアの1治験例

著者: 末永直 ,   小泉博義 ,   熊本吉一 ,   赤池信 ,   中村俊一郎

ページ範囲:P.1877 - P.1879

はじめに
 腰部には,上腰三角,下腰三角の2つの抵抗減弱部位があり,それぞれヘルニアを生ずる可能性があるが,非常にまれである,今回われわれは,外傷の既往のない,右上腰三角部に生じた,腰ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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