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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻2号

1987年02月発行

雑誌目次

特集 外科医が使える形成外科手技

皮膚縫合のコツ

著者: 添田周吾

ページ範囲:P.147 - P.158

 皮膚縫合は手術の仕上げの操作であり,患者の体表に一生を通じて残る瘢痕の良否を左右する操作である.縫合瘢痕の術後の目立ち方,きれいさは創の部位,方向,患者の年齢体質などの条件に支配されるが,手術操作も大切な因子である.
 繊細な器具と針糸,愛護的な操作。真皮縫合による創縁にかかる張力の減少などは,きれいな瘢痕を得るための基本的条件である.これらの操作を日常われわれが行つている手技を中心として詳述した.また甲状腺手術のさいの瘢痕についても述べ,この場合の真皮縫合については他部位と異なり,多数の真皮縫合は行わず,創縁もあまり持ち上げて縫合しない方が良いことを述べた.

遊離植皮のコツ

著者: 岡田忠彦

ページ範囲:P.159 - P.166

 遊離植皮術の種類と適応および各々の手技上の注意点につき述べ,併せて日常診療でしばしばみられる壊死創,肉芽創に対する植皮を用いた簡便な閉鎖法を紹介した.
 植皮術は皮膚欠損創を閉鎖するのに欠かせない基本的手技である.しかし,適応を誤ると単に新しい傷を作つたにすぎない結果に終つてしまうので,植皮術を行う前に使用目的を明確にし,それに合つた適切な植皮を選択し実施することが大切である.

有茎皮弁づくりのコツ

著者: 中島龍夫 ,   加藤一 ,   榊原章洋

ページ範囲:P.167 - P.175

 有茎皮弁づくりの要点は,皮弁の安全生着のみにとらわれるのではなく,整容面,機能面から納得のゆく結果を得ることにある,そのため皮弁挙上の際のコツとして大事なのは,皮弁の茎として温存する組織の量と皮下剥離の程度および剥離する層であろう.また皮弁の移動に際して生ずる組織の緊張を血行を障害することなく,いかに軽減するか,dog earをどのように修正するか(逆にいかに活用するか)なども重要なポイントとなる,本稿では有茎皮弁として代表的なLimberg flap, subcutaneous pedicle flap,delto-pectoral flapに焦点をしぼり,皮弁のデザイン上の要点,および皮弁を挙上する際の剥離の層,皮弁の茎の温存のしかた,整容面への留意点につき検討を加える.

筋皮弁づくりのコツ

著者: 梁井皎

ページ範囲:P.177 - P.184

 最近では.一般外科領域においても乳癌術後の変形,放射線潰瘍などの各種軟部組織欠損にたいして,筋皮弁を用いた手術が広く行われている.
 今回は.筋皮弁手術の適応についての記述は省き、一般外科医にとつて必要と思われる,筋皮弁づくりのコツについて述べる.
 筋皮弁手術のポイントは,1)筋皮弁の適切な選択,2)筋皮弁の適切な作図,3)筋皮弁挙上の際の手技的な問題,4)筋皮弁の移動,固定の際の諸配慮,5)適切な術後管理,などにあるように思われる.

手技応用の実際—顔面軟部組織損傷の修復

著者: 佐野進 ,   田嶋定夫

ページ範囲:P.185 - P.198

 顔面軟部組織損傷の修復には何らかのかたちの植皮術が必要であるが,植皮術は大きくわけて遊離植皮術,遠隔皮弁および局所皮弁に分類される,術後の結果は局所皮弁が圧倒的に他の術式よりも優れているが,局所皮弁はさらに伸展皮弁,回転皮弁,横転皮弁および島状皮弁に分類される.
 本稿では,できるだけ多くの手術作図例を示しながら,皮膚欠損の部位や大きさなどに応じて,術式を選択する方針について述べる.

手技応用の実際—下咽頭頸部食道再建術

著者: 田井良明

ページ範囲:P.199 - P.204

 下咽頭頸部食道の再建は,機能的目的が唾液と経口摂取物の通路であること,および消化管を有茎で用いるには距離的に遠すぎることから,皮弁を用いる方法が古くから用いられてきた.近年,皮弁に関する血行形態と血行動態の基礎的研究が進み,安定した良好な血行を有する新しい皮弁の開発が再建法の著しい進歩をもたらした.皮弁を用いる再建法は手術侵襲が少なく,最も普遍的な方法である.一次的再建には胸部アーケード皮弁を用いる方法,二次的再建にはdeltopectoral flapを用いる方法が優れており,適応の広い術式である.これら二つの術式の要点について述べる.

手技応用の実際—乳房と胸壁

著者: 坂東正士

ページ範囲:P.205 - P.214

 乳癌手術やその後の変形,放射線潰瘍の治療に有効と思われる遊離植皮術および筋皮弁移植術について,著者らが行つている手技を紹介した.遊離植皮術では分層植皮がよい場合が多く,皮膚の保存,delayed skingraftも考慮されるべきである.乳癌手術後の乳房再建や胸壁の潰瘍,欠損には各種の筋皮弁(広背筋,腹直筋,大胸筋)が適している.これら手技は特殊ではなく,簡明平易であるので,きわめて有効と考えられる.

手技応用の実際—下腹・鼠径・会陰部

著者: 丸山優

ページ範囲:P.215 - P.224

 下腹—会陰部の再建で最も難しいのは修復側の状態と再建手技の選択のバランスであり,症例に応じた再建法を選択すべきである.本領域では比較的多くの皮弁が利用できるため選択の幅が広いともいえるが,主として使用頻度の高い薄筋,大腿筋膜張筋,腹直筋などの筋皮弁の手術手技を中心に,また近年,形成外科領域で使用比重の高い筋膜皮弁についても併せて述べた.本領域では皮弁による再建適応が極めて高い.

手技応用の実際—褥瘡

著者: 湊祐廣 ,   奈良卓 ,   青山和義

ページ範囲:P.225 - P.233

 近年形成外科領域において皮弁,筋皮弁による再建の進歩は著しく,これを応用した褥瘡の外科的修復も従来では考えられなかつた手術効果をあげている.
 仙骨部,座骨部,大転子部褥瘡に利用される代表的なhamstring筋群筋皮弁,大腿筋膜張筋筋皮弁,transverse lumbosacral back flap法の特徴と手術手技の要点および術式の選択と適応について述べた.

カラーグラフ 乳腺疾患の外科病理・2

乳癌類似良性乳腺疾患:Microglandular adenosis

著者: 山科元章

ページ範囲:P.142 - P.143

 乳腺の腫瘤病変の病理診断には,従来から乳頭腫,乳頭腺腫症,硬化腺症など,しばしば乳癌との鑑別診断に問題をきたす病変が知られている.Mi-croglandular adenosis(以下MGA)は,これらの癌類似良性病変に比べて,日常みられることはより少なく,これまで成書にもほとんどその記載がない.しかし,本症の組織像は乳癌と極似しており,今後とも十分に注意が払われていかねばならない.ここに典型的なMGAの1例を呈示する.

文献抄録

バレット食道の腺癌発生のリスク

著者: 山科元章

ページ範囲:P.235 - P.235

 米国の食道癌発生率は,ミネソタの統計を例にとると,人口10万人に対し男性8.5,女性2.3の数値が報告されている.この食道に発生する癌のほとんどは組織学的に扁平上皮癌であるが,近年約20%を腺癌が占めるようになつてきたと言われている.さて,バレット食道と呼ばれる,食道の上皮が円柱上皮で置き替えられた部分は,食道腺癌の発生母地になるものと従来から考えられている.バレット食道とは,1950年にN.Barrettが命名したもので,顕著な逆流性食道炎の結果,正常の食道扁平上皮が破壊され,胃酸に抵抗力のある円柱上皮に置き替えられた後天性の病変である.これまで食道腺癌とパレット食道の関係が文献上でも論じられているが,両者の合併頻度あるいは癌発生の危険率については,報告によりかなりの数値のバラツキが認められる.この点に関して,Mayo Clinicで1979年までのバレット食道を有すると診断された122例が追跡検討された.この報告で,バレット食道の定義は,円柱上皮に置き替えられたと組織学的に確認できる病変部が,内視鏡的に胃噴門より7cm以上離れ,門歯から32cm以内の食道にあることが証明できる例としている.122例中18例に,バレット食道診断時に食道原発腺癌の共存が認められていた.
 さて,残る104例は診断時,平均年齢59.6歳で70例の男性を含んでいた.その多くが,食道中部の狭窄感・嚥下困難・胸やけを訴えていた.

臨床研究

血液透析患者の重複癌

著者: 船木治雄 ,   磯本徹 ,   大田早苗 ,   広瀬脩二 ,   保坂茂 ,   須藤睦雄 ,   遠藤純子

ページ範囲:P.239 - P.244

はじめに
 重複癌に関する論文は,いままでに実に数多くみられる,論文によつてその対象が臨床例であつたり,剖検例であつたりいろいろであるが,統計的なものをテーマにしたものが多く,重複癌発生の原因を主題にした論文は少ない.
 われわれが経験した24例の重複癌患者の中に3例の血液透析患者が含まれており,この3例は血液透析中癌に罹患して手術した患者9例の中の3例で,その割合は33%となる.一般に癌手術患者の中での重複癌の占める割合は3%前後とされているので,血液透析中の担癌患者における重複癌の頻度は,一般の人に比べて約10倍の高頻度ということになる.

臨床報告

35年経過した外傷性腋窩動静脈瘻

著者: 田村進 ,   小山信弥 ,   伊東信行 ,   吉原克則 ,   徳弘圭一 ,   小松寿

ページ範囲:P.245 - P.248

はじめに
 外傷性動静脈瘻は通常,爆創や刺創などにより動脈および近位の静脈を損傷した場合発生し,この短絡路を通つて動脈血が直接静脈内に流入するため,そのshunt量によつては,循環動態に及ぼす影響は少なくないと思われる1).本邦においては治安上このような穿通性外傷が少なく,とくに受傷後長期間経過した症例はごく稀である.
 今回われわれは,35年経過した外傷性動静脈瘻を経験したので若干の考察を加え報告する.

術後6年以上生存し続けているCholangiocellular carcinomaの1手術症例—日本における最長生存例

著者: 船木治雄 ,   広瀬脩二 ,   大田早苗 ,   磯本徹 ,   保坂茂

ページ範囲:P.249 - P.253

はじめに
 肝の原発性悪性腫瘍に対して,近年盛んに肝切除術が行われるようになり,hepatocellular carcinomaに対する肝切除の成績では,かなり著しい改善がみられている.しかしcholangiocellular carcinomaに対する肝切除の成績は極めてわるく,Rockwell2)の左外側区域切除後7年の生存という報告が最長生存の記録であり,日本ではKawarada6)の右3区域切除後4年1ヵ月生存という報告があるのみで,主だ5年を越えた生存例の報告はみられていない.
 われわれはcholangiocellular carcinomaに対して左外側区域切除のあと6年8ヵ月を経過して未だに全く再発の徴候なく健在である症例を経験したのでここに報告する.

狭窄型虚血性大腸炎の1治験例

著者: 八木実 ,   高橋修一 ,   田崎哲也 ,   味岡洋一 ,   畠山勝義

ページ範囲:P.255 - P.259

はじめに
 虚血性大腸炎は,近年わが国でも国民年齢層の高齢化に伴い増加すると考えられる疾患であり,報告例の増加により,臨床的.X線学的・内視鏡的・病理学的知見も明らかとなつてきた.しかし,本疾患は,腸管の虚血の期間や程度,病因等により様々に異なつた病態を呈すると考えられ,一過性で経過観察のみで終わる症例も多い.そのため外科的適応となる症例は少ない.今回,われわれは腸閉塞症状をきたし,全周性に潰瘍の形成を認めた稀な狭窄型虚血性大腸炎の1症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

主膵管全域に嚢胞状拡張を示したいわゆる粘液産生膵癌に対する膵全摘の1例

著者: 山碕芳生 ,   五嶋博道 ,   苔原登 ,   酒井秀精 ,   太田正澄 ,   草川雅之 ,   山本宣一

ページ範囲:P.261 - P.265

はじめに
 いわゆる「粘液産生膵癌」は,産生された多量の粘液が膵管内に充満して,特有の内視鏡像・膵管造影像を示すことが大橋ら1)によつて報告されて以来,本邦において22例が集計されている2)
 われわれは膵頭体部から尾部におよぶ腫瘤を形成し,特徴的な乳頭内視鏡所見と膵管造影像を呈した、いわゆる粘液産生膵癌の1例に膵全摘を施行し良好な経過をえているので若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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