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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻3号

1987年03月発行

雑誌目次

特集 消化管のEmergency—穿孔・破裂

消化管穿孔—診断手技の基本と最近の進歩

著者: 島津久明 ,   吉中平次

ページ範囲:P.283 - P.289

 消化管の穿孔ないし破裂の原因にもいろいろなものが含まれ,その後に生ずる病態は当然のことながらその原因や発生状況によつて異なる.発生後の経過時間も病像をさまざまに修飾する.診断に際しては,これらの点を十分に念頭におく必要がある.診断の実際では,従来からの問診,理学的所見および簡単に実施可能な一般検査所見が基本になり,これらの重要性は現在も変りがないが,最近,超音波検査やCTなどの新しい画像診断法の導入が診断精度の向上に大きく貢献するようになつている.

穿孔性腹膜炎と細菌性ショック

著者: 玉熊正悦 ,   望月英隆 ,   長谷和生 ,   横山茂

ページ範囲:P.291 - P.297

 上部消化管穿孔では最初hypovolemiaと化学的刺激が,そして晩期はそれに細菌性因子が加わつてショックを招くが,下部腸管穿孔では最初から細菌性因子が前面に出る糞便性腹膜炎を呈して一層高率にショックを合併する.近年相対的に下部腸管穿孔は増加しているが,その実態,腹膜炎による細菌性ショックの機序とその全身管理,主なショック対策やMOFの予防と治療などをまとめた.

外傷性消化管破裂

著者: 北野光秀 ,   山本修三 ,   茂木正寿 ,   吉井宏 ,   内田智夫 ,   大友康裕 ,   宮加谷靖介 ,   早川邦弘 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.299 - P.305

 外傷性胃破裂では胃後壁の損傷および合併する膵損傷の有無を検索する.十二指腸後腹膜破裂の診断でガストログラフィンによる十二指腸造影は有用で,術式としては,縫合すると狭窄をきたすような症例には空腸漿膜パッチ法,組織挫滅の強いfull sto-mach症例や膵損傷を合併する症例には空置的胃切除術を施行する.意識障害のある時の消化管破裂の診断は注意を要する.大腸破裂の術式は一次的修復を含め,症例に応じた手技を選択すべきであり,膵損傷を合併する時は修復部が膵液の影響を受けないような工夫が必要である.

消化管穿孔の対策—食道のInstrumental perforation

著者: 小野澤君夫 ,   鍋谷欣市

ページ範囲:P.309 - P.312

 食道のInstrumental perforationの発生部位は,頸部と胸部下部に多い.頸部皮下気腫・縦隔気腫・水気胸から,食道周囲炎・縦隔洞炎・膿胸へと進展する.
 診断には,臨床症状に加えて,頸部・胸部・腹部の単純X線撮影が重要である.皮下気腫・縦隔気腫・縦隔陰影拡大・腹腔内遊離ガスなどの所見がみられる.
 禁食・中心静脈栄養・抗生物質投与などの保存的治療に加え,頸部からの縦隔ドレナージ・胸腔ドレナージ・穿孔部縫合などの手術的治療を早期に行うのがよい.

消化管穿孔の対策—十二指腸潰瘍穿孔

著者: 鈴木忠

ページ範囲:P.315 - P.323

 十二指腸潰瘍穿孔は,突発的発症と強い腹部症状により,容易に疑診できるものである.さらに.X線検査や内視鏡検査等の日常的な手段により,確診も因難なことではない.
 一方治療についてみると,国際的には実に多様に考えられており,死亡率も国により大きく相違している.これに対し,わが国ではいずれの施設でも大変に良い成績をあげており,今や議論の中心は,致命率ではなく,術後合併症や潰瘍再発等の点に移つている.
 以上の観点より,本稿では今さらながらの基本的事項ははぶき,本症を主題にとり上げた第8回世界消化器外科学会の報告,及び最近のわが国学会での報告等を踏まえて,最近の考え方と問題点の幾つかを述べた.
 さらに,本症は,発症状況と病像により2または3型に分類でき,それら各々の背景が異なることを述べ,治療方針も特定のものに一辺倒すべきでなく,症例ごとに,各々の背景に応じて決定すべきであることを強調した.

消化管穿孔の対策—胃癌穿孔

著者: 平山廉三 ,   仁瓶善郎 ,   浜田節雄 ,   井石秀明 ,   三島好雄

ページ範囲:P.325 - P.329

 胃癌穿孔の臨床病理的特徴を列記すると①50歳以上の男性に多い.②穿孔は胃中部,前壁に多い.③癌型肉眼分類は3型あるいは限局潰瘍型で一部が中間型や浸潤型を呈するINFβやγのものである.
 開腹時所見によつても胃癌穿孔の診断が困難な症例が多いため,胃穿孔では穿孔部辺縁や胃周囲リンパ節の術中迅速病理検査をルチーンに行つて正診率の向上につとめる.
 汎発性腹膜炎というhigh riskの緊急状況下にあるため,「手術侵襲」と「癌根治性」の間でバランスのとれた手術が要求されるが,治療の原則はあくまでその背景に存在する胃癌切除であり,極力胃切除につとめる.それが不可能なとき穿孔部閉鎖を行い全身状態の回復をまつて2期的胃切除を実施する.

消化管穿孔の対策—大腸癌穿孔

著者: 福島恒男 ,   大見良裕 ,   大木繁男 ,   土屋周二

ページ範囲:P.331 - P.334

 大腸癌穿孔の病態,対策を述べた.発生頻度は1〜7%前後で,直腸癌による穿孔が多い.これまでの成績をみると,手術死亡率は非常に高く,5年生存率は非常に低い.多くは腹膜炎を呈していたり,緊急手術が必要であり,またshock状態のものも多く,まずshock状態の改善をはかる.注腸や内視鏡検査による穿孔,術中穿孔なども起こり得る.丁寧な操作を行つて発生を予防し,術中穿孔は起こつても比較的予後は良好なので十分な切除,洗浄などを行い,癌を残さないように努める.

いわゆる特発性破裂の病態と治療—特発性食道破裂;本邦報告200例の集計から

著者: 貴島政邑

ページ範囲:P.335 - P.341

 特発性食道破裂は,嘔吐の後等に下部食道を好発部位として発生する重篤な急性疾患である.発生はまれで,本邦では1934年以来200例が報告され,その集計の結果は次の如くである.
 大多数が胸部あるいは上腹部の激しい疼痛をもつて,即時ないし数時間で発症し,多くは数時間以内で受診する.正しい診断は,嘔吐の後に疼痛という典型的な経過から,直ちに下されるか,あるいは胸水に気づき,その性状から導かれる.前者より後者の場合が多く,24時間以内正診率は50%に達しない.苦悶の要素は疼痛,肺虚脱および胸膜炎であり,対症療法ないし処置が急がれるが,中でも水気胸に対するドレナージが必要で,これを実施し,続いて外科的あるいは姑息的療法がとられる.治療成績は過去15年間は,両治療法とも70%以上の治癒率を達成している.しかし一定の大きさ以上の破裂創は姑息療法だけでは治癒しない.

いわゆる特発性破裂の病態と治療—特発性大腸破裂

著者: 黒島一直 ,   寺田宰 ,   愛甲孝 ,   島津久明

ページ範囲:P.343 - P.348

 特発性大腸破裂は稀な疾患である.そして定義上の混乱を防ぐため肉眼レベルでの広義のものと組織学的に裏付けられた狭義のものとに分けたほうが良い.発生機序・誘因に関しては糞便蓄積と腸管・腹腔内圧の関係が最も示唆される.その臨床像は高齢者に多く,部位別ではS状結腸の腸間膜付着部対側に最も多い.死亡率は30%であるが予後を左右するのはsepsisの存在であり,術前に白血球数が4,000/mm3以下の症例やshock合併例は要注意といえる.手術に関しては腹腔内汚染の軽いものは縫合閉鎖術などが行われるが,全身状態が悪く汚染が強度のものに対してはHartmann手術,exteriorizationが安全な術式といえる.

新生児,乳児の消化管穿孔

著者: 大沢義弘 ,   岩渕眞

ページ範囲:P.349 - P.354

 新生児消化管穿孔の代表的疾患は胃破裂であり,その予後は不良である.本症の成因には胃内圧の上昇因子の関与が明らかで,一部の症例では予防や予測が可能と推測される.
 早期診断,治療により治療成績の向上が期待されるが,発症から長時間経過した症例では敗血症やエンドトキシン血症に陥り今日でも救命が困難である.これに対し新生児では交換輸血が行われ効果を認める症例もあるが,今後,エンドトキシン血症例に対するより有効な治療法の開発が望まれる.

カラーグラフ 乳腺疾患の外科病理・3

早期の乳癌病変—クリンギング癌

著者: 山科元章

ページ範囲:P.280 - P.281

 Clinging carcinomaという乳癌の早期病変が,最近Azzopardiにより提唱された.早期乳癌という概念は臨床病理学的に未だ確立されていないが,この病変は拡張した乳腺管の腺上皮表層に異型細胞がへばりつく(cling-ing)ように増殖する特徴をもち,乳管内癌(intraductalcarcinoma)に準ずる病変と考えられる.今後,早期癌のひとつの組織表現型として,病理学的にも,臨床的にも注目されるべき診断名で,ここにその典型例を供覧する.

文献抄録

乳癌術後患者は大腸癌のリスクが高い

著者: 山高謙一 ,   小平進

ページ範囲:P.355 - P.355

 大腸癌のスクリーニングを効率的に実施する上で重要なことは,大腸癌リスクの高い集団を明らかにすることである.今回の研究では,大腸以外の癌患者の異時性大腸癌発生の頻度を調べてみた.方法はOur Lady ofMercy医療センターで1958年から1982年までの25年間に治療をうけた7,605人の腫瘍患者登録より得られた資料を用いた.多発癌の定義は1932年,WarrenとGatesが設定した基準に従い,診断時期から観察しえた期間をperson yearsに換算し,この他に年齢,性,部位別発生頻度をもとにした期待値と異時性(2次)癌の発生した数とを比較して,リスクファクターを決定した.
 結果は癌患者7,605例のうち206例(2.7%)に多発癌が発生し,部位では乳腺と大腸に多発癌の発生が多く,それぞれ4.6%,3.9%であつた.2次癌の発生部位では,大腸が39例(18.6%),乳腺が48例(22.8%)であつた.2次癌として大腸癌の発生をみた原発癌としては乳腺と大腸が多く,それぞれ1.01%,0.97%であつた.乳癌にひきつづき発生した2次癌を部位別にみると対側乳腺が50%(27/54),大腸が22%(12/54)と高かつた.一般人口に比べ乳癌術後にこれらの癌の発生するリスクは対側乳癌が2.1倍,大腸癌が2倍であり,乳癌患者が2次癌として対側乳腺に悪性腫瘍が発生する率と大腸癌が発生する率はほぼ同じであつた.

座談会

胆道手術のDo's & Dont's—胆摘から再建まで

著者: 原田昇 ,   佐々木睦男 ,   竜崇正 ,   宮川秀一 ,   高田忠敬

ページ範囲:P.359 - P.370

 胆道手術は,画像診断法の進歩とも相俟つて,第一線外科医が最も遭遇する機会の多い手術のひとつになつてきた.キャローの三角部に代表される解剖学的繁雑さと,より細かい手技が必要とされる肝管,胆管,門脈,血管等の処理は,それゆえに外科医の醍醐味と,その技量を問われる手術のひとつに数えられている.
 本座談会では,この領域の術者の立場あるいは前立ちの立場として豊富な経験をおもちの4先生に御参集いただき,各先生の工夫,その拠りどころを高田先生の御司会で臨場感あふれる形でひき出していただいた.
 Do's & Don'tとは,さしずめ,やるべきこと,やつてはならないこと,とでも解すべきか.
 手術場での討論を彷彿とさせるこの座談会が読者諸先生の明日からの臨床にお役に立てれば幸甚である.

連載 My Operation—私のノウ・ハウ

腰部交感神経節切除術

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.371 - P.376

適応と手術
 手足に虚血による安静時疼痛や栄養障害,難治性潰瘍のあるものが交感神経節切除術sympathetic ganglionectomy(単にsympathectomyとよぶことが多い)の適応となるが,血行再建時の補助手段として併施されることも少なくない.我が国における四肢動脈の慢性閉塞は欧米のそれに比して血行再建の適応となるものが少なく,次善の策として本法を行うことが多い.慢性動脈閉塞に対しては閉塞部付近の血管収縮を除去し,側副血行の血管緊張を解除することが目的で,閉塞性動脈硬化症 に比して 血管収縮の 要素の つよいBuerger病で効果がすぐれているようである.本法は皮膚血行を増大させるものであつて,四肢の安静時疼痛や難治性潰瘍などには有効であるが,筋血行増大作用は少ないので,間歇性跛行はこの手術のよい適応とはならない.
 禁忌は急速に進行する虚血性病変とpoor riskの症例であるが,閉塞部付近に側副血行となりうる小動脈がみられない症例にこの手術を行うと,末梢方で血管拡張がおこるのに,閉塞部で流入動脈の血流が増加しえないので虚血症状がかえつて悪化する.

臨床報告

腸間膜に発生した悪性間葉腫の1例

著者: 柴田信博 ,   野口貞夫 ,   玉井正光 ,   水嶋肇

ページ範囲:P.377 - P.380

はじめに
 腸間膜に原発する悪性間葉性腫瘍は,まれなものであり,また組織学的にもきわめて多種類のものが報告され1,2),その生物学的態度もさまざまである.
 初回手術時すでに腸間膜に転移を認めた腸間膜原発の悪性間葉腫に対し,数回にわたる腫瘤摘出術を施行し,初回手術から4年5ヵ月目に死亡した症例を経験した.悪性間葉腫自体が,非常にまれな腫瘍であり3,4),腸間膜原発のものは,本邦報告例にはみあたらない.また,この症例は,臨床経過および腫瘍の生物学的ふるまいからみて,非常に興味がもたれたので報告し,考察を加える.

大網動脈造影を施行しえた続発性大網捻転症の1例—画像診断を中心に

著者: 松本隆博 ,   住山正男 ,   深見博也 ,   奥田康一 ,   高橋隆一 ,   長島敦

ページ範囲:P.381 - P.384

はじめに
 大網捻転症は稀な疾患で,捻転した大網の壊死のために急性虫垂炎等の診断のもとに緊急手術の対象となり,大網切除にて治療される予後の良好な疾患である.今回我々は,大網の壊死を来さず術前にCT検査,腹部血管造影等の諸検査を施行し,予定手術にて治癒せしめた大網捻転症の1例を経験したので,本症の画像診断を中心に考察を加え報告する.

肝鎌状間膜の欠損による内ヘルニアの1治験例

著者: 館正弘 ,   藤田哲二 ,   庭野元孝 ,   牧野永城 ,   横山穣太郎 ,   大矢達男

ページ範囲:P.385 - P.388

はじめに
 内ヘルニアは頻度は稀であるが,しばしば短時間に腸管の絞扼壊死を起こすことが知られており腸閉塞の原因として忘れてはならない疾患である.
 最近われわれは肝鎌状間膜の欠損による極めて稀な内ヘルニアの1症例を経験した.われわれの調べたかぎり,本邦第1例目と考えられるので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Alpha-fetoprotein高値を示した肺腺癌の1切除例

著者: 辻博治 ,   仲野祐輔 ,   吉田隆一郎 ,   長谷川宏 ,   草野裕幸 ,   田川泰 ,   川原克信 ,   綾部公懿 ,   富田正雄

ページ範囲:P.389 - P.395

はじめに
 胎児蛋白の一種である血清alpha-fetoprotein(AFP)は,腫瘍マーカーとして広く評価され,ことに原発性肝細胞癌,yolk sac tumorで高値を示すことはよく知られている.一方,肺癌ではAFP高値を呈することは極めて稀である.今回,我々は術前AFPが高値を示し,手術後正常値に復した肺腺癌症例を経験したので紹介し,あわせて文献的考察を加えて報告する.

腸重積を呈した乳児若年性ポリープの1例

著者: 小幡和也 ,   大田政廣 ,   内山昌則 ,   島貫隆夫 ,   青山克彦 ,   鷲尾正彦

ページ範囲:P.397 - P.400

はじめに
 乳幼児期の腸重積症はそのほとんどが原因不明であり,先進部となる器質的疾患が認められるのは,松村ら1)の調査で3.5%と言われる.また若年性ポリープは結腸,直腸に発生するのがほとんどであり空腸に発生した例は稀である.
 今回,我々は腸重積を呈した乳児空腸若年性ポリープの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

外科医の工夫

経横隔膜的術中超音波検査—肝転移検索のための新しい手技

著者: 町淳二 ,   武田仁良 ,   山名秀明 ,   藤田博正 ,   磯辺真 ,   西村寛 ,   枝国信三 ,   黒肱敏彦 ,   山下裕一 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.401 - P.404

はじめに
 術中超音波検査(operative ultrasound,以下OUと略す)は,肝臓外科において不可欠の術中画像診断法としてその意義が認められている.開腹後に肝臓を直接走査することによつて,術前の画像診断や術中,視診触診では検出できない肝細胞癌やその娘結節・肝内転移巣や腫瘍栓を診断可能である1-4).また,OUは大腸癌等の悪性腫瘍の肝転移検索にも利用でき2,4,5),術前検査より高い転移巣検出能を有する6).これは,OUでは開腹して肝臓を直接走査できるため,体表からの走査よりもより高い周波数の装置を利用でき,より優れた解像力が得られるためである.
 このOUの長所は,従来は開腹中にのみ応用可能であつたが,著者らは,食道癌や肺癌等の胸部悪性腫瘍の肝転移検索のための新しい術中診断法として,開胸術中に実施できる経横隔膜的術中超音波検査(transdia-phragmatic operative ultrasound,以下TDOUと略す)を考案したので報告する.

新しい膵管チューブの開発と応用

著者: 加藤紘之 ,   阿部一九夫 ,   児嶋哲文 ,   田辺達三

ページ範囲:P.405 - P.409

はじめに
 膵頭十二指腸領域癌をはじめとして膵切除・再建を要する疾患は少なくない.膵癌,慢性膵炎など,膵管が著明に拡張し,しかも膵液排出量も多くない場合の再建はさして困難ではないが,中下部胆管癌など膵管の拡張がなく,膵液分泌量も多い,いわば非障害膵の再建は合併症発生の危険性が高く,膵液漏出がおこると重篤となることが多い.
 従来から種々の再建法が工夫提案されているが定まつたものはなく,術者の会得したコツといつたものに委ねられているのが現状である1-5).コツとして述べられている手技にもいくつかの共通点があるが,膵管チューブによる確実な膵液ドレナージが吻合の成否を決定する重要なポイントであることは論を待たない.従つて固定性に優れ,確実な膵管空腸吻合が可能なチューブの開発が望まれてきた.著者らは住友ベークライト社の協力を得て,新しい膵管チューブを開発し使用しているが有用性が高く,膵臓外科手術の進歩に寄与しうるものと考え,チューブの紹介とそれを応用した膵空腸吻合手技の実際を述べる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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