文献詳細
臨床研究
両側腎動脈狭窄に対する同時血行再建
著者: 上山武史1 富川正樹1 関雅博1 宮崎幹也1 明元克司1 山口敏之1
所属機関: 1富山医科薬科大学第1外科
ページ範囲:P.529 - P.534
文献概要
腎動脈閉塞症に対する血行再建手術は,腎虚血にもとづくレニン過剰分泌により生ずる高血圧の軽減を目的として発達してきたが,腎血流低下による腎機能不全の回復,悪化の防止にも有効なことが認められ1,2),機能保全のための血行再建も適応に加えられつつある3,4).
腎動脈閉塞は原因が線維筋異形成(FMD)であつても動脈硬化であつても4,5),本邦に多い 大動脈炎においても,両側性に生ずることが多く,この両側腎動脈狭窄では一側腎動脈狭窄で認められるjuxtaglomerular細胞虚血によるレニン分泌亢進は後面にかくれ,腎機能低下によるナトリウム貯留に由来する高血圧が前面に出るため,レニン値の測定や抗レニン剤テストによる血行再建可否の判定は必ずしも有効でなく,術後の効果予測も行い難い6).
また,腎臓は血流減少が持続すると容易に機能低下をきたすため,早急な診断と適切な時期での血行再建が腎不全を予防するため必要であり,とくに両側性では大切である.
われわれは1979年10月より1986年6月までに24例の腎動脈狭窄に対し,種々の血行再建を行つてきたが,このうちの6例に両側同時手術を行つた.その適応をいかに判断して手術を行つたかにつき検討したので報告する.
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