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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻5号

1987年05月発行

雑誌目次

特集 外科医のための超音波応用診断手技

超音波内視鏡診断のテクニック—食道・胃

著者: 吉中平次 ,   島津久明 ,   森藤秀美 ,   馬場政道 ,   中塩一昭 ,   渋江正

ページ範囲:P.569 - P.576

 現在,超音波内視鏡診断装置には電子リニアとラジアル走査があり,いずれも脱気水充満法とバルーン法が可能である.内視鏡としての機能はほぼ完全に備えている.したがつて手技や読影上大切なことは,常に超音波検査としての基本的な認識を念頭におくことである.高周波数の探触子を用いているだけに,焦点域が狭く,減衰も強い.癌の壁深達度・浸潤範囲・リンパ節転移診断,粘膜下腫瘍の診断など,食道・胃における超音波内視鏡の有用性は大きい.診断体系において正しい評価をえるために,個々の症例について十分に検討を加えていく必要がある.

超音波内視鏡診断のテクニック—結腸・直腸

著者: 小西文雄 ,   洲之内広紀 ,   武藤徹一郎

ページ範囲:P.577 - P.584

 上部消化管の病変に対して用いられて来た超音波内視鏡装置は,大腸においても,癌の深達度診断やリンパ節転移の診断を目的として用いられている.超音波内視鏡により大腸壁の層構造が描出され,精度の高い深達度診断が可能であり,治療方針の決定に有用である.しかし,現在市販されている装置では,S状結腸より口側への挿入が技術的に困難である.この点,今後,装置の改良がなされるべきである.

超音波内視鏡診断のテクニック—肝・胆・膵

著者: 山雄健次 ,   中澤三郎 ,   内藤靖夫 ,   木本英三 ,   森田敬一 ,   林芳樹

ページ範囲:P.585 - P.592

 肝臓,胆道,膵臓などの腹部諸臓器に対する超音波内視鏡検査(EndoscopicUltrasonography: EUS)に際して,装置の選択,内視鏡の準備,前処置,スコープの挿入法,走査手順などを具体的に解説した.とくに,EUSの十二指腸内でのスキャン,前庭部でのスキャン,胃体部でのスキャンなど各部位において,これら諸臓器が具体的にいかに描出されるかを示し,また各疾患の具体的なEUS所見を解説した.

超音波ガイド下のドレナージ

著者: 長島郁雄 ,   跡見裕 ,   森岡恭彦

ページ範囲:P.593 - P.601

 超音波ガイド下ドレナージの穿刺手技について,その操作過程が異なる経皮経肝胆道ドレナージと経皮膿瘍,嚢胞ドレナージに分けて概説した.それぞれ,読影のポイントや手技の実際について,注意点を併記しながら,具体的に症例を呈示し,解説した.

超音波映像下穿刺による消化器疾患の診断と治療—細径針を用いた組織生検と腫瘍内エタノール注入による肝細胞癌の治療について

著者: 江原正明 ,   大藤正雄 ,   木村邦夫 ,   税所宏光 ,   土屋幸浩

ページ範囲:P.603 - P.611

 細径針を用いた超音波映像下穿刺による組織生検および腫瘍内エタノール注入による肝細胞癌の治療について方法及び成績について述べた.組織生検は肝細胞癌の早期診断,とくに画像診断では限界がみられる再生結節との鑑別に不可欠であり,また,膵癌の診断では腫瘤形成型慢性膵炎との鑑別にきわめて有効である.エタノール注入療法は重篤な肝不全例を除く3cm径未満の肝細胞癌に対して適応となり,根治的効果が期待されることを示した.

術中超音波検査のテクニック—肝・胆道

著者: 伊藤徹 ,   小菅智男 ,   針原康 ,   窪田敬一 ,   照屋正則 ,   高見実 ,   三條健昌 ,   出月康夫 ,   登政和

ページ範囲:P.613 - P.619

 肝・胆道疾患に対する術中USの臨床的意義について検討した.肝切除に際しては,肝臓を透視しながら手術を進めることが可能となつた.系統的亜区域切除などの新しい切除術式の考案も,術中USを基盤としている.胆道疾患の手術に際しても,胆嚢癌・胆嚢ポリープの切除術式の決定には,術中USの所見が参考となる.肝内・総胆管結石では,結石の分布状況を術中に把握するのに有用である.

術中超音波検査のテクニック—膵臓

著者: 宮下正 ,   鈴木敞 ,   内田耕太郎 ,   戸部隆吉

ページ範囲:P.621 - P.629

 膵近傍の解剖は肝に比べればより平面的な分だけ膵周辺の脈管構造や主膵管・胆管などの走行を術中USで即座に把握可能である.insulinomaなど膵内分泌腫瘍をはじめ微小膵腫瘤性病変の局在診所には術中USは最も有用な術中検査法である.また膵炎手術の際の膵管切開・嚢胞切開など具体的な手術操作のガイドとして,また膵癌手術時における血管浸潤度判定や,膵切離線の決定などの客観的情報を得る手段として術中USは今後ますます普及することが期待される.

カラーグラフ 乳腺疾患の外科病理・5

乳腺原発平滑筋肉腫

著者: 山科元章

ページ範囲:P.565 - P.568

 乳腺に原発する肉腫のなかで,平滑筋肉腫は非常に稀で,これまでに17例が文献上に報告されているのみである.ここに,比較的小さな腫瘍として根治された平滑筋肉腫の1例をその臨床経過とともに供覧する.

文献抄録

病的肥満に対する胃分画手術後の体組成と食事摂取の変化

著者: 下山豊 ,   吉野肇一

ページ範囲:P.633 - P.633

 病的肥満は100ポンド(約45kg)以上の体重超過があり,薬物・食事および運動療法に抵抗性の状態である.病的肥満は糖尿病や高血圧などの合併症を引き起こすので,病的肥満に対して根治的ともいえる胃腸管手術療法が1950年代後半に始められた.当初行われた小腸バイパス手術は体重減少に関してはかなりの成果を収めたものの,腎結石,下痢,栄養吸収障害,栄養不良,肝障害などの障害を起こすため現在はほとんど行われていない.次に胃空腸吻合による胃バイパス手術が行われるようになつたが,これにも遠位の胃や十二指腸がバイパスされるために種々の吸収障害が認められ,その後胃分画手術(gastric partitioning)が行われるようになつた.
 Raymondらは13人の病的肥満患者に対して胃分画手術を施行し,術後3カ月,6カ月,1年の時点での体組成と食事摂取の変化を測定した.術前の患者の体重はいずれも標準体重の160〜250%であり,患者はすべてユタ大学病院に入院の上,1人の外科医に同一の手術を受けた.体組成に関しては,total-body γ-ray spectro-metryによる体内40Kのγ線量から脂肪以外の組織量を推定し,体重とこの値との差を脂肪組織量とした.食事摂取の記録はオハイオ州Nutrient Analysis Data Baseに基づいてコンピューター分析され,その中から蛋白質と熱量の摂取量を本研究に取り上げた.

クリニカル・カンファレンス

超音波診断法をどうするか—読影のpointとpitfall

著者: 秋本伸 ,   冨田周介 ,   福井洋 ,   跡見裕

ページ範囲:P.638 - P.656

 腹部外科においても超音波検査法の普及は著しく,first choiceの検査としてのみでなく,精査法としても活用されている.しかし超音波画像にみられるさまざまなartifactにまどわされたり,画像の示すものを正しく読影しえず誤診に至ることも少なくない.今回のカンファランスでは,肝・胆・膵疾患で,超音波画像が最も問題となる症例について,読影のしかたを中心に具体的に討論を進めたい.

臨床報告

著明な石灰沈着を伴つた胃癌の1例

著者: 平井隆 ,   渡辺寛 ,   福田甚三 ,   河村雄一 ,   池田庸子

ページ範囲:P.657 - P.660

はじめに
 甲状腺,乳腺,肺,腎,卵巣などの悪性腫瘍や,平滑筋腫,血管腫などの良性腫瘍に石灰化がみられることはしばしばあるが,胃癌における石灰沈着例はまれである.我々は,腹部単純X線写真で著明な石灰沈着を認める胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

閉鎖孔ヘルニアの4例—特に術前CT検査の有用性について

著者: 堀尾静 ,   佐久間温巳 ,   松崎正明 ,   赤座薫 ,   赤井秀実

ページ範囲:P.661 - P.664

はじめに
 閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患である1,2).しかし高齢者に好発するため,手術死亡率も21%と決して低くはない1).それは,本症の術前診断が難しく2),経過も比較的緩慢な症例が多いため,結果として手術のタイミングを失してしまうことに要因の一つがあると思われる.
 最近われわれは4例の閉鎖孔ヘルニアの嵌頓例を経験し,そのうちの2例にCT検査をしたところ,絞扼部の直接描出に成功し,確実な術前診断のもとに開腹しよい結果を得た.CT検査は,閉鎖孔ヘルニアの術前診断法として,絞扼部が直接描出でき,確実な開腹根拠となり,本症にとつて早期診断・早期治療につながる有用な診断法と思われるので報告する.

胃静脈瘤を伴つた遊走脾の1例

著者: 杉下岳夫 ,   小川伸郎 ,   浅木信一郎 ,   遠藤権三郎 ,   吉田悟 ,   宮本一行

ページ範囲:P.665 - P.668

はじめに
 遊走脾はまれな疾患であり,われわれが文献上検索しえた限りでは本邦報告46例,外国報告約200例である.そのうち胃静脈瘤を伴つた例は,本邦2例,欧米2例のみである.
 最近われわれは胃静脈瘤を伴つた遊走脾の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

von Recklinghausen病に合併した小腸平滑筋肉腫の1例

著者: 林勝知 ,   千賀省始 ,   日野晃紹 ,   鬼束惇義 ,   広瀬光男 ,   白井直樹

ページ範囲:P.669 - P.672

はじめに
 von Recklinghausen病(以下本疾患)は皮膚および末梢神経に発生する神経線維腫,Café au lait spotsと呼ばれる特有な色素斑,骨変化,眼変化,精神症状など多彩な症候を呈する遺伝性疾患であるが1),本症に小腸平滑筋肉腫を合併する例はきわめて稀である.われわれは最近,本疾患に合併した小腸平滑筋肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

弾性線維腫の2症例

著者: 石崎陽一 ,   白川元昭 ,   大橋一雅 ,   国土典宏 ,   河口剛 ,   小西敏郎 ,   多田祐輔 ,   出月康夫

ページ範囲:P.673 - P.676

はじめに
 弾性線維腫は 稀な 軟部組織腫瘍で,1959年Jarvi &Saxenにより初めて報告されて以来1),現在までに海外例を含め292例が報告されている.本腫瘍は本邦では沖繩地方に好発し,長嶺らによれば1981年11月現在で全症例の70%を占める201例の報告があり2),関東地方での発生は極めて稀である.今回我々は弾性線維腫の2症例を経験したので報告する.

後腹膜に発生したCastlemanリンパ腫の1例—本邦報告205例の検討

著者: 村上義昭 ,   布袋裕士 ,   津村裕昭 ,   河毛伸夫 ,   中井志郎 ,   角重信 ,   増田哲彦 ,   小浜幸俊 ,   梶原博毅

ページ範囲:P.677 - P.683

はじめに
 いわゆるCastlemanリンパ腫(以下本疾患と略す)は,1954年にCastlemanら1)が,胸腺腫類似の縦隔腫瘍を,hyperplasia of mediastinal lymph nodesとして発表して以来,欧米では,縦隔を主発生部位として,多くの症例が報告されている2).しかし,本疾患の名称・分類・本態については,今なお,不明の部分が多い.今回われわれは,比較的まれな 後腹膜原発のCastlemanリンパ腫の1例を経験したので,われわれが渉猟しえた本邦における205例のCastlemanリンパ腫症例の統計的検討とあわせて,Castlemanリンパ腫の本態を中心に,文献的考察を加え報告する.

Solid and cystic acinar cell tumorと類似した膵腺腫の1例

著者: 島川武 ,   菊池友允 ,   中島久元 ,   小川健治 ,   榊原宣 ,   藤林真理子

ページ範囲:P.685 - P.687

はじめに
 膵の外分泌性腫瘍は,一般には高齢者に好発し,腺房細胞由来のものは極めて少ないとされる1,2),われわれは,比較的若年の婦人に発生し,Klöppelら1)のsolidand cystic acinar cell tumorに類似した極めてまれな症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

大動脈・大腿動脈バイパス術後7年目に発生した大動脈・十二指腸瘻の1例

著者: 宮井芳明 ,   徳永敬 ,   三宅敬二郎 ,   清水康広 ,   内田發三 ,   寺本滋

ページ範囲:P.689 - P.693

はじめに
 人工血管移植後に生ずる大動脈腸管瘻(aortoentericfistula,以下AEFと略)は比較的稀な合併症であり,その診断,治療は必ずしも容易でない.最近欧米ではAEFの報告例が増加し,消化管出血の鑑別診断上重要な病態として知られているが,本邦ではこの疾患に対する認識は未だ十分とはいえない現状である.
 我々は,右下肢閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosisobliterans,以下ASOと略す)に対する大動脈—大腿動脈(aortofemoral,以下A0-Fと略す)バイパス術7年後に発生した大動脈・十二指腸瘻(aortoduodenal fistu-la,以下ADFと略す)を経験したのでその概要を報告し,若干の文献的考察を試みる.

外科医の工夫

PTCDカテーテルの自然逸脱防止に対する一試策

著者: 久保正二 ,   酒井克治 ,   木下博明 ,   広橋一裕 ,   鄭徳豪

ページ範囲:P.695 - P.697

はじめに
 近年,経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)は閉塞性黄疸症例の減黄処置として,また胆管炎症例の減圧処置として広く行われている.特に超音波誘導下穿刺術の導入によりその合併症が減少し,PTCDが比較的安全に施行できるようになつた.しかしPTCDに伴う合併症は皆無ではなく,当教室で施行されたPTCD 265例中38例に何らかの合併症が発生している1).そのうちカテーテルの自然逸脱は胆汁性腹膜炎などの重篤な合併症を来たす危惧があり,PTCDカテーテルの管理上回避すべき合併症である.最近,我々はPTCDそのものを容易に施行しえたが,術後にカテーテルの自然逸脱を繰り返した症例に対し,catheter sheath(以下,シース)を用いて良好な結果が得られたのでその手技について報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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