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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻6号

1987年05月発行

雑誌目次

特集 [施設別]悪性腫瘍治療方針のプロトコール

食道癌治療のプロトコール—千葉大学医学部第2外科

著者: 磯野可一 ,   小野田昌一

ページ範囲:P.703 - P.713

はじめに
 1932年第33回日本外科学会総会において,千葉大学第2外科瀬尾貞信教授は宿題報告「食道外科1)」を報告した.以来,教室では困難な食道癌治療に取り組んできた.
 瀬尾教授のあとを継いだ中山恒明教授は独創的なアイデアと卓越した技術で食道癌手術を安全なものとし2,3),更に遠隔成績の向上を目的とした術前照射4)を開始した.

食道癌治療のプロトコール—久留米大学医学部第1外科

著者: 掛川暉夫 ,   藤田博正 ,   山名秀明

ページ範囲:P.715 - P.724

はじめに
 当教室で治療の対象となる食道癌の大半は進行癌であり,その治療成績は満足すべきものでなく,治療法その他で改善すべき余地はまだ大きいと考えられる.教室では1985年(昭和60年)より,治療方針,手術術式などを多少変更し,その治療成績を検討中である,現在,この方針の是非を論ずるまでに至つていないが,ここでその内容を紹介し,ご批判を仰ぎたい.

食道癌治療のプロトコール—東北大学医学部第2外科

著者: 森昌造 ,   西平哲郎 ,   標葉隆三郎

ページ範囲:P.725 - P.732

はじめに
 食道癌は他の消化器癌に比して,進行癌が多く,われわれの施設でもstage O 4.3%,stage Ⅰ 10.2%stage Ⅱ 7.9%,stage Ⅲ 49.5%,stage Ⅳ 28.1%とstage Ⅲ, Ⅳがほとんどである.また,食道癌は高齢者が多く,その手術手技が,頸部,胸部,腹部におよび,多大な手術侵襲が加わることから,食道癌の手術適応,手術手技,術前術後の合併療法の選択は重要である1-4).以下に,われわれの食道癌の治療方針の概要を将来の展望も含めて述べることにする.

食道癌治療のプロトコール—杏林大学医学部第2外科

著者: 本島悌司 ,   鍋谷欣市

ページ範囲:P.733 - P.740

はじめに
 食道癌治療には外科治療,放射線治療および免疫化学治療などがあり,それぞれが単独に用いられるというよりも,多くの場合は外科的手術治療を中心にして放射線および免疫化学療法を術前,術中,術後に合併した集学的治療が行われている.
 杏林大学第2外科1,2)でも,基本的に外科的手術治療を中心にした食道癌治療を行つており,今回,術前,術中,術後に分けて食道癌治療のプロトコールを述べる.

食道癌治療のプロトコール—岩手医科大学第1外科

著者: 石田薫 ,   村上弘治

ページ範囲:P.741 - P.749

はじめに
 食道癌の治療において早期発見,早期治療が遠隔成績の向上につながることはいうまでもないが,現状はいまだに進行癌を取り扱うことが多い.表1に1979年10月から1986年5月まで教室で経験した食道癌切除例の進行度別内訳を示したが,いずれの占居部位でもstageⅢ,Ⅳの進行癌が多く,全体の74.5%を占めている.しかも食道癌患者は他の消化器癌患者と比べ高齢者が多く各種臓器の機能的予備力が低下している症例がほとんどである.また食道癌は,食道が解剖学的に重要臓器と隣接しているため癌腫が進行すると容易にこれら臓器に浸潤するほか,頸部,胸部.腹部と3領域にまたがるリンパ行性転移や跳躍性転移を生じやすいという特徴がある.これら因子が重なつて食道癌治療を困難とさせているが,食道癌患者と接した場合,最初に要求されることは患者の全身状態と癌の進行度の正確な把握である.また治療に際しては現在 手術療法が第一選択であるが,術前後を通じての放射線療法,免疫化学療法,温熱療法などを組み合わせた癌の集学的治療を行うことが必要と考えている.本稿では,われわれの教室の食道癌治療の基本方針と,これまでの治療成績を述べて見たい.

食道癌治療のプロトコール—九州大学医学部第2外科

著者: 杉町圭蔵 ,   奥平恭之

ページ範囲:P.750 - P.757

はじめに
 胸部食道癌では手術時すでに高度の外膜浸潤やリンパ節転移を伴つた進行癌が多く,また手術時には術後の肺合併症との関係で手術の根治性にかなりの制約をうけており,外科治療のみで遠隔治療成績を向上させるには限界がある.そこでわれわれは食道癌に対する集学的治療方針を設定し,これに関する一連の研究を行い食道癌治療体系の確立を目指している.ここにわれわれが行つている術前,術中,術後の合併療法プロトコール(図)とその成績,さらに今後の食道癌治療への新しい展望をふまえた問題点などについて述べてみたい.

胃癌治療のプロトコール—大阪府立成人病センター外科

著者: 古河洋 ,   岩永剛 ,   平塚正弘

ページ範囲:P.758 - P.762

はじめに
 大阪府立成人病センター外科における胃癌治療の方針は,癌の進行度,特性に適した手術方法(手術範囲)と併用療法を選択することである.創設以来,手術法においては,十分な切除とR2以上の郭清が行われ,併用療法(とくに術後化療)は年代による変遷があるものの,積極的に行われてきた.手術後,患者の追跡調査を徹底して行い,遠隔成績を検討した結果,最近,私たちが行っている治療法について述べる.

胃癌治療のプロトコール—鳥取大学医学部第1外科

著者: 古賀成昌 ,   前田廸郎

ページ範囲:P.763 - P.768

はじめに
 近年,胃癌の外科治療成績向上は著しい.その要因として,早期癌症例の増加,進行癌症例に対する広範リンパ節郭清の普及,他臓器合併切除などによる根治性の向上,さらに制癌補助化学療法の進歩の関与などが指摘されよう.胃癌の予後はリンパ節転移と壁深達度に大きく左右されるが,今日でも,なお進行癌が6〜7割を占め,この中には高度の癌進展のため,姑息切除あるいは,切除不能の症例も決して少なくない.したがつて,その治療は癌の進行度,進展状況に対応してなされねばならない.本稿では,われわれの現在の治療方針を示し,それに至る背景と治療成績について述べる.

胃癌治療のプロトコール—広島大学原医研外科

著者: 新本稔 ,   服部孝雄

ページ範囲:P.769 - P.774

はじめに
 胃がんの術後補助免疫化学療法を,どのように行うかという問題に関しては,全国的な規模でrandomizedcontrolled trialが行われており,最も進んだ集学的治療の研究が行われている臓器の一つである.われわれの教室では早期胃がんを除く進行期胃がんのうち,原発巣の切除が可能であつた症例に対して,補助免疫化学療法のプロトコールを行つているのでそれについて述べる.

胃癌治療のプロトコール—京都府立医科大学第1外科

著者: 高橋俊雄 ,   山口俊晴

ページ範囲:P.775 - P.780

はじめに
 胃癌の治療成績は近年著しく向上し,胃癌の治療方針は確立されたかにみえる.しかし,大動脈周囲リンパ節郭清に関する検討1,2)やスキルス胃癌の研究3,4)など最近の新しい知見が加わるにつれ,なお,多くの問題が提起されつつある.胃癌治療にいま求められているのは,症例に応じたきめの細かい治療方針の確立であろう.本稿では教室で日常行つている胃癌治療のプロトコールを中心に述べてみたい.

胃癌治療のプロトコール—東京女子医科大学第二病院外科

著者: 榊原宣 ,   矢川裕一

ページ範囲:P.781 - P.787

はじめに
 近年,癌の集学的治療ということがいわれ,胃癌においても手術療法に各種の補助療法が試みられている.その一つとして免疫療法が注目されている.
 免疫療法は腫瘍免疫学の進歩に伴い脚光をあびてきた1,2).腫瘍免疫は主に細胞性免疫に関連し,担癌生体ではこの細胞性免疫能が低下していることがわかつた3).われわれもツベルクリン(以下PPDと略)およびPhy-tohemagglutinin(PHA)皮膚反応,末梢血リンパ球のT細胞比,T細胞数,PHA幼若化反応を用い,胃癌患者の細胞性免疫能が低下していること,さらに癌が進行するにしたがいその程度は高度になることを示した4)

大腸癌治療のプロトコール—近畿大学医学部第1外科

著者: 安富正幸 ,   進藤勝久 ,   松田泰次

ページ範囲:P.788 - P.794

はじめに
 陣内傳之助前教授が大阪大学在籍中に確立された大腸癌の拡大リンパ節郭清と肛門機能温存術式を中心に大腸癌治療に取り組んできた.その後,早期癌に対する局所切除,腸管吻合器の使用,骨盤内神経温存手術,さらには集学的治療を導入することによつて機能温存と癌根治という外科手術における矛盾を解決しようと努力している.他方,人工肛門保有者に対しては社会復帰へ向けてストーマ・ケアが細かく行われている.
 最近では術後の局所可発や肝転移や腹膜再発の対策として補助療法の開発につとめている.

大腸癌治療のプロトコール—新潟大学医学部第1外科

著者: 畠山勝義 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.795 - P.801

はじめに
 近年,本邦における大腸癌症例や大腸癌による死亡率は次第に増加しつつあるが,その原因の一つとして食生活の欧米化,すなわち,動物性脂肪の摂取量の増加が考えられている.その結果総胆汁酸の増加,嫌気性菌の増加を来し,遊離型1次胆汁酸や2次胆汁酸の増加が大腸粘膜における発癌過程にcarcinogenicに作用すると考えられている.しかし発癌因子はその他にも多種考えられてはいるが,大腸癌の発生頻度は今後も増加することが十分予想されている.一方,大腸癌の治療の主流は依然として外科的切除にあり,その術後成績の向上のため各種集学的治療が試みられているがcontrolled ran-domized studyでは悲観的成績しか得られていない1).また手術自体は癌の根治を目指すが,しかし根治を損なわないならばできるだけ機能温存をも目指す必要があるし,大腸癌の肝転移や直腸癌の局所再発など問題が多く残されているのが現状である.このような観点を踏まえた上での著者らの現時点での大腸癌治療のプロトコールを紹介したい.

大腸癌治療のプロトコール—東京大学医学部第1外科

著者: 森岡恭彦 ,   小西文雄 ,   武藤徹一郎

ページ範囲:P.802 - P.809

はじめに
 大腸癌の手術件数は,年々増加する傾向にある.また,大腸ファイバースコープ検査の普及に伴つて,進行癌のみでなく早期の大腸癌が発見されることが多くなつてきた.大腸癌においては,早期の癌と進行癌とで,その治療方針が異なる.また,近年,進行癌に対する治療のなかでも,直腸癌に対しては,前方切除などの括約筋温存術式を施行する症例の範囲が広がつてきた.本稿においては,東大第1外科における大腸癌の治療方針を,早期癌と,進行癌に分けて解説する.

大腸癌治療のプロトコール—国立がんセンター外科

著者: 北條慶一

ページ範囲:P.810 - P.819

はじめに
 大腸癌の患者も増加したが,その外科治療も著しく進歩したものと思われる.診断技術の進歩によるものも少なくないが,この10〜20年の間に大腸癌の術後5年生存率は40〜50%から60〜70%に上昇した.
 私どもの外科治療(方針)の歴史をふりかえつてみる.1969年頃より,直腸癌の術後局所再発が高頻度なので(30〜40%),拡大郭清とくに側方郭清の必要性を強調し,現在では下部直腸進行癌では拡大郭清が通常的手術となつた.さらに1972年頃より隣接他臓器進展例に対して他臓器合併切除ないし骨盤内臓全摘術の積極的な採用と,一方では下部直腸進行癌でも小さな限局性のものに対して肛門括約筋温存を企て現在では下部直腸癌でも50%余は肛門括約筋温存手術が施行されるようになつた.すなわち肛門括約筋温存手術を行つても肛門挙筋より腹側の上方,側方郭清は直腸切断術と同様に施行できるとした.

大腸癌治療のプロトコール—直腸癌治療を中心に—横浜市立大学医学部第2外科

著者: 土屋周二 ,   大木繁男 ,   大見良裕

ページ範囲:P.820 - P.829

はじめに
 近年癌についての遺伝子レベルでの基礎的研究が長足の進歩をとげ,また腫瘍免疫や化学療法についても多数の人々により膨大な研究が行われその成果があげられている.にもかかわらず大腸癌に対する最も確実で効果的な治療法は今なお手術による切除という原始的な方法である.その理由は大腸癌が分化型の腺癌が大部分であり,化学療法,腫瘍免疫療法,放射線療法などの補助化学療法の効果も比較的少ないことにもよる.さて日常大腸癌患者を発見し治療にあたつているわれわれ外科医が今回の主題である「大腸癌治療のプロトコール」を考える時,最も重要なことはどのような症例にどのような手術を選択するかということである.しかしその前に大腸癌の手術は最近急速に進歩して今もなお術式の改良や工夫が行われているので,まずその変遷のあとを考えてみたい.
 Miles1)が1908年腹会陰式直腸切断術を発表してこれが一般に行われるようになり,従来のperineal excis-ion, sacral excisionはほとんど行われなくなつた.欧米ではさらに進んで1950年代になつて直腸癌に対して側方リンパ節郭清が試みられ生存率の向上が得られたと報告された2,3)

肝臓癌治療のプロトコール—兵庫医科大学第1外科

著者: 山中若樹 ,   岡本英三

ページ範囲:P.830 - P.836

はじめに
 1986年8月末時点における当科での肝細胞癌(HCC)外科治療後の長期生存例からみると,手術死亡,他病死などすべてを含めても肝切除患者の4人に1人は3年以上,6人に1人は5年以上生存する段階に到達している.一方,姑息的治療法であるはずの肝動脈結紮(HAL),あるいはそれに肝切除を併施した症例においても少なくとも10人に1人は3年以上生存を果たしている.このような成績に到達するまでの過程で最も重要であつたことはHCCに対する適材適所の治療の選択である.
 消化器癌のなかで,HCCほど多彩な治療法の選択,あるいはその組み合わせ方の選択を強いられる疾患はない.それは,ひとつには高率に種々の程度の慢性肝疾患を合併するため消化管悪性腫瘍と異なり腫瘍進展範囲のみでは切除の範囲,可否を決定できぬ点,また,切除不能な場合においても肝動脈塞栓術(TAE)あるいはHALなどが予想外の延命効果をもたらす点2),などに起因する.

肝臓癌治療のプロトコール—三重大学医学部第1外科

著者: 水本龍二 ,   野口孝

ページ範囲:P.837 - P.849

はじめに
 US,CTを中心とする画像診断法の著しい進歩普及により原発性肝癌の発見される機会が増加しており,特に肝細胞癌では3cm以下の小肝癌が多数経験されるようになつてその予後が期待されている.また,肝内胆管癌もCA 19-9などの腫瘍マーカーの検索により発見される場合が少なくなく肝切除例も増加している.さらに嚢胞腺癌の報告例も増加しており,その特徴的な画像所見により症例が集積され,これをより詳細に分類することの必要性が論じられている.すなわち,これら原発性肝癌症例は近年著しく増加しており,本症の治療は極めて重要な課題となつている.
 原発性肝癌,特に肝細胞癌では肝硬変症や慢性肝炎を高率に合併しており,また肝内胆管癌でも閉塞性黄疸を合併するものが少なくなく,治療成績の向上のためには肝機能を中心とした手術危険度の判定と形態面からみた腫瘍進展度とに基づいた治療法の選択が必要であり,これに従つて積極的な治療法,すなわち根治的な肝切除を行うように努力がはらわれなければならない.一方,診断時すでに高度に進展している症例も少なくなく,種々の集学的治療法が工夫されているが,肝癌に対する化学療法はいまだ確立されたものはなく,肝切除後の補助化学療法はほとんど施行されていないのが現状である.そこでここでは教室における原発性肝癌治療のプロトコールを紹介し,その成績や管理と対策などについても述べる.

肝臓癌治療のプロトコール—京都大学医学部第2外科

著者: 山岡義生 ,   小澤和恵

ページ範囲:P.850 - P.856

はじめに
 京大第2外科では,最近2年1カ月に188例の肝切除を行つたが,肝癌は102例となる(表1).肝硬変は82%に合併しているが,表のごとく,63例(62%)に2区域以上の切除を行い,肝切除のみの術後1カ月以内の死亡は1例のみと好成績を得ている.これは,術前,術中,術後と一貫したredox理論に基づく管理を行うようになつたためである.そこで,今回のプロトコールの発表にあたつても,redox理論の指標となる血中ケトン体比(KBR)の重要性を述べてから,各論を詳述する.一方,成績を述べるにはまだ観察期間が短いので次回にゆずる.

肝臓癌治療のプロトコール—山梨医科大学第1外科

著者: 山本正之 ,   藤井秀樹 ,   菅原克彦

ページ範囲:P.857 - P.861

はじめに
 肝細胞癌治療は近年急速に進歩した,伝統ある他教室では諸先輩が脈々と築き上げてきた肝臓外科の伝統の下にその成果が開花してきたと思われる.当教室は人口80万人の小県に位置する新設医大であり,開院以来やつと3年を経過したにすぎず伝統の面からみれば他施設とは比べようもない.しかし,これまでに肝臓外科医の存在しなかつた地方都市の中心病院としての役割を認識したこれまで3年間の軌跡は今後同様な肝臓外科治療を目指す地方の教育病院においては参考となるであろう.

胆管癌治療のプロトコール—帝京大学医学部第1外科

著者: 高田忠敬 ,   安田秀喜 ,   四方淳一

ページ範囲:P.862 - P.867

はじめに
 胆管癌は消化器癌のなかでいまだに早期診断が困難な疾患であり,切除率も胃癌と比べればまだまだ低く,さらに化学療法や放射線療法などの集学的治療法もいまだ定まつていないのが現状である.本稿では我々が胆管癌に対して施行しているプロトコールを紹介するとともに胆管癌に対する化学療法,放射線療法,温熱療法などの集学的治療についても触れたい.

胆管癌治療のプロトコール—長崎大学医学部第2外科

著者: 土屋凉一 ,   松元定次

ページ範囲:P.868 - P.875

はじめに
 日本における胆道癌(胆嚢癌,胆管癌)の年次別発生頻度は徐々に増加傾向にあり,日本病理剖検輯報の年次別全剖検例数の統計において過去10年間に2%から3%に増加している.また,厚生省人口動態統計でみた胆道癌死亡数は1958年の胆道癌死亡数920人に対し1984年には8802人と9.6倍に増加を示していることなどは注目に値する1-2).胆道癌は肝癌・膵癌と同様に消化器癌の中で最も予後の悪い疾患であるが,これらの治療成績を向上させることが消化器外科を専攻する者に与えられた大いなる課題と言えよう.
 当教室ではこれまで胆道癌症例の術後成績を報告してきているが経年とともに切除率,遠隔成績の向上がみられてきている7,9-11).本稿では胆道癌のなかでも膨大部癌を除く肝外胆管癌いわゆる胆管癌について,長崎大学医学部外科学第2教室において過去17年間に経験した胆管癌手術症例118例を検討しながら教室の胆管癌治療のプロトコールを紹介する.

胆管癌治療のプロトコール—名古屋大学医学部第1外科

著者: 二村雄次 ,   塩野谷恵彦

ページ範囲:P.876 - P.882

はじめに
 教室では1975年以来胆道系疾患に対して経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)を導入し,さらに1977年以来経皮経肝胆道鏡検査(PTCS)1,2)を導入し,胆管癌の診断と治療に独自の診療体系を確立し,治療成績の向上をはかることができた.
 ここでは胆管癌症例に対する術前内視鏡検査の重要性すなわち癌の浸潤範囲の診断には消化管の内視鏡検査と同等の有用性があることを強調したい.また肝門部胆管癌に対してはPTCSにより各区域胆管枝への癌進展を正確に診断し,尾状葉切除を含めた肝区域切除の必要性について述べる.

胆管癌治療のプロトコール—秋田大学医学部第1外科

著者: 小山研二 ,   田中淳一

ページ範囲:P.883 - P.888

はじめに
 最近の超音波検査やCT検査などの診断技術の進歩普及が著しいにもかかわらず,胆管癌は未だ早期発見が困難であり,治療の対象となるほとんどの症例は黄疸を伴う進行例というのが現状である.従つて,外科手術による腫瘍の摘出とともに適切な補助療法も重要である.本稿では胆管癌の治療成績の現況を明らかにし,私どもの教室の胆管癌に対するstrategyとも言うべき治療方針プロトコールについて述べたい.

胆嚢癌治療のプロトコール—東京大学医学部第2外科

著者: 出月康夫 ,   伊藤徹

ページ範囲:P.889 - P.895

はじめに
 近年,診断技術の進歩に伴い胆嚢癌の治療成績も向上しつつある.しかしながら,黄疸の出現が胆嚢癌発見の契機となることも依然として多い.外科的治療に関しても,胆嚢癌の性状・進展度に応じて手術術式が検討されているものの,一定の見解はない.
 教室では,非切除症例および再発例で黄疸の出現した場合には,超音波PTBDを施行している.手術治療としては,術前のUS,CT,血管撮影,胆道造影などで病変の拡がりを判定し,それに応じて術式を変えている.通常は,リンパ節郭清を含む拡大胆摘術を標準術式として採用している1).また最近では,術中USをルーチンに施行し,病変の拡がりの程度を最終的にチェックしている.切除術後には,化学療法,免疫療法を施行している.胆嚢癌治療に際しては,症例ごとに,その進行度に応じたきめ細かなプロトコールが必要である.

胆嚢癌治療のプロトコール—浜松医療センター外科

著者: 内村正幸 ,   浦野健

ページ範囲:P.896 - P.902

はじめに
 ここ数年,超音波検査を主体とした画像診断の進歩と普及は胆嚢癌の診断を確実に一歩前進させている.しかし,その治療成績をみると,依然として胃癌や大腸癌など他の消化器癌に比較して不良である.それは胆嚢における疾患としての病変が比較的稀で症例の集積が十分でないこと,胆嚢の解剖学的特異性から,所属リンパ節や,肝,胆道,十二指腸などの隣接臓器への癌進展が早く,治癒切除例の蓄積が少ないことである.早期の胆嚢癌を肉眼的に調べてみると,画像診断でとらえ得る隆起型の症例は意外に少なく,診断困難な表面型が多い,現段階での画像診断が完全に到達し得ない原因がここにあると言える.一方,胆嚢癌の背景因子として,肌嚢結石のほかに胆道の形態異常が注目され,特に膵胆管合流異常を有する症例では胆嚢癌の合併が極めて高い,胆嚢癌の治療にあたつては,これらの背景因子も含めた総合プロトコールが必要である.

胆嚢癌治療のプロトコール—久留米大学医学部第2外科

著者: 中山和道 ,   横溝清司

ページ範囲:P.903 - P.907

はじめに
 胆嚢癌は,診断技術の著しい進歩による早期発見と,進行癌に対する拡大手術の導入により,切除率は向上したものの,未だ治療成績の悪い疾患の一つである.これは解剖学的特徴から胆嚢癌の進展が速やかでまた多様であることより1-3),十分な根治切除が困難なことが原因となつている.
 そこで本稿では教室の胆嚢癌症例の治療経験に基づき,特に切除例の進展様式,手術術式ならびに治療成績について検討し,胆嚢癌根治術のあり方,今後の問題について述べる.

胆嚢癌治療のプロトコール—熊本大学医学部第1外科

著者: 田代征記 ,   宮内好正

ページ範囲:P.908 - P.913

はじめに
 術前診断が困難で,手術時あるいは手術後にはじめて胆嚢癌と診断される症例を経験したことや,切除可能なものでも,その治療成績は悪いことから,教室では長年,この困難な胆嚢癌の診断と治療にとりくんできた.
 1979年熊本大学第1外科横山育三前教授が第13回日本消化器外科学会総会を主催し,その会長講演として「胆のう癌」1)をとりあげ,全国アンケート2,3)および自験例の進展様式を詳細に検討し,胆嚢癌の根治切除は主病巣の深達度に応じ,病変の拡大範囲を考慮し,癌が漿膜にでたような進行癌に対しては拡大肝右葉切除と膵十二指腸切除が必要であるということをはじめて提唱した.

膵臓癌治療のプロトコール—東北大学医学部第1外科

著者: 松野正紀 ,   佐藤寿雄

ページ範囲:P.914 - P.920

はじめに
 各種診断技術の開発,進歩により膵癌の診断能は著しく向上した.直径2cm以下の,いわゆる小膵癌も全国集計がなされるほど数多く発見されるようになり,これら小膵癌例の成績も検討されつつある.しかしながら,その治療成績は,積極的な外科治療にもかかわらず,比較的長期生存が期待できるのは今のところ膵癌全体のわずか4%前後を占めるT1症例のみで,T2以上となると3年生存率は20%にとどまつている1).決め手となる治療法がまだ確立されていない現在,拡大切除を行つて切除率を高めても,切除術のみでは根治不可能な症例が多く存在するとの反省に立つて,教室では外科療法に追加して各種補助療法を行うようになつた.すなわち,膵癌は発見された時点ですでにadvancedであるとの認識の上に立つて,切除術のみに頼ることなく,術前,術中,術後を通して,放射線療法,化学療法,免疫療法,温熱療法などを組み合わせて強力に治療を行おうとするものである.本稿では,自験例から明らかにされた膵癌の特性に立脚した,現在著者らが行つている膵癌の治療体系について述べる.

膵臓癌治療のプロトコール—金沢大学医学部第2外科

著者: 宮崎逸夫 ,   上野桂一 ,   永川宅和

ページ範囲:P.921 - P.928

はじめに
 1959年,本庄一夫教授が教室に着任され当時いまだ黎明期にあつた膵癌の外科的治療に積極的に取り組まれて以来,治療成績の向上をめざし現在にいたつている.特に1973年末以降手術郭清範囲を次第に拡大し,1977年にはtranslateral retroperitoneal approach(以下TRAと略す)による広範囲後腹膜郭清の手技を開発して一定の成果をおさめつつある1,2).この拡大手術の方針は,切除症例や剖検症例の検討ならびに色素注入によるリンパ路の検索などから得た進展様式に対する認識に由来する3,4).さらに術後消化吸収試験の成績5)や実験的研究6)の成果が拡大手術の遂行を支えてきた.
 本稿では膵癌治療のプロトコールとして拡大手術を中心とした教室の基本方針を述べ,手術成績を呈示するとともに今後の展望などについても言及する.

膵臓癌治療のプロトコール—東京女子医科大学消化器病センター外科

著者: 羽生富士夫 ,   今泉俊秀

ページ範囲:P.929 - P.938

はじめに
 種々の画像診断法の著しい進歩にもかかわらず,膵癌の早期診断は未だなお,困難であり,治療対象のほとんどが進行膵癌である.また一方,有効な制癌剤その他の内科的治療手段のない現状では,外科的治療が主役である.従つて,進行膵癌を対象とせざるをえない限りでは,他の消化器癌と比べてその治療成績ははなはだ不良である.膵癌の外科手術は,従来の標準手術の反省から拡大手術を積極的にとり入れてきたが,最近では,拡大手術の意義は認めるものの,その限界と問題点とを冷静に見直し,拡大手術の適応を論じようとする考えも十分に理解できるものである.
 本稿では,われわれの膵癌治療のプロトコールを述べ,主に膵頭部癌を中心として外科治療成績の現状を報告し,同時に今後の問題点も明らかにしてゆきたいと思う.

膵臓癌治療のプロトコール—神戸大学医学部第1外科

著者: 奥村修一 ,   斉藤洋一

ページ範囲:P.939 - P.946

はじめに
 近年の診断学の進歩と消化器悪性疾患に対する根治手術の概念の普及により,胃癌をはじめとする悪性疾患の治療成績は著しく進歩してきた.しかし,膵癌は他の消化器外科疾患に比べて,切除率,手術直接成績,遠隔成績のいずれにおいても良好とはいえず,いまだに診断される大多数は進行癌であり,高度のリンパ節転移や血管侵襲のため根治手術を行える症例は数少ないのが現状である.また手術についても1935年Whipple以来,膵頭十二指腸切除術,体尾部切除術,膵全摘術,拡大膵全摘術など臨床治験にもとづく数多くの創意工夫や研究がみられているが,いまだ十分な成績を得ず,消化器悪性疾患の中では現在最も予後の悪い疾患の一つであるといえる.
 従つて,膵癌治療成績の向上には早期発見への努力はもちろんであるが,大多数を占める進行癌に対する有効な治療方針の確立を行わねばならない.

甲状腺癌治療のプロトコール—伊藤病院

著者: 尾崎修武 ,   伊藤國彦

ページ範囲:P.947 - P.952

はじめに
 甲状腺癌が他臓器に発生する癌とはかなり異なつた幾つかの生物学的特性を有していることは周知のことである.すなわち,まず第1に予後が病期よりも組織型(表1)1)によって著しく異なることである.例えば乳頭癌の10年生存率は一般日本人の期待生存率とほとんど変わらないが,未分化癌になるといかなる治療を行つても1年以上生存する症例は極めてまれである.第2に分化癌の予後は患者の年齢と性別に規定されることが多く,40歳未満の女性例の予後が良い反面,45歳以上の男性例の予後は悪いことである.その他にも,分化癌の自然経過は概して長いこと,転移巣にヨードを取り込むものがあること,multiple endocrine neoplasia(以下MEN)の髄様癌のように常染色体優性遺伝をするものがあること,などである.
 したがつて,甲状腺癌の治療にあたつては、これらの生物学的特性を十分理解した上で治療計画を立てる必要があり,同じ甲状腺癌といつてもさまざまな治療法,手術術式がとられることになる.

甲状腺癌治療のプロトコール—鹿児島大医学部第1外科

著者: 島津久明 ,   高尾尊身

ページ範囲:P.953 - P.960

はじめに
 甲状腺分化癌(乳頭癌,濾胞癌)はその生物学的特性から他臓器癌に比較して一般に予後が良好で,また逆に未分化癌と悪性リンパ腫は著しく予後が不良であることが知られている.しかしながら,甲状腺分化癌の中に予後不良を呈する症例のあることが,近年数多く報告されるようになり,甲状腺低分化癌の病理学的概念が提唱されるに至つた1).このことは他臓器癌と同様に甲状腺癌においても組織型あるいは分化度の違いによつてその予後が異なり,術前の確定診断とそれぞれに対する治療法の確立が重要であることを示している.
 教室では種々の「癌」に対する系統的な治療を行つているが,この中で甲状腺癌の占める割合は約10%と少ない頻度である.しかしながら,1981年から本教室が主体となつて,鹿児島県における甲状腺検診を始めて以後は年間15〜20例の甲状腺癌を経験している.本稿では1973年から1986年までの教室における甲状腺癌手術症例のretrospectiveな解析を基にして,現在教室で行つている甲状腺癌に対する基本的な治療方針を述べる.

甲状腺癌治療のプロトコール—広島大学医学部第2外科

著者: 土肥雪彦 ,   武市宣雄

ページ範囲:P.961 - P.966

はじめに
 広島大学第2外科での甲状腺癌手術療法の経験は1952年(昭和27年)に始まる.以来精力的に甲状腺癌治療に取り組んできた.一般に甲状腺癌手術は拡大根治に近づけるか,担癌も覚悟の上での保存的縮小に近づけるかの繰り返しがみられる.当科では初期より保存的手術の傾向が強く,ここでは1965年(昭和40年)〜1982年(昭和55年)の18年間の結果をまとめ,現在用いている治療プロトコールを示したい.

乳癌治療のプロトコール—癌研究会付属病院外科

著者: 深見敦夫 ,   霞富士雄 ,   渡辺進 ,   吉本賢隆 ,   難波清 ,   秋山太 ,   西満正 ,   梶谷鐶

ページ範囲:P.967 - P.972

はじめに
 癌研外科の乳癌治療方針は,過去においていくつかの修正を経て現在に至つている.最も大きな変革は図1のごとく1774年後半にみられた.すなわち,定型乳房切断術より縮小手術である.大胸筋保存乳房切断術Modifi-ed Radical Mastectomyの採用である,その考え方の推移についてはすでに報告して来た1-4).今回は,治療方針と成績を1946年より1974年までと1975年以後に分けて報告する.

乳癌治療のプロトコール—慶應義塾大学医学部外科

著者: 藤原潔 ,   榎本耕治 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.974 - P.981

はじめに
 乳癌がsystemicな疾患であるという考えは徐々に受けいれられつつある,一方早期乳癌は手術のみでも良好な予後が得られるため乳癌も早期では局所の疾患であるという考えもある.このように乳癌がどの時点で局所の病変からsystemicな病変になるか見極めることが難しくまた有効な抗癌剤でも完全寛解を得る頻度は少ない. また確実に有効な抗癌剤が得られていないので現在でも初発乳癌には手術がfirst choiceでありこれに補助療法として,薬物療法が併用されている.
 再発乳癌では全身的疾患とみなされ,薬物療法が治療の中心をなしている.従つて初発乳癌と再発乳癌にわけて治療法に言及する.

乳癌治療のプロトコール—聖マリアンナ医科大学第1外科

著者: 渡辺弘 ,   山口晋

ページ範囲:P.982 - P.987

はじめに
 乳癌治療の中心は手術療法である.基本的手術術式として代表される定型的乳房切断術が確立されて80年以上経過するも,本邦において本術式は確実性,根治性の高い術式として最も普及している.近年,欧米における縮小手術の普及とともに本邦においても縮小手術の適応範囲が拡がりつつある.一方において,鎖骨上リンパ節ないし胸骨旁リンパ節郭清を合併する拡大手術成績は定型的乳房切断術の成績と変わりないとするものもあり,次第に減少してきたが,最近,術式を改め再検討を行う施設も見られる1,2)
 各種抗癌剤の開発,複合化学療法の工夫,さらにエストロゲン・レセプターの有無による内分泌療法および化学・内分泌療法の適応,放射線療法および免疫療法の併用によつて,乳癌の治療成績は確実に向上している.

乳癌治療のプロトコール—群馬大学医学部第2外科

著者: 泉雄勝 ,   横江隆夫

ページ範囲:P.989 - P.998

はじめに
 乳癌は元来予後の良い癌の一つであり,ある程度の大きさになるまでは,手術を中心とした治療によりかなりの確率で根治しうる.一方,乳癌の知識が普及してきた今日でも,局所進行癌および進行癌症例は後を断たず,これらに対しては手術のみでは予後の改善は得られず,近年の集学的治療の導入により,ようやく光明が見いだされつつある1,2)
 術式に関する現在の趨勢としては非定型乳切の台頭が自立つているが,問題は遠隔成績を下げずにいかに非定型手術を行うか,ということと,逆に拡大乳切症例の成績を,適応および術式の工夫によりいかに向上させるかということである.

肺癌治療のプロトコール—東北大学抗酸菌病研究所外科

著者: 藤村重文 ,   佐川元保 ,   仲田祐

ページ範囲:P.999 - P.1006

はじめに
 近年肺癌は,罹患率の増加と診断技術の著しい進歩によって,各施設で取り扱う患者数も年ごとに増加しているが,現在その治療の根幹は手術療法である.教室において1952年9月から1985年12月までに手術した肺癌患者は1,287例であるが,最近では切除率も次第に向上してきている.これは集検成績が向上してきた反面で,進行癌の占める割合が依然として高いにもかかわらず,術式や術後管理の進歩によつて手術適応の拡大がはかれるようになつたことによる.
 肺癌治療には問題点が多々残されているが,本稿においてはこれまで,東北大学抗酸菌病研究所外科において取り扱つてきた肺癌患者を対象として,教室の肺癌治療方針に関して検討した.

肺癌治療のプロトコール—東京医科大学外科

著者: 於保健吉 ,   雨宮隆太

ページ範囲:P.1007 - P.1016

はじめに
 肺癌は胸部X線写真,あるいは喀痰細胞診で発見され,90%以上が気管支ファイバースコープ下に組織ないし細胞が採取され,局在も含めた確定診断が行われる.肺癌の治療方針は組織型にもよるが,手術適応の有無を診断することから始まる.手術適応と術式の決定は肺の機能的予備力,年齢,性,合併症の有無などを前提に,癌の根治性の追究と術後のquality of life,延命効果を考慮して個々の症例ごとに検討されなければならない.1970年代後半よりCT scan,気管支鏡を中心とした画像診断法とその解析の進歩,レーザー治療などの新しい補助療法の開発,Cisplatin(CDDP)を中心とした化学療法の普及と治療効果の向上などにより,肺癌の治療方針は1970年代以前に行われていた方式と細部において相違が生じ,未だ流動的な部分がある.教室においても10年前までの治療成績1)との間にかなりの差がみられるようになつた.
 本文では現在,教室で行つている肺癌の外科療法を中心とした集学的治療のプロトコールについて述べる.

肺癌治療のプロトコール—千葉大学医学部肺癌研外科

著者: 山口豊 ,   木村秀樹

ページ範囲:P.1017 - P.1025

はじめに
 1955年に日本外科学会において宿題報告「肺腫瘍」1)を河合直次先生が,篠井金吾(東京医大),石川七郎(慶応大学)両先生と共に3名で分担され,それまでの業績の集積が報告された.当時3教室で扱われた肺癌症例はわずかに入院症例で116例,肺切除で49例であつた.この宿題報告を分担したことを契機に千葉大学における本格的な肺癌の研究と診断が始まつた.1959年に千葉大学医学部に肺癌研究施設の設置が認可され3年の発足の遅れはあつたが,1963年から入院施設ができ,香月秀雄先生を中心にして肺癌研究と特に診療面が軌道に乗つた.
 過去30年間の歴史の流れの中で,癌の治療以前の癌本態の究明といつた基礎的な問題から肺癌の早期発見を始めとする臨床的な基本的な問題にいたるまで,その研究と診療は幅広くまた奥深くなされたが,しかし肺癌の治療成績は飛躍的な向上を認めるまでに至つていない2).この事実はわれわれの施設に限つたことではなく内外の現状をみても残念ながら現実として認めざるをえない.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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