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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻7号

1987年06月発行

雑誌目次

特集 外科医の触診

頭部触診のポイントとコツ

著者: 仁瓶博史

ページ範囲:P.1043 - P.1049

 頭部においては触診は必ずしも有効な診察手段とはいえない.というのは頭部の重要な部分(つまり中枢神経)はすべて頭蓋骨に覆われているからであり,またその頭蓋骨の外側に出来る疾患は数が限られているからである.
 そこで触診が重要と思われる病気(病態)を各論的に説明した. 1)血管系:閉塞性血管障害の側副血行路,血管腫,2)神経系:神経痛の圧痛点,3)頭皮・頭蓋骨の腫瘍,4)眼球の疾患,5)頭蓋内圧亢進, 6)頭部外傷.

頸部触診のポイントとコツ

著者: 三村孝

ページ範囲:P.1051 - P.1056

 頸部腫瘤の診断には,正確な病歴の聴取と触診が重要であり,この2つによりほとんど全ての症例の診断が可能であるといわれている.また頸部の解剖,各種腫瘤の好発部位を知ることが診断の助けとなる場合も多い.エコーやX線検査CTなどの画像診断も有用であるが,臨床経過,触診所見が診断の決め手となる.しかしときには良・悪性の鑑別が難しいもの,臨床的に稀な疾患もあり,確診には生検,切除による組織診を行わざるを得ないものもある.
 頸部腫瘤の触診のコツは,臨床経過,腫瘤の解剖学的起原,好発部位を参考にして診断を下すことにある.

甲状腺触診のポイントとコツ

著者: 高井新一郎

ページ範囲:P.1057 - P.1066

 甲状腺疾患の診断において,触診は極めて重要である.いつでも,どこでも出来るし,その場である程度の結論がでることが触診のメリットである.一方,診断者の技量だけでなく,体調や気分によつて影響を受けることがデメリットである.
 本稿では,甲状腺疾患の触診について基本から解説した.とくに甲状腺癌の診断を中心に,腫瘤の硬さとリンパ節の触り方に重点をおいた.
 甲状腺の病気といえば,ホルモン定量とかシンチグラフィーとかを思い浮かべる方が多いかも知れないが,問診と注意深い触診だけでも,かなりの線まで診断できることを知つてほしい.

乳房における視・触診のポイントとコツ

著者: 妹尾亘明

ページ範囲:P.1067 - P.1073

 初心者の触診で最も多い誤診は正常乳腺実質を腫瘤または硬結と誤認し,それをさらに良性・悪性鑑別しようとするから診断の困難さを訴える.まず腫瘤とは何か,硬結とは何か,ことに誤認しやすい加齢による正常脂肪化乳腺表面顆粒とは何かを認識する事が,触診法であまり解説されていない.触診には圧が最も大切であり,この正しい圧による触診を解説しコツをのべる.まず初心者は腫瘤を正しく把握することから始め,ついで癌その他との鑑別所見を修得すれば容易である.ここでは後者を省略し,腫瘤を正常と正しく鑑別できれば,腫瘤の良・悪性鑑別所見をとりあげなくても,視診と組合せ乳癌を疑診できるコツも解説し,視診についても述べる.

腹部触診のポイントとコツ

著者: 若林利重

ページ範囲:P.1075 - P.1082

 腹部触診のポイントとコツを一口にいえば,たえざる訓練によつて腹部所見の感触を指に修得させることである.腹部触診に際しては患者の体位とか触りかたなど一定の原則,ルールのようなものがあり,これに従えば感触の習熟は容易になる.腹部の軽微な異常所見でも的確に把握するためには,周囲の正常所見との微妙な差を見逃さないようにしなければならない.手術所見から術前の触診所見をretrospectiveに反復検討する心掛けも大切であろう.

四肢触診のポイントとコツ

著者: 多田祐輔

ページ範囲:P.1083 - P.1089

 四肢の機能は運動器官としてのそれであつて,四肢固有の疾患は整形外科的疾患が主となる.しかしながら,四肢の皮膚,皮下組織,筋などの異常は,神経疾患,代謝疾患,膠原病など全身疾患の表現である場合も少なくなく,全体的に皮膚,皮下組織,筋肉の異常を触診によつて把握することは重要である.また四肢は各種の循環器系の異常を脈拍の異常として触知し得る重要な部分でもある.本項においては,四肢の全体的な異常の把握としての触診,各部位における脈拍の触診のコツ,浮腫の触診,静脈瘤の病態の把握としての触診について述べるとともに,一般外科外来で多くみられる腫瘤の触診上の考え方,方法について述べた.

腟内診のポイントとコツ

著者: 滝沢憲

ページ範囲:P.1091 - P.1096

 腟内診は唐突にできるものではない.患者の話を十分に聞き,腟内診の必要性について医師・患者双方が認識し,腟内診によつて何を診断しようとするか明確な目的意識を持つことが極めて重要である.これにより患者の協力を得て,診察し易い体位(砕石位)をとり,外陰部,下腹部の視・触診,腟鏡診を経て腟内診を行いうる.腟内診の前に要すれば妊娠反応で妊娠しているか否か調べ,また,白血球数や腹膜刺激症状から急性感染症の有無を調べ,さらに直腸診でダグラス窩の異常の有無を検討しておくことは有意義である.超音波電子スキャンで骨盤内腫瘍の存在,臓器別,良悪性診断は腟内診と同等以上に可能なので,腟内診を無理強いしない.

カラーグラフ 乳腺疾患の外科病理・6

乳腺原発良性顆粒細胞腫

著者: 山科元章

ページ範囲:P.1040 - P.1041

 乳房に原発した2例の良性顆粒細胞腫(granular celltumor,以下GCT)を呈示する.GCTは,皮膚・口腔についで乳腺組織に好発するとされているが,その絶対数はきわめて少なく,乳腺腫瘍の中では1%以下を占めるにすぎない.GCTの病理組織像は特異的で,その病態が十分理解されていれば鑑別診断に苦慮することはない.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント【新連載】

Lesson1 糸結び

著者: 小越章平

ページ範囲:P.1099 - P.1102

 研修医の諸君,これから一般外科における手技をいっしょに勉強しよう。詳しいことは一般の教科書を参考にしてもらうこととし,ここではポイントだけを示していく。技術はなんでもそうだが,自分自身でやらなければなにも出来ない。スポーツはもちろん,自転車だって人が乗っているのを見ているだけでは,けっして乗れない。手術も一例でも多く自分でやり,その上で人のやっていることを参考にし,また自分でやる,のくり返しである。さて,はじめは糸結びだが,参考書には種々の方法が載っている。しかし多くの方法を覚える必要はない。しばらくは,1つの方法を完全にマスターして迅速かつ確実に出来るように練習する。手術場で不要になった実際の絹糸をもらって白衣のボタンなどにひっかけて,くり返しくり返し練習して"手の癖"にしてしまう。

文献抄録

アメリカにおける一般外科手術

著者: 折井正博

ページ範囲:P.1104 - P.1104

 1979年,"疾患国際分類,第9版,臨床的修正"(ICD-9-CM)が患者の診断名と術式のコード化における初歩システムとしてアメリカの短期入院病院により初めて導入された.この報告においては1979年から1984年の間の一般外科手術件数の徹底的な分析をする上で国立健康統計センター(NCHS)によるICD-9-CMを活用した.
 <結果>1979年には472万9千の一般外科手術が施行され,1984年には504万1千に増えている(7%増).同じ5年間にアメリカ合衆国の人口は5%増加している.

早期胃癌の一亜型—粘膜上皮下潜在印環細胞癌の診断

著者: 山科元章

ページ範囲:P.1105 - P.1105

 1984年の米国癌協会の統計によると,年間の全癌腫に占める胃癌の頻度は2.8%で,胃癌は米国では肺癌,結腸癌,乳癌,前立腺癌,子宮癌,膀胱癌,膵癌,そして悪性リンパ腫につぐ第9位の悪性腫瘍とされている.1930年以来,米国ではこの胃癌罹病率は年々著明な減少傾向を示してきたが,胃癌患者の5年生存率はいまだに13%という低値が報告されている.これらの統計数値だけを日本のそれと比較しても,米国では早期胃癌に対する診断体制が日本のように活発に機能していない現況が察せられる.現実に米国の臨床医の間では,早期胃癌より早期肺癌や早期結腸癌などへの診断意欲がより高く,一般大衆の間でも,胃癌に対する意識はほとんどないと言つても過言ではない.
 しかし,ここ数年来,消化器専門医を中心に日本の早期胃癌,およびその分類法の概念が浸透し,それに匹敵する症例も多く報告されるようになつてきている.そして,地域・施設によつては,かなりのレベルの早期胃癌診断体制が整つてきていることが認められる.

Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・1【新連載】

膵頭十二指腸領域の手術に必要な門脈・動脈の扱い方とコツ

著者: 加藤紘之 ,   田辺達三

ページ範囲:P.1107 - P.1112

門脈の扱い方とコツ
 門脈の外科解剖
 図1に膵頭部領域手術に必要な門脈系各枝の走行を示した.膵臓・肝十二指腸靱帯,腸間膜に包み込まれた門脈系の走行を熟知した上で本幹および各分枝を十分に剥離露出することが,目的の手術を成功させるためのポイントとなる.門脈系の各枝は互いに交通枝をもつため,本幹近くで結紮しても血流うつ滞を起こさないことが多いが,あくまでも脈管解剖に則した手順で手術を進める必要がある.

臨床研究

下肢血行再建におけるin-situ saphenous vein bypassの経験

著者: 桜井恒久 ,   仲田幸文

ページ範囲:P.1113 - P.1118

はじめに
 大伏在静脈を一部分のみ遊離することによつてby-pass graftとして用いる,いわゆるin-situ saphenousvein bypass(以下in-situ bypassと略)には多くの利点があることは従来より報告されている.しかし,本邦においては未だこの術式は一般的なものとなつておらず,その報告も少ない.われわれは下肢の血行再建においては,最近このin-situ bypassをその術式の第一選択としており,今回はその手術手技の概要および臨床経験とともに手術手技上の問題点の要点につき考察を加える.

臨床報告

著しい大腿動脈壁石灰化を伴う若年者閉塞性動脈硬化症の1例

著者: 岩瀬和裕 ,   大西健二 ,   西村元延 ,   小林順二郎 ,   黒田修 ,   小林芳夫

ページ範囲:P.1119 - P.1123

はじめに
 閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans,以下ASO)は高齢者に多く,30歳以下の若年者にみられることは極めて稀である1).今回われわれは,28歳の男性にみられた,著しい大腿動脈壁石灰化を伴うASOの1例を経験した.本症例は血行再建に困難を極めたが,最終的に両側大腿動脈一後脛骨動脈バイパス術により良好な結果を得たので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腎盂十二指腸瘻を介して逸脱した腎結石による回腸穿孔の1例

著者: 古屋敷進 ,   高橋信 ,   青山二郎 ,   田村裕幸 ,   矢野健二 ,   小野浩

ページ範囲:P.1125 - P.1129

はじめに
 尿路と消化管との間の瘻孔形成は稀であり,なかでも外科的侵襲,外傷等の誘因のない特発性腎盂十二指腸瘻の報告例は少ない.われわれは,腎盂内結石が腎盂十二指腸瘻から腸管へ脱出し回腸へ嵌頓,回腸の圧迫壊死を引き起こし同部が穿孔,汎発性腹膜炎にて発症した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えながら報告する.

腎細胞癌に対するSMANCS-lipiodolによるoily-chemoembolizationの経験

著者: 河準奎 ,   松井道宣 ,   川本一祚 ,   金在河 ,   荻田修平 ,   三品輝男

ページ範囲:P.1131 - P.1134

はじめに
 Grawitz腫瘍は,血尿・腹部痛・腹部腫瘤のtriasをもつた悪性腫瘍で,早期に血行性転移を来たすとされ,好発年齢は60歳台といわれている.われわれは最近,若い女性に発生した巨大Grawitz腫瘍に,術前poly(styrene-co-maleic acid)-conjugated ne-ocarcinostatin(=以下SMANCS)-lipiodolを注入し根治摘出を施行した症例を経験したので報告する.

小児期生体弁使用における1経験

著者: 長見晴彦 ,   山内正信 ,   原田俊郎 ,   岡田圭司 ,   中山健吾 ,   山田公弥 ,   羽根田紀幸 ,   揖野恭久

ページ範囲:P.1135 - P.1138

はじめに
 小児期弁膜症に対する外科治療において,生体弁置換術を施行した場合,遠隔期に弁機能不全を経験することは少なくない.弁機能不全の原因として,弁の器質的変化による報告は多いが,弁の機能的な原因で発症した報告は稀である.
 今回,著者らは,先天性僧帽弁閉鎖不全症に対して,Ionescu-Shiley弁を用い弁置換術を施行したが,術後約1年目に弁機能不全症状をきたしたため,Björk-Shiley弁を用い再弁置換術を施行した.しかし,摘出したIonescu-Shiley弁は全く器質的変化が存在せず,その原因について若干の文献的考察を加えて報告する.

下肢動脈血栓症に続発した非外傷性ガス壊疽の1治験例

著者: 遠藤将光 ,   斉藤裕 ,   向歩 ,   佐藤日出夫 ,   木谷正樹 ,   能登佐 ,   河村洋一 ,   山川清孝 ,   神谷茂 ,   中村信一

ページ範囲:P.1139 - P.1142

はじめに
 ガス壊疽は一般に高度の挫滅創や開放性骨折などに続発することが知られているが,稀に明らかな外傷がなくても発生することが報告されている.われわれは下肢動脈血栓症に,内因性感染が加わつて発生した非外傷性ガス壊疽の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

茎捻転を来した後腹膜皮様嚢腫の1例

著者: 金丸洋 ,   高木正人 ,   飯田裕 ,   今井輝子 ,   笠井恵

ページ範囲:P.1143 - P.1147

はじめに
 皮様嚢腫は,奇形腫の一種であり,その内容に異所性の外胚葉組織が含まれることが特徴である.画像検査で存在診断は容易であるが,稀に悪性例もあるので質的診断は慎重さが必要である.腹腔内の発生例のほとんどは卵巣との関連を有し,その他の臓器からの発生例報告は少ない.今回,われわれは,卵巣と無関係に壁側腹膜と有茎性に連続し,かつ茎捻転を来した後腹膜皮様嚢腫を経験したので文献的考察を加え報告する.

8ヵ月男児にみられた肝 Focal Nodular Hyperplasiaの1切除例

著者: 太田哲生 ,   竹下八洲男 ,   宮崎逸夫 ,   平谷美智夫 ,   鈴木正行 ,   松井修

ページ範囲:P.1149 - P.1152

はじめに
 Focal nodular hyperplasia(以下,FNH)は,通常若年の女性に好発し,経口避妊薬服用との関連で注目されている肝の良性腫瘍である.著者らは,川崎病の経過観察中にFNHの合併をみた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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