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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科42巻8号

1987年07月発行

雑誌目次

特集 いわゆる消化器早期癌の術後再発—その実態と対策

早期および表在食道癌の術後再発—実態と対策

著者: 西平哲郎 ,   森昌造

ページ範囲:P.1171 - P.1177

 教室では49例の食道表在癌を経験したが切除例数の7.6%に相当した.このうちリンパ節転移陰性例は30例,陽性例は19例であつた.陽性例中18例はSm癌であつた.両者の長径は前者が43.4mm,後者が42.3mmとほとんど差がなかつた.両者の予後は際立つた相違があり前者の5生率は79.8%,後者のそれは34.3%であつた.その理由は,両者の細胞生物学的悪性度が異なることと,Smまでの深達度が関連していると思われた.n(+)表在癌はリンパ節転移,血行性転移の両者を認め,徹底的なリンパ節郭清の他,全身療法としての術後強力癌化学療法が必要である.

早期胃癌の術後再発—実態と対策

著者: 大森幸夫 ,   本田一郎

ページ範囲:P.1179 - P.1185

 早期胃癌の再発率はおおむね2〜4%であり,その多くはsm癌に認められる.再発型では血行再発が62%と最も多く,中でも肝転移再発が51%を占める.血行再発に密接に関連する脈管侵襲やリンパ節転移はsm癌に多くみられる.したがつてsm癌ではR2の郭清や術後化学療法が必要である.残胃再発を防止するには断端部に癌を遺残せしめないことと,異時性多発癌を含む残胃再発の早期発見,早期治療のために胃切除後長期にわたる経過観察が必要てある

早期大腸癌の初回治療方針と術後再発

著者: 石沢隆 ,   島津久明 ,   山田一隆 ,   春山勝郎 ,   牧角寛郎 ,   有本之嗣 ,   桂禎紀 ,   中野静雄 ,   長谷茂也 ,   鮫島隆志

ページ範囲:P.1187 - P.1194

 大腸早期癌の治療方針と術後再発について,自験例の成績と本邦文献上の報告に基づいて述べた.m癌の治療はpolypectomyまたは局所的切除で十分であり,これらの術後に再発はほとんどみられない,あつても局所再発のみである.IIa+IIc型やIIa型のsm癌の一部には,最初から腸切除が行われる場合もあるが,多くのものではpolypec-tomyや局所的切除を行つたのち,転移・再発のrisk factorが明らかになれば腸切除を行う方針で臨んで差し支えない.しかし,リンパ節転移が4〜8%,術後の局所再発が2〜8%,遠隔(血行性)転移が1〜3%の頻度にみられていることは十分に注意すべき点である.sm癌の治療成績も概ね良好であるが,risk factorをもたないリンパ節転移陽性例1.3%と血行性転移例1〜3%,あわせて3〜4%の症例の転移再発は防止できていない現状である.

小肝癌の治療方針と術後再発—実態と対策

著者: 森敬一郎 ,   牧淳彦 ,   山岡義生 ,   小林展章 ,   嶌原康行 ,   安田和弘 ,   熊田馨 ,   小澤和恵

ページ範囲:P.1195 - P.1200

 肝臓には,消化管における粘膜筋板に対応する限界板がないため,早期肝癌という概念は存在しない.したがつて,小肝癌,細小肝癌といえども再発の危険性は大きく,初回治療が重要である.治療の原則は,肝予備力を的確に評価しながら広範囲肝切除を行う絶対治癒切除である.肝内再発に対しては全肝TAEの反復が有効であるが,今後は,再発を来さないよう予防的TAEの検討,肝癌に対するadjuvant chemotherapy,immunotherapyの検討も行われるべきである.

胆嚢の早期癌の概念と術後成績

著者: 武藤良弘 ,   山田護 ,   川崎康彦 ,   正義之 ,   内村正幸

ページ範囲:P.1201 - P.1206

 胆嚢における早期癌の概念を「癌の病期のうち,早期でかつ治療予後良好な癌」と規定し,この概念に基づいて早期癌を病理学的に「癌浸潤が粘膜ないし固有筋層に止まる癌」と定義した.その結果,早期癌は23例,全症例の26.4%であつた.これらの肉眼型は隆起型4例(17.4%),表面隆起型14例(60.9%),表面平坦型5例(21.9%)と表面型が約80%を占め,癌組織型は全例高分化腺癌であつた.隆起型と表面型それぞれ4例に治癒切除術を,残りの15例は単純胆嚢摘出術を施行した.他病死の2例を除いて,全例(術後2〜13年経過)生存している.

早期の胆管癌の概念と術後成績

著者: 小山研二 ,   嘉藤茂 ,   田中淳一

ページ範囲:P.1207 - P.1213

 早期の胆管癌を,深達度が外膜までにとどまるもの(af)と定義した.これは,胆管癌はその占居部位により術式や予後が著しく異なり,予後規定因子も脈管侵襲,リンパ節転移,周囲臓器への浸潤などさまざまであるが,afまでにとどまる症例の大部分はこれら因子が陰性で良好な予後が期待されるからである.また,各種画像診断で術前,術中に診断できる可能性があり,この定義は臨床的意義があると思われる.

小膵癌の進展状況と術後成績

著者: 斉藤洋一 ,   山本正博 ,   奥村修一 ,   大柳治正

ページ範囲:P.1215 - P.1223

 膵癌では小さな膵癌の時期からすでに浸潤性発育やリンパ節転移,神経浸潤や血管侵襲が高頻度にみられ,小膵癌すなわち早期癌とすることには問題がある.全国膵癌登録集計による小膵癌158例の解析では,Stage分類を構成する各因子とも予後を規定する重要な因子と考えられ,手術成績向上のためにはこれら小膵癌の進展様式の十分な理解と適切な手術式の施行が必要である.

カラーグラフ 乳腺疾患の外科病理・7

粘液乳癌—穿刺吸引細胞診診断例

著者: 山科元章

ページ範囲:P.1168 - P.1169

 乳癌のなかで粘液癌は比較的まれな癌腫で(乳癌全体の1〜4%1)),それゆえに散発例が相ついで報告されるが,本邦でのその総数はいまだに少ない.この粘液乳癌のなかには,粘液産生が腫瘍細胞数に比して著しく強いものがあり,そのような例では硬結としての臨床所見に乏しく,癌としての診断治療が困難となることも少なくない.一方,穿刺針細胞診で,適確に病巣からの検体が得られると,本腫瘍の特徴的な所見から,術前確定診断は容易となる.今日,この乳腺穿刺吸引細胞診は,臨床所見(触診・画像診断)を併せると,98%という陽性診断精度も有している.本稿では,通常型の乳癌とは異なる病理形態所見と生物学的特性をもつ狭義の粘液癌の細胞診所見とともに,その腫瘍の最新の知見を紹介する.

文献抄録

敗血症におけるXIII因子の血漿フィブロネクチンへの関与

著者: 篠沢洋太郎

ページ範囲:P.1177 - P.1177

 フィブロネクチン(FN)は分子量440,000のグリコプロティンで,血漿中,結合織内,細胞表面に存在しオプソニン因子として食細胞とともに生体防御に関与するほか,創傷治癒,血管新生などに関与する.臨床例では術後,熱傷時,敗血症時FNは低下,ARDSなどの臓器障害との関係が示唆されている.一方実験動物の敗血症ではFNは上昇する場合が多く,著者らは臨床例との相違の原因を考察するとともに,FN同士,FNとフィブリン,コラーゲンなどとの結合に関与するXIII因子(XIII)とFNとの関係を検討した.
 ラットを1)コントロール,2)非致死量の緑膿菌(Pseud.)投与群,3)細網系(RES:reticuloendotherialsystem)ブロック群,4) RESブロック+Pseud.投与群の4群にわけ,0,2,24,48時問後の血漿中のFN,XIII,肝,肺,脾,腎の抽出可能な組織FNを測定した.さらに腹膜炎ラットにおけるXIII投与の血漿FNへの影響を観察した.

軟部組織肉腫患者の再発肺転移の切除

著者: 原真一 ,   遠藤昌夫

ページ範囲:P.1200 - P.1200

 最近,軟部組織肉腫の患者に初めて再発した孤立性の肺転移を切除し,長期生存を得た報告が幾つかあるが,われわれの知る限りでは,その後に,再び再発した肺転移を切除しその意義と基準を示した報告はない.
 われわれは,1976年から1983年までの間に,軟部組織肉腫が再発し肺転移を来した症例を35例に経験した.これらのうち6例は術前検査にて肺転移巣の切除は不可能と判断され,残りの29例が肺切除を受けた.17例が男性,12例が女性で,平均年齢は38歳(12〜63歳)であつた.2回目の肺切除からの経過観察期間の平均は46ヵ月であつた.胸部X線写真,骨スキャン,胸部断層写真により,他の部位の転移が調べられた.原発巣の手術時に認めた肺の転移巣が切除可能と判断した症例では,原発巣の手術の前に試験開胸を行い肺切除の可能性について検討した.異時性に認めた肺転移に対しては,以上の基準が満たされた場合に肺転移巣の初回切除が行われた.①原発巣が局所的にコントロールされている.②他に転移を認めない.③X線所見が胸部断層写真やCTスキャンでみられた肺転移と一致する.④転移巣が切除可能に見える.⑤残存する機能的肺組織の量が十分な肺の実質的な予備能を期待できる.—その後,ふたたび出現した肺転移に対しても同じ基準で肺切除が行われた.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson2 高カロリー輸液

著者: 小越章平

ページ範囲:P.1227 - P.1229

 恐らく今世紀最高の治療手段といわれている高カロリー輸液(IVH,intravenous hyperalimentationともいう)は,1968年に,はじめてダドリックらによって臨床成功例が発表された。この特徴は,高カロリーと高窒素を電解質ならびにビタミンなど同時に静脈内に投与することを可能としたものである。末梢静脈投与における5%ブドウ糖の4ないし5倍の濃度のものを上行大静脈までカテーテルを挿入するという外科医のアイディアで,これを可能とした。ただ単に栄養改善という手段を超えて,あらゆる重症患者の管理に不可欠のものとなった。とくに外科領域では,食道癌などの術後縫合不全の治療に威力を発揮し,全世界で広く取り入れられる要因となった。

Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・2

慢性膵炎に対する膵頭部部分切除兼膵体尾部完全遊離ドレナージ法

著者: 加藤紘之 ,   田辺達三

ページ範囲:P.1231 - P.1236

膵管拡張をともなう慢性膵炎手術
 局所の外科解剖
 図1に膵頭部露出に必要な間膜・腹膜の切開法を図示した,胃結腸間膜右半,十二指腸結腸間膜ヒダ,さらに右横隔膜結腸ヒダを切離して膵頭部前面を広く露出し,続いてKocher授動術を大動脈左縁に到るまで行つて膵頭部後面を広範に剥離挙上する.これによつて膵頭十二指腸領域が術者の左掌中に収められ,血管処理の準備ができたことになる.肝動脈の走行異常をチェックしておくことはもちろんであるが,慢性膵炎では門脈系の狭窄・閉塞を起こすことがあるので術前の血管造影は必須である.膵頭部領域の脈管走行を図2に示した.この手術は膵頭部の部分切除のみを行うので温存すべき部分,特に十二指腸の血行保持に必要な血管走行を熟知しておく必要がある.また膵内胆管を損傷せぬよう剥離した肝十二指腸間膜右後面からその走行を確かめておく.

臨床研究

扁平上皮癌を除く食道腫瘍の臨床病理学的検討

著者: 夏越祥次 ,   吉中平次 ,   喜入厚 ,   馬場政道 ,   福元俊孝 ,   愛甲孝 ,   島津久明

ページ範囲:P.1237 - P.1243

はじめに
 食道に原発する腫瘍はほとんどが扁平上皮癌である.それ以外の悪性腫瘍でも臨床症状は扁平上皮癌に類似し,切除標本の病理学的所見で初めて診断が確定されることが少なくない.一方,良性腫瘍は無症状のものが多いが,診断技術の進歩によつて発見される機会がふえ,治療面でも手術が比較的安全に行われるようになつたこともあり近年切除症例の報告が増加している.今回,教室の15年間の原発性食道腫瘍のうち扁平上皮癌以外の腫瘍について検討したので,これらの中から比較的稀とされる症例を提示し若干の文献的考察を加え報告する.

臨床報告

肛囲Paget病変を合併した早期直腸癌の1例

著者: 尾関豊 ,   林勝知 ,   鬼束惇義 ,   清島真理子 ,   山本明史 ,   下川邦泰

ページ範囲:P.1245 - P.1248

はじめに
 肛囲Paget病は肛門周囲皮膚の掻痒感を伴う発赤調の進行性湿疹様病変を特徴とし,高率に癌を合併することが知られている1,2).肛囲Paget病の加療中,その肛門側進展および合併病変の検索を目的として行つた直腸鏡検査にて,下部直腸にIIa型早期癌の発見された症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

大量下血をきたした空腸血管腫の1例

著者: 成田達彦 ,   梶川真樹 ,   安藤邦彦 ,   山本隆男 ,   安藤和彦 ,   黒川克己

ページ範囲:P.1249 - P.1253

はじめに
 小腸腫瘍は消化管の全腫瘍のうち,5%前後とまれで,なかでも良性腫瘍が臨床的に問題となる場合は少ない1).今回,われわれは大量下血をきたした空腸血管腫の1例を経験したので報告する.

多臓器損傷を伴つた鈍的外傷による総胆管断裂の1治験例

著者: 仁科雅良 ,   木戸訓一 ,   藤井千穂 ,   木嶋泰昭 ,   大北幸生 ,   遠藤昌彦

ページ範囲:P.1255 - P.1259

はじめに
 鈍的外傷による総胆管断裂は,極めて稀なものであり,文献的にもその報告例は非常に少ない.われわれは最近,胃破裂,膵断裂,頭蓋骨骨折等を合併した総胆管断裂の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

下大静脈に発生し,右心房まで進展した血管平滑筋肉腫の1剖検例

著者: 浦口憲一郎 ,   吉田晃治 ,   野中道泰 ,   才津秀樹 ,   渕上量三 ,   内田立生 ,   辻嘉昌 ,   杉原茂孝

ページ範囲:P.1261 - P.1265

はじめに
 後腹膜腫瘍のうち平滑筋肉腫は稀な疾患であり,血管原発のものはさらに稀なものである.最近,下大静脈(VCI)に発生したと思われ,両側総腸骨静脈より右心房に至る血管内腫瘍を形成した平滑筋肉腫の1剖検例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

膝窩動脈捕捉症候群の1治験例—本邦報告49例の検討

著者: 谷村信宏 ,   林悟 ,   麻田達郎 ,   中尾守次 ,   山本信一郎 ,   鶴田宏明 ,   小川恭一

ページ範囲:P.1267 - P.1271

はじめに
 膝窩動脈捕捉症候群は,若い運動家に多く見られる下肢閉塞性疾患として知られているが,比較的稀であり本邦では現在まで自験例を含めて49例の報告1-4,10)をみるにすぎない.われわれは最近20歳男性の膝窩動脈捕捉症候群の1例を経験したので,診断方法・治療方法等に若干の文献的考察を加えて報告する.

膵のsolid and cystic acinar cell tumor(SCAT)の1治験例

著者: 飯田辰美 ,   奥村輝 ,   雑賀俊夫 ,   松原長樹 ,   本間光雄 ,   小山登

ページ範囲:P.1273 - P.1276

はじめに
 若年女性に好発し,予後良好な嚢胞性膵腫瘍の1例を報告する.この腫瘍はKlöppel1)らが提唱したsolid and cystic acinar cell tumor(以下SCAT)に該当する比較的稀な膵腫瘍と考えられ,最近その報告が散見される様になつた.

胸郭出口症候群に合併した上肢血栓症に対する血行再建術

著者: 泉敏 ,   広瀬邦彦 ,   松本孝文 ,   野並芳樹 ,   北川素 ,   松崎圭祐 ,   中谷速男 ,   山崎元成 ,   土岐泰一 ,   田宮達男 ,   貞広哲郎 ,   山本博司

ページ範囲:P.1277 - P.1281

はじめに
 胸郭出口症候群は神経および血管圧迫症状をきたす疾患として知られている.一般には末梢血行障害は軽度に留まるが,血栓症を合併すると強度の阻血症状を呈することが知られている.しかし,現実には本症に合併する血栓症に対する血行再建術の報告は極めて少ない.
 われわれは,血栓症合併の2症例に対し,第1肋骨切除および,上肢血行再建術を施行し良好な結果を得たので報告する.

手術手技

ホワイトヘッド手術後障害に対する肛門形成術

著者: 前田昭二 ,   柳一夫 ,   北川裕章 ,   河崎能久 ,   山口仁 ,   直江和彦

ページ範囲:P.1283 - P.1287

はじめに
 1882年に英国の医師Whiteheadは,痔核根治手術として環状切除法を提唱した.これがいわゆるホワイトヘッド手術1)で,本邦では昭和40年代まで,最も根治性の高い術式として多用されていた.しかしこの術式は煩雑で,痔核の再発も稀でなく,また手技の適正を欠くと重篤な合併症を生じる場合があり,この術式に対する数多くの非難が生まれるようになつた2)
 現在,この術式を行う施設は少ないと思われるが,いまだにその術後障害に悩んでいる患者に遭遇することは珍しくない.術後後遺症は①肛門狭窄②粘膜脱③肛門機能不全の3つに分けられるが,我々はこれらの後遺症の重症例に対し、種々の皮弁を用いた肛門形成術を施行し,良好な結果を得ている.本論文では肛門狭窄に対するZ形成術と,粘膜脱(粘膜外翻症)に対するS形成術とを紹介したい.

外科医の工夫

我々が行つてきた乳癌術後の胸壁潰瘍の修復及び乳房形成術—Cone shape型rectus abdominus myocutaneous flapを中心に

著者: 榊原章洋 ,   中島龍夫 ,   吉村陽子 ,   沢田幸正 ,   加藤一

ページ範囲:P.1289 - P.1293

はじめに
 筋皮弁や筋肉弁利用の手術手技の進歩により乳癌術後の変形や胸壁潰瘍に対する再建術も,より満足のいく結果が得られるようになつてきている.我々はこれまで8年間に25症例の乳癌切除後の胸壁変形に対し各種の術式を用いて胸壁再建を行つてきた.今回,これらの各術式について検討を加えるとともに,現在我々の行つている手術法について報告する.

超音波ガイドによる安全で確実な内頸静脈穿刺法

著者: 西律 ,   岡島邦雄 ,   安田正幸 ,   北村彰英 ,   浜口伊久夫 ,   奥田準二 ,   計田一法

ページ範囲:P.1295 - P.1298

はじめに
 外科領域においては中心静脈へのカテーテル挿入は必須の手技であり,そのルートとしては鎖骨下静脈が最も多用されている1).教室では鎖骨下静脈穿刺時の気胸発生の苦い経験より,1983年から合併症のより少ない内頸静脈穿刺法を第一選択として以来,重篤な合併症の発生もなくほぼ満足すべき結果を得てきた.しかし,本法においても総頸動脈を誤つて穿刺する場合や穿刺困難例,カテーテル挿入不能例に遭遇することがある.すでに山方ら2)はこれらの点を考慮して,より安全で確実な穿刺手技を目指して超音波実時間ガイドによる内頸静脈穿刺を試みた結果,きわめて満足すべき成績を得たと報告している.著者らも同様のリニア電子スキャンを用いた超音波ガイド下内頸静脈穿刺法を施行し,本法が容易に行える安全かつ確実な手技であることを確認したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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