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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科43巻1号

1988年01月発行

雑誌目次

特集 臓器移植のup to date '88

腎臓移植

著者: 岡隆宏 ,   相川一郎

ページ範囲:P.17 - P.24

 わが国に導入されてから5年を経過したciclosporinを中心として,その免疫抑制法や合併症,日本の腎移植の現況,長期生着の問題,死体腎移植や脳死の問題など,腎移植における最新の問題点を取りあげ論ずる.

Up to dateの肝臓移植

著者: 岡村純 ,   門田守人 ,   後藤満一 ,   森武貞

ページ範囲:P.27 - P.31

 1987年度の発表論文,Starzlを記念したInternational Organ Transplant Forum(Pittsburgh),第5回肝移植研究会における興味ある知見,最近のデータを略述した.主な問題点は1)手技,2)免疫抑制法,3)費用,4)donor肝の供給であり,3)については米国では保険が完備してきているので特にふれなかった.肝移植後の5年生存率は60%台にまで向上し,Quality of lifeも満足すべき結果になっている.わが国での再開間近にむけて参考となるデータを示した.

心臓移植の現況

著者: 小柳仁 ,   平田欽也 ,   北村昌也 ,   江石清行 ,   遠藤真弘 ,   橋本明政

ページ範囲:P.33 - P.37

 従来の循環器病学のあらゆる治療法を駆使しても救命できない重症心疾患に対して人工心臓とならんで心臓移植が1960年代に実験的に提案された.1970年代に臨床応用の反省期を経て1980年代には多くの施設が組織的にこの外科治療を導入し,1986年には年間1,400例をこえ,国際的な統計では4,000例を越した.すでに社会的に容認された,この治療法について現状と問題点を分析してみた.

膵臓移植

著者: 出月康夫

ページ範囲:P.39 - P.44

 膵臓移植はⅠ型糖尿病の血管系合併症の予防と患者のQuality of Lifeの向上を目指したものである.これまでに欧米では1,000例以上の膵臓移植が行われ,グラクトの生着率も年毎に向上し,1年生着率は最近では70%をこえている.サイクロスポリンが膵移植においても有効であることが明らかにされ,今後さらに成功率は高くなると予測される.膵液処理,膵グラフトの採取,免疫抑制,保存法などの問題点について概説した.

免疫抑制法の進歩

著者: 内田久則 ,   横田和彦 ,   刑部恒男 ,   中山義介 ,   佐藤光史 ,   遠藤忠雄 ,   大久保充人 ,   渡部浩二

ページ範囲:P.45 - P.55

 ciclosporinの登場までの臓器移植における免疫抑制法の歴史を概説し,ciclosporinの作用機序,腎移植臨床における免疫抑制効果,腎毒性などの副作用,さらにそれを防止するために少量のciclosporinに対してazathioprine, steroid,あるいはmizoribine, steroidを加える3剤合併投与あるいはさらにATGもしくはALGを加える4剤合併投与による免疫抑制法の実際につき解説した.

組織適合性検査の実際

著者: 辻公美 ,   松野直徒

ページ範囲:P.57 - P.64

 臓器移植外科においてヒト組織適合抗原の意義について解析した.
 具体的には,HLA-serology, cellular typing, HLA-DNA, HLA-serum soluble抗原の同種腎移植における役割りなどについて最近の知見を紹介する.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 胆道内視鏡シリーズ・4

術後胆道鏡 その2—手技的事項を中心として

著者: 山川達郎

ページ範囲:P.13 - P.15

 手術時,総胆管や空腸瘻に挿入したtubeの周囲にできた瘻孔を介して行われる術後胆道鏡は,通常術後3週間を待ってTV装置つきX線透視室で行われる.胆管炎,肝内結石合併症例では,すでに全例が感染胆汁をもつが,胆道鏡検査により,さらに重篤な合併症,すなわち敗血症やMOFに発展する可能性があるので,より病態を複雑とする混合感染を予防するためにも,X線透視室での検査とはいえ器具の消毒はもちろん,手術室と同様の無菌操作が必要である.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson8 乳房切断術

著者: 小越章平

ページ範囲:P.65 - P.69

 乳癌根治手術には.定型的乳房切断術(Standard radical mastectomy,Br+Ax+Mj+Mn,いわゆるHalsted手術)と非定型的手術(Modified radical mastectomy)とがある。そして後者には大小両胸筋保存のいわゆるAuchincloss手術(Br+Ax)と,小胸筋のみをとって大胸筋を残すPatey手術(Br+Ax+Mn)とがあり,最近盛んに行われている。その辺の事情は本誌42(9),1987の特集を参照されたし。

スポット

アメリカにおける血管内皮細胞の培養と応用

著者: 進藤俊哉

ページ範囲:P.70 - P.72

はじめに
 細胞培養の技術は,医学研究の様々な分野に利用されてきた.今日では,単に生物学や,薬理学等の研究に留まらず,治療への応用として,いわゆるハイブリッド型の人工臓器が脚光を浴びている.最近私は,Bos-tonのBrigham and Women's HospitalのResearchFellowとして,2年間血管内皮細胞の培養とその応用に携わってきたので,誌上を借りてここで紹介する.

座談会

胆道疾患の術中精査をどうするか

著者: 内村正幸 ,   高田忠敬 ,   松代隆 ,   小山研二

ページ範囲:P.73 - P.86

 小山 胆道疾患の術中精査には術前に行うことが不可能なために術中に行わざるを得ないもの,術前検査が不完全,不十分なために術中に,より正確に行うことを目的とするものがあります.いずれもより正確な診断を目指すものですが,胆道疾患においては,術中棟査の結果で術式や治療方針を決定するので特に慎重に行う必要があろうと思います.そこで,胆道造影,内視鏡,胆道内圧測定を中心に,経験豊かなお三方に,これらを術中精査として行うさいの方法や解釈,問題点などを御討論いただきたいと思います.実は約10年前,本誌で術中胆道造影についての座談会が行われており,その後の進歩がわかるような御意見をおきかせいただけたら幸です.まず内村先生から術中胆道造影についてお話しいただきたいと思います.

Caseに学ぶ 一般外科医のための血管外科応用手技・8

肺尖部胸壁浸潤肺癌の手術

著者: 橋本正人 ,   田辺達三

ページ範囲:P.87 - P.90

はじめに
 肺尖部に発生し胸壁に浸潤する肺癌は通常の肺野型とはやや異なる臨床像を呈し,その治療方針に関しても異なった考え方が必要である.1932年Pancoast1)は肺尖部胸壁に存在し,上肢の激痛,筋萎縮,肋骨あるいは椎体の破壊,ホルネル症候群をともなう腫瘍をsuperior pulmonary sulcus tumorとして報告した,その後このような腫瘍はPancoast腫瘍,このような症状はPancoast症候群と呼ばれているが,現在そのほとんどすべてが肺尖部に発生し胸壁に浸潤した肺癌であることが知られている.
 肺尖部に発生し胸壁に浸潤する肺癌のうちでもその占居部位が比較的後方で,椎体,神経根に浸潤するものは定型的Pancoast症候群を呈するが,前方のものではPancoast症候群を呈するより先に鎖骨下動静脈に浸潤を来たすことが多い.正岡ら2)は肺尖部胸壁に浸潤する肺癌を肺尖部胸壁浸潤肺癌apical invadinglung cancerと総称し,superior sulcusより後方に存在しPancoast症候群を呈するものをsuperior sulcustumor(pancoast tumor),superior sulcusより前方に存在するものをanterior apical tumorと呼称することを提唱している.

臨床研究

腸骨動脈の狭窄病変に対するPTAの長期予後

著者: 浦口憲一郎 ,   山名一有 ,   木下寿彦 ,   明石英俊 ,   平田義博 ,   久能俊昭 ,   鈴木稔 ,   麻生公 ,   大石喜六

ページ範囲:P.91 - P.95

はじめに
 経皮経管的血管拡張術percutaneous transluminalangioplasty(以下PTA)は1974年Grüntzig1)がバルーンカテーテルを考案・改良して以来,末梢動脈をはじめとして,冠動脈,腎動脈,静脈疾患,大動脈縮窄症などにも応用されるようになり,一般的に行われるようになった.しかし,その適応に対する考え方はさまざまである.われわれも1980年よりPTAを経験してきたが,腸骨動脈領域の狭窄病変に対するPTAの長期予後に関する報告は欧米ではみられるが,本邦では少ない,われわれはPTA施行後5年以上経過し,外来にて観察中の症例を経験したので,その現状および予後について検討し,若干の考察を加え報告する.

左側大腸癌イレウス症例の治療

著者: 神田裕 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   加藤純爾 ,   松下昌裕

ページ範囲:P.97 - P.101

はじめに
 大腸癌では穿孔,イレウスなどの腫瘍による合併症がしばしばみられ,特に高齢者においてその頻度が高いとされている.これらの症例では患者の全身状態が不良なことが多く,しかも高度の進行癌が多いので,患者の救命と癌の根治性という2つの問題を十分に考慮して治療がなされなければならない.その治療方法,とくに下行結腸以下の左側大腸癌イレウス症例については一期的に切除するか,減圧の後に二期的に切除するかについては以前から論議されてきたが,現在のところこの治療方針には一定の見解がない.そこで,われわれは左側大腸癌イレウス例の臨床的特徴と治療成績を検討したところ,興味ある結果がえられたので報告する.

直腸癌根治手術による排尿および性機能障害

著者: 吉村直樹 ,   岡田裕作 ,   吉田修 ,   前谷俊三 ,   戸部隆吉

ページ範囲:P.103 - P.106

はじめに
 骨盤内臓器の悪性腫瘍の根治手術にともなう術後台併症として排尿及び性機能障害は比較的よく知られており,これらの障害は術後の生活に多大の影響を及ぼす.宮川ら1,2)は骨盤内臓器の悪性腫瘍のひとつである膀胱腫瘍に対して膀胱全摘術・回腸導管造設術を施行した患者について調査し,尿路変更術と性機能障害が,術後のquality of lifeを大きく低下させたと報告している.
 そこで今回は,骨盤内臓器手術のうち,直腸癌に対する直腸切断術および人工肛門造設術による排尿および男子性機能の障害の程度とその経時的な変化を明らかにする目的で検討を加えた.

臨床報告

転移性S状結腸扁平上皮癌の1例

著者: 船戸崇史 ,   三島修 ,   加納宣康 ,   多羅尾信 ,   後藤明彦 ,   名倉一夫 ,   天野和雄

ページ範囲:P.107 - P.110

はじめに
 食道,肛門を除く消化管のうち,扁平上皮性成分を含む腫瘍が結腸に転移することは稀である.われわれは最近,S状結腸癌として外科的処置を行い,病理学的検索において,S状結腸の転移性扁平上皮癌と診断された症例を経験したので,報告する.

術前診断が困難であった腸間膜偽性乳び嚢胞の1例

著者: 小松誠 ,   岩浅武彦 ,   久米田茂喜 ,   井之川孝一 ,   堀利雄 ,   牧内正夫 ,   重松秀一

ページ範囲:P.111 - P.114

はじめに
 腸間膜嚢胞は比較的稀な疾患であるが,本邦においては1893年伊藤ら1)の報告以来,1977年までに288例の報告がある2).本症の術前診断は従来,特徴的な症状がないので困難とされており,腹痛を主訴とする場合には腸閉塞や腹膜炎として開腹手術後発見されることが多い.
 今回我々は腹痛を主訴とする患者に,①腹部単純X線撮影,②小腸造影,③超音波検査(US),④コンピューター断層撮影(CT),⑤内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などの諸検査の結果,術前に膵嚢胞と診断し,手術時に初めて腸間膜嚢胞と判明した1例を経験したので報告する.

大網小網裂孔網嚢ヘルニアの1治験例

著者: 樫塚登美男 ,   田中千凱 ,   伊藤隆夫 ,   伴邦充 ,   坂井直司 ,   大下裕夫 ,   深田代造 ,   菅野昭宏

ページ範囲:P.115 - P.117

はじめに
 内ヘルニアのうちでも,網嚢ヘルニアはきわめてまれな疾患である.最近われわれは,大網より侵入し小網より脱出するという,まれな経路を通った網嚢ヘルニアの1症例を経験し,これを治癒せしめたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

小腸穿孔をきたしたCrohn病の1例

著者: 松崎正明 ,   村瀬正治 ,   赤座薫 ,   堀尾静 ,   佐久間温巳

ページ範囲:P.119 - P.121

はじめに
 Crohn病の合併症としては狭窄,瘻孔形成,出血等があるが,穿孔は稀である.われわれは穿孔性腹膜炎をきたした小腸Crohn病を経験したので,本邦報告例について集計し,検討した.若干の文献的考察を加えて報告する.

高齢者に発生した腹腔動脈起始部圧迫症候群の1治験例

著者: 熊本吉一 ,   小泉博義 ,   赤池信 ,   片山清文 ,   中村俊一郎 ,   鈴木紳一郎 ,   南出純二 ,   小沢幸弘 ,   末永直 ,   岩崎博幸 ,   深野史靖

ページ範囲:P.123 - P.125

はじめに
 腹腔動脈起始部圧迫症候群(celiac axis com-pression syndrome以下CACSと略)は本邦においては欧米に比較し少ないとされ,また一般に若年者に多いとされている.今回われわれは75歳の高齢者に発生したCACSの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

肝膿瘍ドレナージ後に肝肉芽腫を形成した1例

著者: 村田郁夫 ,   高橋知秀 ,   八ッ橋輝海 ,   須田清美 ,   田中隆 ,   坂部孝

ページ範囲:P.127 - P.130

はじめに
 肝の孤立性肉芽腫は稀な疾患で,原因は不明とされている.近年の画像診断技術の発達と肝臓外科の進歩に伴い,多くの肝疾患の病態が明らかにされつつある.孤立性化膿性肝膿瘍に対しては,現在は一般的に超音波誘導下に経皮的ドレナージが行われているが,肉芽増生の著しい肝膿瘍や炎症性肉芽腫ではドレナージによる治癒は望めず,肝切除が適応となっている.
 今回,我々は超音波誘導下に経皮的ドレナージにより消失した孤立性化膿性肝膿瘍が,約2年後に肝肉芽腫として再発し,肝切除により治癒した症例を経験した.
 著者らの検索しえた範囲内では,肝膿瘍が肝肉芽腫に進展した報告はみられなかったので,若干の文献的考察を加え報告する.

表紙の心

科学の前に姿を見せる自然

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.110 - P.110

 長いこと赤い表紙で親しまれた本誌に,この度絵入りの表紙が登場することになった.第43巻の冒頭を飾る画期的な話題になるであろう.
 そのスタートを担当するように依頼をうけた私としては限られた視野のものしか手持ちがないが,特に外科史とかかわりあいのある人物・建物・記念物・器具などから選んでみることにした.月刊だから毎回バラバラの話題でもよいのだが,出来ればドミノというゲーム(倒すだけのではない本来のゲーム)のように前回と今回,今回と次回とが何らかの関係でつながっているような組合せを選びながらしばらく続けてみたいと考えている.そうすれば,関係を持ちながら変化にとみ,次回を楽しみにしていただけるようになるのではないかと考えている.

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「引用」についての豆知識

ページ範囲:P.102 - P.102

 「引用」の範囲を超えて他人の著作物を,自身の著作物へ取り込む場合("転載")には相手方(著作権者・出版社)の許諾が要ります.(許諾の条件として著作権使用料を請求される場合もあります)但し,「引用」の条件を満たして利用する場合は自由に利用できます.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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