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特集 急性腹症のX線像・エコー像
急性膵炎・膵石症のX線像・エコー像
著者: 跡見裕1 森俊行1 黒田慧1 森岡恭彦1
所属機関: 1東京大学医学部第1外科
ページ範囲:P.617 - P.622
文献購入ページに移動急性膵炎では通常の腹部X線写真の診断的価値は限られたものである.最も重要な所見は,局所あるいは腹部全体に及ぶイレウス像であり,横行結腸におけるガス像の途絶をColon cut off sign①(図1,2)また空腸に局所イレウスが認められるものをSentinel loop sign②(図3)と称する.これはいずれも膵の炎症が横行結腸・小腸間膜を介して拡がることによる(図4)炎症の波及と共にガス像は,腹部全体に認められるようになるか時にgasless ileusの所見を呈する.後腹膜腔における炎症の進展に伴い,腎陰影,肝辺縁陰影の不鮮明化,また腸腰筋陰影の消失(Psoas sign),側腹線(lateral fhank stripe)の消失を認めるようになる.また腹水の貯留をきたせばlateral gutterの拡大,Dog ear's sign等を認めるようになる.また上腹部に嚢胞または膿瘍が形成されるとSoap suds appearance④を呈するようになる.
急性膵炎症例では胸部X線写真に異常所見を認める事も多い.上腹部の炎症による交感性胸水の貯留,肺胞界面活性物質の傷害によるとされる無気肺,曇ガラス様陰影,また肺浮腫像,肺炎像を認めることもある.時として上部消化管造影が診断的価値のある情報を提供することがある.
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